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精霊の加護179 ビーチェの実家と南部湾巡り
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精霊の加護
Zu-Y
№179 ビーチェの実家と南部湾巡り
ビーチェの実家のリシッチャ流刀術道場に着くと、実家への連絡に先駆したビーチェが門前で出迎えてくれて、中に通されると、すぐにピエトロさんとマルコさんがいる庭に通された。
「お義父さん、大勢でお世話になります。」
「おう、構わねぇよ。ゆっくりして行きな。」
「マルコさんもいらしてたんですね。」
「ああ。後で旨いもん食わしてやるぜ。」
「楽しみだなぁ。」
それから俺は、ピエトロさんとマルコさんにリチャード、ラモ、ナディア様、ペリーヌ様を紹介した。マルコさんが、胸に手を当てて片膝を付いた。
「皆さんも、遠慮なくゆっくりして行ってくれ。
ん?マルコ、お前、なんでそんなに畏まってんだ?」
あ、ピエトロさんのこの口調、ビーチェったら、4人の素性をピエトロさんに伝えてないな。苦笑
「それはね、パパ。ラモっちがご南部公爵様のご嫡男様で、リチャード様が北部公爵様のご嫡男様で、ラモっちの奥方のペリーヌ様が王家の二の姫殿下で、リチャード様の奥方の根ディア様が王家の一の姫殿下だからだよ。」
「え?…えー!こ、これはとんだ粗相を!」慌てて胸に手を当てて片膝を付くピエトロさん。
「いやいや、ビーチェのパパさん。僕たち、お微行だからそんなに畏まらないでよ。」
「左様、私たちが厄介になるのだからな。」
「もう、ビーチェったら、わざと内緒にしてましたのね。」
「流石にお可哀想ですわ。」
「えへへー。パパはねー、普段から『何があっても動じるな。』って言ってるんだよねー。
ね、パパ?」
「ビーチェ、お義父さんは驚いてはおられたけど、すぐに臣下の礼を取ったし、動じていなかったじゃないか。」俺がフォローを入れるとピエトロさんから感謝の眼差しが飛んで来た。笑
「まあねー。ちょっと際どかった気もするけどねー。ひひひ。」
それから、ピエトロさんが、VIP4人に、エンマさん、ジューリアさん、ロレンを紹介し、道場で門弟たちの稽古の見学になった。
急な訪問であったにも拘らず、ロレンが門弟たちを指揮して、ひと通りの稽古の後、紅白試合に切り替えた。
ピエトロさんとエンマさんは、道場の上座に案内されたVIP4人の横で諸々の解説である。
ちなみに俺たちと護衛たちは、一般の観客席だった。
門弟たちの白熱した紅白試合が続き、リチャードとラモは、ピエトロさんにいろいろと質問している。
ナディア様とペリーヌ様は、少々ご退屈されるのではないかと思ったが、予想に反して、食い気味に紅白試合をご覧になっていた。ときどき、エンマさんに質問もしてたし。この姫様たち、結構、荒事がお好きなのな。
紅白試合の最後は、ビーチェとロレンの対戦だった。
互いに隙がなく、正対したまま、しばらくは動かずにいた。いや、動けずにいたのかもしれない。
皆、固唾を飲んでふたりに食い入っている。
ビーチェがすっと竹刀の切っ先を動かして誘うと、それに呼応してロレンが大きく踏み込んだ。ロレンの竹刀がビーチェに吸い込まれる。決まった!
