75 / 248
第49.5話 一対一
しおりを挟む
(公爵視点)
真っ直ぐ向かってきた勢いを利用して縦斬りか。若者らしい。
「らぁっ!」
「むっ!」
その直前でフェイントか。まあ、そのまま切り込んできてくれればカウンターをくれてやったのだが直前で見抜いたか最初からフェイントをかますつもりだったか?
「らぁっ!」
「ふっ!」
フェイントの本命は横切り。序盤で凝ったことをするが、私はこの戦法に見覚えがある。何しろ戦友が見せてくれた戦法だからな。見覚えがなくても私なら見切れていたから防げたのは決してそのおかげというわけではない。
その後も何度か少年の剣を相手にしながら観察を続ける。彼の剣にはれっきとした己の意思を感じる。どうやら、彼個人の計画のようだ。……もういいか。ここらで反撃する。
「っ! いっ!?」
私の剣を受け止めた直前に体のどこかしらに大きな負担がかかって驚いただろう? 剣の振り方次第で受け止めた相手の体に大きな負担をかけて隙をつくる。難易度の高い剣術だから実際に行う者は少ない。その少ない中に私がいることは知らないようだ。そのうえでとっさに後ろに引いたのは良い判断だ。大抵の者はこれで隙をつかれてやられるのだが。
「ハァハァ……だぁぁぁっ!」
すでに息を切らし始めているにもかかわらず走って迫りくるか。そんな行動は戦時中では自殺行為だ。いや、兵法をよく知る騎士でもする者はいないだろう。あまりにも無謀なのだからな。
もう見ていられない。剣を通じて知りたいことだけは分かった。後は、本人の口から聞かせてもらうとしよう。
「これで終わりにしよう。グロン・ギンベス!」
「なっ!?」
私が少年の正体と思わしき名前を口にした時、聞いてしまった少年の方は動揺してしまった。その隙を私は決して逃さなかった。
「はぁっ!」
「うわっ!?」
私は剣を下から上に向けて振るうことで、動揺した少年の手から剣を弾いた。空に向かってくるくると回る少年の剣はすぐに地に落ちる。その直後、少年の素顔が暴かれる。どうやら、剣を弾くだけだったのに顔を隠していた覆面まで斬ってしまったようだ。
「あ……あ……」
一瞬の隙をつかれて剣を弾かれたショックのせいで、膝から崩れ落ちて戦意を喪失する少年。相当悔しかったと思っただろうな。まさか、ここまで差があるとは思ってもいなかっただろう。いかに私がこの国で英雄視されていようとも結構年を取っている。だから油断したのだろうな。
「ま、まさか……ここまで、差がある、なんて……」
……む? 私の予想通りの言葉を呟いたではないか。いや、そんなことはどうでもいい。勝敗は決したのだ。後はこの場で縛り上げて色々聞かせてもらおう。
真っ直ぐ向かってきた勢いを利用して縦斬りか。若者らしい。
「らぁっ!」
「むっ!」
その直前でフェイントか。まあ、そのまま切り込んできてくれればカウンターをくれてやったのだが直前で見抜いたか最初からフェイントをかますつもりだったか?
「らぁっ!」
「ふっ!」
フェイントの本命は横切り。序盤で凝ったことをするが、私はこの戦法に見覚えがある。何しろ戦友が見せてくれた戦法だからな。見覚えがなくても私なら見切れていたから防げたのは決してそのおかげというわけではない。
その後も何度か少年の剣を相手にしながら観察を続ける。彼の剣にはれっきとした己の意思を感じる。どうやら、彼個人の計画のようだ。……もういいか。ここらで反撃する。
「っ! いっ!?」
私の剣を受け止めた直前に体のどこかしらに大きな負担がかかって驚いただろう? 剣の振り方次第で受け止めた相手の体に大きな負担をかけて隙をつくる。難易度の高い剣術だから実際に行う者は少ない。その少ない中に私がいることは知らないようだ。そのうえでとっさに後ろに引いたのは良い判断だ。大抵の者はこれで隙をつかれてやられるのだが。
「ハァハァ……だぁぁぁっ!」
すでに息を切らし始めているにもかかわらず走って迫りくるか。そんな行動は戦時中では自殺行為だ。いや、兵法をよく知る騎士でもする者はいないだろう。あまりにも無謀なのだからな。
もう見ていられない。剣を通じて知りたいことだけは分かった。後は、本人の口から聞かせてもらうとしよう。
「これで終わりにしよう。グロン・ギンベス!」
「なっ!?」
私が少年の正体と思わしき名前を口にした時、聞いてしまった少年の方は動揺してしまった。その隙を私は決して逃さなかった。
「はぁっ!」
「うわっ!?」
私は剣を下から上に向けて振るうことで、動揺した少年の手から剣を弾いた。空に向かってくるくると回る少年の剣はすぐに地に落ちる。その直後、少年の素顔が暴かれる。どうやら、剣を弾くだけだったのに顔を隠していた覆面まで斬ってしまったようだ。
「あ……あ……」
一瞬の隙をつかれて剣を弾かれたショックのせいで、膝から崩れ落ちて戦意を喪失する少年。相当悔しかったと思っただろうな。まさか、ここまで差があるとは思ってもいなかっただろう。いかに私がこの国で英雄視されていようとも結構年を取っている。だから油断したのだろうな。
「ま、まさか……ここまで、差がある、なんて……」
……む? 私の予想通りの言葉を呟いたではないか。いや、そんなことはどうでもいい。勝敗は決したのだ。後はこの場で縛り上げて色々聞かせてもらおう。
30
お気に入りに追加
5,457
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる