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番外編

悪役令嬢の妹⑩

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月日は流れていくうちに私のお腹も大きくなっていった。体の変化と同時に私の不安も大きくなっていく。何故かと言うと勉強に打ち込んでいくうちに思い知ったからだ。貴族だった頃の私がいかに甘やかされて育ち、歪んだ姉妹格差の中で教育されていたのかを。どれだけ世間知らずで我儘で愚かな生き方をしていたのかを。修道院での勉強がそれを教えてくれた。

どうやら先生は私のこれまでの自分を見つめ直せるような授業を私にしてくれたみたい。わざわざ個別授業を行っていたのはそのためだったんだ。おかげで過去の自分を反省できた。だからこそ不安に思えた。




……こんな自分が子供のためにできることなんて、あるのだろうか?







遂にその時がきた。私は子供を産む。出産の時を迎えた。

「うあああああ、ぐうううううう……! ひーっ! ひーっ! ふぅーっ! んん! あああああああああっ!!」

修道院の一室で私は壮絶な痛みと苦しみの中で子供を産み落とそうとしている。

「ワカナさん! 頑張って!」

「もう頭が出てきたわ!」

「後もう少し!」

周りには先生方や産婆さんに医者も助けてくれているが、母胎である私は苦しみから逃れることはできない。きっと、かつての私ならこんな苦しみを受け入れられなかっただろうけど、今の私はそんなことは思わない。無事に産み落とさなければならないという、本能に似た義務感があるから。それはこの修道院の中で皆に教わった『道徳』なのだろう。

「ああ! 産まれた! 産まれましたよ!」

「ぜーっ……! ぜーっ……! はぁ……はぁ……」

「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」

産まれた? 私の子が? ああ……産声が聞こえてくるわ。おぎゃあおぎゃあとよく泣くわね。

「私の子……見せて……」

「ええ! ええ! ワカナさんも見て抱いてやってください! 貴女に似て可愛いですよ!」

凄く興奮する先生から我が子を見せてもらった。

「この子が私の赤ちゃん……」

「はい! 元気な男の子ですよ!」

私の赤ちゃん……金髪碧眼で元気に泣いている。顔がしわくちゃで猿みたい。髪と目だけ私と似たのかしらね。それでもたまらなく愛おしく感じれるわ。父親が誰何て関係ないくらいに。

「ああ……私の赤ちゃん!」

気が付けば私は泣いていた。生まれてきた我が子の穢れなさと、湧き起こる愛おしさに感極まったのだろう。こんな私から愛くるしい子供が生まれてきたことに奇跡すら覚えてしまった。

「ありがとう、ありがとう! 産まれてきてくれて本当にありがとう!」

この日を境に私は本格的に変わっていった。
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