イキカタ

筒猫

文字の大きさ
上 下
3 / 3
高橋 優斗(たかはし ゆうと)

高橋 優斗の逝き方

しおりを挟む

 卵のカラは前よりも分厚くなった。

 外出も学校以外は禁止されたし、勉強も監視されながらやることになった。
スマホはなんとか死守できたが、それもいくつか条件を付けられた。
スマホの料金を払っているのは俺なのになぜだと聞くと「保証人は私だ。お前は私がいないとスマホをもつことすらできない」との返答があった。

 それに、学校にも正直俺は馴染めていない。
俺は努力もできないクズのくせに進学校に通っているせいで、勉強第一の周りの人間とは全く合わなかった。
その上、家でもストレスを溜めるばかり。
それを今までは楽しいことを探して凌いでいたが、それも最近はできなくなっていた。

 ……やばい。『シニタイ』。

 かつてないほどに波が押し寄せた。

 俺は生きなければいけない。
こんな、一時的な感情に流されて、死ぬなんて嫌だ。

 俺は死ななければならない。
俺のような人間は存在するだけで周りの人間を苦しめるし、生きている意味がない。

 ………………。

 俺は学校のネクタイを上から下げて、台に乗り、それをじっと眺めた。


 ******

 俺はその日、死んだ。

 どうしようもなかった。
自分の気持ちを止める術を持っていなかった。

 「死んだらこうなるのか」

 首をつっている自分の体が下に見える。
霊的なものを信じていない俺だったが、自分がなってみると、やはり信じるしかない。

 ずっと上に引っ張られているような感覚がする。
きっと、これに逆らうのをやめれば、天にいくのだろう。

 でも、俺はまだ天に行くわけにはいかない。

 確かめたいことがあるのだ。

 しばらくすると、扉があいた。
母だ。

 「……っ!」

 母は俺の姿に衝撃をうけると、すぐさま家族を呼びに行った。

 そして、数時間としないうちに家の周りには人だかりが、家の中には警官が押し寄せる。

 母は泣いていた。
それは悲しげに。

 そして、俺の遺体の横にたって、手を握ると。

 「ごめんなさい。ごめんなさい」

 と繰り返す。

 ……なるほど、これはすごい。

 母は先生と話したり、取材を受けたりしていた。
そりゃそうだ。俺が今まで漏らした不満は全て親の不満なのだから、原因があの人たちにあると疑われるのが普通だ。

 それに対して母は「当然の報いだ」と言って、うなだれる。

 いい母親だ。

 

  ……世間的には。

 母は部屋で1人になった時呟いた。
それはもううらめしそうに。

 「面倒なことしやがって」

 俺はニヤリと微笑むと、天に召された。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……

紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz 徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ! 望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。 刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...