と思われたが、ロレンの竹刀が突いたのはビーチェではなく、ビーチェの残像だった。
ビーチェは紙一重で躱し、ロレンにカウンターの一撃を見舞ったが、その一撃はロレン右の籠手を掠ったに過ぎなかった。当然一本にはならない。
そして再び正対するふたり。
このような行き詰る攻防が続き、互いに有効打が出ぬまま、
「やめっ!」と、審判から声が掛かり、試合は引分けで終わったのだった。
互いに礼をして別れるふたり。
戻って来たビーチェは、珍しく肩で息をしていた。
「うーん、悔しいけど僕の負けだ。」
「え?引分けだろ。」
「いや、あのまま続いてたら僕のスタミナが切れていた。ロレンの奴、終わっても息切れひとつしてやしない。それに圧が物凄くなってたよ。僕ももっと精進しないと…。」
そこへロレンがやって来た。
「いやー、姉貴。負けた、負けた。」
「何言ってんの?あのまま続いてたら僕のスタミナ切れだよ。」
「いやいや、最初の籠手な、一本にはならなかったけど、真剣だったらあれで決まりだよ。あれで傷を負ってたら、あの後の攻防はできなかったさ。」
「そんなこと…。」
「流石に姉貴は冒険者で実戦を繰り返してるだけあるよなぁ。ぜひまたやろうぜ。」
「うん。」
ふたりが握手して、道場内は割れんばかりの拍手となった。ピエトロさんもエンマさんも満足そうだ。
その後、順番に風呂を頂いて、夕餉となった。
夕餉はマルコさん自慢の島料理と、ジューリアさん自慢の本土料理。リシッチャ亭の二大看板メニューだ。
紅白試合の間、マルコさんとジューリアさんは厨房で料理を作っていたのだ。護衛たちの分も合わせてちょっこら40人分だから大変な量だけどな。
最初のうちはVIP4名に緊張していたロレンだったが、ラモとリチャードが今日の試合内容を褒め、そして試合後に息を切らしていなかったロレンのスタミナに感心することしきりだった。
ふたりとも、ロレンの考案したスタミナを付ける訓練方法を、食い入るように聞いていたし。
この後、北府近衛隊と南部湾警備隊に、ロレン式スタミナ訓練法が、取り入れられたのは言うまでもなかろう。
なお、このスタミナ訓練は、期せずして、それぞれの隊員たちから『リシッチャ流鬼の猛特訓』と呼ばれるようになる。笑
その晩の輪番は、ビーチェとドーラとトーラだった。発情期最終日のトーラだけは、当然だけれども生でしたよ。
実家であることを気にしてか、ビーチェが遠慮がちだったので、面白がって、散々攻め立てたら、我慢の堰が切れた途端、遠慮なく声を上げ出した。するとドーラとトーラも、ビーチェに右へ倣えである。興が乗った俺はどんどんエスカレートしてしまった。若気の至りってやつ?苦笑
翌朝、ピエトロさんはなぜか不機嫌で、エンマさんとジューリアさんはニマニマしていた。
ロレンがビーチェに、
「姉貴、早速夜のスタミナ猛特訓かよ。」と突っ込んで引っ叩かれていたし、マルコさんは、俺の肩に手を回し、コソコソ声で、
「ゲオルク、ビーチェの奴はやっぱり激しいじゃねぇか。それと龍人と獣人の姉ちゃんたちもな。それにしてもお前はタフな野郎だなぁ。」と、言って来た。
リチャードとラモは、
「ゲオルク、今更だが遠慮ないな。」
「だねー、僕もゲオルクに釣られそうになったよ。我慢したけどねー。」
ナディア様とペリーヌ様だけは、いつも通り微笑んでおられた。
朝餉を摂った後、ビーチェの実家を出発、ラクシーサ港でクロチュデルスゥデ号に乗船し、間もなくラクシーサ港を出港した。
満帆に張った帆で、ウィンの風をばっちり捉えたクロチュデルスゥデ号は、南部湾を南府へ向けて突っ切って行くかと思いきや、北東に進路を取ってネヴェッツィに進路を取った。
「何でネヴェッツィに寄るんだ?」とラモに聞くと、
「ペリーヌもナディア様もラクシーサの珊瑚を大層喜んでくれたじゃないか。だからさ、ネヴェッツィの真珠とヴァジェノの螺鈿も気に入ってくれるんじゃないかと思ってね。」
「じゃあ、ヴァジェノにも寄るのか?」
「うん。夕方にはネヴェッツィ、夜間航行で明日の朝にはヴァジェノ、そして明日の夕方には南府だね。南府に直行するより1日余分に掛かるけどさ。」
「リチャードも承知か?」
「もちろんだとも。私も次に南部に来るのはいつになるか分からないからな。折角だからネヴェッツィの真珠とヴァジェノの珊瑚もぜひ見ておきたいんだ。」
いつの間にか、ラモとリチャードの中で話は着いていたようだ。ナディア様もペリーヌ様も真珠に螺鈿と聞けば、否やはないだろう。
俺は送迎のお礼に、ツリとメタに船のメンテをさせた。
ツリの精霊魔法でマストや帆やロープなどの植物に由来する船材が新品同様に回復し、メタの精霊魔法で金具が新品同様に磨き上げられる。
ラクシーサ港を出てすぐにこのメンテを行うと、元々高速の船足がさらに上がった。
ひと仕事終えたツリとメタに魔力補給をしていると、
ラモが飛んで来て俺の両手を握り、ぶんぶんと上下に振って、
「ありがとう。ゲオルク、本当にありがとう!マイハニーが新造船のようになったよ。見てくれよ、この船足を。素晴らしい。実に素晴らしい!
