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序章 出会い編

第9話 ラッキー?/アンアッキー?

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 まず最初に、俺とミエダは互いのダンジョンの知識に関する情報交換をしてみた。同じ知識にあったのは、罠や魔物が出現すること、奥に進むにつれて難易度が上がっていくこと、最奥に強敵がいること等だった。
 お互い知らなかった知識と言えば、俺の方はダンジョンが魔族の祖先によって作られた可能性があることで、ミエダの方はダンジョンが人間の古代人によって作られた可能性があることだった。
 ……正直、ダンジョンを作ったのが何者かなんて、どうでもいいとこの時はそう思った。
 
 情報交換が終わった俺達は、さっきとは逆、つまり、ミエダが封印された場所の辺りから、進める道を探すことにした。そして、すぐに下の階に続く階段を見つけた。

「……下の方に続いてるな。ここから難しくなっていくんだな」
「いよいよ罠や魔物が出るのね。怖くない?」
「正直怖いよ。だけどここから出るためには進むしかないんだろ? せっかく俺達似た者同士が出会ったのに、ここで一緒にのたれ時ぬなんて御免だよ。そう思うだろ?」
「そうね。なら進みましょう。私達のこれからのためにも」

 俺達は緊張しながら階段を下りた。降りた先は、古い感じだが整備された通路だった。しかも、魔道具らしいものも無いのに明るくて暗く感じないような不思議な感じだ。さすがダンジョン。雰囲気が変わって、俺達の警戒心も強くなった。それでも、俺達は進んでいった。


※一時間経過
 
 通路を進んでいく俺たちはその一時間後に、無事に下の階に続く階段を見つけた。何故なら、何もなかったんだ、罠とか魔物が…………おいおい。

「……なあ、ミエダ、どういうことなんだ?」
「……言いたいことは分かるけど私も疑問に思うわ。何もなかったことでしょ?」
「……うん、何ていうかさあ」
「……だよねえ」
「…………お、お、おかしい! おかしいだろ! 何なんだよー!?」

 思わず叫んじまったけど、仕方ないだろ!? あんなに緊張と不安でいっぱいだったのに、何もないのはどういうことだよ!? 逆に怖いよ!

「一時間も何もなかったぞ!? ここ本当にダンジョンか!? 罠や魔物は一体どうしたんだ! 一時間前の俺達の覚悟は何だったんだよ!?」
「まっ、まあまあ落ち着いてよ。私もおかしいと思うから……」
「あーもー! ダンジョンが古すぎてポンコツになったてのかよー!?」
「いや、流石にそんなことは……っ! もしかして……!」
「え? マジなのか?」
 
 俺が「古すぎてポンコツ」って言ったらミエダが考えこんじゃったけど、マジでそうなのか? もしそうだとしたら、帰還用の魔法陣も使えなかったりするんじゃ……。それってマジでヤバイじゃねーか?

「……ポンコツじゃないけど古すぎるのが問題ね、環境が変化したのかもしれない」
「え? どういうことだ?」
「長い年月を経て、ダンジョンの中の魔物の生態系が変化したかもしれないってことよ。ダンジョンの魔物だって生き物だから食べていく必要がある。」
「それがどうしたんだよ? 食べ物が無くなって絶滅したってことか?」
「そうかもしれないけど、食べ物を求めて下の階に移動したってこともありそうじゃない?」
「魔物が下の階に移動?」
「ゼクトの知識の中には、突然、ダンジョン内で確認されたことのなかった魔物が出たことがあるんでしょ。原因として、ある魔物が別の階に移動したことで、突然変異か進化したと考えられてるそうなら、このダンジョンでも起こってるんじゃないかしら?」
「そ、そういうことか……。さらに下の階に魔物が集まってるってことか?」
「そうなるわね。それも、さっき言ったように突然変異か進化した魔物がね」
「つまりこの先に待っているのは……」
「ゼクトの言ったように絶滅しているか、私の言ったように進化しているってことよ、ダンジョンの魔物がね」
「……」

 二つの可能性を聞かされてしまった。ダンジョンが古すぎるせいで、魔物が絶滅か進化しているという。前者だったらラッキー!なのだが、後者だったらアンラッキー!なのだ。
 …………どうか! 前者でありますようにー! 絶滅してますようにー!



 数時間後、俺達は後者だったことを知った。…………アンラッキー!

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