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番外編

悪役令嬢の妹⑤

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身に覚えがあるんですか、なんて先生に聞かれて、私は心臓を掴まれたような、背筋が凍るような気分になった。

「ま、まさか……」

あるんだ、身に覚えが。子供ができてしまう行為をした覚えが。

『………へへへ、ワカナ様万歳………』

私の脳裏に一人の男の顔と声がみるみる浮かんでくる。

『……確かに酷いですね。人として道徳から外れてる……』

『! 最低の国王だ……!』

私の言葉を信じて肯定し、一緒にあの忌まわしい国王や裁判長を罵った男でもあったっけ?

『……そうですね、苦労しましたよ。兵士たちから貴女を逃がすのには……』

くっだらないことで牢屋に入れられた私を助け出してくれたことを感謝してやったのは忘れてないわ。

『他の取り巻き連中は貴女を見捨てましたが、俺は見捨てたりしませんでした……』

私の取り巻きの中の一人、取り巻きの中じゃ地味な方だったけど最後まで私に付き従ってくれた男……。

『えへへへ………それほどでも………』

それは決して王族だとか高位貴族の美男子ではない。ちょっと地味だけど顔は良かったから取り巻きにしてあげたの。確か男爵令息だったと思う……。

『はい、そうっすね………全部あの女のせいっす………』

思い出せば思い出すほど明確になってくるその男は、私を酷い目に遭わせた元凶を教えてくれたのだ。そして復讐の手伝いもしてくれた。最後の方は役立たずだったけど……。







いや、そうじゃなくて! その前に、助けてくれたお礼に褒美をやったんだ。今にして思えば過剰な褒美を。


『教えてくれて感謝してあげるわ。光栄に思いなさい。後でご褒美もあげるわ』

『!? ご褒美!? そ、そそそそそれは何ですか!?』

あの時はどうかしてたのよ。あんな行為はもっといい男としかしないのに……!

『後で一緒に寝てあげるわ。安いベッドでも今は我慢してあげる。助けに来てくれたしね』

そりゃあ、助けてくれたけども! 私は正常な判断ができてなかっただけなのよ! なのに……!

『えええええ!? さ、さささささ最高っす! マジ最高! いやっほう!』



………………なんてことを、私は…………!

「あ、あああ……」

「ワカナさん?」

なんて馬鹿なことを!

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「「ワカナさん!? 落ち着いてください!」」

私は、私は……! やってしまったんだ、お腹に子供ができてしまうようなことを! 

「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

私のお腹にいるのは、あいつの子だ! オルマー・ビー・ゲーン、私の取り巻きの一人だった男の……!

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