ありがとう、精霊たちよ。」
ツリとメタは俺の陰に隠れたけどな。苦笑
航海中は、精霊たちに精霊魔法をぶっ放し続けさせて、精霊たちの経験値を上げた。第五形態の王国の精霊たちは、早くカンストをさせたいし、第四形態のソルとダクは早く第五形態に上げたい。
ツリとメタのメンテで船足の上がったクロチュデルスゥデ号は、夕方になる前にネヴェッツィ港に到着。その分ゆっくり真珠を選んで、日没にネヴェッツィ港を出港。
夜間航行で南部湾を東から西へ横切り、ヴァジェノ港に入港したのは、夜明け直後だった。
「ツリとメタがメンテナンスしてくれたお陰で、船足が速くなったから、僕の計算より早くヴァジェノに着いちゃったよ。この時間じゃあ、螺鈿のお店はまだ開いてないね。」
クロチュデルスゥデ号でゆっくり朝餉を摂ってから、下船して螺鈿を買いに行き、午前中にヴァジェノ港を出港。
そしてその日の夕方には南府湾に入港したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
毎週土曜22時に投稿します。
リアルが忙しくなり、執筆の時間を十分に取れませんので、次回の投稿でしばらく休載します。落ち着いたら必ず再開します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№179 ビーチェの実家と南部湾巡り
ビーチェの実家のリシッチャ流刀術道場に着くと、実家への連絡に先駆したビーチェが門前で出迎えてくれて、中に通されると、すぐにピエトロさんとマルコさんがいる庭に通された。
「お義父さん、大勢でお世話になります。」
「おう、構わねぇよ。ゆっくりして行きな。」
「マルコさんもいらしてたんですね。」
「ああ。後で旨いもん食わしてやるぜ。」
「楽しみだなぁ。」
それから俺は、ピエトロさんとマルコさんにリチャード、ラモ、ナディア様、ペリーヌ様を紹介した。マルコさんが、胸に手を当てて片膝を付いた。
「皆さんも、遠慮なくゆっくりして行ってくれ。
ん?マルコ、お前、なんでそんなに畏まってんだ?」
あ、ピエトロさんのこの口調、ビーチェったら、4人の素性をピエトロさんに伝えてないな。苦笑
「それはね、パパ。ラモっちがご南部公爵様のご嫡男様で、リチャード様が北部公爵様のご嫡男様で、ラモっちの奥方のペリーヌ様が王家の二の姫殿下で、リチャード様の奥方の根ディア様が王家の一の姫殿下だからだよ。」
「え?…えー!こ、これはとんだ粗相を!」慌てて胸に手を当てて片膝を付くピエトロさん。
「いやいや、ビーチェのパパさん。僕たち、お微行だからそんなに畏まらないでよ。」
「左様、私たちが厄介になるのだからな。」
「もう、ビーチェったら、わざと内緒にしてましたのね。」
「流石にお可哀想ですわ。」
「えへへー。パパはねー、普段から『何があっても動じるな。』って言ってるんだよねー。
ね、パパ?」
「ビーチェ、お義父さんは驚いてはおられたけど、すぐに臣下の礼を取ったし、動じていなかったじゃないか。」俺がフォローを入れるとピエトロさんから感謝の眼差しが飛んで来た。笑
「まあねー。ちょっと際どかった気もするけどねー。ひひひ。」
それから、ピエトロさんが、VIP4人に、エンマさん、ジューリアさん、ロレンを紹介し、道場で門弟たちの稽古の見学になった。
急な訪問であったにも拘らず、ロレンが門弟たちを指揮して、ひと通りの稽古の後、紅白試合に切り替えた。
ピエトロさんとエンマさんは、道場の上座に案内されたVIP4人の横で諸々の解説である。
ちなみに俺たちと護衛たちは、一般の観客席だった。
門弟たちの白熱した紅白試合が続き、リチャードとラモは、ピエトロさんにいろいろと質問している。
