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第19話 魔獣
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みんなが私に注目する。目を丸くして驚いた顔をしている。
「その話、マジか!?」
「ええ。マジよ」
「もっと早く言ってくれよ!」
「私が見ただけで確証がなかったから」
でも、アニキにだけは早く言っておいたほうがよかったわね。
「しかし、もしも本当に魔獣の毒素ってやつが原因なら大変なことになるねえ……。町の冒険者の半分以上が参っているこの状況だと、今のギルドの戦力では魔獣に対処なんかできないよ」
「何言ってんですかギルマスまで! この辺に魔獣も大きな魔物も居ませんよ!」
ギルマスや職員が険しい顔で話し合い始める。何か思った通りに面倒なことだったみたいね。
「だが、この原因不明の流行り病は何だ? どんな薬もあまり役に立たなかっただろ? その原因が魔獣か魔物の毒素というなら納得もいくさ」
「なっ!? しかし……」
「彼女が言ってるだけで確証がないのは分かるが、私は言われて気付いたよ。あの病気はなんだか魔物の毒にやられた時に似てるってね。まあ、病気のほうが症状が酷かったけどさ」
「ええ!? そうなんですか!?」
へえ、分かるんだ。
「私も若い頃は冒険者だったからね。魔物の毒にやられて動けなかった時もあったんだよ。その時の苦しみと今度の病気は似ている気がする。こっちも確証はないけど気になるのは確かだね」
「っ!」
ええ? 若い頃って言うけど、今は若くないの? その外見で? 人間の20代後半か30暗いと思ったけど? いや、ギルドマスターしてるから若いはずもないか、失礼だけどね。
「だ、だとすれば、すぐにでも調査隊を編成しなければ……!」
「落ち着け、確証はないと言ってるだろ」
「その通り。まずは病気が流行り始めた頃に何か変わったことがないか聞かせてもらえないかしら。何か分かるかもしれないわ」
「些細なことでもいいんです。相棒に聞かせてください」
魔獣の毒素が流れてるからって、魔獣そのものがいるとは限らない。全く別の方法で流されている可能性もある。今の時代に当てはまるか知らないけどね。
「……一か月くらい前になるね。その頃に何か大きなことがあったかな?」
「そういえば、その頃に領主のバカ息子が戻ってきたんですよ。あ、長男のほうですよ」
「「バカ息子?」」
「あんたたち二人は知らないだろうけど、領主には二人の息子がいてね。次男がずっと優秀で文武両道なのに長男のほうがかなり素行が悪く評判も悪い馬鹿でドラ息子何だよ。二人とも王都に留学してたんだけど、長男のほうが留学先で問題起こしてこっちに戻ってきたのさ」
「王都に留学か……」
『王都』と聞いて、アニキは一瞬複雑な顔になった。私はアニキを愛してるからこそ見逃すことができなかった。
「長男のほうはかなり機嫌が悪かったそうだね。まあ、自業自得ってやつさ。この町でも評判悪かったのに王都でもやらかしたみたいだからね」
「奴はあのグロンショとも昔、馬鹿やってたみたいでしたね。思えばグロンショがいい気になったのもその頃でした」
「私が元気になったからには、あいつもきっちり占めておかないとね」
ろくでもない領主の子供。つまり悪徳貴族か。何かありそうね。
「その長男とやらが、病魔をばらまい矢可能性は?」
「え!?」
「「「「っ!?」」」」
全員がまたしても目を見開いてこっちを見る。そして顔を見合わせる。どうやら、思い当たる節がありそうね。
「その話、マジか!?」
「ええ。マジよ」
「もっと早く言ってくれよ!」
「私が見ただけで確証がなかったから」
でも、アニキにだけは早く言っておいたほうがよかったわね。
「しかし、もしも本当に魔獣の毒素ってやつが原因なら大変なことになるねえ……。町の冒険者の半分以上が参っているこの状況だと、今のギルドの戦力では魔獣に対処なんかできないよ」
「何言ってんですかギルマスまで! この辺に魔獣も大きな魔物も居ませんよ!」
ギルマスや職員が険しい顔で話し合い始める。何か思った通りに面倒なことだったみたいね。
「だが、この原因不明の流行り病は何だ? どんな薬もあまり役に立たなかっただろ? その原因が魔獣か魔物の毒素というなら納得もいくさ」
「なっ!? しかし……」
「彼女が言ってるだけで確証がないのは分かるが、私は言われて気付いたよ。あの病気はなんだか魔物の毒にやられた時に似てるってね。まあ、病気のほうが症状が酷かったけどさ」
「ええ!? そうなんですか!?」
へえ、分かるんだ。
「私も若い頃は冒険者だったからね。魔物の毒にやられて動けなかった時もあったんだよ。その時の苦しみと今度の病気は似ている気がする。こっちも確証はないけど気になるのは確かだね」
「っ!」
ええ? 若い頃って言うけど、今は若くないの? その外見で? 人間の20代後半か30暗いと思ったけど? いや、ギルドマスターしてるから若いはずもないか、失礼だけどね。
「だ、だとすれば、すぐにでも調査隊を編成しなければ……!」
「落ち着け、確証はないと言ってるだろ」
「その通り。まずは病気が流行り始めた頃に何か変わったことがないか聞かせてもらえないかしら。何か分かるかもしれないわ」
「些細なことでもいいんです。相棒に聞かせてください」
魔獣の毒素が流れてるからって、魔獣そのものがいるとは限らない。全く別の方法で流されている可能性もある。今の時代に当てはまるか知らないけどね。
「……一か月くらい前になるね。その頃に何か大きなことがあったかな?」
「そういえば、その頃に領主のバカ息子が戻ってきたんですよ。あ、長男のほうですよ」
「「バカ息子?」」
「あんたたち二人は知らないだろうけど、領主には二人の息子がいてね。次男がずっと優秀で文武両道なのに長男のほうがかなり素行が悪く評判も悪い馬鹿でドラ息子何だよ。二人とも王都に留学してたんだけど、長男のほうが留学先で問題起こしてこっちに戻ってきたのさ」
「王都に留学か……」
『王都』と聞いて、アニキは一瞬複雑な顔になった。私はアニキを愛してるからこそ見逃すことができなかった。
「長男のほうはかなり機嫌が悪かったそうだね。まあ、自業自得ってやつさ。この町でも評判悪かったのに王都でもやらかしたみたいだからね」
「奴はあのグロンショとも昔、馬鹿やってたみたいでしたね。思えばグロンショがいい気になったのもその頃でした」
「私が元気になったからには、あいつもきっちり占めておかないとね」
ろくでもない領主の子供。つまり悪徳貴族か。何かありそうね。
「その長男とやらが、病魔をばらまい矢可能性は?」
「え!?」
「「「「っ!?」」」」
全員がまたしても目を見開いてこっちを見る。そして顔を見合わせる。どうやら、思い当たる節がありそうね。
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