7 / 91
1章 猫耳を探しに行こう!
6話 チャンバラごっこ
しおりを挟むまずは観察し現状を正しく把握して、どうするか考えよう。
馬車の様な物は、地球でのペット用犬小屋を、大きくしたような作りの木造の簡素なものだ。車輪も木製で、乗り心地は良さそうには思えない。馬車の進行方向が、街側に向かっているので、馬車の先端は荷台に隠れて見えない。生態系が地球とはまるで違うので、引いているのは馬ではないだろう。とりあえず便宜上、馬車と言っておこう。
馬車の大きさは、おそらく人間が対面で6人乗れるだろう。まぁ、あのオーク・・・ではなく大きな人間なら、横幅は1.5人分か? 瑠偉とあの少女の尻の横幅を計算すれば、合わせて3人分のスペースで座れるな。あとは俺と麻衣とララで座れる。
「よし、助けるか。お礼に金銭を要求して、滞在資金を手に入れるぞ。あとは、同乗して街まで乗せてもらおう。そして、中で情報を聞き出す」
「じゃあ、行くね!」の言葉と共に、麻衣はすぐに飛び立とうとした。俺は、すかさず麻衣のスカートを引っ張り止める。麻衣は、また俺の目の前で、生半ケツを晒し止まった。
「だから、引っ張んないでって!」
「飛ぶなと言ってるだろ、走っていけ! その前に、防御シールドは展開しておけよ! あと、盗賊は殺さないように!」
「わかったから、早く早く!」
殺さないのは、ここの犯罪処理の仕方が解らないからだ。ゆえに勝手に処理して、後で面倒なことにならない為だ。
俺がスカートから手を離すと、麻衣は「まった、まったー!」と叫びながら、かつ両手でスカートの位置を整えながら、馬車に向かって勢いよく走っていった。
あとは、なにか問題が・・・・あったような気がするが・・・あっ?
「そういえば、言葉が通じない?」
「ご主人様、問題ありません。事前調査で主要言語の解析を完了しております。言語データは、ご主人様と麻衣様が寝てる間に、脳に書き込んでおきました」
「そ、そうか・・・ご苦労」
「もったいない、お言葉です」
いつ書き込んだのだ? 全く気付かなかったのだが・・・ 恐ろしいから、深く考えないでおこう。
「よし、俺達も行くぞ」
「はい」
俺とララは、馬車の方に向かって歩き始めた。
と、その前に瑠偉が起きて、面倒な展開にならない様に深い眠りをかけておこう。
前方を見ると、麻衣が到着したようで剣を抜き、盗賊と対峙していいた。盗賊達は、麻衣の方を向き1人は麻衣の正面に、その一人の後方両脇に各一人、後方に一人。ちょうど、ひし形の形で麻衣と対峙している。
麻衣は剣を横に構え、いかにも横切りをします、的な姿勢をとった。そこから左足を少し前に出し、「てやぁー!」と言う掛け声と主に、先頭の盗賊に向け盛大に剣を振り払った。
なんとも綺麗な、バットスイングだな。と思ったが、よく見るとお尻が引けていて、目を閉じている。大ぶりの上で、それでは当たらないだろう・・・
先頭の盗賊は、素早く一歩下がり剣が振り切った後に反撃を始めた。盗賊は、麻衣の胴に向けて剣を振るった。
カキィーン!!!
相手の剣が麻衣の防御シールドに当たり、乾いた金属音と共に剣がはじかれた。盗賊は『仕留めた!』と確信したのだろう、予想外の結果に驚きの表情を見せ、すぐさま麻衣から距離を取った。
「っふ、なかなかやるわね! ならば、これはどうだ!」
麻衣よ・・決めセリフだけは、一人前だな。しっかり反撃を貰っているぞ、そして普通は死んでいるからな。
麻衣は剣を鞘に収め、その鞘を左手に持った。右手で柄を握り右足を前に出し、姿勢を低くとり、大きく深呼吸をしている。
「必殺っ! 居合切りぃぃー! はぁぁぁぁっ!」
麻衣は叫びながら半歩踏み出し、滑らせる様に剣を抜き、そのまま横方向に切り払う。
おそらく麻衣は、剣道すらやった事ないのであろう。刀身の長さと相手の距離を、全く計算に入れていなかったに違いない。この時、麻衣と退治している盗賊との距離は、3mほど離れていた。当然、麻衣の刀身は虚しく空を切った。更にまたしても、お尻を後方に突き出し、目を閉じている。
「ば、馬鹿な! この速度を見切っただとぉ!」と、麻衣は堂々と言い放った。
なんだろう、この喜劇は? もうちょっと見ていたくなる気分になる。そんな状態の麻衣を、盗賊達はおろか、太った人間とその陰に隠れている少女は、黙って見ていた。
剣を当てて、はじかれたのが原因かもしれない、麻衣の奇行が原因かもしれない。
盗賊達は、少しずつ麻衣から距離を取り始めた。
「ふっ、どうやら、この私を・・・本気にさせたようね!」
麻衣お得意の、大きな胸を乗っける腕組。さらに足を若干開いて、不敵な笑み。
この姿勢はまさか、あのエネルギー弾を打つつもりなのか? さすがにそれは、相手が死んでしまうだろう。
麻衣は右腕を伸ばし、拳を一人の盗賊に向けた。握られた拳から、ゆっくりと人差し指が伸びていく。人差し指の先端は、うっすらと光っていた。さすがに、これは止めないとまずいな。
「ドド〇波ァーーー!!!」
「まてこら!」
俺は、麻衣の側にテレポートで行き、そのまま麻衣の指先を手で包み込み。麻衣の指先から解き放たれた、エネルギー波を回収した。
何の前触れもなく、突然現れた俺を見て。盗賊達は、口を開け俺を見ていた。
最初に俺と目の合った盗賊は、暫らく俺を見ていた。そして、今の自分の状態を思い出したのか、頭を左右に振り、自分の意識を確かめたようだ。
先頭の盗賊は「なんだお前? 何処から来た?」と、俺を見ながら言ってきたので、当然俺に向けて言ったはずだ。しかし「悪人に、名乗る名などないわぁ!」と、俺の後ろのいる麻衣が、勝手に答えてしまった。
これは、素晴らしく話がややこしくなりそうな気がするな・・・
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる