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第十七話 IS(イモウトッテ・ステラレマス?)

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 「ただいまー!兄さま、元気にしてましたか!」

 「……」

 「あはは!照れてるんですか!容姿端麗、文武両道、才得兼備の可愛いあなたの妹天王寺 若葉てんのうじ わかばですよ!☆」

 「俺にそんな語尾に星をつける後付け設定みたいな妹はいない!」

 「え……冗談じゃなく本当に分からないんですか?」

 「いや、妹の若葉は知っている。だが、もっと大人しい雰囲気の妹のはずだ……!」

 「ふふっ、兄さま……人は変わるものですよ」

 1月下旬のある日、別居中の母と暮らしているはずの妹、若葉が家に来た。
 俺が驚いたのは、急に家に来たことよりも、もともとは黒のストレートで日本人形のようだった髪が今は、明るい茶色のボブになっていることだ。
口調ももっと清楚なはずだ!
若葉はこんなにはじけてないはずだっ!

 若葉は俺のちゃんとしたほうの妹なんだい!

きっと同姓同名の自称俺の妹だよな……そうだ、多分そうだ。

……まあ、現実逃避はここまでにしておいて。

 俺はこの出来事に対しては、ある程度の覚悟を持たなければいけないということを知っている。

 確実に言えるのだ

 ……絶対に面倒なことになる、と言うことだけは。

 すると、階段から結希が降りてくる音がする。
 振り向いてみれば、エク〇シストのようにブリッジしながら降りてきたが、やはり結希だ。
 俺はとっさに若葉を結希の視界に入れないように立ったが、結希は若葉に気づいたようだ。
 寝癖がパンク系のロッカーのように爆発している結希がスタスタと若葉に近づいていく。

 ……わあ、嫌な予感がする。

 実は若葉と結希は

 「お兄、お坊さん?にしては性格悪そうな顔だね」

 「結~希っ!お客さんでしょ?ホントに変わってないんだから☆
どうしたの?実験失敗みたいな髪形だけど」

 「ああっ!若葉か!分からなかったよ!何その髪!トレセン?似合ってなーい」
 (※トレセン×イメチェン〇)

 と笑顔で穏やかに話ながらも

……激しく衝突し掴みあっている。
 今にも頭と頭がぶつかりそうなほど顔を近づけてメンチを切っている。

 そう、二人はとてつもなく仲が悪い。

 
 二人は双子だ。
しかし、どのジャンルにおいても優秀な若葉に比べ、何も出来なかった結希は若葉より手がかかり、結果として、結希にばかり親や俺が構うことになった。
若葉はそんな結希に嫉妬し、結希を嫌っていたのだ。
 そして、結希も幼い頃から双子の若葉と比較され続けた上に、嫌味ばかり言ってくる若葉のことが大嫌いだった。

 そんな二人は何かにつけて喧嘩を繰り返しているのだ。

 俺の親が三年前、結希にあんなこと・・・・・をして別居することになってから、俺は結希と二人で家に残り、若葉は母親についていった。

 そんな若葉が久しぶりに俺達の家に帰って来たのだ。

 俺は正直嬉しいが、結希は大嫌いな双子の姉妹に会うのだから気が進まないだろう……

 っていうか、仲裁するのが俺だからとてつもなく面倒なことになるのは分かっているのだが。

 そしてそんな双子に向き直ると、

 ……結希が若葉のマウントをとり、さながら悪役のような笑みを浮かべ殴る構えを構えをしていた。

 「若葉……出来損ないの私に負けてるヘブンはどう?」

 「くそっ……!気分をヘブンとか言ってる馬鹿に負けるなんて!」

 「そのお前のフェラス口を開けないようにしてやるううううううっ!」

 「減らず口だろうがボケがあああああっ!」

 マウント状態からも反撃しようとする若葉と本当に殴りかかりそうな勢いの結希。

 「はい!そこまでええええっ!」

 ……俺は、すぐさま止めに入った。

 ********

 「で、今日は何しに来たんだ?」  

 「ああ……兄さまとそこの人間失格ゆきが元気にしてるかって、母さんが」

 「へえ……あの母さんが」

 「……っ!お母さん」

 ここに来た目的は母さんに頼まれ、安否確認をしにきただけらしい……。

 それを聞いた結希は、すこし怯えたような態度になり、震えている。
多分この状態で写真を撮ると震えすぎて幽霊みたいなぶれかたになるんじゃないかというくらい震えている。

 ……俺もつい拳に力が入ってしまう。

 まああんなこと・・・・・があったのだ……当然の反応だろう。
 
 すると、本当に若葉はそれだけの用事らしく、もう帰ると言い出した。

 ……まあ、俺としてはそっちの方が楽でいいが。

 「じゃあまたね兄さま!……あとそこの出来損ない……チッ!」     

 「明後日来やがれ!」

 「結希……それは可能だ。
一昨日来やがれだろ……まあ、また気が向いたら遊びに来ていいんだぞ若葉」

 「ありがとう!☆」

 若葉はニッコリと笑うと母と住むマンションの方向に歩き出した。
 
 ……と、思いきやまたこちらの方に振り返って

 「あっ!そういえばもうすぐお父さん帰ってくるって言ってたよ!」

 「「はあああああああああ!?」」 

 俺たちに爆弾発言をして次は本当に帰っていった。

 ……父さんが、帰ってくる?

 俺はその事実に向けて武器を調達しようと心に決めたのであった。
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