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「では、今度は私から婚約破棄させていただきますわ」

「な、何ーっ!?」


リリィから俺に婚約破棄!? そんなことをされたら……!


「理由はもちろん、貴方の浮気と国のお金を勝手に使い続けた罪が原因ですよ」

「そ、それは……」


浮気ってアノマのことか!? 確かに結婚したいと思ってたけど……国の金、国庫のことまで知られてたのか!


「い、いや、アノマとは、その……国の金だって借りただけで……」

「言い訳は無用です。メアナイト男爵令嬢と特別懇意にしていることは調べがついていますし、国庫から勝手にお金を引き出したことも分かっています。もう婚約破棄どころの話ではないですね」


婚約破棄どころじゃないって、そこまで……!?


「そ、そんな……そんな……」

「そんな……マグーマ様……!」

「往生際が悪いぞ馬鹿王子。そもそもお嬢様と婚約破棄した後の貴様の結末はどうなるか分かっているのか?」

「……え?」


ジェシカの態度を不敬と思う前に俺は疑問に感じる。それは……次期国王の立場から遠ざかるだけじゃないのか?


「私から婚約破棄されたマグーマ殿下は臣籍降下の上、ティレックス侯爵の爵位を授けられるでしょう」

「それは……!?」


俺は呻いた……ティレックス領とは、侯爵領とは名ばかりで全く旨味のない土地。その広さは男爵並み、しかも乾燥地帯が多く、領民も少ない。誰も欲しがらない領地だ。そんな地を納めていかなければならないということは……!


「上級貴族とは名ばかりの、罰のようなものじゃないか!?」

「あら? 流石にそれはご存知でしたか。仮にも王族なのですね」

「いくらなんでもあんまりだ! なんで俺がそんな目に遭わなければいけないんだ!?」

「マグーマ様どういうこと!?」


アノマは混乱しているが悪い状況になったということは分かったらしい。さっきよりも顔が青く見えるのは気のせいじゃない。どうしよう……どうすれば……


「それと、お隣の可愛く可憐なご令嬢も逃れられると思わないでくださいね」

「馬鹿王子、貴様だけが罰を受けるだけで済むと思うな」

「「え!?」」


アノマにも顔を向けるリリィの笑顔が怖い。何がヒーリングプリンセスだ! 隣りにいるジェシカも悪意に満ちた笑みを浮かべて怖い! いや、それ以上にこの二人の言動が今怖い! 俺だけじゃなくアノマにも何をするつもりだ!


「殿下とそちらのご令嬢との仲も確認済みと言ったでしょう? お二人仲良くティレックス領で頑張ってくださいね。」

「つまーり、馬鹿王子と馬鹿な令嬢は思い罰を受けろということだ。名ばかりの侯爵の名を背負ってな」

「「そ、そんなあああああぁぁぁぁぁ!」」


俺とアノマは揃って絶望を叫んだ。リリィと婚約破棄してアノマと一緒に幸せになるはずが、俺が立場を失って、アノマと二人で重荷を背負うことになってしまったのだから。

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