ナディア様とペリーヌ様は、少々ご退屈されるのではないかと思ったが、予想に反して、食い気味に紅白試合をご覧になっていた。ときどき、エンマさんに質問もしてたし。この姫様たち、結構、荒事がお好きなのな。
紅白試合の最後は、ビーチェとロレンの対戦だった。
互いに隙がなく、正対したまま、しばらくは動かずにいた。いや、動けずにいたのかもしれない。
皆、固唾を飲んでふたりに食い入っている。
ビーチェがすっと竹刀の切っ先を動かして誘うと、それに呼応してロレンが大きく踏み込んだ。ロレンの竹刀がビーチェに吸い込まれる。決まった!
と思われたが、ロレンの竹刀が突いたのはビーチェではなく、ビーチェの残像だった。
ビーチェは紙一重で躱し、ロレンにカウンターの一撃を見舞ったが、その一撃はロレン右の籠手を掠ったに過ぎなかった。当然一本にはならない。
そして再び正対するふたり。
このような行き詰る攻防が続き、互いに有効打が出ぬまま、
「やめっ!」と、審判から声が掛かり、試合は引分けで終わったのだった。
互いに礼をして別れるふたり。
戻って来たビーチェは、珍しく肩で息をしていた。
「うーん、悔しいけど僕の負けだ。」
「え?引分けだろ。」
「いや、あのまま続いてたら僕のスタミナが切れていた。ロレンの奴、終わっても息切れひとつしてやしない。それに圧が物凄くなってたよ。僕ももっと精進しないと…。」
そこへロレンがやって来た。
「いやー、姉貴。負けた、負けた。」
「何言ってんの?あのまま続いてたら僕のスタミナ切れだよ。」
「いやいや、最初の籠手な、一本にはならなかったけど、真剣だったらあれで決まりだよ。あれで傷を負ってたら、あの後の攻防はできなかったさ。」
「そんなこと…。」
「流石に姉貴は冒険者で実戦を繰り返してるだけあるよなぁ。ぜひまたやろうぜ。」
「うん。」
ふたりが握手して、道場内は割れんばかりの拍手となった。ピエトロさんもエンマさんも満足そうだ。
その後、順番に風呂を頂いて、夕餉となった。
夕餉はマルコさん自慢の島料理と、ジューリアさん自慢の本土料理。リシッチャ亭の二大看板メニューだ。
紅白試合の間、マルコさんとジューリアさんは厨房で料理を作っていたのだ。護衛たちの分も合わせてちょっこら40人分だから大変な量だけどな。
最初のうちはVIP4名に緊張していたロレンだったが、ラモとリチャードが今日の試合内容を褒め、そして試合後に息を切らしていなかったロレンのスタミナに感心することしきりだった。
ふたりとも、ロレンの考案したスタミナを付ける訓練方法を、食い入るように聞いていたし。
この後、北府近衛隊と南部湾警備隊に、ロレン式スタミナ訓練法が、取り入れられたのは言うまでもなかろう。
なお、このスタミナ訓練は、期せずして、それぞれの隊員たちから『リシッチャ流鬼の猛特訓』と呼ばれるようになる。笑
その晩の輪番は、ビーチェとドーラとトーラだった。発情期最終日のトーラだけは、当然だけれども生でしたよ。
実家であることを気にしてか、ビーチェが遠慮がちだったので、面白がって、散々攻め立てたら、我慢の堰が切れた途端、遠慮なく声を上げ出した。するとドーラとトーラも、ビーチェに右へ倣えである。興が乗った俺はどんどんエスカレートしてしまった。若気の至りってやつ?苦笑
翌朝、ピエトロさんはなぜか不機嫌で、エンマさんとジューリアさんはニマニマしていた。
ロレンがビーチェに、
「姉貴、早速夜のスタミナ猛特訓かよ。」と突っ込んで引っ叩かれていたし、マルコさんは、俺の肩に手を回し、コソコソ声で、
「ゲオルク、ビーチェの奴はやっぱり激しいじゃねぇか。それと龍人と獣人の姉ちゃんたちもな。それにしてもお前はタフな野郎だなぁ。」と、言って来た。
