精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護127 アクアビット号

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精霊の加護
Zu-Y

№127 アクアビット号

 翌日から、俺は王宮内での待機を命じられた。
 王太子殿下が、4人の公爵様方と宰相様とともに、帝国大使と教国大使と、帝国の謀反貴族たちの子息子女の受け入れについて、仲介交渉をしているのだ。
 交渉が停滞したら俺を呼ぶので、いつでも来られるように王宮内で待機しろとのご命令だ。
 なお、王宮内にいれば、どこにいてもいいらしい。

 働き者のわが妻たちは、当然の如く俺を置いてクエストに行ってしまった。俺を除くスピリタスメンバーは、ワルキューレとのサブパーティ名を持っている。
 王宮で待機しなければならない俺に付き合っているより、ワルキューレとして、活躍する方がいいに決まってる。泣

 わが妻たちを送り出して、王宮内をぶらついた。
 宮廷魔術師の訓練場で、王国7精霊たちの属性攻撃魔法を、加減しながらぶっ放し、騎士団と近衛隊の状態異常対策訓練では、ダクの状態異常魔法を掛けてやった。もちろん訓練でのケガ人には、ソルの回復魔法で瞬時に治してやった。
 これが騎士団と近衛隊に重宝され、翌日から正式に協力要請が舞い込んだ。まあ、暇だからいいけど。

 王宮で待機すること3日目。殿下からお召しが掛かったので、殿下の執務室に行くと、いつものメンバーの殿下、4人の公爵様方、宰相様に加え、教国大使、帝国大使もいた。
「殿下、お召しにより、ゲオルク・スピリタス、参上致しました。」
「大儀。話はまとまったぞ。
 宰相、説明せよ。」殿下の説明が、超短い。笑

「はっ。承知しました。
 ではスピリタス卿、御説明申し上げる。」
 おや?いつものゲオルク呼びじゃないぞ。あ、そうか、大使たちがいるから外向けなんだ。宰相様はきっちりした性格だもんな。笑
 宰相様が続けた。

「帝国で準備が整い次第、新皇帝どのの戴冠式が帝都モスコペテブルで行われる。戴冠式には、帝国から王国に招待状が届くが、スピリタス候を、王太子殿下の名代として帝都へ遣わす。
 戴冠式の後、特赦が発表され、謀反貴族の子息子女9名を、教国での出家を条件に、助命することを発表する。スピリタス候はパーティを率いて、子息子女9名を帝都から教都イスタナンカラまで護衛してもらう。
 帝都から国境の町バレンシーまでは帝都騎士団、バレンシーから西部の間は西府騎士団、中部では王都騎士団、東部から国境の町ミュンヒェーまでは東府騎士団、ミュンヒェーから教都までは教都騎士団が、それぞれスピリタス候のパーティに同行する。
 スピリタス卿は、教都イスタナンカラでの、謀反貴族子息子女の出家の儀を見届けた後、王都へ帰還。
 スピリタス候の報告を受けて、王都では、殿下、教皇名代教国大使どの、皇帝名代帝国大使どのの3名で、王国を盟主とした三国同盟に調印する。
 以上だ。質問は?」

「てことは、俺は帝国からの招待状が来るまで、王都にいるんですか?新帝のイゴールどのは、戴冠式は地固めをしてからだから、半年くらい先になると言ってましたよ。」
 この質問には殿下が答えてくれた。
「いや、領地に戻って内政に勤しむがいい。その代わり、すぐに連絡が付くようにしておけよ。ふらふらとあちこちを出歩くんじゃないぞ。居場所を移動するときには、新たな居場所を必ず報告せよ。」
「承知しました。ちょっと北府に用事があるので、それからでも構いませんか?」
「それは構わんぞ。」
「では早速、明日、発ちます。」
「待て、ゲオルク。余も3日後に北府に向けて王都を発つ。折角だから北府まで護衛せよ。」北部公爵様からお声が掛かった。
「承知しました。」

 この日で王宮での待機は終わったので、北部公爵様のお供をして王都を発つ3日後までは、わが妻たちと一緒に、俺もクエストに参加しようかと思っていたのだが…。
 その夜、俺とわが妻たちが、互いに今日のことを報告し合うと、話は意外な方向に進んだ。

