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高橋 優斗(たかはし ゆうと)
高橋 優斗の逝き方
しおりを挟む卵のカラは前よりも分厚くなった。
外出も学校以外は禁止されたし、勉強も監視されながらやることになった。
スマホはなんとか死守できたが、それもいくつか条件を付けられた。
スマホの料金を払っているのは俺なのになぜだと聞くと「保証人は私だ。お前は私がいないとスマホをもつことすらできない」との返答があった。
それに、学校にも正直俺は馴染めていない。
俺は努力もできないクズのくせに進学校に通っているせいで、勉強第一の周りの人間とは全く合わなかった。
その上、家でもストレスを溜めるばかり。
それを今までは楽しいことを探して凌いでいたが、それも最近はできなくなっていた。
……やばい。『シニタイ』。
かつてないほどに波が押し寄せた。
俺は生きなければいけない。
こんな、一時的な感情に流されて、死ぬなんて嫌だ。
俺は死ななければならない。
俺のような人間は存在するだけで周りの人間を苦しめるし、生きている意味がない。
………………。
俺は学校のネクタイを上から下げて、台に乗り、それをじっと眺めた。
******
俺はその日、死んだ。
どうしようもなかった。
自分の気持ちを止める術を持っていなかった。
「死んだらこうなるのか」
首をつっている自分の体が下に見える。
霊的なものを信じていない俺だったが、自分がなってみると、やはり信じるしかない。
ずっと上に引っ張られているような感覚がする。
きっと、これに逆らうのをやめれば、天にいくのだろう。
でも、俺はまだ天に行くわけにはいかない。
確かめたいことがあるのだ。
しばらくすると、扉があいた。
母だ。
「……っ!」
母は俺の姿に衝撃をうけると、すぐさま家族を呼びに行った。
そして、数時間としないうちに家の周りには人だかりが、家の中には警官が押し寄せる。
母は泣いていた。
それは悲しげに。
そして、俺の遺体の横にたって、手を握ると。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
と繰り返す。
……なるほど、これはすごい。
母は先生と話したり、取材を受けたりしていた。
そりゃそうだ。俺が今まで漏らした不満は全て親の不満なのだから、原因があの人たちにあると疑われるのが普通だ。
それに対して母は「当然の報いだ」と言って、うなだれる。
いい母親だ。
……世間的には。
母は部屋で1人になった時呟いた。
それはもううらめしそうに。
「面倒なことしやがって」
俺はニヤリと微笑むと、天に召された。
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