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37.リーベエ視点/前妻
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そして私は、屋敷の外で行動する過程で、当時没落貴族の娘だったフミーナと出会ったのだ。出会った場所は……忘れたが、あの頃のフミーナは美しく、人を立てる性格だった。何よりも貴族の、それも当主の立場に苦悩する私を何でも肯定してくれて気が合う仲だったな。気が付いた時には既に恋人関係にまで発展していたのだが、私は妻帯者だからフミーナは愛人にということになった。ただ、フミーナを愛人にしたことはシュラウラや兄上等には内緒にしていた。知られれば後で面倒になることは確定だったからな。うるさそうだし。
フミーナを愛人にした後も、シュラウラとの夫婦関係は良好とはならず大きく変わらなかった。そんな関係なのに離縁することができなかったのは、シュラウラがイカゾノス家を後世に残す使命があるためであり、私は伯爵のままでい続けたいからだ。シュラウラと私はすでに結婚適齢期を過ぎているため、もし離縁でもしたら互いに再婚は難しい。私も婿養子でイカゾノス家に入ってきたため、離縁すれば伯爵の立場を失いかねなかったのだ。せっかく成り上がったのに離縁することで失うのは嫌だ。だからこそ、私達の夫婦関係は続いた。
そして、アキエーサが産まれた。待望の我が子の誕生だ。この頃にはシュラウラの両親は他界していたため、待ちに待った後継ぎだと言ってシュラウラは泣いて喜んだものだ。その時の私も嬉しかったことも覚えている。これで後継ぎのことで思い悩まずに済むんだとホッとしたものだ。アキエーサは当然、私とシュラウラと同じ髪の色と目の色をしていた。この頃のアキエーサは可愛かったと思っている。
アキエーサが産まれた翌年、フミーナがワカマリナを産んだ。フミーナは私と自分との間に生まれた娘だと言っていて、それを私も信じた。思い合って恋人同士になったのだから信じるのは当然だ。ワカマリナはフミーナそっくりの顔立ちと同じ髪の色と目の色をしていた。赤ん坊の時のワカマリナを抱き上げた時、アキエーサよりも愛おしく思ったことを昨日のことのように覚えている。
その後の私の生活は、順調だった……小言のうるさい妻のことで不満があってもだ。アキエーサを夫婦で育てる過程でも教育等は全てシュラウラに任せていた。そのおかげでアキエーサは可愛げが無くなったとはいえ、シュラウラのようなしっかりした貴族令嬢に育っていった。貴族の仕事のことも、シュラウラが金の管理をしてくれたおかげで余計な出費もなく、領地経営もシュラウラが領民の声をよく聞いていたかいもあって大きな問題は起こらなかった。
……何だか、シュラウラに任せてばかりのようだが、私もしっかり仕事はしていた……それは、間違いないはずだ。社交の場にはしっかり顔を出してきたし、仲のいい貴族に誘われれば会いに行ったり、気配りを怠らなかった。ただ、兄ルカスにだけは近寄らなかったけどな。だからこそ、イカゾノス家は何事も大きな問題なく伯爵家として恥じない存在であり続けたのだ。
しかし、そんな生活が一変する事態が起こった。シュラウラが病気で亡くなってしまったのだ。
フミーナを愛人にした後も、シュラウラとの夫婦関係は良好とはならず大きく変わらなかった。そんな関係なのに離縁することができなかったのは、シュラウラがイカゾノス家を後世に残す使命があるためであり、私は伯爵のままでい続けたいからだ。シュラウラと私はすでに結婚適齢期を過ぎているため、もし離縁でもしたら互いに再婚は難しい。私も婿養子でイカゾノス家に入ってきたため、離縁すれば伯爵の立場を失いかねなかったのだ。せっかく成り上がったのに離縁することで失うのは嫌だ。だからこそ、私達の夫婦関係は続いた。
そして、アキエーサが産まれた。待望の我が子の誕生だ。この頃にはシュラウラの両親は他界していたため、待ちに待った後継ぎだと言ってシュラウラは泣いて喜んだものだ。その時の私も嬉しかったことも覚えている。これで後継ぎのことで思い悩まずに済むんだとホッとしたものだ。アキエーサは当然、私とシュラウラと同じ髪の色と目の色をしていた。この頃のアキエーサは可愛かったと思っている。
アキエーサが産まれた翌年、フミーナがワカマリナを産んだ。フミーナは私と自分との間に生まれた娘だと言っていて、それを私も信じた。思い合って恋人同士になったのだから信じるのは当然だ。ワカマリナはフミーナそっくりの顔立ちと同じ髪の色と目の色をしていた。赤ん坊の時のワカマリナを抱き上げた時、アキエーサよりも愛おしく思ったことを昨日のことのように覚えている。
その後の私の生活は、順調だった……小言のうるさい妻のことで不満があってもだ。アキエーサを夫婦で育てる過程でも教育等は全てシュラウラに任せていた。そのおかげでアキエーサは可愛げが無くなったとはいえ、シュラウラのようなしっかりした貴族令嬢に育っていった。貴族の仕事のことも、シュラウラが金の管理をしてくれたおかげで余計な出費もなく、領地経営もシュラウラが領民の声をよく聞いていたかいもあって大きな問題は起こらなかった。
……何だか、シュラウラに任せてばかりのようだが、私もしっかり仕事はしていた……それは、間違いないはずだ。社交の場にはしっかり顔を出してきたし、仲のいい貴族に誘われれば会いに行ったり、気配りを怠らなかった。ただ、兄ルカスにだけは近寄らなかったけどな。だからこそ、イカゾノス家は何事も大きな問題なく伯爵家として恥じない存在であり続けたのだ。
しかし、そんな生活が一変する事態が起こった。シュラウラが病気で亡くなってしまったのだ。
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