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90.アクサン視点/助けて
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(アクサン視点)
そ、そんな……何故、何で……何でこいつがここに居るんだ……?
「お、お前は、ジノン・ベスクイン公爵!」
「お久しぶりですな、殿下。我が娘の元婚約者である貴方が私を覚えていてくれたことは喜ばしいことですな」
「あ、ああ……当然だろ。おま、貴殿は我が国の三大公爵家の当主なんだし……」
ヤバいヤバいヤバいヤバい! なんということだ! よりにもよってこいつが現れるなんて最悪だ!
目の前にいるこの男はジノン・ベスクイン公爵。我が国の三大公爵家に連なる者であり、融通が聞かない頑固者で頭が固い面倒な男! しかも長身で筋肉質だから迫力があるから恐ろしくもあるんだ! しかも、あの父上すらも頭が上がらない時があるくらいの切れ者とも言われているから恐ろしい!
ただ、私がこの男を恐れる理由は他にもあるんだ……。
「三大公爵家とは、大げさな呼び方ですな。ここにおられます殿下はその三大公爵家の娘との婚約を白紙にしてしまわれたのですから」
「うぐ……」
……そうなのだ。以前の婚約者のエリザはこの男の愛娘。つまり、こいつは舅になるはずでもあったのだ。だが、私がワカマリナに目移りしたことでそうはならなかったが、こいつにとって私は『愛する娘を振った男』ということになるんだ……。本当に会いたくなかった!
「こ、公爵……私は急用を思い出した。せっかくだが、」
「急用とは、新しく婚約者を選ぶことですかな?」
「ッ!?」
ひいいっ!? 背筋が凍るような感覚が!? こ、殺されるのか!? 父上、助けて!
「もしそうであらせられるならば、私は殿下を救って差し上げねばなりません」
「な、何……?」
……は? 救う? 救うって言ったのか?
「殿下は我が娘との政略結婚を求めず、俗にいう『真実の愛』を求められました。ワカマリナ嬢との愛を選んだのです。国王陛下が決められた婚約を白紙にしてまで真実の愛を貫いた殿下の行いは称賛に値することでしょう」
「??」
しょ、称賛だって? 何でそんなことを?
「しかし、今殿下はこの一か月で王族の責務に苦しみ、正常な判断ができなくなってしまわれました。それはワカマリナ嬢も同じことです。それゆえにお二方はすれ違い、互いに不貞に走りかねないほど追い詰められてしまわれました。あれだけワカマリナ嬢を愛した殿下が、その姉君のアキエーサ嬢を求める行為こそがその証拠です」
「……え?」
いや、それは……責務に苦しみ、って言うか、このままだと私は王族から除籍されちゃうからで……すれ違いも何も、まともな意思疎通すらできないんだけど……。
「そんな殿下を私はお救いに来たのです。貴方の目を覚まし、ワカマリナ嬢とのすれ違いを解き、真実の愛を貫く姿勢を我が国の民、そして御父上であられる国王陛下に示していただきたいのです」
「っ!?」
はぁ!? 今更になってワカマリナと真実の愛を貫けだと? おい待てよ! 違う、断じて違う! こいつ本気でそんなこと思ってないだろ! 絶対虚仮にしてんだろ! これを機会に私を失墜させるつもりじゃないか!
このままこの男と話をしてはいけない。私は遂にその場から走り去ろうと思ったが、背中を見せたのがまずかったようだ。思いっきり首根っこを掴まれてしまった。
……いやいやいや、なんてことしてくれるんだよ、この筋肉ダルマが! 痛い! やめろ! 離せ!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
だ、誰か、助けてくれーっ!
そ、そんな……何故、何で……何でこいつがここに居るんだ……?
「お、お前は、ジノン・ベスクイン公爵!」
「お久しぶりですな、殿下。我が娘の元婚約者である貴方が私を覚えていてくれたことは喜ばしいことですな」
「あ、ああ……当然だろ。おま、貴殿は我が国の三大公爵家の当主なんだし……」
ヤバいヤバいヤバいヤバい! なんということだ! よりにもよってこいつが現れるなんて最悪だ!
目の前にいるこの男はジノン・ベスクイン公爵。我が国の三大公爵家に連なる者であり、融通が聞かない頑固者で頭が固い面倒な男! しかも長身で筋肉質だから迫力があるから恐ろしくもあるんだ! しかも、あの父上すらも頭が上がらない時があるくらいの切れ者とも言われているから恐ろしい!
ただ、私がこの男を恐れる理由は他にもあるんだ……。
「三大公爵家とは、大げさな呼び方ですな。ここにおられます殿下はその三大公爵家の娘との婚約を白紙にしてしまわれたのですから」
「うぐ……」
……そうなのだ。以前の婚約者のエリザはこの男の愛娘。つまり、こいつは舅になるはずでもあったのだ。だが、私がワカマリナに目移りしたことでそうはならなかったが、こいつにとって私は『愛する娘を振った男』ということになるんだ……。本当に会いたくなかった!
「こ、公爵……私は急用を思い出した。せっかくだが、」
「急用とは、新しく婚約者を選ぶことですかな?」
「ッ!?」
ひいいっ!? 背筋が凍るような感覚が!? こ、殺されるのか!? 父上、助けて!
「もしそうであらせられるならば、私は殿下を救って差し上げねばなりません」
「な、何……?」
……は? 救う? 救うって言ったのか?
「殿下は我が娘との政略結婚を求めず、俗にいう『真実の愛』を求められました。ワカマリナ嬢との愛を選んだのです。国王陛下が決められた婚約を白紙にしてまで真実の愛を貫いた殿下の行いは称賛に値することでしょう」
「??」
しょ、称賛だって? 何でそんなことを?
「しかし、今殿下はこの一か月で王族の責務に苦しみ、正常な判断ができなくなってしまわれました。それはワカマリナ嬢も同じことです。それゆえにお二方はすれ違い、互いに不貞に走りかねないほど追い詰められてしまわれました。あれだけワカマリナ嬢を愛した殿下が、その姉君のアキエーサ嬢を求める行為こそがその証拠です」
「……え?」
いや、それは……責務に苦しみ、って言うか、このままだと私は王族から除籍されちゃうからで……すれ違いも何も、まともな意思疎通すらできないんだけど……。
「そんな殿下を私はお救いに来たのです。貴方の目を覚まし、ワカマリナ嬢とのすれ違いを解き、真実の愛を貫く姿勢を我が国の民、そして御父上であられる国王陛下に示していただきたいのです」
「っ!?」
はぁ!? 今更になってワカマリナと真実の愛を貫けだと? おい待てよ! 違う、断じて違う! こいつ本気でそんなこと思ってないだろ! 絶対虚仮にしてんだろ! これを機会に私を失墜させるつもりじゃないか!
このままこの男と話をしてはいけない。私は遂にその場から走り去ろうと思ったが、背中を見せたのがまずかったようだ。思いっきり首根っこを掴まれてしまった。
……いやいやいや、なんてことしてくれるんだよ、この筋肉ダルマが! 痛い! やめろ! 離せ!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
だ、誰か、助けてくれーっ!
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