悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

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50.日記〇〇年〇〇月01日

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―フィリップスの日記より―

〇〇年〇〇月01日

もうそろそろ兄さんが学園に入学して3カ月が過ぎた。兄さんは我が屋敷に帰ってきてもつもイライラしている。無理もない。我が家は落ち目の伯爵家だ。学園で家のことについての話になると、周りから落ち目の伯爵家だと言われるらしいのだ。野心家の兄さんとしてはたまったものではないだろう。

「くそっ、父上のせいで! 母上のせいで!」

兄さんは両親がいてもそんなことを口にする。目の前にいる息子にそんなことを言われても両親は反論できない。両親は気が強い人たちではないのだ。いつも静かにしている。私から見ても頼りに無さそうな両親だった。

そんなことを言う私も静観を決め込んでいるのは当たり散らす兄に呆れてしまっているからだ。何を言っても無駄だと思っているからだ。我ながら薄情な男だ。

「ベーリュ兄様、お父様お母様をそんな風に言うものではないわ」

「! イゴナ……」

妹のイゴナは違った。イゴナは荒れ狂う兄さんを心配しているようだが無駄だと分かっていない。だが……。

「ちっ」

兄さんは自室にこもってしまった。流石に女性にあたるのは良くないくらいは分かっているのだろう。

「ベーリュ兄様、待って」

「イゴナ、無駄だ!」

イゴナはまだ兄さんと話をしようとするが、私は無駄だと言い聞かせることにした。あんな兄だなのだから。

「兄さんに何を言っても話しても今はだめだ。あれだけ不機嫌なのだからそっとしておいた方がましだ」

「まあ、何を言うのフィリップス兄さま。ベーリュ兄さまは長男なのだから私達が支えなければいけないのではないの?」

「だからこそだ。長男の重み、いずれ家を継ぐ責任は私達の知れることではないんだよ。かえって兄さんを傷つけるだけだ」

これは嘘だ。本当は深い野心を持っているにもかかわらずうまくいかないから八つ当たりしているだけなのだ。それを両親のせいにしてるだけ。それを今のイゴナが理解するのはまだ早い。今のイゴナは年の割に幼い感じがする。思ったことを何でも口にしてしまうのだ。そんな娘が今の兄さんの話し相手になれば面倒なことになりそうで危うい。

「分かりましたわ。フィリップス兄さまの言う通りにしますわ」

「分かってくれたか」

イゴナは引き下がってくれて本当に良かった。実は私は兄さんが苦手で極力相手にしたくなかったのだ。不相応な野心に囚われた兄さんとは話が合わなくて辟易していたのだ。イゴナにもそれを分かってほしい。双子の妹なんだから。
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