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第1話 ドストライクです!
しおりを挟む―――最近、とてつもなくついてない。
俺、小富 純(16)はそんな漠然とした悩みに今深く悩まされていた。
何がついてないかと言われれば全てだ。
そう思う根拠をいくつか挙げてみる。
まず、俺は高校に近いアパートを借りて一人暮らしをしているが、アパートの床が最近よく抜けるし、戸棚と扉と風呂が今月一度に壊れた。
そして、この前は数ある部屋のなかで俺の部屋のみ泥棒に入られ荒らされたし、通っていた塾は塾長が金を横領して潰れた。
学校の事件は全て俺のせいになる、飲食店のバイトでもクレームが来るのは他の人がやったことでも俺。
……流石に不幸が重なりすぎている。
俺は部屋のど真ん中に置いてあるちゃぶ台の上で昼食のカップラーメンを食べながら改めて自身の悩みを再確認した。
元々は不自由ない生活を遅れていたのに、つい一ヶ月ほど前から全てが上手くいかなくなったのだ。
どうして俺ばかりが……なんて現実逃避さえしてしまう。
そんな俺が、ひもじい思いでラーメンをすすっていると
突然、よく通った女性の声が聞こえた。
「その理由を教えてあげましょうか?」
「……っ!誰だ!また泥棒か!?」
「ち、違います!……コホン、とにかくそこの押し入れを開けてください」
「押し入れ?」
俺は、最初は驚いたものの会話した感覚からしてそこまで恐い相手ではないと感じたので、押し入れを開けてみることにした。
押し入れに近づき、手を伸ばす。
……待てよ、この奥に誰がいるのか分からないぞ?
やはり知らない相手がこの奥にいると思うと少し恐怖は残る。
伸ばしていた手を俺は少し遠ざけた。
中は気になるけど開けたとき中にヤバイ人がいたらどうしよう……っていうか人様の家に勝手に上がり込んで押し入れにいるって絶対ヤバイやつだろ。
でも、開けなきゃだなあ……。
そして、戸惑い続けること5分。
「早く開けてよ!!」
押し入れが勢いよく開いた。
そして、中から大きい声を出しながら出てきたのは玉虫色のすこしボロい服をきた少女……年は中学生か小学生だろうか?
手には杖のようなものを持っている。
そして
「(……か、可愛い!いや、可愛すぎる!!)」
ドストライクだ。
今まで俺は人並みに恋愛というものをしてきたつもりだったが、今の衝撃と比べれば、なんてことはない気の迷いだったと言うしかない。
真珠のように白い肌、吸い込まれそうな黒く長い髪、そして整った幼さの残る顔立ち!
俺はロリコンではない自信があったが、もうこの娘を好きなことでロリコンといわれるのなら本望とさえ思う。
本当に人間離れしているとしか形容できなかった。
「……私は貧乏神のユメ。あなたが困窮した生活に陥ったのは貧乏神である私がこの部屋にとり憑いたからで……って何ですか?私何か変ですか?」
「好きです!結婚を前提に付き合って下さい!」
「どうしてそうなったんですか!?」
おっと、つい本心を口走ってしまった……嫌われないようここは落ち着いて対応しないと。
ユメちゃんは口をポカーンと開けて固まっていたが、動揺しつつも言葉を続ける
「あなたの家はもう困窮しきったようなので私はこの家を離れます。次第に運は回復していくでしょう」
ん? ユメちゃんハナレル?……オワカレ?
「嫌だあああああ!残って下さい!お願いします!!俺を置いていかないで!」
「なんで泣いてるんですか!?っていうか初対面ですよね?どうして彼女に別れを告げられた彼氏のような反応を!?私貧乏神ですよ!?」
折角の運命が終わりそうな気がした俺は人生で始めて泣きながら人(?)を引き留めた。
ユメちゃんはさらに訳の分からないといった様子になる。
「……と、とにかく!これ以上私があなたの家にいるとあなたの生命も危うくなってしまうので行きますね!」
「待って!待ってくれユメちゃん!!」
彼女が押し入れから出て来て窓の方へ飛んで行こうとしたその時だった。
……『ぐうううぅ』という間抜けな音が彼女から鳴った。
すると、彼女は空中でビタッと止まると、床に降りる。
「あ、あの……この家はご飯を頂いてから立ち去るということ、にしましゅ!」
彼女は赤面しながらストンとちゃぶ台に座った。
「(恥ずかしがるのかわええええええええええ!)」
俺のテンションはふりきれる寸前まで上がった。
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