「ねぇ、あなた。北部公爵様にお供するのよねぇ。一応、侯爵様になったんだし、騎馬とかじゃなくていいのかしら?」リーゼがそんなことを言って来た。確かにそうかもしれないな。
「うむ。北部公爵様は私の主筋ゆえ、私はスノウに騎乗して本来の騎士としてお供するつもりだ。残るはナイトのみゆえ、皆が乗るには馬が足りぬな。」
「え、あたしたちも馬に乗るのかい?」
「うむ。側室とは申せ、一応侯爵夫人ゆえなぁ。北部公爵様の護衛に就くなら、流石に徒歩と言う訳には参るまい。」
「わらわは馬はいらぬじゃ。いざとなったらドラゴンに変身すればよいのじゃからのう。」
「トーラも、馬は、いい。ホワイトタイガーに、変身する。」
「でしたら馬車ではいかがですの?」
「うむ。馬車なら問題はあるまい。」
「僕も馬車の方がいいなぁ。ねえ、ダーリン。馬車買おうよ。」
「そうだな、買うか。」

 そう言う訳で、翌日、馬車を買いに行くことになった。そして、王宮御用達の馬車屋にやって来た。
「いらっしゃいまし。」
「王宮からの紹介で来た。10人乗り程度の馬車が欲しい。」精霊たちは浮いているから数に入れなくてもいいだろう。
「送迎用ですか?行商用ですか?冒険用ですか?」
「え?馬車にそんな用途があるのか?」
「そりゃそうですよ。送迎用なら座席だけでいいですし、行商用なら荷台が多く必要です。冒険用なら野営に備えて簡易ベッドが必須ですね。」
「だったら冒険用だな。ベッド付きのにしてくれよ。」

「そうですねぇ。これなんかどうです?
 御者台は除いて、2人掛け座席が左右に2つずつ。室内の前2/3は仮眠スペースでセミダブルの二段ベッドが2台です。詰めれば8人寝られます。後ろ1/3は簡易トイレと倉庫エリアで、飲料水や食料、曳馬の秣が積めます。4頭立てです。
 室内と車外から、屋上も登れまして、屋上は見張台として使えます。」
「いいね、これ。」俺は一発で気に入った。
「お客さん、まだ説明は終わってませんよ。車両の横の壁がですね、こうしてやると…。」
「おお、開くのか!」
「はい。野営に折には重宝かと。
 それから車内への入口の脇のここの台に魔石を置くと、室内に冷暖房が入るんですよ。魔力を流してもいいですよ。」
「こりゃいいね。」フィアとチルに冷暖房をしてもらおうっと。
『『任せて!』』俺の心を読んだフィアとチルが、サムズアップをしながらそう言って来た。笑

 わが妻たちもこの馬車を大いに気に入ったので、この馬車を買うことにした。大金貨6枚なので、なかなかのお値段である。
「旦那様、馬車にお名前を付けて下さいな。」
「え?俺が?うーん…、
 アクアビットでどう?スピリタスは精霊から取ったけど、スピリタスにはお酒の意味もあるだろ?お酒は生命の水って言うからさ、古語で生命の水を意味するアクアビット。」
「あら、素敵。」「とてもいいお名前ですわ。」「ほんとだねぇ。」「わが君は古語にも通じておるのだな。」ちょっと得意になってしまった俺。苦笑

「ところで馬車屋さん、馬も売ってるのか?」
「馬は隣の馬屋でお買い求め下さい。」

 で、隣の店舗に行くと、
「いらっしゃいまし。」
「あれ?馬車屋さん?」
「いえ、兄弟なんですよ。」
「似てるねぇ。って言うより、そっくりじゃないか。」
「三つ子ですから。」
「え?じゃあもうひとりは?」
「隣で馬具屋をやってます。」マジか!笑

 で、馬車屋で購入を決めた4頭立ての馬車を曳く馬を買い求めたのだが、馬の見立てはベスに任せた。
 ベスは念入りに馬たちを見て回って4頭を選び出して来た。
 どれも珍しい毛色で、クリーム色の月毛、黄色掛かった明るい茶色の栗毛、うっすらとピンク掛かった佐目毛、グレーの薄墨毛である。4頭とも牝馬だが、曳馬なので、馬体ががっしりしていて大型だ。すっかり成長したスノウやナイトも、騎馬としては大型の方だが、4頭ともスノウのナイトよりもさらにひと回り大きい。

