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9.王太子?
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◇
しばらくして、屋敷の外に出たベーリュは、側近の執事に集めさせた騎士たちの前に出た。
「これだけ集めればよかろう」
騎士たちには、使用人たちに複製させた『サエナリアの似顔絵』を配布して、サエナリアを探す準備はすでに整った。
「これで全員に行き届いたな、よし、騎士たちよ! 我が娘サエナリアが屋敷を出て行った! まだ遠くにまで行っていないはずだ! 手分けして探し出してほしい。まずは……」
ベーリュが命令を下そうとしたその時、馬に乗った騎士がやってきた。
「大変です、旦那様!」
その騎士は、ベーリュの命令を遮って駆け寄ってきた。血相を変えて息切れしている、何やら様子がおかしい。
「どうした、まさかサエナリアが見つかったのか!?」
「そ、そうではありません、じつは、」
騎士の口からは予想だにしない発言がなされた。
「カーズ王太子殿下がお見えになっているのです!」
「何だと!? そんな馬鹿な、王太子殿下が!?」
「間違いありません! まっすぐこっちに向かってきておられます!」
「っ!?」
ベーリュは驚いた。カーズ王太子といえばサエナリアを婚約者にしたウィンドウ王国の第一王子だ。ただ、最近は王子でありながら婚約者を蔑ろにして男爵令嬢に入れ込んでいるという醜聞を聞いていた。気になったベーリュは、噂を確かめるために長女に会いに王都から屋敷に戻ろうとした直前に、サエナリアがいなくなったという知らせが来たのだ。
「何故、こんなタイミングに……」
だからこそ屋敷に戻ってみれば、サエナリアは屋敷で王太子の婚約者でありながら不遇に扱われていたという最悪の事実が判明したというのだ。挙句の果てに、このタイミングで王太子が訪問してくるという事態は起こるとは……。
「ま、マズイ! サエナリアの境遇を知られれば、婚約破棄されるやもしれん! 捜索は一時中止だ! 再開するまで屋敷に待機しろ!」
ベーリュは仕方なく捜索を断念した。再開は王太子が去ってからにすることにした。
「こんな時に何の用だか知らないが、何とかして帰ってもらわなければ」
ベーリュは屋敷に戻って王太子を迎える準備に取り掛かった。
◇
「旦那様、サエナリアお嬢様を探しに行っていたのでは?」
サエナリアの侍女に不思議そうに聞かれたベーリュは吐き捨てるように答えた。
「王太子殿下がこちらにお越しになるのだ。その対応が先だ!」
それだけ言うと、侍女から過ぎ去っていく。その後ろ姿を侮蔑の目で見られていることも知らずに。
しばらくして、屋敷の外に出たベーリュは、側近の執事に集めさせた騎士たちの前に出た。
「これだけ集めればよかろう」
騎士たちには、使用人たちに複製させた『サエナリアの似顔絵』を配布して、サエナリアを探す準備はすでに整った。
「これで全員に行き届いたな、よし、騎士たちよ! 我が娘サエナリアが屋敷を出て行った! まだ遠くにまで行っていないはずだ! 手分けして探し出してほしい。まずは……」
ベーリュが命令を下そうとしたその時、馬に乗った騎士がやってきた。
「大変です、旦那様!」
その騎士は、ベーリュの命令を遮って駆け寄ってきた。血相を変えて息切れしている、何やら様子がおかしい。
「どうした、まさかサエナリアが見つかったのか!?」
「そ、そうではありません、じつは、」
騎士の口からは予想だにしない発言がなされた。
「カーズ王太子殿下がお見えになっているのです!」
「何だと!? そんな馬鹿な、王太子殿下が!?」
「間違いありません! まっすぐこっちに向かってきておられます!」
「っ!?」
ベーリュは驚いた。カーズ王太子といえばサエナリアを婚約者にしたウィンドウ王国の第一王子だ。ただ、最近は王子でありながら婚約者を蔑ろにして男爵令嬢に入れ込んでいるという醜聞を聞いていた。気になったベーリュは、噂を確かめるために長女に会いに王都から屋敷に戻ろうとした直前に、サエナリアがいなくなったという知らせが来たのだ。
「何故、こんなタイミングに……」
だからこそ屋敷に戻ってみれば、サエナリアは屋敷で王太子の婚約者でありながら不遇に扱われていたという最悪の事実が判明したというのだ。挙句の果てに、このタイミングで王太子が訪問してくるという事態は起こるとは……。
「ま、マズイ! サエナリアの境遇を知られれば、婚約破棄されるやもしれん! 捜索は一時中止だ! 再開するまで屋敷に待機しろ!」
ベーリュは仕方なく捜索を断念した。再開は王太子が去ってからにすることにした。
「こんな時に何の用だか知らないが、何とかして帰ってもらわなければ」
ベーリュは屋敷に戻って王太子を迎える準備に取り掛かった。
◇
「旦那様、サエナリアお嬢様を探しに行っていたのでは?」
サエナリアの侍女に不思議そうに聞かれたベーリュは吐き捨てるように答えた。
「王太子殿下がこちらにお越しになるのだ。その対応が先だ!」
それだけ言うと、侍女から過ぎ去っていく。その後ろ姿を侮蔑の目で見られていることも知らずに。
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