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17.反論?
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「何馬鹿なこと言ってんのよ! こんなに美しい私がふさわしくないですって!? あの女は地味で平凡な顔でしょう、そんな女よりも私のほうが断然いいじゃない! それが分からないというの!?」
自分は美しいと主張するワカナ。学園でその美しさで周りからちやほやされていたようだが、カーズにはそんなものは通用しない。王太子という立場のおかげで、美しい令嬢や婦人と接する機会が多い彼にとっては、こんな茶番に慣れているのだ。ただ、目の前にあるのはカーズの人生の中で一番ひどい茶番かもしれない。
「美しければ誰からも求められるなどと思わないことだ。少なくとも、私はそんな人間ではない。お前は確かに美しい外見をしているがそれだけだろう?」
「なっ!? それだけ!? それが何よ!」
「…………(ダメに決まってるだろ)」
ワカナとカーズの口論を聞いているベーリュだったが、もはや止める気にもならなかった。ワカナが強引な手で絡んで爆弾発言を口にした時点で諦めてしまったのだ。むしろ、ワカナが王太子のカーズに叩きのめされたほうがいいかもしれないとすら考えた。ワカナを少しでも矯正できるかもしれない。期待は薄いが。
「そもそも、見かけだけではどうにもならないほど性格が腐り果てている。中身は醜いと言っていいではないか。思い上がるな!」
「み、醜いですって!? この私が!?」
「…………(よく言ってくださいました)」
ベーリュはうんうんと頷く。ワカナは父親の視点でも性格が壊滅的にひどすぎるのだ。それでもワカナは怯まない。
「なんてこと言うのよ! 女神のように美しいこの私の何が醜いって言うのよ!」
「女神のようにだと? 魔女の間違いだろ」
「ま、魔女ぉ~!?」
目を丸くして驚くワカナに、カーズは容赦なく攻め込む。
「他者に対する情も、貴族に必要な礼節も気品もお前にはない。サエナリアに比べるとな」
「な!? く、比べるって、あの女なんかと……」
カーズには確証があった。サエナリアとマリナの本当の関係を知っているため、サエナリアが情の深い令嬢であると信じられるのだ。目の前の愚か者にはないものだ。
「そもそも父親である公爵に対する態度と言い、実の姉をあの女呼ばわりと言い、肉親に対する情すらも薄いと見える。最悪だな」
「さ、最悪? この私が!?」
「そうだ。それが分からないところを見ると、随分と甘やかされて育ったようだな。私の妻になるというのならそんな生活は一切許されない。王家の者は皆国のために身を粉にして働くんだ。そんなことも分からないのか?」
「はあっ!? 身を粉に? 何よそれ、嫌よ、そんなの知らないわ!」
「…………(そんなことも知らないのか。ネフーミの馬鹿め)」
カーズの言う通り、王家の者に嫁ぐということは必然的に国の政に関わることを意味する。甘やかされたり贅沢できることは絶対にないことは、上級貴族なら分かりそうなものだ。これが下級貴族ならまだしも、仮にも公爵令嬢のワカナが知らないなどあってはならないことだ。ネフーミの偏った愛情がここでも響く。
自分は美しいと主張するワカナ。学園でその美しさで周りからちやほやされていたようだが、カーズにはそんなものは通用しない。王太子という立場のおかげで、美しい令嬢や婦人と接する機会が多い彼にとっては、こんな茶番に慣れているのだ。ただ、目の前にあるのはカーズの人生の中で一番ひどい茶番かもしれない。
「美しければ誰からも求められるなどと思わないことだ。少なくとも、私はそんな人間ではない。お前は確かに美しい外見をしているがそれだけだろう?」
「なっ!? それだけ!? それが何よ!」
「…………(ダメに決まってるだろ)」
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「そもそも、見かけだけではどうにもならないほど性格が腐り果てている。中身は醜いと言っていいではないか。思い上がるな!」
「み、醜いですって!? この私が!?」
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ベーリュはうんうんと頷く。ワカナは父親の視点でも性格が壊滅的にひどすぎるのだ。それでもワカナは怯まない。
「なんてこと言うのよ! 女神のように美しいこの私の何が醜いって言うのよ!」
「女神のようにだと? 魔女の間違いだろ」
「ま、魔女ぉ~!?」
目を丸くして驚くワカナに、カーズは容赦なく攻め込む。
「他者に対する情も、貴族に必要な礼節も気品もお前にはない。サエナリアに比べるとな」
「な!? く、比べるって、あの女なんかと……」
カーズには確証があった。サエナリアとマリナの本当の関係を知っているため、サエナリアが情の深い令嬢であると信じられるのだ。目の前の愚か者にはないものだ。
「そもそも父親である公爵に対する態度と言い、実の姉をあの女呼ばわりと言い、肉親に対する情すらも薄いと見える。最悪だな」
「さ、最悪? この私が!?」
「そうだ。それが分からないところを見ると、随分と甘やかされて育ったようだな。私の妻になるというのならそんな生活は一切許されない。王家の者は皆国のために身を粉にして働くんだ。そんなことも分からないのか?」
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