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第49話 選び直す
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「……正直、二人の婚約が破棄されることを私は残念に思う。二人が幼い頃に婚約させたのは早計だったと後悔するばかりだ。だが、ただ単に婚約破棄するだけでは公爵は納得しないであろう?」
「流石は国王陛下ですね。その通り、多額の慰謝料かそれに代わる対価を頂きたいのですよ。そうしなければ他の貴族に示しがつきませんので」
「……」
国王はすでに公爵の狙いに関しては大体予想していた。王族側の有責とは言え公爵令嬢の婚約が破棄となるのだ。公爵家側としても少なからず痛手に感じるはず。公爵側からすれば、それなりの慰謝料なり要求なりを求めるのも頷けるものだ。
(だが、レトスノム公爵家は我が王家に匹敵する大貴族。それが何を求めるというのだろうな。公爵自身はそこまで強欲な様子もない……やはりガンマには伯爵位を与えるべきではないということか?)
「分かっておる。まずは、公爵が望むものがあるのならば我が王家の可能な限りの慰謝料なり領地を与えよう」
「そうですな。我が国の行く末を考えれば多額の慰謝料が妥当でしょう。そして……」
そして、ここからが国王の予想しなかった展開だった。
「ガンマ殿下の卒業後は伯爵位ではなく男爵位を賜ること、そして今のガンマ殿下の側近と取り巻きの者達を一度選び直していただきたい」
「な、何!?」
「いくら何でもガンマ殿下に伯爵位はありえないのです。残念ながら今のガンマ殿下は貴族の模範となるお方ではない。それに殿下の周りの者達も王族に侍るべきではない者ばかり。陛下もご理解くださってほしい」
公爵の言うことも一理ある。学園でのガンマの行動は褒められたことではなく、むしろ咎められる行動だ。このままで将来上級貴族にするのは不味い。ガンマの行動のことで側近や取り巻き達が諌めることもしないのも問題と言えばそうなのだ。
「た、確かに、今のガンマでは伯爵はふさわしくないのは分かるがまだ先の話ではないか。それにあやつの側近と取り巻きを急に選び直すのは強引がすぎるのではないか?」
「それでは、強引が通る理由があればいいのです。それだけの理由が側近の方にありますので」
「何?」
公爵が従者に合図する。従者は待っていたとばかりに部屋を出ていく。五分もしないうちに、従者は二人の騎士を引き連れて戻ってきた。正確に言えば一人の少年を拘束した騎士たちを引き連れて。
「御覧ください陛下。彼に見覚えはお有りでしょう?」
「む、あれはまさか……」
国王が目をみはる。確かに見覚えがあったのだ。何しろ、実の息子の側近に選ばれたゆえに一度か二度くらい謁見の間にてその顔を見ていたのだから。
「グロン・ギンベスか!」
沈痛な顔の少年は紛れもなく、ガンマの側近だったのだ。
「流石は国王陛下ですね。その通り、多額の慰謝料かそれに代わる対価を頂きたいのですよ。そうしなければ他の貴族に示しがつきませんので」
「……」
国王はすでに公爵の狙いに関しては大体予想していた。王族側の有責とは言え公爵令嬢の婚約が破棄となるのだ。公爵家側としても少なからず痛手に感じるはず。公爵側からすれば、それなりの慰謝料なり要求なりを求めるのも頷けるものだ。
(だが、レトスノム公爵家は我が王家に匹敵する大貴族。それが何を求めるというのだろうな。公爵自身はそこまで強欲な様子もない……やはりガンマには伯爵位を与えるべきではないということか?)
「分かっておる。まずは、公爵が望むものがあるのならば我が王家の可能な限りの慰謝料なり領地を与えよう」
「そうですな。我が国の行く末を考えれば多額の慰謝料が妥当でしょう。そして……」
そして、ここからが国王の予想しなかった展開だった。
「ガンマ殿下の卒業後は伯爵位ではなく男爵位を賜ること、そして今のガンマ殿下の側近と取り巻きの者達を一度選び直していただきたい」
「な、何!?」
「いくら何でもガンマ殿下に伯爵位はありえないのです。残念ながら今のガンマ殿下は貴族の模範となるお方ではない。それに殿下の周りの者達も王族に侍るべきではない者ばかり。陛下もご理解くださってほしい」
公爵の言うことも一理ある。学園でのガンマの行動は褒められたことではなく、むしろ咎められる行動だ。このままで将来上級貴族にするのは不味い。ガンマの行動のことで側近や取り巻き達が諌めることもしないのも問題と言えばそうなのだ。
「た、確かに、今のガンマでは伯爵はふさわしくないのは分かるがまだ先の話ではないか。それにあやつの側近と取り巻きを急に選び直すのは強引がすぎるのではないか?」
「それでは、強引が通る理由があればいいのです。それだけの理由が側近の方にありますので」
「何?」
公爵が従者に合図する。従者は待っていたとばかりに部屋を出ていく。五分もしないうちに、従者は二人の騎士を引き連れて戻ってきた。正確に言えば一人の少年を拘束した騎士たちを引き連れて。
「御覧ください陛下。彼に見覚えはお有りでしょう?」
「む、あれはまさか……」
国王が目をみはる。確かに見覚えがあったのだ。何しろ、実の息子の側近に選ばれたゆえに一度か二度くらい謁見の間にてその顔を見ていたのだから。
「グロン・ギンベスか!」
沈痛な顔の少年は紛れもなく、ガンマの側近だったのだ。
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