銀色の雲

火曜日の風

文字の大きさ
上 下
77 / 91
6章 異世界冒険譚?

2話 長年の癖は簡単には治らない

しおりを挟む


「おおー、似合ってますよー。ルイさん、可愛いですよー」

 着替えた瑠偉は、ファルキアの前で一回転し、ファルキアに愛想笑いを見せた。

「ありがとうございます。(スカートの丈が、今時の女子高生レベルに…)」
「お嬢様も、今時の女子高生ですが」

 部屋の隅に立っている、ララの声が瑠偉の耳に届いた。瑠偉はララの方を素早く振り向いた。

「思ってないですけど? (っく、なぜ分かる)」
「そう言う事にしておきましょう。続けてください」

 瑠偉はファルキアの方を見た。まだファルキアは、瑠偉を見上げながら笑顔で微笑んでいた。瑠偉はファルキアの微笑みに耐えきれず、少し距離を取るとベットに腰かけた。

 (早く帰ってもらいたいんだけどなー… よし! 早く寝ることにして… )

「瑠偉さん、これでレッグちゃんはルイさんに、メロメロですねー。ふふふふ」

 ファルキアは、上半身を瑠偉に近づけ、右手を瑠偉に差し出すと親指を立てた。

「ははは… そうですかねー(早く話題を変えないと…)」

 瑠偉はファルキアの両肩に手を置くと、近づいている彼女を元の位置に戻した。

「ファルキさん、実は聞きたいことがあるんですが?」
「安心してください。レッグちゃんは、今はフリーですよ。」
「一旦、レッグさんの話は、止めましょう。聞きたいことは、なぜ部屋に入る時、ノックをしないんですか?」

 ファルキは、聞いたことない言葉だったのか、首を傾げる。そして、悩ましい顔で瑠偉を見た。

「ノック? ってなんですか?」
「ドアを数回叩いて、中の人に入っていいか、聞く行為です」
「なぜ、聞くんですか?」
「なぜって… 突然入って来られると、困るでしょう?」
「困るんですか?」
「困ります」
「なぜ困るんですか?」
「着替えとか見られたら、困りますよね?」
「困りませんど?」
「私が困るんです」
「なぜですか?」
「(子供かよぉー! )とにかく、私の国では、他人の部屋に入る時は必要なのです」
「なるほど… ルイさんの国では、そんな風習があるんですね。私達は、そんな事しないんですよ」
「そうですか… とにかく、私の部屋に入る時だけでもいいですので、ドアを2回叩いて『入っていいいですか?』と訪ねてください。お願いします」
「わかりました。2回叩くんですね?」
「はい、お願いします」

 瑠偉は、ファルキアとの会話を遮る様に立ち上がった。ドアの方に少し移動すると、ファルキアの方を見た。

「ファルイキアさん。私は明日に備えて、早めに寝ますので… 今日はこの辺で…」

 瑠偉はドアの方へ手を向け、ファルキアを出て行くように促す。ファルキアは、それを見ると立ち上がり、瑠偉の側まで歩き立ち止まった。そして、瑠偉の肩に軽く手を置いた。

「じゃあ、ルイさん。明日、頑張ってくださいね」
「はぁ… (何を頑張るんだろう? )」

 ファルキアは、ドアの所でいったん止まると。振り返って、瑠偉を見る「おやすみー」と言うと、ファルキアは部屋から出て行った。
 瑠偉は肩を落とし、長い息を吐く。疲れ切った様子で、ベッドに飛び込む。両手を広げ天井をぼんやりと眺め始めた。

「なんか、疲れた…」
「この世界の人間は、男女比率が4対5で女性のが多いのです。戦争、狩り等で男性は早死に傾向なります。したがって、女性の方から積極的に攻めないと、結婚できなくなります。ゆえの『頑張ってください』なのです」

