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番外編
公爵夫人⑧
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父に続いて母も私に怒りをぶつけてくる。いつものような甘やかしてくれる顔じゃない。
「ネフーミ、貴女は自分のしでかしたことの重さを分かっていないのですか? あんなに人がいる場で姉の婚約を破棄するように頼むなんて……実の姉を何だと思っているの! あんなにやさしいマリアのことを!」
「ひっ!」
母の顔は今まで見たこともないほど怒りに染まっていた。弟に厳しくしていた時もこんな顔はしていなかったのに。この時の私は悪い夢でも見ているんじゃないかと思った。だから私は現実を受け入れられなくて反論してしまった。
「な、何言ってるのよ! あ、あれはダイド様がおかしいのよ! こんなにも美しくて愛される私よりもお姉さまを選ぶだなんて間違っているわ! だから、みんなの前で婚約を私に替えてもらおうと思って、」
そして、途中で遮られたのだ。
バシッ!
突然、頬を叩かれることによって。
「痛っ……え?」
私の頬を叩いたのは弟だった。弟もまた怒った顔で私を睨んでいた。そして、思いっきり私に向かって叫んだ。
「いい加減にしろよ! ネフーミ姉様は、ネフーミ姉様のやったことは家族みんなを悲しませることだったんだぞ! ダイド様とマリア姉様が幸せになることを願う父上と母上と僕、そしてマリア姉様に対する最低の裏切り行為なんだって何で気付かないんだよ!」
「え、だって、エクスだ、」
エクスだって私に協力したじゃない、と言う前に、弟はそれさえも遮って言葉を吐き捨てる。
「僕だってマリア姉様とダイド様が幸せになることを望んでいたよ! 我儘で自分のことしか考えないネフーミ姉様じゃなくて優しくて他人のことを考えてくれるマリア姉様の幸せをだ! ネフーミ姉様がダイド様と結婚したいなんて言い出した時は下らない冗談だと思ったのに、本当に告白してぶち壊そうとするなんて許されることなんかじゃないよ!」
「な、な……!」
下らない冗談……そう思われたことがショックだった。いや、それ以上にこの弟が姉マリアの幸せの方を望んでいたことの方が衝撃を受けたかもしれない。私達姉妹は弟と話す機会が少なかった気がしたから。なのに………。
「ちっ、本当に事態の重さを理解していないんだな。……もし、もしもだ。ダイド様が本当にネフーミ姉様の身勝手な思いを受け入れようものなら、ダイド様もネフーミ姉様もそれぞれの家が決めたことを破った裏切り者として貴族籍を奪われて平民になっていたかもしれないんだぞ? 」
「そ、そんな……!」
ここまで言われて私は本当に事態の重さが本当にマズいことになっていたことを理解した。あのまま、私の計画が上手く言っていたら平民になるだなんて……受け入れられるはずがない。
「ネフーミ、貴女は自分のしでかしたことの重さを分かっていないのですか? あんなに人がいる場で姉の婚約を破棄するように頼むなんて……実の姉を何だと思っているの! あんなにやさしいマリアのことを!」
「ひっ!」
母の顔は今まで見たこともないほど怒りに染まっていた。弟に厳しくしていた時もこんな顔はしていなかったのに。この時の私は悪い夢でも見ているんじゃないかと思った。だから私は現実を受け入れられなくて反論してしまった。
「な、何言ってるのよ! あ、あれはダイド様がおかしいのよ! こんなにも美しくて愛される私よりもお姉さまを選ぶだなんて間違っているわ! だから、みんなの前で婚約を私に替えてもらおうと思って、」
そして、途中で遮られたのだ。
バシッ!
突然、頬を叩かれることによって。
「痛っ……え?」
私の頬を叩いたのは弟だった。弟もまた怒った顔で私を睨んでいた。そして、思いっきり私に向かって叫んだ。
「いい加減にしろよ! ネフーミ姉様は、ネフーミ姉様のやったことは家族みんなを悲しませることだったんだぞ! ダイド様とマリア姉様が幸せになることを願う父上と母上と僕、そしてマリア姉様に対する最低の裏切り行為なんだって何で気付かないんだよ!」
「え、だって、エクスだ、」
エクスだって私に協力したじゃない、と言う前に、弟はそれさえも遮って言葉を吐き捨てる。
「僕だってマリア姉様とダイド様が幸せになることを望んでいたよ! 我儘で自分のことしか考えないネフーミ姉様じゃなくて優しくて他人のことを考えてくれるマリア姉様の幸せをだ! ネフーミ姉様がダイド様と結婚したいなんて言い出した時は下らない冗談だと思ったのに、本当に告白してぶち壊そうとするなんて許されることなんかじゃないよ!」
「な、な……!」
下らない冗談……そう思われたことがショックだった。いや、それ以上にこの弟が姉マリアの幸せの方を望んでいたことの方が衝撃を受けたかもしれない。私達姉妹は弟と話す機会が少なかった気がしたから。なのに………。
「ちっ、本当に事態の重さを理解していないんだな。……もし、もしもだ。ダイド様が本当にネフーミ姉様の身勝手な思いを受け入れようものなら、ダイド様もネフーミ姉様もそれぞれの家が決めたことを破った裏切り者として貴族籍を奪われて平民になっていたかもしれないんだぞ? 」
「そ、そんな……!」
ここまで言われて私は本当に事態の重さが本当にマズいことになっていたことを理解した。あのまま、私の計画が上手く言っていたら平民になるだなんて……受け入れられるはずがない。
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