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番外編

悪徳公爵②

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まずは生徒会、そして生徒会のトップにいる王太子に取り入る。その手始めに私は王太子の追っかけを利用してやることにした。

そのための作戦はこうだ。

当時、王太子だったジンノは苛立つくらい女子にモテていた。貴族平民問わず気さくに接する生徒会長として結構な人気があったのだ。追っかけもたくさんいたから、その中で短気で傲慢な貴族令嬢をけしかけて問題を起こさせて告発する。それを機に王太子に取り入るきっかけを作るというもの。

作戦の内容を決めた後は、対象を絞るだけ。その白羽が立ったのは、ジンノの婚約者のエリザベスの取り巻きだ。ミーク辺境伯令嬢だったな。兄にコンプレックスを抱いてジンノを慕う平民を嫌っていた女だ。そいつを手紙でけしかけてやったのだったな。実際、ジンノは平民の小娘にも優しかったし。

そして、計画中はうまくいった。苛めと言う問題を起こし、それを私が大々的に告発して手柄を作ることができた。そればかりか、ジンノに大げさに評価されたおかげで一番下だが取り巻きの一人になることができた。この時、こんなにうまくいくとは思ってもいなかった。

計画が上手くいった私は機嫌がよくなって家族にも報告した。すると……。

「何だって、王太子殿下の取り巻きだと!?」

「本当なの、ベーリュ!?」

「ベーリュ兄さま凄いわ!」

「っ!?」

……と言う感じで両親と妹は素直に喜んだものだ。呑気なものだったが、弟のフィリップスだけは違った。

「兄さん、それってマズくないのか? 辺境伯の令嬢を訴えたっていうことは、下手したら辺境伯に喧嘩を売ったと受け取られるようなものじゃないか!」

フィリップスだけが危機感を抱いたのだ。今思えば間違った考えではない。辺境伯ともなれば伯爵よりも立場が上。向こうの実家からは睨まれ続けるだろう。だが、私はジンノが後ろ盾になってくれると言っていたから安心しきっていた。この後が大変になるとも知らずに。

取り巻きの立場はとても大変だったな。特に一番の下は誰よりもこき使われることが多いからな。特に厳しい先輩が多かったのもつらかった理由の一つ。何しろ、告発してやった令嬢の兄ザンタ・メイ・ミークが生徒会にいる。俺に対する辺りが強いのも妹のことがあってのことだろう。

思えばこの頃だったのだな、ザンタとの因縁は。あいつがいつまでも妹のことを思っていなければ罪を着せなどしなかったんだがな。……いや、私が悪いのだったな。事実、ザンタは私に陥れられた後は必死に頑張って貴族に戻ったのだ。その手腕は本物なのだろう。うらやましい限りだ。
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