「お客さん、随分と目利きですねぇ。4頭とも、うちではトップクラスにいい馬ですよ。どれも牝馬ですから、気性もおとなしくて従順です。それに3歳馬ですから若いですしね。長く使えますよ。」馬屋さんがベスに脱帽した。
「うむ。これでも一応、騎士をしていたのでな。」
「はて?王都騎士団の女性騎士は少数ですから、全員存じ上げてるつもりでしたが…。」
「いや、私が所属していたのは北府騎士団だ。」
「え?ではあなた様は、まさか北府騎士団のワルキューレ様で?確か、伯爵家の御令嬢様であらせられますよね?」
「…。」無言で、恥ずかしそうに、鼻の頭をポリポリと掻くベス。かわいい。笑

「え?何それ?ベスったら、僕が名乗る前に、ワルキューレを名乗ってたの?」
「ち、違うぞ。私は名乗ってなどおらぬ。しかし、北府の民が私のことを、そのように呼んでいたのだ。」
「なーんだ。ベス、言ってよー。もう。
 ダーリン、ワルキューレって名乗ったの、僕が最初じゃなかったよ。」
「なっ!ビーチェ、違うと言っておろうが。私が名乗った訳では、断じてないのだぞ。」
「まあまあ、いいじゃない。俺、ワルキューレって呼び方、結構、気に入ってるんだよね。だって、皆にぴったりだもんな。」
「でしょ、でしょー。僕もさー、そう思ってたんだよねー。」
「うふふ、ビーチェったら、調子いいわね。」

 結局この4頭を購入することにした。4頭で大金貨4枚。こちらもかなりいいお値段だ。
 なお、4頭とも牝馬なので、ナイトが喜んでいた。気持ちは分かる。笑

「馬たちの名前は、主様が付けてはどうじゃな?主様は命名のセンスがおありじゃからな。」
「えー?またー?うーん…、
 月毛はカスタード、栗毛はモンブラン、佐目毛はサクラモチ、薄墨毛はゴマアンコでどう?」
「お頭様、それって、全部、スイーツ?」
「そう。皆、スイーツが大好きだろ?」
「「「「「「「…。」」」」」」」
「許してたも。わらわが余計なことを言ったばかりに…。」ドーラが4頭の鼻面を撫でていた。なんでやねんっ!

「馬屋さん、この馬たちは騎乗もできるのか?」
「もちろんですよ。ちゃんと騎乗も曳馬もこなせるように調教してますので。」
「じゃあ、次は馬具屋だな。」
「お前さん、馬具も買うのかい?」
「もちろん。場合によったらだけど、馬車を置いて、騎乗で出ることもあるだろ?ドーラとトーラは変身するからいいって言ってたけど、俺たちは騎乗も練習しとかないとな。」

 で、馬屋で購入した馬4頭の馬具を購入した。鞍、鐙、手綱、頭絡などの通常の騎乗用の馬具に加えて、戦闘時用の馬鎧も購入した。4頭分で大金貨4枚だ。馬の値段並みだが、馬鎧が高かった。
 ちなみに、馬具屋さんも、馬車屋さん、馬屋さんとそっくりだった。流石、三つ子。笑

 結局、この日のお買い上げは大金貨14枚、つまり、白金貨1枚と大金貨4枚である。スピリタスのパーティ資金を大量に使ってしまった訳だが、まあ必要経費だろう。

 4頭にアクアビット号を曳かせて王宮に戻り、その日の午後と翌日は、馬車と騎乗の練習に当てたのだった。

 ところで晩餐会後の俺の失言により、その夜はお預けとなったむふふタイムであるが、翌日からは無事復活した。この間ドーラの発情期もあり、非常に充実した王宮での夜だったのである。
 結局、この5日間で、リーゼとジュヌの魔力量を500上げ、ジュヌはとうとう潜在魔力量の上限に達した。

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設定を更新しました。R4/10/9

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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