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80.友情と愛?
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「(そんな人たちも、僕のことを……!)」
ナシュカは二人が言っていることを理解できた。側近同士のお茶会。そこは曲者同士の情報交換ができる貴重な場だともいえる。そんな茶会でその場にいないナシュカが様々な人から評価をされるということは、それだけ確かな評価をされていることと同じことなのだ。
「(二人の言ってることは間違いない……事実のはずだ……だとしたら……!)」
これだけ言われて、ナシュカは自己評価が間違っていたことに気付いた。
「し、知らなかった……。君たちだけじゃなくて、あの人たちもそんな風に思っていてくれてたなんて……」
「ちっ、知らなくて当然か! お前は周囲の評価なんて本当に気にもしないからな。そんなんだから俺達がどれだけ心配してるのか分かってないんだ!」
「そ、そんなこと、」
「そんなことありますよ! ナシュカ様はいつも人が言いにくいことを恐れもなく口にします。私達が心配しても『いずれ誰かが言わなきゃいけない』とか『必要な言葉だ』とか笑って誤魔化したりはぐらかすんです! 私達の気持ちを理解してない証拠じゃないですか!」
「そ、それは……。っ!(バイラが涙?)」
バイラは遂に涙をこぼした。頬を流れる涙を見てナシュカは言葉が出なくなった。彼女の泣く姿など見たことがないし見たいとも思っていなかった。
「お前が冷酷だとか情がないとか言われるたびに自分が情けなくなるんだよ。お前自身がそれを認めそうになるなんて……悲しいよ。俺達がもっとしっかりしていれば周囲の評価何てって……」
「…………っ!」
「私達は、貴方の側近です……友です……。もっと、頼ってください……もっと周囲を気にした……私達のことも、もっと見てください……」
「…………っ!」
バートはナシュカから離れて壁に顔を向ける。項垂れてそこから先の言葉を止まてしまった。男として涙を見せられないと思ったのかもしれない。バイラは泣いたまましゃべるがうまくまとまっていない。感情的になり過ぎて伝えたい言葉が上手く出なくなったのかもしれない。
そんな二人を言て考えたナシュカは二人の気持ちをやっと理解できた。
「(二人が……バートとバイラがこんなにも僕のことを心配して慕ってくれてたなんて……それに気づかなかったなんて、僕は……僕は……!)」
「ぼ、僕は……なんて馬鹿なんだ……」
やっと言葉を口にしたナシュカはそれと同時に目から涙があふれだしていた。だが、王族の立場などこの時は考えられなかった。いや、気にもしなかっただろう。二人に今の自分の気持ちを伝えたくて仕方がなかったのだ。
「ごめん! 僕は今まで二人の気持ちを全然分かってなかった! 僕はとんでもない馬鹿だった! バート! バイラ! 今まで心配かけて本当にごめん!」
泣いて謝りだしたナシュカにバートは袖で目元尾を拭ってから顔を向けた。その顔は若干赤く、それでいて笑顔だった。
「本当だよ! この馬鹿野郎が! お前ら三兄弟は王族のくせに本当に馬鹿なんだよ! 上の兄は思い込みが激しいし、下の兄は普段から馬鹿だし、弟のお前は人の気持ちに鈍感すぎだ! この馬鹿! 心配ばかりかけやがって!」
「ほ、本当ですよ! ナシュカ様は変なところで考えが足りません! でも、それでも私達はナシュカ様を側近として友として慕っているんです! 愛国心高く情が深いナシュカ様のことを私はずっと好きなんです。愛しています。だからこれからも従っていくんですから!」
バイラは涙を拭わずに笑顔で思いを言いきった。その中には彼女が胸の奥に秘めた思いも含まれていた。
「ううっ、二人ともありがとう。ありがとう!」
