上 下
100 / 229

100.国王視点/倒れて……

しおりを挟む
(国王視点)


バカ息子の尻拭いのためとはいえ、王宮のパーティーでかつてない窮地に立たされてしまうとは親としてなんとも情けない話だ。だが、私はアクサンの親としても国王としても、責任を取らなければならない。たとえ頭と胃がいたくても倒れそうになってもだ。


……すでに王妃が倒れてしまっているしな。我妻にして王妃システア・フーシャはアクサンのせいで体調を崩してしまったのだ。きっかけはエリザ嬢との婚約破棄の件だ。我妻はエリザ嬢のことを可愛がっていた節があった。もとから女の子が欲しいとも思っていたから、アクサンが不貞を働いて婚約破棄になってしまったと聞いて相当落ち込んだものだ。


追い打ちをかけるようにアクサンが勝手に新しい婚約者を選んだことも体調を崩す要因となった。ワカマリナ・イカゾノス、彼女のことを調べてみてとんでもない最低な女性だと発覚した途端、システアはその場で倒れてしまったのだ。そして……精神的負担ということで寝込むことに。彼女の分まで私がしっかりしなければならない。


今のシステアはこのパーティー会場から離れた部屋で安静にしている。そしてそれ以上にアクサンの私室から離れてもいる。これはアクサンには『王妃の状態』を意図的に知らせていないためだ。あのアクサンのことだから万が一にも見舞いを理由に馬鹿なことをしでかす可能性も捨てきれないからだ。もはや、アクサンの王宮内での信頼は全く無いと言ってもいい。何しろ、側近の者達でさえ、見限っているようだしな。……そういう意味ではシステアもアクサンの未来は真っ暗だと理解しているのだろうな。今も体が優れないのはアクサンの身を案じてのことか……。


そうなると、アクサンを罰するときは大変だろうな。私はもう心を鬼にすると決めているが、あの優しい王妃のシステアは……考えるまでもないか。だがそれでも、私は国王としてしかるべき処分を息子にしなければならん。それは王妃という立場のシステアでも理解して覚悟を決めなけらばなるまい。……いつでも医者がすぐに行動できるように準備しておかなければな。


それから、アクサンの代わりに新たな王太子を決めねばならないな。幸い、アクサンには年の離れた幼い弟がいるから今からアクサンのようにならないように教育を施さなくてはな。


……いや、今は後のことよりもパーティーをせめてまともに終わらせることだけを考えよう。そして、不快の思いをかけてしまった多くの招待客の方々にしっかり謝罪するのだ。


何度も思ったが、このパーティーは仕様も料理も適当すぎるのだ。先月の使いまわしが多いし、今月のテーマに沿っていないし、使用人の数も足りないではないか。アクサンは取り巻きに全て任せたらしいが彼らに頼りすぎではないのか? 何故、自分が率先してやらないのだ……いや、あいつが加わったらもっと酷いことになりかねんか。そう言うところでも愚行が過ぎるしな。


正直、もう私も倒れてしまいたいところだが、それはパーティーが終わってからでいい。いや、そんなわけにはいかないが、そう思わずにはいられない。何だか、嫌な予感がするのだ。アクサンは逃げたが、逃げた先がまだ特定できていない。まさかとは思うが、まだ何かするような気がしてならない。


アクサンよ。どうか父をこれ以上苦しめないでくれ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

【完結】婚約破棄された傷もの令嬢は王太子の側妃になりました

金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のロゼッタは王立学園の卒業パーティーで婚約者から婚約破棄を言い渡された。どうやら真実の愛を見つけたらしい。 しかし、相手の男爵令嬢を虐めたと身に覚えのない罪を着せられた。 婚約者の事は別に好きじゃないから婚約破棄はありがたいけど冤罪は嫌だわ。 結婚もなくなり、退屈していたところに王家から王太子の側妃にと打診が来た。 側妃なら気楽かも? と思い了承したが、気楽どころか、大変な毎日が待っていた。 *ご都合主義のファンタジーです。見守ってくださいませ*

