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番外編
ザイーダ侯爵⑨
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その後、両親はネフーミが地下牢にいる間に彼女に新しい生活を準備した。新たに厳しい家庭教師を呼び、ネフーミの元の部屋は倉庫にして新しい部屋を用意した。新しい部屋は大人の貴族らしい質素な部屋だ。ネフーミの私物自体が少ない。どっかの馬鹿が暴れて壊したからな。
三日後、地下牢から出されたネフーミは新たな生活方針を嫌がり、元の生活に戻すよう懇願してきたが、両親は聞く耳も持たなくなった。
……それどころか顔を合わせようともしなくなった。
「……ネフーミは、もうダメかもしれんな。あそこまで自分の都合のいい考え方しかできんとは。美しいから偉い? 信じられないくらい馬鹿だった……」
「もう……あの子の顔を見たくないわ。顔を合わせたら、それだけで幻滅しそうだもの……」
……要するに、ネフーミの育児を半分放棄したのだ。ネフーミの新たな生活は、屋敷に監禁することを除けば、ザイーダ家の嫡男である私とほぼ同じなのだ。一般的な貴族とほぼ同等の教育環境に荒々しく苦言を呈するのだから、両親はそれくらい幻滅するのも仕方ないかもしれない。
ただ、それだけでは甘かった。
「何でこんなことしなくちゃいけないの!」
「もうお茶の時間よ出しなさい!」
「外出させなさい!」
「難しいわ!」
「ああああああああああああああああああああ!」
新生活に放り込まれたネフーミは荒れまくった。家庭教師に文句を言ったり、反抗して物を投げつけることが多かった。そこで私は腕っぷしに自信のある使用人に命じて家庭教師を守るためにネフーミの自室に待機させた。お目付け役と言う奴だ。
「頼むぞ、ウルス」
「はい。お任せください」
その結果は大成功。ウルスをはじめとする真面目で強そうな使用人に見張られてネフーミは荒れても暴れることができなくなったのだ。流石のネフーミも屈強な男に睨まれては暴れにくかっただろう。
それから半年くらいして、家庭教師の方々からも許可が下りて、ネフーミは軟禁生活方は解放された。だが、軟禁生活が終わったというのにネフーミの顔はあまり喜んでいそうになかった。気になった私は家庭教師の一人に聞いてみた。
「ネフーミ様は己の愚行をよく理解されたのですよ。流石にマリア様の結婚式に参加させてもらえないと知ってからは荒れるよりも絶望の方が大きかったようです。何でも、結婚式でダイド様に改めて告白しようとか考えてらしたようでして……」
「大変お恥ずかしい限りです」
「絶望した結果、一気に頭が冷えたのか忘れたいのか、その日からは真面目に勉強するようになったのです。まるで何かから逃れるかのように……」
本当に、ダイドのことが好きだったんだな、ネフーミは……。
三日後、地下牢から出されたネフーミは新たな生活方針を嫌がり、元の生活に戻すよう懇願してきたが、両親は聞く耳も持たなくなった。
……それどころか顔を合わせようともしなくなった。
「……ネフーミは、もうダメかもしれんな。あそこまで自分の都合のいい考え方しかできんとは。美しいから偉い? 信じられないくらい馬鹿だった……」
「もう……あの子の顔を見たくないわ。顔を合わせたら、それだけで幻滅しそうだもの……」
……要するに、ネフーミの育児を半分放棄したのだ。ネフーミの新たな生活は、屋敷に監禁することを除けば、ザイーダ家の嫡男である私とほぼ同じなのだ。一般的な貴族とほぼ同等の教育環境に荒々しく苦言を呈するのだから、両親はそれくらい幻滅するのも仕方ないかもしれない。
ただ、それだけでは甘かった。
「何でこんなことしなくちゃいけないの!」
「もうお茶の時間よ出しなさい!」
「外出させなさい!」
「難しいわ!」
「ああああああああああああああああああああ!」
新生活に放り込まれたネフーミは荒れまくった。家庭教師に文句を言ったり、反抗して物を投げつけることが多かった。そこで私は腕っぷしに自信のある使用人に命じて家庭教師を守るためにネフーミの自室に待機させた。お目付け役と言う奴だ。
「頼むぞ、ウルス」
「はい。お任せください」
その結果は大成功。ウルスをはじめとする真面目で強そうな使用人に見張られてネフーミは荒れても暴れることができなくなったのだ。流石のネフーミも屈強な男に睨まれては暴れにくかっただろう。
それから半年くらいして、家庭教師の方々からも許可が下りて、ネフーミは軟禁生活方は解放された。だが、軟禁生活が終わったというのにネフーミの顔はあまり喜んでいそうになかった。気になった私は家庭教師の一人に聞いてみた。
「ネフーミ様は己の愚行をよく理解されたのですよ。流石にマリア様の結婚式に参加させてもらえないと知ってからは荒れるよりも絶望の方が大きかったようです。何でも、結婚式でダイド様に改めて告白しようとか考えてらしたようでして……」
「大変お恥ずかしい限りです」
「絶望した結果、一気に頭が冷えたのか忘れたいのか、その日からは真面目に勉強するようになったのです。まるで何かから逃れるかのように……」
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