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87.味方?
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エンジは驚いた。冷静さを欠いているせいか、ライトが何を言っているのかすぐに理解できないのだ。しかし、ライトの見解を真剣に聞く気になったようだ。
「おそらく、ウォッチさんはミルナ・ウィン・コキアの味方なんだ」
「!」
「いや、この場合はミルナ・ウィン・コキアがウォッチさんの味方と言ったほうがいいかな。この二人は協力関係にある。だからこそエンジが彼女のことを知る人物だと知って最初は警戒していた。だけどエンジ、君が大切な女性と想っていることを知って安心して僕たちに詳細を伝えようとしてくれている。この事実こそが、ソノーザ家を裏切って僕らに味方してくれているウォッチさんと彼女が協力関係にある証拠。そう思わない?」
「それは……」
「仮にもソノーザ家の側近のウォッチさんが味方だということは、ミルナ・ウィン・コキアの安全はある程度保証されていると思うんだ」
「!」
ここまで言われてエンジも気が付いた。確かに先ほどのウォッチの様子を思い出すとミルナの味方のようにも感じられなくもない。エンジはウォッチの顔を見ると、ウォッチはミルナの味方になった経緯を語りだした。
「ライト様のおっしゃる通りですね。私は最初、彼女の素性に気付いた時は驚いて、別の家の屋敷で働くように勧めようとしたのですが、彼女はソノーザ家のことは関係ないからサエナリアお嬢様のお力になりたいと言ったのです。そんな彼女の熱意に押されて私は可能な限りミルナの後ろ盾になると決めたのです。たとえソノーザ家がいずれ罪を暴かれて取り潰されるとしても」
「やはりか……」
「爺さん……(この人、ミルナさんの素性知ってたのか。俺にはそんなこと一言も言わなかったのに……)」
「…………!」
聞いた三人は各々の反応を見せる。そんな中、ウオッチはエンジに微笑ましく笑っていた。
「それにしてもミルナは貴方のような騎士様に想われていたのですな。これならミルナの今後のことは安心できそうです。エンジ様が味方になってくださるなら大丈夫でしょう」
「……もちろん、彼女の身は俺が、俺の家が預かる。俺の両親も賛成してくれるはずだ。だが貴方の話を聞く限りミルナは、行方不明のサエナリア様の使用人となっているようだが、無事なのか? 一緒にいなくなっているのではないのか?」
「はい、無事ですよ。今も屋敷の中にいます。彼女はサエナリアお嬢様を誰よりも気にかけて力になってくださいました。あれほど侍女としても人としても有能な者は私は知りません。他の者も彼女を見習ってほしかったものですな。もっとも次女のワカナお嬢様が選んだ使用人にそういう気概のある者はいませんでしたが………」
「「「…………」」」
ウォッチの顔は笑っているがどこか寂しそうだった。その様子を見た三人は複雑な気持ちになった。ソノーザ公爵家を叩き潰すのが三人の最終的な目的ではあるが、その家に仕えていた執事の憂う気持ちを考えるとかける言葉が見つからない。
彼女以外は。
「おそらく、ウォッチさんはミルナ・ウィン・コキアの味方なんだ」
「!」
「いや、この場合はミルナ・ウィン・コキアがウォッチさんの味方と言ったほうがいいかな。この二人は協力関係にある。だからこそエンジが彼女のことを知る人物だと知って最初は警戒していた。だけどエンジ、君が大切な女性と想っていることを知って安心して僕たちに詳細を伝えようとしてくれている。この事実こそが、ソノーザ家を裏切って僕らに味方してくれているウォッチさんと彼女が協力関係にある証拠。そう思わない?」
「それは……」
「仮にもソノーザ家の側近のウォッチさんが味方だということは、ミルナ・ウィン・コキアの安全はある程度保証されていると思うんだ」
「!」
ここまで言われてエンジも気が付いた。確かに先ほどのウォッチの様子を思い出すとミルナの味方のようにも感じられなくもない。エンジはウォッチの顔を見ると、ウォッチはミルナの味方になった経緯を語りだした。
「ライト様のおっしゃる通りですね。私は最初、彼女の素性に気付いた時は驚いて、別の家の屋敷で働くように勧めようとしたのですが、彼女はソノーザ家のことは関係ないからサエナリアお嬢様のお力になりたいと言ったのです。そんな彼女の熱意に押されて私は可能な限りミルナの後ろ盾になると決めたのです。たとえソノーザ家がいずれ罪を暴かれて取り潰されるとしても」
「やはりか……」
「爺さん……(この人、ミルナさんの素性知ってたのか。俺にはそんなこと一言も言わなかったのに……)」
「…………!」
聞いた三人は各々の反応を見せる。そんな中、ウオッチはエンジに微笑ましく笑っていた。
「それにしてもミルナは貴方のような騎士様に想われていたのですな。これならミルナの今後のことは安心できそうです。エンジ様が味方になってくださるなら大丈夫でしょう」
「……もちろん、彼女の身は俺が、俺の家が預かる。俺の両親も賛成してくれるはずだ。だが貴方の話を聞く限りミルナは、行方不明のサエナリア様の使用人となっているようだが、無事なのか? 一緒にいなくなっているのではないのか?」
「はい、無事ですよ。今も屋敷の中にいます。彼女はサエナリアお嬢様を誰よりも気にかけて力になってくださいました。あれほど侍女としても人としても有能な者は私は知りません。他の者も彼女を見習ってほしかったものですな。もっとも次女のワカナお嬢様が選んだ使用人にそういう気概のある者はいませんでしたが………」
「「「…………」」」
ウォッチの顔は笑っているがどこか寂しそうだった。その様子を見た三人は複雑な気持ちになった。ソノーザ公爵家を叩き潰すのが三人の最終的な目的ではあるが、その家に仕えていた執事の憂う気持ちを考えるとかける言葉が見つからない。
彼女以外は。
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