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45.裏方?
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レフトンのサエナリアに対する評価は私情を挟まず、良くも悪くも事実だった。
「そうだな~。他の令嬢に比べて顔は地味で胸も小さいが、すげえ礼儀正しくて頭もよくて、お人好しな面があるなあ。真面目過ぎて損するタイプっていうか……いや、あれは優しすぎるな。婚約者を奪うかもしれねえマリナ嬢にまで仲良くしようとするもんだから噂されちまったのに、気にすることなく交流するのはどうかと思ったもんだよ」
「流石はレフトン兄さんだね、よく人を見てる。若干失礼だけどね(流石に女性の前で言わないでよ?)。カーズ兄さんじゃなくてレフトン兄さんが王太子でもいいんじゃないかな」
「はぁ?」
レフトンは本気で驚いた。ナシュカのほうが自分やカーズよりも王太子、国王に向いていると思っているだけに、ナシュカの言っている意味は理解できても受け入れがたいと思ったのだ。
「冗談よせよ、俺が王太子って器か? 態度に口調、礼儀も雑で成績も中の下程度だぞ。おまけに運動神経だけしか取り柄がないから貴族よりも騎士のほうが性に合ってるぐらいだぞ」
やれやれ、というふうに自分を評価するレフトンだが、ナシュカの評価は違った。
「何言ってるんだよ。そういうふうに見せてるだけでしょ? 処世術や交渉術に長けているのも取り柄じゃないか。普段の態度は僕やカーズ兄さんをいい方に立たせるためにでしょ、違うかな?」
ナシュカはレフトンに笑顔を見せた。ただ、その笑顔は寂しそうでも無邪気でもない。何かを確信していると見せつけるような、笑ってるけど笑っていないような顔だった。それに対して、レフトも同じ顔を見せた。
「さあ、どうかねえ(そっちこそ人をよく見てやがる。油断できねえな。全く裏方は楽じゃねえな)」
実は、ナスカの評価は正しかった。レフトンは王族の身でありながら裏方に徹する道を選んだために、いつも貴族らしからぬ態度を取っているのだ。そして、それでいて多くのコネクションを構築し続けられている。ナシュカの言うような処世術や交渉術に長けているのも事実なのだ。
何故レフトンがそんな道を選んだのかというと、レフトンの心の中には、兄弟による王位継承権を巡る争いを避けたいという思いがある。そのためにも兄と弟の間を取り持つ役目を担う必要があると考えて今の己を形成したのだ。
「……でも、今回は僕達に味方してくれないみたいだね」
「は? どういう意味だ?(おいおい)」
立ち止まったナシュカはレフトンの顔をまっすぐ見る。
「サエナリア様の家出、これは彼女だけの力とは到底思えない。必ず協力者がいたはずだ」
「へえ、他の誰かの力を借りてるってことか?(やはり分かるか)」
「当然さ。いくら有能と言っても限度がある。か弱い令嬢一人の力で貴族の世界から逃げ切れるはずがないじゃないか。必ず誰か強い後ろ盾がいなければ家出にふみきれるはずがない。そして、その後ろ盾はかなりの力を持っていると見ていい」
ナシュカの目が少し鋭くなった。まるで疑いを向けるような目だ。
「そうだな~。他の令嬢に比べて顔は地味で胸も小さいが、すげえ礼儀正しくて頭もよくて、お人好しな面があるなあ。真面目過ぎて損するタイプっていうか……いや、あれは優しすぎるな。婚約者を奪うかもしれねえマリナ嬢にまで仲良くしようとするもんだから噂されちまったのに、気にすることなく交流するのはどうかと思ったもんだよ」
「流石はレフトン兄さんだね、よく人を見てる。若干失礼だけどね(流石に女性の前で言わないでよ?)。カーズ兄さんじゃなくてレフトン兄さんが王太子でもいいんじゃないかな」
「はぁ?」
レフトンは本気で驚いた。ナシュカのほうが自分やカーズよりも王太子、国王に向いていると思っているだけに、ナシュカの言っている意味は理解できても受け入れがたいと思ったのだ。
「冗談よせよ、俺が王太子って器か? 態度に口調、礼儀も雑で成績も中の下程度だぞ。おまけに運動神経だけしか取り柄がないから貴族よりも騎士のほうが性に合ってるぐらいだぞ」
やれやれ、というふうに自分を評価するレフトンだが、ナシュカの評価は違った。
「何言ってるんだよ。そういうふうに見せてるだけでしょ? 処世術や交渉術に長けているのも取り柄じゃないか。普段の態度は僕やカーズ兄さんをいい方に立たせるためにでしょ、違うかな?」
ナシュカはレフトンに笑顔を見せた。ただ、その笑顔は寂しそうでも無邪気でもない。何かを確信していると見せつけるような、笑ってるけど笑っていないような顔だった。それに対して、レフトも同じ顔を見せた。
「さあ、どうかねえ(そっちこそ人をよく見てやがる。油断できねえな。全く裏方は楽じゃねえな)」
実は、ナスカの評価は正しかった。レフトンは王族の身でありながら裏方に徹する道を選んだために、いつも貴族らしからぬ態度を取っているのだ。そして、それでいて多くのコネクションを構築し続けられている。ナシュカの言うような処世術や交渉術に長けているのも事実なのだ。
何故レフトンがそんな道を選んだのかというと、レフトンの心の中には、兄弟による王位継承権を巡る争いを避けたいという思いがある。そのためにも兄と弟の間を取り持つ役目を担う必要があると考えて今の己を形成したのだ。
「……でも、今回は僕達に味方してくれないみたいだね」
「は? どういう意味だ?(おいおい)」
立ち止まったナシュカはレフトンの顔をまっすぐ見る。
「サエナリア様の家出、これは彼女だけの力とは到底思えない。必ず協力者がいたはずだ」
「へえ、他の誰かの力を借りてるってことか?(やはり分かるか)」
「当然さ。いくら有能と言っても限度がある。か弱い令嬢一人の力で貴族の世界から逃げ切れるはずがないじゃないか。必ず誰か強い後ろ盾がいなければ家出にふみきれるはずがない。そして、その後ろ盾はかなりの力を持っていると見ていい」
ナシュカの目が少し鋭くなった。まるで疑いを向けるような目だ。
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