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番外編
公爵夫人⑩
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地下牢に閉じこめられた私はもう何が起こったのか理解できなかった。いや、理解したくなかったという方が正しいだろう。地下牢の中で私は騒ぎ喚き続けた。
何しろ、好きな人に告白したら振られただけでも最悪なのに、家族からのこの仕打ちなのだ。これは夢だ、悪夢を見ているんだと思わずにはいられないじゃない?
しかし、そんな風に現実逃避をしても無駄だった。地下牢に入れられてからその三日後に解放されたと思えば、いつの間にか新しい自室が用意された。ボロボロになった元の部屋は物置にされた。更に両親から家庭教師をたくさんつけられて勉強三昧の毎日が始まったのだ。
当然、私は反抗する。
「お父様お母様! どうしてこんなに家庭教師を用意するのよ!? しかもこれから部屋で毎日勉強!? しかも休み時間が今までの十分の一しかないっておかしいわ!? どうしてこんなことするのよ!?」
とても受け入れられないと思った。悪い冗談だとも考えたけど、両親はもうすでに私に対して甘さを捨てていた。あるのは厳しさだけ。文字通り心を鬼にしたのだ。
「どうしてだと? それはお前があまりにも愚かで稚拙で我儘だからだ。今のままでは貴族社会に出ても何もできんだろう。いや、それ以前に人並の道徳すら欠けているようだしな。お前がまっとうな貴族令嬢になるためにもこれくらいはしないとならないと判断したのだ」
「ネフーミ。今の貴女では貴族令嬢として全く価値がないと言っていいわ。少しくらい奇麗ってだけじゃ有利と言うわけではないの。中身まで見られるのが貴族といいものなのよ。今の貴女は中身が酷すぎて誰からも貰い手がないと言っていいわ。それを治すためにも厳しい手段を取らなければならないのよ。我慢して」
「そ、そんな………そんなのはあんまりよ!」
この時の私は両親の言葉を半分くらいしか理解できなかった。いや、ほとんど理解できていなかった。酷い目に遭わされるだけでなく罵倒されたのだと勘違いして癇癪を起したのだ。
「何よ! 何よ! 何よ! 愚かで稚拙とか価値がないとか、私を馬鹿にしてるだけじゃないのよ! しかも貰い手がいないって酷すぎるわ! こんなに美しい女神のような私が結婚できなってあり得ないわよ! 一番美しい私が正しくて偉くて価値があるのよ! ダイド様もお父様お母様も頭おかしいわ! 貴方たちの目はそんなに節穴だったというの!? きっと見ていなさいよ! ダイド様に負けないいい男を手に入れて貴方たちをぎゃふんと言わせてやるんだからね!」
「「…………」」
私の言い分に呆然とする両親は何も言葉にしなかった。その後、父が手で合図して私を新しい自室へと閉じ込めた。その日から、私は両親……家族とまともに話すことができなくなった。まあ、避けられるようになったのよね………。
当然、姉の結婚式にも出席することも許されなかった。もっとも、私自身も行きたくなかったけどね。だけど、結婚式の日まで勉強させられるのはどうかと思った。家庭教師にも抗議してみても「勉強しなさい」と言われるだけ。
………今思えば当然だったわね。
何しろ、好きな人に告白したら振られただけでも最悪なのに、家族からのこの仕打ちなのだ。これは夢だ、悪夢を見ているんだと思わずにはいられないじゃない?
しかし、そんな風に現実逃避をしても無駄だった。地下牢に入れられてからその三日後に解放されたと思えば、いつの間にか新しい自室が用意された。ボロボロになった元の部屋は物置にされた。更に両親から家庭教師をたくさんつけられて勉強三昧の毎日が始まったのだ。
当然、私は反抗する。
「お父様お母様! どうしてこんなに家庭教師を用意するのよ!? しかもこれから部屋で毎日勉強!? しかも休み時間が今までの十分の一しかないっておかしいわ!? どうしてこんなことするのよ!?」
とても受け入れられないと思った。悪い冗談だとも考えたけど、両親はもうすでに私に対して甘さを捨てていた。あるのは厳しさだけ。文字通り心を鬼にしたのだ。
「どうしてだと? それはお前があまりにも愚かで稚拙で我儘だからだ。今のままでは貴族社会に出ても何もできんだろう。いや、それ以前に人並の道徳すら欠けているようだしな。お前がまっとうな貴族令嬢になるためにもこれくらいはしないとならないと判断したのだ」
「ネフーミ。今の貴女では貴族令嬢として全く価値がないと言っていいわ。少しくらい奇麗ってだけじゃ有利と言うわけではないの。中身まで見られるのが貴族といいものなのよ。今の貴女は中身が酷すぎて誰からも貰い手がないと言っていいわ。それを治すためにも厳しい手段を取らなければならないのよ。我慢して」
「そ、そんな………そんなのはあんまりよ!」
この時の私は両親の言葉を半分くらいしか理解できなかった。いや、ほとんど理解できていなかった。酷い目に遭わされるだけでなく罵倒されたのだと勘違いして癇癪を起したのだ。
「何よ! 何よ! 何よ! 愚かで稚拙とか価値がないとか、私を馬鹿にしてるだけじゃないのよ! しかも貰い手がいないって酷すぎるわ! こんなに美しい女神のような私が結婚できなってあり得ないわよ! 一番美しい私が正しくて偉くて価値があるのよ! ダイド様もお父様お母様も頭おかしいわ! 貴方たちの目はそんなに節穴だったというの!? きっと見ていなさいよ! ダイド様に負けないいい男を手に入れて貴方たちをぎゃふんと言わせてやるんだからね!」
「「…………」」
私の言い分に呆然とする両親は何も言葉にしなかった。その後、父が手で合図して私を新しい自室へと閉じ込めた。その日から、私は両親……家族とまともに話すことができなくなった。まあ、避けられるようになったのよね………。
当然、姉の結婚式にも出席することも許されなかった。もっとも、私自身も行きたくなかったけどね。だけど、結婚式の日まで勉強させられるのはどうかと思った。家庭教師にも抗議してみても「勉強しなさい」と言われるだけ。
………今思えば当然だったわね。
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