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第43話 前世に染まりすぎ

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二重スパイ。例えるなら、偵察や諜報を命じられた側の者として振る舞いながら、逆にその雇い主である人物の情報を探る者のことを指す。ミロアはオルフェの立場をそんなふうに捉えた。


(オルフェはガンマ殿下側……それも頭脳派気取りの方の側近に通じている。そのうえで私にその事実を告げることは私に情報提供していることを意味する。まさに前世のテレビドラマや漫画でいう二重スパイそのもの! ……というのは早すぎるわね。流石にその一歩手前あたりか)


オルフェがミロアに自身の立場を告げるのは罪悪感からに過ぎない。流石にミロアのために彼らの情報を探っていくことまでは言っていない。オルフェ自身も『側近にならない』と言っているのだ。ガンマたちに対して深く関わるつもりもないし関われるとは思えない。


(私に対する罪悪感で白状するあたり、オルフェはそういうことには不器用だと言えるわね。オルフェには付かず離れずという感じでいてもらったほうがいいかな。何かあった時、彼に危害が及ぶなんてことがあったら私も幼馴染として悲しいし……)


オルフェは数少ない幼馴染であり、同じ学園の生徒だ。前世の記憶と知識があるミロアとしては、学園に復帰した後に普通に接していける相手がほしいと思っていたのだ。その候補にオルフェが入るのだが、そんな彼に危害が及ぶことなどミロアは望まない。


(今はオルフェにスパイの真似事をしてもらうかどうかなんて後で考えよう。今は気落ちしているオルフェを励まして立ち直ってもらわないと。……そもそも、二重スパイとか思いつく時点で私は前世に染まりすぎてるのよね。自分以外の人まで危ない橋を渡らせるなんて、それも幼馴染のオルフェを……)


前世の記憶を得てミロアは自分でも大きく変わったと思う。その殆どがいい方向に変わったのだと信じているし、前世の記憶を知識として応用もできる。だが、あまりにも前世の知識に影響されすぎているのではと思う時があったのだが、今の思考がそうだったと気づいた。


(……っていうか、オルフェをスパイに仕立て上げようとする時点で自重していないじゃん! いくらなんでも以前の私とは別物になってきてるんじゃ……もう考えるのはオルフェを励ますことだけ!)


この時、ミロアは今だけは前世の記憶から離れて、オルフェのために声をかけようと思った。そうしないと行けないような気がしてならなかったのだ。
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