悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu

文字の大きさ
上 下
38 / 149

38.馬鹿者?

しおりを挟む
護衛二人は後ろで何を思っているのかはカーズには分からない。ただ、正面から見ればカーズから目を背けているのは明白だった。国王と王妃を彼らが気の毒で仕方がない。

「陛下! この私にご命令ください! サエナリアを探せと!」

サエナリアの捜索を命じてもらうように声を大きく発するカーズ。だが、国王と王妃の反応は彼の予想を裏切る結果になった。

「この馬鹿……」

「え?」

「こぉんの、馬っ鹿者がぁぁぁぁぁっ!」

「ええ!?」

国王は顔を真っ赤にして叫んだ。もちろん、カーズに対する怒りを込めて。カーズは驚きのあまり目を丸くして姿勢を崩した。

「お前は一体何を言っておるのだ! そんなことを言える立場だと思っているのか!?」

「な、何をおっしゃるのですか!? 言っている意味が、あっ! 私が黙って公爵家に向かったことを咎めているのですね!?」

「それだけではないわ! 最初から全部だ! 一々説明しないと分からんのか!?」

何が何だか分からないという顔でいるカーズに、王妃が呆れながら説明した。やつれた顔で額に手を当てて。

「カーズ、陛下の言葉の通りですよ。サエナリア嬢を蔑ろにして不貞を行ったこと、彼女を泣かして失踪する原因を作ったこと、貴方が言ったように勝手に公爵家に行ったこと、手掛かりだという理由で人の日記を持ち出したこと、全てです。これで分かりましたね」

「なっ!? それは、その………(しまった!)」

カーズは王妃に嫌みのように説明されて、嫌でも理解してしまった。王太子らしからぬ問題行動ばかり起こしていると言われたのだ。カーズとしては否定したくても否定できない。

だが、文句ばかり言われているカーズだが、一つ反論した。このままではサエナリアの捜索をさせてもらえない可能性がある。それだけは避けたかったのだ。

「か、勘違いが一つだけあります! 確かに私はサエナリアを理不尽に罵って泣かせてしまいましたが、そのことが原因で家出に繋がったわけではありません! あれは公爵家の、」

カーズは必死で反論と言い訳を始めるが、国王が途中で遮ってしまった。

「公爵家の家庭に問題があっというのはすでにお前から聞いた。聞いただけでかなり酷かったらしいが、それだけか? サエナリア嬢の心にとどめをさしたのはお前自身だと思わないか?」

「え? とどめとは?」

「その顔を見ると、そんなことも分からないようだな………」

戸惑うカーズの顔に、国王はため息を吐いた。話を進ませるために、王妃はかわいそうな人を見るような目でカーズを見ながらも補足始める。カーズのことを想像以上に頭が悪い子供と思えて仕方がないのだ。母親としてとてもつらく感じている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。

和泉 凪紗
恋愛
 伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。  三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。  久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。 真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

処理中です...