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100.国王視点/倒れて……
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(国王視点)
バカ息子の尻拭いのためとはいえ、王宮のパーティーでかつてない窮地に立たされてしまうとは親としてなんとも情けない話だ。だが、私はアクサンの親としても国王としても、責任を取らなければならない。たとえ頭と胃がいたくても倒れそうになってもだ。
……すでに王妃が倒れてしまっているしな。我妻にして王妃システア・フーシャはアクサンのせいで体調を崩してしまったのだ。きっかけはエリザ嬢との婚約破棄の件だ。我妻はエリザ嬢のことを可愛がっていた節があった。もとから女の子が欲しいとも思っていたから、アクサンが不貞を働いて婚約破棄になってしまったと聞いて相当落ち込んだものだ。
追い打ちをかけるようにアクサンが勝手に新しい婚約者を選んだことも体調を崩す要因となった。ワカマリナ・イカゾノス、彼女のことを調べてみてとんでもない最低な女性だと発覚した途端、システアはその場で倒れてしまったのだ。そして……精神的負担ということで寝込むことに。彼女の分まで私がしっかりしなければならない。
今のシステアはこのパーティー会場から離れた部屋で安静にしている。そしてそれ以上にアクサンの私室から離れてもいる。これはアクサンには『王妃の状態』を意図的に知らせていないためだ。あのアクサンのことだから万が一にも見舞いを理由に馬鹿なことをしでかす可能性も捨てきれないからだ。もはや、アクサンの王宮内での信頼は全く無いと言ってもいい。何しろ、側近の者達でさえ、見限っているようだしな。……そういう意味ではシステアもアクサンの未来は真っ暗だと理解しているのだろうな。今も体が優れないのはアクサンの身を案じてのことか……。
そうなると、アクサンを罰するときは大変だろうな。私はもう心を鬼にすると決めているが、あの優しい王妃のシステアは……考えるまでもないか。だがそれでも、私は国王としてしかるべき処分を息子にしなければならん。それは王妃という立場のシステアでも理解して覚悟を決めなけらばなるまい。……いつでも医者がすぐに行動できるように準備しておかなければな。
それから、アクサンの代わりに新たな王太子を決めねばならないな。幸い、アクサンには年の離れた幼い弟がいるから今からアクサンのようにならないように教育を施さなくてはな。
……いや、今は後のことよりもパーティーをせめてまともに終わらせることだけを考えよう。そして、不快の思いをかけてしまった多くの招待客の方々にしっかり謝罪するのだ。
何度も思ったが、このパーティーは仕様も料理も適当すぎるのだ。先月の使いまわしが多いし、今月のテーマに沿っていないし、使用人の数も足りないではないか。アクサンは取り巻きに全て任せたらしいが彼らに頼りすぎではないのか? 何故、自分が率先してやらないのだ……いや、あいつが加わったらもっと酷いことになりかねんか。そう言うところでも愚行が過ぎるしな。
正直、もう私も倒れてしまいたいところだが、それはパーティーが終わってからでいい。いや、そんなわけにはいかないが、そう思わずにはいられない。何だか、嫌な予感がするのだ。アクサンは逃げたが、逃げた先がまだ特定できていない。まさかとは思うが、まだ何かするような気がしてならない。
アクサンよ。どうか父をこれ以上苦しめないでくれ。
バカ息子の尻拭いのためとはいえ、王宮のパーティーでかつてない窮地に立たされてしまうとは親としてなんとも情けない話だ。だが、私はアクサンの親としても国王としても、責任を取らなければならない。たとえ頭と胃がいたくても倒れそうになってもだ。
……すでに王妃が倒れてしまっているしな。我妻にして王妃システア・フーシャはアクサンのせいで体調を崩してしまったのだ。きっかけはエリザ嬢との婚約破棄の件だ。我妻はエリザ嬢のことを可愛がっていた節があった。もとから女の子が欲しいとも思っていたから、アクサンが不貞を働いて婚約破棄になってしまったと聞いて相当落ち込んだものだ。
追い打ちをかけるようにアクサンが勝手に新しい婚約者を選んだことも体調を崩す要因となった。ワカマリナ・イカゾノス、彼女のことを調べてみてとんでもない最低な女性だと発覚した途端、システアはその場で倒れてしまったのだ。そして……精神的負担ということで寝込むことに。彼女の分まで私がしっかりしなければならない。
今のシステアはこのパーティー会場から離れた部屋で安静にしている。そしてそれ以上にアクサンの私室から離れてもいる。これはアクサンには『王妃の状態』を意図的に知らせていないためだ。あのアクサンのことだから万が一にも見舞いを理由に馬鹿なことをしでかす可能性も捨てきれないからだ。もはや、アクサンの王宮内での信頼は全く無いと言ってもいい。何しろ、側近の者達でさえ、見限っているようだしな。……そういう意味ではシステアもアクサンの未来は真っ暗だと理解しているのだろうな。今も体が優れないのはアクサンの身を案じてのことか……。
そうなると、アクサンを罰するときは大変だろうな。私はもう心を鬼にすると決めているが、あの優しい王妃のシステアは……考えるまでもないか。だがそれでも、私は国王としてしかるべき処分を息子にしなければならん。それは王妃という立場のシステアでも理解して覚悟を決めなけらばなるまい。……いつでも医者がすぐに行動できるように準備しておかなければな。
それから、アクサンの代わりに新たな王太子を決めねばならないな。幸い、アクサンには年の離れた幼い弟がいるから今からアクサンのようにならないように教育を施さなくてはな。
……いや、今は後のことよりもパーティーをせめてまともに終わらせることだけを考えよう。そして、不快の思いをかけてしまった多くの招待客の方々にしっかり謝罪するのだ。
何度も思ったが、このパーティーは仕様も料理も適当すぎるのだ。先月の使いまわしが多いし、今月のテーマに沿っていないし、使用人の数も足りないではないか。アクサンは取り巻きに全て任せたらしいが彼らに頼りすぎではないのか? 何故、自分が率先してやらないのだ……いや、あいつが加わったらもっと酷いことになりかねんか。そう言うところでも愚行が過ぎるしな。
正直、もう私も倒れてしまいたいところだが、それはパーティーが終わってからでいい。いや、そんなわけにはいかないが、そう思わずにはいられない。何だか、嫌な予感がするのだ。アクサンは逃げたが、逃げた先がまだ特定できていない。まさかとは思うが、まだ何かするような気がしてならない。
アクサンよ。どうか父をこれ以上苦しめないでくれ。
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