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「王族が行方知らずなら探し出すのは当たり前ですわ。さあ、王宮にお戻りになってください。これから貴方方の処罰を考えなくてはなりませんので」

「無駄な抵抗は止めて大人しく縛られるがいい。笑いものの名ばかり伯爵よ」


リリィが爽やかな笑顔で、ジェシカが邪悪な笑顔で、マグーマとアノマに任意同行を求める。


「畜生ふざけるな! 何がティレックス伯爵だ! そんなふざけた名ばかりの地位なんか要らねえ! 俺は王太子になってアノマは王太子妃になるんだ! 俺は次期国王にならなきゃいけないんだよ!」

「そうよ! 元婚約者の幸せを祈らない最低女! これから馬車の中にいる第三王子を助けた功績を上げるんだからこれ以上私達の幸せを奪わないでよ!」

「「!」」


アノマは馬車を指さしてそう言ってしまった。何故第三王子が馬車の中にいると分かっているのか、何故その馬車のそばにいるのか、何故第三王子を助けた功績を上げることができるのか、様々な疑問が浮かぶことを口にしてしまったのだ。


「おや、つまり貴方方が第三王子トップス・ツインローズ殿下を?」

「ああ、そうよ! 私が連れてきたのよ! マグーマ様のために!」

「お、おい、アノマ! そこまで言う必要無いだろ! 口を慎め!」

「あ、何も言わなくても証拠は揃っているので気にしなくていいですよ誘拐犯さん」

「「ええ―!?」」


ハッタリでもなく証拠はあるのだ。メイド姿のアノマがトップスの部屋に入ったり、トップスと一緒に王宮に出た目撃情報。王宮に残っていた数少ないアノマの私物から見つかった睡眠薬。マグーマに脅された兵士たちの自白。その他諸々と証拠は出ていた。


「そ、そんな馬鹿な!?」

「そうでもないぞ。お前たちの行動は結構お粗末だ。おそらくガキ王子を攫って自分が助け出したんだなどと言い出して自作自演の功績をあげようとしてたんだろうがな」

「ぐ……」


ジェシカの言う通りだった。王太子に戻るためには英雄視されるような功績を上げるほうが早いと思い直したマグーマは、トップスを利用して行方不明事件を企てたのだ。その事件を解決させる主役に自分がなるというまさに自作自演を起こそうとしたわけだ。自身の思惑を言い当てられて、露骨に悔しがる。


「抵抗せずにお嬢様と私に捕らえられるがいい。そして裁きを受けるがよい」

「お断りだ! こんなこともあろうかと事前に俺たちの身の回りを守るために傭兵を雇っていたんだ。野郎ども出番だ!」

「「「「へい!」」」」


マグーマの合図で柄の悪い屈強な男たちが大勢現れた。
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