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86.アクサン視点/今更
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(アクサン視点)
パーティー会場から走り去った私は、疲れてきたところで立ち止まって休んでいた。
「はぁ、はぁ……くそっ! パーティーなんかもう滅茶苦茶だ!」
父上にパーティーを成功させろと言われたが、もう失敗だと決まったも同然だ。パーティーの不出来な仕様、ワカマリナの暴走、そして……私の醜態、これで成功させろという方が無理だ。
「それもこれも……パーティーの準備を任せてやったあいつらとワカマリナが悪い!」
パーティーの使用を先月のものとそのまま同じものにするなんて適当すぎるだろうが! せっかく父上に内緒で先月の二倍の費用を使ったのに、無駄じゃないか! そのうち半分は私のお小遣いにしてしたけどな! 無能な部下を持つと苦労するのは主である私だ! あいつら皆クビにしてやる!
「特に……ワカマリナも酷すぎる!」
この一か月の間で金を使い続けてぶくぶく太りやがって! せっかく恵まれた容姿をしていたのに自分で台無しにするなよな! それ以上に、信じられないくらい散財しやがったから周りから嫌そうな目で見られるしまつ! 正直、婚約して二週間くらいで愛想尽きかけてたが、もううんざりだ! 不敬罪で処罰してやる。
「ああくそ! どうすればいいんだ!」
父上は失敗したと判断するに決まっている。このままでは私は王族から除籍……そんなの嫌だ! 婚約者というのは、見た目だけでなく性格も重視しなければならなかったわけか。ワカマリナとの婚約は本当に失敗したな。あの女との婚約は無理だ。誰が何と言おうともだ。
……そういう意味では、前の婚約者のエリザはまともだったのかもしれない。性格は厳しくて口うるさかったけど、美人だったし金遣いは荒くなど無かった。それに公爵令嬢だから身分もいい。厳しいところを我慢すれば理想的な婚約者だったのかもしれない。そう思うと惜しいことをしたなぁと思ってしまう。……今更だけどな。
だがしかし、エリザが婚約者に戻れば父上による私の王族除籍は免れるかもしれない。私が口説けばもしかしたらあるいは……いや、無いか。最後に見たエリザは本当に私との婚約が無くなって嬉しそうにしていた。今更、婚約し治してくれと言っても断られるかも。
「……やはり、アキエーサしかないな」
そうだ、アキエーサを口説くしかない。彼女はあのダブール商会の会長だという。年若い貴族令嬢が革新的な商品を売る商会の会長だと聞いて半信半疑であったが、彼女の自己紹介や商会に関する演説を聞いてみると、あのエリザにも勝るとも劣らないような不思議な魅力を感じざるを得なかった。
見た目しか取り柄がなかったワカマリナにはない魅力。それに心を奪われた私はその場で求婚してしまったのだ。ただ、今思えばよくあんな状況で求婚なんかしたものだと反省する。しかも、もう婚約者がいると言われて断られてしまったから悔しさもある。
……だが、婚約者がいるからと言って、王太子である私の求婚を断るなど許されるはずがないじゃないか。元からいる婚約者なんて捨てればいいじゃないか。私のような美男子で優秀な王子を選ぶべきじゃないか。そう思うと、やはりアキエーサは許せん。
しかし、冷静になった私は寛容だ。もう一度求婚してやろうじゃないか。今度は、ロマンチックさを出すために二人になれる時と場所を選んでな。もう今更後戻りできないし。
パーティー会場から走り去った私は、疲れてきたところで立ち止まって休んでいた。
「はぁ、はぁ……くそっ! パーティーなんかもう滅茶苦茶だ!」
父上にパーティーを成功させろと言われたが、もう失敗だと決まったも同然だ。パーティーの不出来な仕様、ワカマリナの暴走、そして……私の醜態、これで成功させろという方が無理だ。
「それもこれも……パーティーの準備を任せてやったあいつらとワカマリナが悪い!」
パーティーの使用を先月のものとそのまま同じものにするなんて適当すぎるだろうが! せっかく父上に内緒で先月の二倍の費用を使ったのに、無駄じゃないか! そのうち半分は私のお小遣いにしてしたけどな! 無能な部下を持つと苦労するのは主である私だ! あいつら皆クビにしてやる!
「特に……ワカマリナも酷すぎる!」
この一か月の間で金を使い続けてぶくぶく太りやがって! せっかく恵まれた容姿をしていたのに自分で台無しにするなよな! それ以上に、信じられないくらい散財しやがったから周りから嫌そうな目で見られるしまつ! 正直、婚約して二週間くらいで愛想尽きかけてたが、もううんざりだ! 不敬罪で処罰してやる。
「ああくそ! どうすればいいんだ!」
父上は失敗したと判断するに決まっている。このままでは私は王族から除籍……そんなの嫌だ! 婚約者というのは、見た目だけでなく性格も重視しなければならなかったわけか。ワカマリナとの婚約は本当に失敗したな。あの女との婚約は無理だ。誰が何と言おうともだ。
……そういう意味では、前の婚約者のエリザはまともだったのかもしれない。性格は厳しくて口うるさかったけど、美人だったし金遣いは荒くなど無かった。それに公爵令嬢だから身分もいい。厳しいところを我慢すれば理想的な婚約者だったのかもしれない。そう思うと惜しいことをしたなぁと思ってしまう。……今更だけどな。
だがしかし、エリザが婚約者に戻れば父上による私の王族除籍は免れるかもしれない。私が口説けばもしかしたらあるいは……いや、無いか。最後に見たエリザは本当に私との婚約が無くなって嬉しそうにしていた。今更、婚約し治してくれと言っても断られるかも。
「……やはり、アキエーサしかないな」
そうだ、アキエーサを口説くしかない。彼女はあのダブール商会の会長だという。年若い貴族令嬢が革新的な商品を売る商会の会長だと聞いて半信半疑であったが、彼女の自己紹介や商会に関する演説を聞いてみると、あのエリザにも勝るとも劣らないような不思議な魅力を感じざるを得なかった。
見た目しか取り柄がなかったワカマリナにはない魅力。それに心を奪われた私はその場で求婚してしまったのだ。ただ、今思えばよくあんな状況で求婚なんかしたものだと反省する。しかも、もう婚約者がいると言われて断られてしまったから悔しさもある。
……だが、婚約者がいるからと言って、王太子である私の求婚を断るなど許されるはずがないじゃないか。元からいる婚約者なんて捨てればいいじゃないか。私のような美男子で優秀な王子を選ぶべきじゃないか。そう思うと、やはりアキエーサは許せん。
しかし、冷静になった私は寛容だ。もう一度求婚してやろうじゃないか。今度は、ロマンチックさを出すために二人になれる時と場所を選んでな。もう今更後戻りできないし。
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