リチャードとラモは、
「ゲオルク、今更だが遠慮ないな。」
「だねー、僕もゲオルクに釣られそうになったよ。我慢したけどねー。」
ナディア様とペリーヌ様だけは、いつも通り微笑んでおられた。
朝餉を摂った後、ビーチェの実家を出発、ラクシーサ港でクロチュデルスゥデ号に乗船し、間もなくラクシーサ港を出港した。
満帆に張った帆で、ウィンの風をばっちり捉えたクロチュデルスゥデ号は、南部湾を南府へ向けて突っ切って行くかと思いきや、北東に進路を取ってネヴェッツィに進路を取った。
「何でネヴェッツィに寄るんだ?」とラモに聞くと、
「ペリーヌもナディア様もラクシーサの珊瑚を大層喜んでくれたじゃないか。だからさ、ネヴェッツィの真珠とヴァジェノの螺鈿も気に入ってくれるんじゃないかと思ってね。」
「じゃあ、ヴァジェノにも寄るのか?」
「うん。夕方にはネヴェッツィ、夜間航行で明日の朝にはヴァジェノ、そして明日の夕方には南府だね。南府に直行するより1日余分に掛かるけどさ。」
「リチャードも承知か?」
「もちろんだとも。私も次に南部に来るのはいつになるか分からないからな。折角だからネヴェッツィの真珠とヴァジェノの珊瑚もぜひ見ておきたいんだ。」
いつの間にか、ラモとリチャードの中で話は着いていたようだ。ナディア様もペリーヌ様も真珠に螺鈿と聞けば、否やはないだろう。
俺は送迎のお礼に、ツリとメタに船のメンテをさせた。
ツリの精霊魔法でマストや帆やロープなどの植物に由来する船材が新品同様に回復し、メタの精霊魔法で金具が新品同様に磨き上げられる。
ラクシーサ港を出てすぐにこのメンテを行うと、元々高速の船足がさらに上がった。
ひと仕事終えたツリとメタに魔力補給をしていると、
ラモが飛んで来て俺の両手を握り、ぶんぶんと上下に振って、
「ありがとう。ゲオルク、本当にありがとう!マイハニーが新造船のようになったよ。見てくれよ、この船足を。素晴らしい。実に素晴らしい!
ありがとう、精霊たちよ。」
ツリとメタは俺の陰に隠れたけどな。苦笑
航海中は、精霊たちに精霊魔法をぶっ放し続けさせて、精霊たちの経験値を上げた。第五形態の王国の精霊たちは、早くカンストをさせたいし、第四形態のソルとダクは早く第五形態に上げたい。
ツリとメタのメンテで船足の上がったクロチュデルスゥデ号は、夕方になる前にネヴェッツィ港に到着。その分ゆっくり真珠を選んで、日没にネヴェッツィ港を出港。
夜間航行で南部湾を東から西へ横切り、ヴァジェノ港に入港したのは、夜明け直後だった。
「ツリとメタがメンテナンスしてくれたお陰で、船足が速くなったから、僕の計算より早くヴァジェノに着いちゃったよ。この時間じゃあ、螺鈿のお店はまだ開いてないね。」
クロチュデルスゥデ号でゆっくり朝餉を摂ってから、下船して螺鈿を買いに行き、午前中にヴァジェノ港を出港。
そしてその日の夕方には南府湾に入港したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
毎週土曜22時に投稿します。
リアルが忙しくなり、執筆の時間を十分に取れませんので、次回の投稿でしばらく休載します。落ち着いたら必ず再開します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「母娘丼W」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/265755073
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