 部屋の隅に居るララの声が、瑠偉の所に届く。瑠偉は頭を上げ、不満の表情でララを見た。

! 頑張りませんけどね!」

 瑠偉はスマホを取り出すと、電話帳から美憂を見つけだすと、電話を始めた。

「もしもーし、美憂ぅ。瑠偉だよぉー」
「瑠偉か。すまんな、なかなか電話をする時間が取れなくて」
「いいよ、いいよ。今何してるの?」
「志摩さんと、追試の勉強会だ」
「そっか… じゃ、お邪魔だね」
「すまんな、落ち着いたら電話するよ」
「ごめん、またねー」
「ああ、またな」

 瑠偉は電話を切ると、今度は麻衣に電話を始めた。

「もしもーし」
「はいはいー、どったの瑠偉ちゃん?」
「ところで、いつ帰れます?」
「いやいや、まだ4日しか経ってないけど! はやいってばぁー」
「暇で暇で… 話でもしようかと思って」
「私は、今狩り中ね。あとでいい?」
「狩り!」
「兼次ちゃんに、赤レア全部奪われて、オコオコプン中なの」
「ゲームかよ!」
「ごめん、切るねー」
「まてぇー! …っく、切れた」

 瑠偉は体を回転させると、うつ伏せ状態になり、目の前にスマホをたてかけた。

「映画でも見るかぁ・・・・ うっ、ついに来た」

 瑠偉が映画を見ようと、アプリを立ち上げた時。画面に【省電力モード起動】と表示された。彼女は、悩ましい表情で後方にいるであろう、ララの方をゆっくりと向いた。

「あのー…」
「充電ですか? USB充電なら対応しています」
「ケーブル持ってます。お願いします」

 瑠偉はポーチから、USBケーブルを取り出した。そして起き上がると同時に、ララが瑠偉に向かって近寄ってきた。しかしララは、瑠偉の側まで行かず途中で止まった。ララは、足を肩幅に広げると腰を曲げ、スカートの端を持つと勢いよくスカートをまくり上げた。
 瑠偉の目の前に、パンツの履いていないララの下半身が現れた。

「履いてない! じゃなくて、いきなり何してるんですか?」
「お嬢様、変な事を言いますね? 女子に挿す場所と言えば、一カ所しかありませんが?」
「女子! じゃないでしょ…」

 瑠偉は難しい表情でララに近づくと、その前で床に座りララの股の付け根を観察した。瑠偉は下から覗きこむと、その場所にUSB端子を見つけた。

「なぜ、この場所に…」
「女子に挿す場所と言えば、ここしかないですが? 2回目です」
「まぁいいですよ、使いますね」
「初めてなので、優しくお願いします」
「はいはい、ゆっくり挿せばいいんですね! (いちいち、突っ込むのも疲れたわぁ)」

 瑠偉はケーブルの先端を握ると、ララの端子めがけて腕を移動さる。そして端子を挿した。
 その時… 突然部屋のドアが開くと、ファルキアが現れた。

「ルイさーん。さっき聞きわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ファルキアの目の前に、スカートをまくり上げたララの股間に、手を伸ばしている瑠偉の姿が飛び込んできた。

「ふひゃぁー!!」

 ドアの開く音で、瑠偉はビクリと体を震わせ奇声を上げた。そして現れたファルキを見て固まってしまった。

「あっ… ノックでしたね。なんか、ごめんなさい… でも、やっぱり女同士で、それはいけないと思うの…」

 ファルキアは手を口に当て、小声で言うと。ゆっくりと後ずさりし、ゆっくりとドアを閉めると。ファルキアが廊下を走る大きな足音が、瑠偉の耳にエコーの様に響き渡った。

 瑠偉は、両手を床に付け床に寂しく話しかけた。

「さっき、ノックしてくれるって、ゆうたじゃーん」
「長年積み重ねられた行動は、そう簡単に治りませんよ」
「はははっは、もういや… 帰りたい」

 瑠偉は暫らく、肩を落とし床を眺めていたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...