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1章 猫耳を探しに行こう!
9話 位置が悪いと、激痛が走る
しおりを挟む三角屋根の馬車、その三角の頂点に4人の男たちがまたがっている。馬車が止まり、振動が無くなったとはいえ、まだ強い刺激があるようだ。彼らは肩を揺らし、荒い息をしながら耐えている。
「ずいぶん、酷い絵面だな。見るに耐えない・・・っな、オーグ?」
「わ、私には何とも・・・しかし、かなり痛そうですね」
「覚えてろよ、絶対仕返ししてやるからな!」
三流悪役の捨てセリフを聞いていると、オーグは腰に巻いていある皮袋に手を入れ何やら取り出した。オーグの掌からカチカチとした金属音が聞こえてきた。
「こちらが先ほどの代価となります。街での使い勝手がいいように、豆銀100にしておきました。こちらの小型の巾着袋もお付けします」
「すまんな、気を使わせて。頂こう」
オーグから巾着袋を受け取り、中から豆銀と呼ばれる硬貨を数個取り出す。手に取ってみると、確かに豆サイズの硬貨である。大きさが1㎝程度で厚みが5㎜程度ある。円形の形をしており、表面には文字の様な記号の様な物が、刻まれている。
その硬貨であるが、全部形が不揃いだ。おそらく鋳造技術が発達していないのだろう、装飾が施されたコインは、作れないようだ。
「ララ、分析をしてくれ」
「純度98%の銀です。質量は約5グラムで、銀価格に換算すると230円ほどです」
豆金1個で2万3千円程の計算になる。地球の金相場で考えると、少ないか?
「オーグよ、豆金はこれと同じ大きさなのか?」
「いえ、豆金はこれになります」
そう言ってオーグは、革袋から豆金を1個取り出し手の平に乗せた。見ると豆銀より一回り大きく、厚みは豆銀と変わらない。
「純金成分が約5グラム使用されています。相場に換算すると2万4千円ほどです」と、オーグか革袋から金貨を出すと同時に、ララの分析結果の報告が入る。
なるほど、意外と価値があってるな。となると、物価が相当安いと言うことになる。
「あの、さきほどからララさんは、何を言っているのでしょう?」
「悪いな、気にしないでくれ」
「そう言われると、逆に気になるのですが・・・」
「オーグよ、長生きしたかったら。聞くなだ」
「っは、はい」
腰に掛けてある剣の柄に手を置き、オーグを睨むと彼は体をびくりとさせて、1歩後退した。ちょっと可愛そうだが、これから色々と聞かれるのも困るので、黙っていてもらおう。
「さきほどは、ありがとうございました。助かりましたよー」
馬車の先頭から声が聞こえ見ると、運転手の男がこちらを伺っていた。口ひげを生やした、何処にでも居そうな陽気なオッサンだ。豚顔のオーグを見ていたせいで、すばらしく人間ぽく見える。彼は、俺達に向かって笑顔を見せていた。
そんな彼の先には、馬らしき生き物が見える。頭がアルパカそっくりの馬である、しかし足は蹄ではなく3本指の足で、かなり大きい。筋肉の付き方は牛に似ていて、ばんえい競馬の大型競走馬に酷似している。そんな馬が1頭で、11人乗車している馬車本体に繋がれている。おそらく馬車全体の重量は、800kgには達するだろう、そんな重量を軽々引っ張っていたようだ。
どうやら地球の、3~6倍程度の運動能力があるのは本当の様だ。と言う事はオーグも、こんな体をしていて素早く動けると? まさに・・・オークだな、モンスターだな。
「た、たのむ・・・位置だけ、位置だけ動かしてくれ・・・は、は、挟んでいるんだ」
馬らしき生き物を眺めていると、上から心細いかすかな声が聞こえた。見上げると、進行方向にいる盗賊が、顔面蒼白で大量の汗を流していた。
挟んでいる? ・・・・ああぁ、なるほど、それは痛いだろうな。
「ご主人様。どうやら股と屋根の間にタマを挟んでいるようです。体の自重でタマに圧力がかかり、そのタマは・・・」
「まてララ、詳しい解説いらねーから。こっちまで痛くなる」
まったく、タマタマ言うなよ・・・
顔面蒼白の男は、目が虚ろ状態になっており、おそらく痛みの限界点に到達しているだろう。さすがに、あの痛みは可愛そうなので、位置だけずらしてやろう。
俺はジャンプして、盗賊達の高さまで上がる。体を回転させ、先頭の盗賊の下腹部めがけて回し蹴りを繰り出した。そして「ぐあぁぁ!!!」と先頭の盗賊は、叫び声を上げると体の位置が後ろにずれた。
「ハァー・・・すまん。余韻は残っているが、位置は良くなった・・・ハァハァ」
先頭の盗賊は、アレの位置がズレて助かった様だ。今は余韻の痛みと戦っているようで、短く荒い呼吸をして、痛みが引くのを待っているみたいだ。
「ちょっと、今の衝撃はなに? 敵襲なの?」
回し蹴りの衝撃で、馬車全体が揺れたようで、窓から麻衣が顔を出した。
「なんでもない、五月蠅い盗賊を黙らせただけだ。それより着替えはまだか?」
「今終わったから、入ってきていいよー」
……
…
俺の目の前に、セーラ服姿のファルキアが座っている。ファルキアの身長は瑠偉と同じぐらいだが、座った時の膝の位置が瑠偉より前に出ている。つまり、ファルキアは足が瑠偉より長いことになる。おかげで、太ももの露出面積が、瑠偉のセーラ服姿の時より多い。
若妻と言う肩書、そしてセーラ服・・・なんという破壊力だ。
「ファルキア、素敵だよ」
「ありがとう、オーグ」
オーグはファルキアの手を取り、褒めの言葉を送っていた。体に似合わず、マメな奴である。一方ファルキアの隣で、いまだに寝ている瑠偉の姿は、一昔前の農家の娘みたいになっていた。
「オーグよ、夫婦で仲のいいことだな。悪いが、この地域の情勢が知りたい。特に猫耳の種族が、住んで居る場所が知りたい」
「街に着くまで、時間が掛かります。その間でよろしければ、お話ししましょう」
「すまんな、頼む」
それからオーグは、この地域や話や、周辺国の様子を話し始めた。
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