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1章 猫耳を探しに行こう!
10話 最強のスキルを持っていることに気づいた
しおりを挟む猫の獣人、その一族をトッヤキ族と言い。彼らは群れることを好まず、大陸中に散らばり生活している。特定の種族と仲がいいわけでもなく、基本は相手との性格が、合うか合わないかで、友好度が変わる。
犬の獣人、その一族をクッド族と言う。彼らは基本は集団で生活している。オーグの住む町から、更に東に進んだ場所に、国を作り生活している。王、兵士、市民の役割分担がしっかりしている。兵士や市民共に、王への忠誠が非常に高い。王もその期待に応えるがごとく、国民の為の政治を行っているそうだ。
人間の痕跡がないオーグを含む猿族、地球人タイプでルサと言うらしい。道具類を作る知識があり、3種族の中で一番文明が進んでいる。特に隣接するクッド族と仲が悪く、国境沿いで頻繁に小競り合いを起こしている。戦力的に拮抗しているため、一進一退の攻防が長い間続いているそうだ。だが最近は押していて、クッド族の領土に進行を始めているそうだ。
この先にある街は、カキレイと言い人口2万人程度の街だそうだ。領主が存在し、街を統治している。そう言った街が幾つもあり、一つの大きな国を形成しているそうだ。地球で言うところの、連邦国家と言ったところだろう。首都も存在し、カキレイから馬車で1カ月かかるそうだ。通信手段や移動条件を考えると、無難な国家体制だろう。
「・・・・だいぶ省略しましたが、こんな感じです。まぁ、旅をするには、特に意識する必要は無いと思いますよ」
「なるほど、大体わかった。この先の街にもトッヤキ族とやらは、住んで居るのか?」
「ええ、住んで居ますよ。衛兵をやっている者もいます」
なるほど居るのか、猫耳が・・・最大の問題は、買えるか買えないかだが・・・
いきなり聞くのは、俺達の印象が悪くなる。オーグが一人になった時に、聞くかだが・・・
「オークさん、冒険者ギルドはあるの?」
「オーグです。冒険者ギルドとなんですか?」
俺が少し考え込んでいるところに、麻衣が割り込んできた。
麻衣は、ファンタジーの世界は現実ではあり得ない、と言う事を理解してほしいな。予想通りオーグは、冒険者はおろかギルドの意味も解らないようだ。
「冒険者を管理している団体よ。冒険者をランク付けして管理したり、住民からの仕事の依頼を受けたりしているのよ」
「なるほど、全くわかりませんが・・・しかし、仕事が欲しいのでしたら、酒場に行けば依頼掲示板あります。但し登録が必要ですが」
「なるほど酒場にあるのね。ウイザー〇リィみたいなシステムと言う事ね!」
「ウイザー〇リィ? なんですか、それは?」
「オーグよ。すまんが疑問を持たずに流してくれ。解っているよな?」
再びオーグを睨むと、オーグはバツの悪そうな顔をして黙り込んだ。
そして麻衣は、ウィザー〇リィを知っているとは、随分コアなゲーマーなのだな。時期的に麻衣の生まれる前の、ゲームのはずなのだが。
しかし意外と役に立った麻衣、仕事を斡旋する掲示板があると言う情報が聞けた。と言う事は、瑠偉を無一文で置き去りにしても、問題無いと言う事だな。学生の社会勉強として、働きながら滞在してもらおう。そこで、何か事件が起きれば・・・メシウマだな。
「兼次ちゃん。何か企んでいる、よね? すぐ顔に出るから・・・」
またしても俺の顔を、覗き込んでくる麻衣。長く一緒に住んでいるせいか、随分勘が働くようになったものだ。「な、なんの事かな・・・」と、一応否定しておこう。
俺は麻衣のアゴを右手でつかみ、麻衣を押しのける。そろそろ、本題を話さねばならないからだ。
そこで、俺はある事を思い出した。
そうだ、俺にはこの星で最強のスキルを持っている。
日本のことわざ『旅の恥は掻き捨て』だ!