人でなし主と、じゃじゃ馬令嬢

たつみ
恋愛
公爵令嬢のサマンサは、間近に迫った婚約を破談にすべく、ある屋敷を訪れる。 話してみると、その屋敷の主は、思っていたよりも、冷酷な人でなしだった。 だが、彼女に選ぶ道はなく、彼と「特別な客人(愛妾)」になる契約を結ぶことに。 彼女の差し出せる対価は「彼の駒となる」彼女自身の存在のみ。 それを伝えた彼女に、彼が言った。 「それは、ベッドでのことも含まれているのかな?」 ◇◇◇◇◇ 設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 それを踏まえて、お読み頂ければと思います、なにとぞ。 R-Kingdom_5 他サイトでも掲載しています。

妹に裏切られて稀代の悪女にされてしまったので、聖女ですけれどこの国から逃げます

辺野夏子
恋愛
聖女アリアが50年に及ぶ世界樹の封印から目覚めると、自分を裏切った妹・シェミナが国の実権を握り聖女としてふるまっており、「アリアこそが聖女シェミナを襲い、自ら封印された愚かな女である」という正反対の内容が真実とされていた。聖女の力を狙うシェミナと親族によって王子の婚約者にしたてあげられ、さらに搾取されようとするアリアはかつての恋人・エディアスの息子だと名乗る神官アルフォンスの助けを得て、腐敗した国からの脱出を試みる。 姉妹格差によりすべてを奪われて時の流れに置き去りにされた主人公が、新しい人生をやり直しておさまるところにおさまる話です。 「小説家になろう」では完結しています。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。

青空一夏
恋愛
フランソワーズは母親から理不尽な扱いを受けていた。それは美しいのに醜いと言われ続けられたこと。学園にも通わせてもらえなかったこと。妹ベッツィーを常に優先され、差別されたことだ。 父親はそれを黙認し、兄は人懐っこいベッツィーを可愛がる。フランソワーズは完全に、自分には価値がないと思い込んだ。 妹に婚約者ができた。それは公爵家の嫡男マクシミリアンで、ダイヤモンド鉱山を所有する大金持ちだった。彼は美しい少年だったが、病の為に目はくぼみガリガリに痩せ見る影もない。 そんなマクシミリアンを疎んじたベッツィーはフランソワーズに提案した。 「ねぇ、お姉様! お姉様にはちょうど婚約者がいないわね? マクシミリアン様を譲ってあげるわよ。ね、妹からのプレゼントよ。受け取ってちょうだい」 これはすっかり自信をなくした、実はとても綺麗なヒロインが幸せを掴む物語。異世界。現代的表現ありの現代的商品や機器などでてくる場合あり。貴族世界。全く史実に沿った物語ではありません。 6/23 5:56時点でhot1位になりました。お読みくださった方々のお陰です。ありがとうございます。✨

偽りの婚約のつもりが愛されていました

ユユ
恋愛
可憐な妹に何度も婚約者を奪われて生きてきた。 だけど私は子爵家の跡継ぎ。 騒ぎ立てることはしなかった。 子爵家の仕事を手伝い、婚約者を持つ令嬢として 慎ましく振る舞ってきた。 五人目の婚約者と妹は体を重ねた。 妹は身籠った。 父は跡継ぎと婚約相手を妹に変えて 私を今更嫁に出すと言った。 全てを奪われた私はもう我慢を止めた。 * 作り話です。 * 短めの話にするつもりです * 暇つぶしにどうぞ

継母と妹に家を乗っ取られたので、魔法都市で新しい人生始めます!

桜あげは
恋愛
父の後妻と腹違いの妹のせいで、肩身の狭い生活を強いられているアメリー。 美人の妹に惚れている婚約者からも、早々に婚約破棄を宣言されてしまう。 そんな中、国で一番の魔法学校から妹にスカウトが来た。彼女には特別な魔法の才能があるのだとか。 妹を心配した周囲の命令で、魔法に無縁のアメリーまで学校へ裏口入学させられる。 後ろめたい、お金がない、才能もない三重苦。 だが、学校の魔力測定で、アメリーの中に眠っていた膨大な量の魔力が目覚め……!?   不思議な魔法都市で、新しい仲間と新しい人生を始めます! チートな力を持て余しつつ、マイペースな魔法都市スローライフ♪ 書籍になりました。好評発売中です♪

処理中です...