ナシュカ、バート、バイラ。三人はしばらくの間、落ち着くまで部屋に居続けた。やっと落ち着いた時には日が暮れかけていた。
ナシュカは二人が言っていることを理解できた。側近同士のお茶会。そこは曲者同士の情報交換ができる貴重な場だともいえる。そんな茶会でその場にいないナシュカが様々な人から評価をされるということは、それだけ確かな評価をされていることと同じことなのだ。
「(二人の言ってることは間違いない……事実のはずだ……だとしたら……!)」
これだけ言われて、ナシュカは自己評価が間違っていたことに気付いた。
「し、知らなかった……。君たちだけじゃなくて、あの人たちもそんな風に思っていてくれてたなんて……」
「ちっ、知らなくて当然か! お前は周囲の評価なんて本当に気にもしないからな。そんなんだから俺達がどれだけ心配してるのか分かってないんだ!」
「そ、そんなこと、」
「そんなことありますよ! ナシュカ様はいつも人が言いにくいことを恐れもなく口にします。私達が心配しても『いずれ誰かが言わなきゃいけない』とか『必要な言葉だ』とか笑って誤魔化したりはぐらかすんです! 私達の気持ちを理解してない証拠じゃないですか!」
「そ、それは……。っ!(バイラが涙?)」
バイラは遂に涙をこぼした。頬を流れる涙を見てナシュカは言葉が出なくなった。彼女の泣く姿など見たことがないし見たいとも思っていなかった。
「お前が冷酷だとか情がないとか言われるたびに自分が情けなくなるんだよ。お前自身がそれを認めそうになるなんて……悲しいよ。俺達がもっとしっかりしていれば周囲の評価何てって……」
「…………っ!」
「私達は、貴方の側近です……友です……。もっと、頼ってください……もっと周囲を気にした……私達のことも、もっと見てください……」
「…………っ!」
バートはナシュカから離れて壁に顔を向ける。項垂れてそこから先の言葉を止まてしまった。男として涙を見せられないと思ったのかもしれない。バイラは泣いたまましゃべるがうまくまとまっていない。感情的になり過ぎて伝えたい言葉が上手く出なくなったのかもしれない。
そんな二人を言て考えたナシュカは二人の気持ちをやっと理解できた。
「(二人が……バートとバイラがこんなにも僕のことを心配して慕ってくれてたなんて……それに気づかなかったなんて、僕は……僕は……!)」
「ぼ、僕は……なんて馬鹿なんだ……」
やっと言葉を口にしたナシュカはそれと同時に目から涙があふれだしていた。だが、王族の立場などこの時は考えられなかった。いや、気にもしなかっただろう。二人に今の自分の気持ちを伝えたくて仕方がなかったのだ。
「ごめん! 僕は今まで二人の気持ちを全然分かってなかった! 僕はとんでもない馬鹿だった! バート! バイラ! 今まで心配かけて本当にごめん!」
泣いて謝りだしたナシュカにバートは袖で目元尾を拭ってから顔を向けた。その顔は若干赤く、それでいて笑顔だった。
「本当だよ! この馬鹿野郎が! お前ら三兄弟は王族のくせに本当に馬鹿なんだよ! 上の兄は思い込みが激しいし、下の兄は普段から馬鹿だし、弟のお前は人の気持ちに鈍感すぎだ! この馬鹿! 心配ばかりかけやがって!」
「ほ、本当ですよ! ナシュカ様は変なところで考えが足りません! でも、それでも私達はナシュカ様を側近として友として慕っているんです! 愛国心高く情が深いナシュカ様のことを私はずっと好きなんです。愛しています。だからこれからも従っていくんですから!」
バイラは涙を拭わずに笑顔で思いを言いきった。その中には彼女が胸の奥に秘めた思いも含まれていた。
「ううっ、二人ともありがとう。ありがとう!」
ナシュカ、バート、バイラ。三人はしばらくの間、落ち着くまで部屋に居続けた。やっと落ち着いた時には日が暮れかけていた。
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