上 下
178 / 229

177.ワカマリナ視点/頭お花畑

しおりを挟む
(ワカマリナ視点)


し、信じられませんわ……。


「ゲンダ様が窓から身を乗り出して飛び降り自殺……?」


わたくしは今、ゲンダ様の姉のジンダ・エヌエイという女性にゲンダ様がどうなってしまったのかと聞かされていました。ゲンダ様の、あまりにも悲しい最後を……。


「そうよ……あんたが男誑かして贅沢に遊ぶ悪女だって知って絶望したせいでね! あの子は、私の弟は自ら命を絶ったんだ!」

「そ、そんな……」


な、何ということでしょう……。わたくしのせいだなんて……。ここまで聞かされると否定できませんわ……。


「わ、わたくしの……わたくしが美しくて幸せすぎたせいで……!」

「…………………………は?」

「わたくしのありもしない悪評を聞かされたせいで、ゲンダ様が嫉妬狂ってショックのあまり窓から身を投げるだなんて!」

「はぁっ!?」


ゲンダ様……彼が自ら飛び降りてしまったのは……わたくしの存在が原因……目の前の女性はそう言いましたが、その通りだと思うしかありません……。だってわたくしは女神のごとき美貌を持っておりますもの……。


でも、わたくしの美貌を妬み、悪い噂を流す輩もいたのですね。わたくしに無礼を働く兵士が王宮にいることがあるのだから、そんなことがあってもおかしくありませんわ。妬みで悪事を重ねる者がいる、世も末です。


そして、そんな輩が流した根も葉もない噂を耳にしてそれを鵜呑みにして……いえ、それ以上にゲンダ様がわたくしのことを想いすぎて、愛情に狂い悶え死ぬなんて悲劇が起こったのですね……わたくしを慕うあまりに起こった悲劇!


「嗚呼、美しすぎるのも罪だというのでしょうか!?」

「はあっ!? 何言ってんのあんたは!?」

「わたくしはもっと己の美しさを自覚し気を付けるべきだったのでしょうか!? でも、わたくしを慕ってくれる人の全てに優しくできるほどわたくしは器用ではありませんわ!」

「な、何を言って……!?」


信じられないものを見るような目でわたくしを見つめる女性……ジンダ・エヌエイ様。ゲンダ様のことでわたくしを『逆恨み』してこのような行為に及ぶのは許せませんが、謝ってくれれば許してもいいかもしれません。


そう思いましたのに……


「ふ、ふ……ふっざけんなあああああああああああああ!!」

「ふぇっ!?」


ジンダ様は何故か逆ギレされてしまいました。なんで?


「な、何を言い出すかと思えば! 自分が美しすぎるから死んだ? こんな状況で! 私を目の前にして! 気を付けるとか器用じゃないとか戯れ言をほざくなんて! どんだけ頭お花畑なんだよ! 馬鹿にすんのも大概にしなさいよ!」

「ひっ、ええ………?」


な、何だか訳が分かりませんわ………。ゲンダ様の死を悲しんであげているのに何故怒り出しますの? そ、そんな怖い顔で見ないで………。


「……やれやれ。相変わらず自分のことしか頭にないようだねえ」

「え?」

「今来たの? 遅い!」

「悪かったよ」


あら、奥の方から男の人の声がしてきましたわ。しかも、どこかで聞いた覚えがある声ですわ! しかし、誰でしょう? ゲンダ様かジンダ様の交友関係何て、アクサン様か元側近の方々ぐらいでしたけど……その誰でもないような気がしますわ? 


「久しぶりだね。ワカマリナ」

「……えっ!?」


あ、この人は………!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず
恋愛
 ランファーズ子爵令嬢、エミリー。彼女は我が儘な妹マリオンとマリオンを溺愛する両親の理不尽な怒りを買い、お屋敷から追い出されてしまいました。  自分の思い通りになってマリオンは喜び、両親はそんなマリオンを見て嬉しそうにしていましたが――。  マリオン達は、まだ知りません。  それから僅か1か月後に、エミリーの追放を激しく後悔する羽目になることを。お屋敷に戻って来て欲しいと、エミリーに懇願しないといけなくなってしまうことを――。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます

夜桜
恋愛
 共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。  一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。

親からの寵愛を受けて育った妹は、私の婚約者が欲しいみたいですよ?

久遠りも
恋愛
妹は、私と違って親に溺愛されて育った。 そのせいで、妹は我儘で...何でも私のものを取るようになった。 私は大人になり、妹とは縁を切って、婚約者と幸せに暮らしていた。 だが、久しぶりに会った妹が、次は私の婚約者が欲しい!と言い出して...? ※誤字脱字等あればご指摘ください。 ※ゆるゆる設定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

私が王女だと婚約者は知らない ~平民の子供だと勘違いして妹を選んでももう遅い。私は公爵様に溺愛されます~

上下左右
恋愛
 クレアの婚約者であるルインは、彼女の妹と不自然なほどに仲が良かった。  疑いを持ったクレアが彼の部屋を訪れると、二人の逢瀬の現場を目撃する。だが彼は「平民の血を引く貴様のことが嫌いだった!」と居直った上に、婚約の破棄を宣言する。  絶望するクレアに、救いの手を差し伸べたのは、ギルフォード公爵だった。彼はクレアを溺愛しており、不義理を働いたルインを許せないと報復を誓う。  一方のルインは、後に彼女が王族だと知る。妹を捨ててでも、なんとか復縁しようと縋るが、後悔してももう遅い。クレアはその要求を冷たく跳ねのけるのだった。  本物語は平民の子だと誤解されて婚約破棄された令嬢が、公爵に溺愛され、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である

婚約破棄、爵位剥奪、国外追放されましたのでちょっと仕返しします

あおい
恋愛
婚約破棄からの爵位剥奪に国外追放! 初代当主は本物の天使! 天使の加護を受けてる私のおかげでこの国は安泰だったのに、その私と一族を追い出すとは何事ですか!? 身に覚えのない理由で婚約破棄に爵位剥奪に国外追放してきた第2王子に天使の加護でちょっと仕返しをしましょう!

処理中です...