迷う必要も、気にする必要もない! やりたい放題だ! 更に暴れ放題だ! ここは地球ではないから、帰った後にクレームが来ることもない。たった今俺は、自由になったのだ。
「オーグよ。単刀直入に聞く、女は買えるか?」
「色街でしたら、買えますよ。この先の街にはありませんが、規模の大きな街に行けばあります。奴隷を御所望でしたら、国境沿いの街に戦争捕虜が売買されています」
あっさりゲロったな、オーグ。隣にいるファルキアも、特に嫌な顔をする事もなかった。ちょっとだけ悩んでいた自分が、情けなくなってきた。隣の麻衣は、微妙な表情をしていたが…
地球も古代の文明には奴隷制度があったが、ここも文明的にあるようだな。ならば、先の街で一泊して、国境の街に向かうとしよう。その前に、金銭の補充といこうか。奴隷を買うにしても金銭が必要だ。
「オーグよ。商人なら買取とかやってるか? 金銭を補充したいのでな」
「普段はやってませんが、助けてくれた恩もありますし・・・今回だけですよ? それで、何を売ってくれますか?」
俺は現地での資金調達の為に準備していた、地球製の純金インゴット500gを取り出した。それを指で挟み、オーグに向けて突き出した。
「これは、金ですか? この輝きは、相当純度が高いです。見せて頂けますか?」
オーグは驚きの表情と共に、俺の持つ純金インゴットめがけて頭を寄せてきた。俺の突き出した手から10cmほどの距離で、目を丸くして金を見つめている。このオーグの驚きから推察して、この星の文明では純度の高い金は製錬できないようだ。
「オーグの言う通り、これは金だ。しかも高純度の金だ。先に言っておくが・・・」
「わかってます。聞きません・・・はっはは」
「では、確かめてくれ」
俺はオーグにインゴットを渡す。オーグは、手に取り感触を確かめる。そして「素晴らしい」と言う言葉を連発している。そして、長い時間インゴットに魅入っている。隣にいるファルキアも、オーグに顔を近づけて一緒になって見始めた。
「オーグ。買い取ればいつでも見える事ができるぞ? で、いくらで買い取る?」
「っは、つい。う~ん・・・これでしたら。同じ重量の豆金を5割増しでどうでしょう?」
「その前にオーグよ。奴隷はいくらで買える?」
「最高ランクで豆金10個ほどです。平均豆金1個から3個が相場です」
豆金が150個ぐらいだと・・・足りるかな? と考えていると、ララが顔を寄せ「ご主人様。奴隷購入、旅費などの10カ月滞在費としては十分です。但し、ご主人様が色街で、豪遊しなければの話です」と耳打ちしてきた。一言多いが・・・
「5割増しか・・・」と言い、黙ってオーグを見つめてる。
「な、なら6割では? 正直これ以上は、私の資金が足りません」
「わかった。6割増しで頼む」
オーグは天井の革袋から、吊り下げ式の天秤を取り出した。片方にインゴットを置き、もう片方に豆金を載せ始めた。ちょうど釣り合った時点で、豆金の数を数える。そして、それの6割増しの豆金を取り出した。
「では、こちらがお支払代金です。お納めください、革袋も付けます」
オーグから革袋を受け取る。一方オーグの持っているインゴットは、ファルキアに奪われ彼女が持っている。彼女はインゴットに顔を寄せ、ひたすら眺めている。そんなファルキアの姿を、オーグは横から見つめている。
「ねえ、私のお小遣いは?」と、麻衣が隣から肘で俺を突きながら言ってきた。
「考えておこう・・・」
「街に付いたら請求するからね!」
「何に使うのだ? ちなみに夜巳に、お土産は必要ないぞ」
「なにって、スイーツとか必要でしょ? てか、おみや無しとか、夜巳ちゃんかわいそう」
麻衣と金銭攻防そしている時。外から、馬車の運転手の声が聞こえた。
「旦那様、到着しましたよ」
その声と共に、馬車は止まった。どうやら街に付いたようだ。
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