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番外編

悪徳公爵⑥

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当時、ザイーダ侯爵令嬢だったネフーミとも学園で知り合ったのだったな。今頃は修道院で厳しくされている頃だろうか。

ネフーミとの結婚のきっかけは、あいつの方から寄ってきたのがきっかけだった。彼女が私に近づいてきた動機は、初恋の男と正反対だからということらしい。どういうことか聞いてみると、その時のネフーミは虚ろな目をしながら馬鹿正直に教えてくれた。

何でも、姉の婚約者を寝取ろうとして失敗したらしく、そのせいで家族から見放されたらしい。寝取ろうとした姉の婚約者とやらもの子供の頃から顔見知りだったため、密かに好意を抱いていたそうだ。初恋の男でもあったため、自分がお願いすれば姉ではなく自分を選んでくれると思ったそうだ。そして、失敗した。

結果的には、ネフーミは失恋した。それだけでなく、男の方は両親と姉にもその時の出来事を細かく伝えてしまったため、ネフーミは両親と姉にこっぴどく叱られてしまったという。まあ、自業自得と言う奴だな。

失恋した絶望に加えて家庭での孤独感によってネフーミの心はよりどころを無くし、家からすぐに抜け出したいらしい。そこで、初恋の男のことを忘れ去りたいこともあって、その男とは正反対の男性のもとに嫁入りしたいというのだ。それが私ということだ。

……正直、とんでもない理由で目をつけられてしまったと思ったが、こいつはうまく利用できるとも思ったものだ。彼女のしたことは最低だが腐っても侯爵令嬢だ。当時のソノーザ家よりも爵位が上の身分だ。うまくいけばザイーダ侯爵家とも繋がりが持てる。それにこの時のネフーミ自身は情緒不安定だから、甘い言葉を掛ければすぐにコロッと心が傾くことだろうと思った。

そして私達はすぐに婚約できてしまった。相手方のザイーダ侯爵は「こんな馬鹿娘でいいのならどうぞもらってください!」と言って頭を下げられたのはよく覚えている。あちらの立場の方が上なのに頭を下げてまでネフーミをもらってほしいという態度に困惑したものだ。隣でネフーミが実の父親を冷たく睨む姿もな。

今思えば、ワカナはネフーミに似たのだな。容姿も性格さえも。それに比べればサエナリアは私に……というよりも今は亡き母上に似ている気がするな。私の髪と瞳の色は母上譲りのものなのだ。娘が祖母の方に似るというのは、私としては複雑なものだ。サエナリアも私と同じ色の髪と瞳を持っている。亡き母を思い出すゆえに、私はサエナリアと極力顔を合わせるのを避けてきてしまったが、それが今は悔やまれる。

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