上 下
1 / 10

1.

しおりを挟む
王宮でのパーティー中、二人の男女が寄り添って、一番目立つ場所に立った。そして、宣言を始める。

「リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことマグーマ・ツインローズ第一王子との婚約を破棄させてもらう! それと同時に、貴様をアノマ・メアナイト男爵令嬢をいじめた罪で訴える!」

貴族のパーティー中に高らかに婚約破棄を宣言するのは、ツインローズ王国第一王子にして王太子マグーマ・ツインローズだ。その隣には婚約者ではなく、安物のドレスを着たアノマ・メアナイト男爵令嬢だった。

「はあ……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」

呆れ果てた様子で質問するのは、王太子の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナム。彼女は婚約破棄と宣言されたのにもかかわらず、余裕を通り越して面倒くさそうにしている。

「フン! しらじらしい! 素直に認めたらどうだ、この可愛く可憐なアノマをいじめた罪を!」

「いじめた罪?」

そう、一番分からないのはそこである。いじめた罪で訴えるって、いったいなんなのだ。

そう思ったリリィは、思い当たる節など一切ないため、マグーマの言い分を聞いて答えることにした。

それから王太子と公爵令嬢の問答が始まった。

……………………。

……………………。

……………………。

……………………。

……………………。

「……言いたいことはそれだけですか?」

「「…………え~と」」

リリィは水の流れるように反論を返し続けると王太子マグーマは顔を青褪めて顔を下に向けて俯いた。そして、そのままの姿勢で答えた。

「…………さっき言ったことは取り消してくれ。わ、悪かった、言いすぎた。こ、これからは、もっと仲良くしていこうじゃないか…………」

先ほどと違ってあまりにも力がこもっていない言葉だった。マグーマの方から反論する材料が無いことに気付き、今度は自分の方が危うくなったことに気付いたからだ。

「マ、マグーマ様…………」

さっきまでマグーマに縋るように抱き着いていたアノマはいつの間にか離れていて、マグーマと同じように顔を青褪めていた。

「もういいみたいですね」

それに対してリリィは笑顔でやり返した。

「では、今度は私から婚約破棄させていただきますわ」

「な、何ーっ!?」

王太子マグーマは目を丸くして顔を上げた。

「理由はもちろん、貴方の浮気と国のお金を勝手に使い続けた罪が原因ですよ。お隣の可愛く可憐なご令嬢も逃れられると思わないでくださいね」

「「そ、そんなあああああぁぁぁぁぁ!」」

この後、マグーマとアノマの叫びが響いたという。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか....相手が悪かったですね?

神々廻
恋愛
婚約者から婚約破棄を言われてしまいました。私は婚約者の事が好きでは無かったので良いのですが..... 少し遊んで下さいませ♪相手が悪かったですね?

きちんと調べずに婚約破棄とか言うからこんなことになるんですのよ?

ルー
恋愛
婚約者の王子から婚約破棄を告げられたリーゼは真正面から対抗していく。

婚約破棄され、思わず第二王子を殴りとばしました~国外追放ですか!心から感謝いたします~

四季 葉
恋愛
男爵家の令嬢アメリアは、出世に興味のない医師の両親と幸せに暮らしていました。しかし両親を流行り病で亡くし、叔父が当主をつとめる侯爵家に引き取られます。 そこで好きでもない第二王子から一目惚れしたと言われ勝手に婚約者にされてしまい、 「アメリア、君との婚約を破棄する!運命の相手は別にいると僕は気がついたんだ」 散々自分のことを振り回しておきながら、勝手なことを抜かす第二王子に、普段はおとなしい彼女はついにキレてしまったのです。 「婚約破棄するなら、もっと早くできなかったんですか!!」 そうして身分を剥奪され国外追放となりますが、彼女にとっては願ってもない幸運だったのです。

婚約破棄ですか?聞き飽きましたのでお好きになさってくださる?

うめまつ
恋愛
婚約破棄が口癖のだめんずに飽きた伯爵令嬢。 ※タイトルと中身が迷走中で申し訳ないです。 ※完結しました。

婚約破棄されたのでグルメ旅に出ます。後悔したって知りませんと言いましたよ、王子様。

みらいつりびと
恋愛
「汚らわしい魔女め! 即刻王宮から出て行け! おまえとの婚約は破棄する!」  月光と魔族の返り血を浴びているわたしに、ルカ王子が罵声を浴びせかけます。  王国の第二王子から婚約を破棄された伯爵令嬢の復讐の物語。

婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか?

みやび
恋愛
政略に基づく婚約を破棄した結果

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?

R.K.
恋愛
 結婚式まで数日という日──  それは、突然に起こった。 「婚約を破棄する」  急にそんなことを言われても困る。  そういった意味を込めて私は、 「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」  相手を試すようにそう言った。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  この作品は登場人物の名前は出てきません。  短編の中の短編です。

処理中です...