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第15話 それぞれの道

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「とりあえずここを出よう。」

生徒を全員一箇所に集め迷宮から出ることを宣言する。

「来た時はいたけど今はいないってやつはどれだけいるんだ?」

「勇者様御一行とその取り巻きだけだ。」

勇者様御一行と言うのはイケメン野郎本人とその班の事を指し、取り巻きと言うのは簡単に言えば勇者様御一行をヨイショする奴らのことを指す。

「それ以外はここに?」

固めた生徒達を見渡す。その数は明らかに少なく、一瞬にして全体を見れる程だった。

人数が少なすぎないか…?

「いや。炎竜を見た瞬間に逃げていった奴が結構いる…。」

仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが俺にはある疑問があった。

「そいつらと一緒に何で逃げなかったんだ?アレはどう見ても勝てる敵じゃ無かっただろ?」

入ってきた段階で炎竜の姿を確認できたのならそのまま戦わずに逃げるという選択肢があったはずだ。それをせず中に入った事で逃げ道をふさがれたのだから。

「…王子達がいたから大丈夫かと。」

生徒達の前の方に居た体がゴツめの男子生徒が直也の前に答える。

「それでいざ戦ったら王子達が消えたと。」

「あぁ。」

あのイケメン野郎。どこ行きやがったんだ。上の階は遭遇してないし違うのは確実だ。…さらに下か。何を考えてるんだ。

「あれ?渡部くんじゃないか。生きてたんだね。」

不意に声をかけられたのだが、振り向く必要は無かった。その声は今丁度考えていた人物だったから。

「…なぁイケメン。」

「なんだい?」

どうやらイケメンの自覚はあるらしい。顔を少しピクつかせながら王子の方を向く。

「お前。何で皆を見捨てて逃げた?」

「まあ色々あってね。」

イケメン野郎はヘラヘラ笑いながら答える。コイツは四六時中笑っているのだろうか?

「色々の内容は?」

「ハッキリ言った方がいいかい?」

「ああ。」

内容を想像しながら慎重に頷いた。

「簡単に言えば邪魔だからかな。炎竜に襲われたのなら皆が死んでも仕方が無いよね?」

「テメェ…」

コイツはつまり炎竜に殺させるつもりだったってことか。下衆いな。

「君達が生きているのは予定外なんだよね。まあもっとも?君が生きていることが一番予定外なんだけどね。」

「…一つ聞いていいか?」

「なんだい?」

「さっき言ってたが何が邪魔なんだ?見ている限りではお前の邪魔はしていないだろ?」

生徒達を指差しながらイケメンを睨む。

「そうだね。簡単に言うと、僕は昔から・・・弱者が嫌いなんだ。強者に頼るしか出来ない弱者には虫唾が走る。」

今までずっとヘラヘラと笑っていた笑顔が消えた。その表情には何故か怒りが見えた。

「…弱者というのは喧嘩が弱いとかそういう事か?」

恐らく違うだろう回答をする。

「違うさ。その辺に溢れた職業の癖に自分は強いと、選ばれた者だと勘違いする皆みたいな奴のことだよ。」

俺の背後にいる生徒達を睨み、数秒して笑みが顔に戻った。

「昔っていうには俺達に職業なんて付いたのは最近だけど?」

俺の質問を聞いてイケメン野郎はふと何かを考えるように上を向いた。

「…そうだね。それは言葉の綾だよ。気にしなくていい。」

そう言い不敵な笑みを俺に見せた。

これが本当に言葉の綾なのかどうかは今の俺には分からないが分かったことが一つある。それはこのイケメン野郎が何か隠しているという事だ。

いつか暴いてやるさ。近いうちにな。

そう心に決め生徒達の方に体を向ける。

「どうする?」

「ど、どうするって?」

俺の問いに男子生徒が問いで返してくる。

「この後の事だよ。今聞いた通りコイツに着いて行っても死ぬだけだと思う。」

「…あのちょっといいか?」

生徒達の後ろの方にいた男子生徒が手を挙げる。

「あの…俺、アルコット帝国でやりたい事があるんだよ。そっちに行っちゃダメかな…?」

「やりたい事?」

「あ、あぁ。俺の職業が騎士なんだよ。だから帝国の騎士団に入りたいなと思って。」

ああ、なるほど。そう言う手もあるのか。

「あ、俺も!魔導団に入りたい!」

「俺も!」「私も!」「僕も!」

1人、2人が言い出すともう歯止めが効かない。周りに便乗し俺も俺もと言いだした。

「それぞれしたい事がある…ってことだよな。本当に皆はそれでいいのか?」

俺が聞きたい事は一つ。情報も少ない異世界でバラバラになっても大丈夫なのか?と言うことだ。

「ああ。俺はそれがいい。」
「私も1人は嫌だけど数人で固まることにするし!」

なんだかんだ言って皆それぞれ異世界ライフを楽しみたいのか、その考えに賛成した。

「直也は?」

「俺は優…いや、魔導団に入るよ。」

「…そっか。」

今直也が何を言おうとして止めたかは大体だが想像はつく。だか止めたということは何か考えがあるっていうことだろう。

俺は直也がいた方が安心できたんだがな…。

「じゃあ皆はやっと僕の前から消えてくれるんだね。」

ここにきて化けの皮がボロボロと剥がれ出すイケメンは無視しておく。

「じゃあ皆。外に出よう。」

ぞろぞろと階段を上がりだす。

「渡部君、その子達は?」

イケメンはルル達に気がついていなかったようだ。今気づくとは…。面倒くせえ。コイツに俺のスキルを教える必要がないしな…。

「誘拐してきた。」

「やっぱり!」

俺の言葉にいち早く反応する直也。お前が騙されてどうする。嘘だと言うのを分からせるためアイコンタクトを取ろうと試みる。目をパチパチさせてみた。

「…誘拐してきて自慢気にするなよ…」

直也は何か勘違いをしてしまったようだ。

「…そ、そうか。君はそっちの趣味があったんだね。でも誘拐はやめた方がいいと思うよ。」

イケメン野郎ですらちょっと引いている。それに注意もされてしまった。いや、俺は誘拐してないしそっちの趣味もないけどね!?



この日俺は直也だけでなくイケメン野郎にまでロリコン誘拐犯と認識されてしまった。
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