精霊の加護

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精霊の加護125 三国同盟への布石

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精霊の加護
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№125 三国同盟への布石

 午前中の陞爵の儀を終え、今宵の王帝同盟締結祝賀晩餐会まではまだ時間があるが、俺たちは王太子殿下の執務室に呼ばれた。しかも、わが妻たちも同道せよとのお達しだ。一体何だろ?

「殿下、ゲオルク・スピリタスです。お召しにより参上いたしました。」殿下の執務室には、いつもの側近メンバー、すなわち、4人の公爵様方と宰相様がいらした。
「側室たちも連れて参ったな?」
「はい。殿下、紹介します。帝国で仲間に迎えたホワイトタイガー族のトーラです。族長のタイガの双子の姉です。」
「うむ。余は獣人と会うのは初めてだが、思いの外、小柄なのだな。」
「トーラ、戦うときは、大きく、なる。」
「そうなんですよ。今はノーマルモードですが、戦闘時にはブーストモードになって、ちょっこら倍の大きさになります。ホワイトタイガーに変身すると、さらに大きくなります。」
「なんと!」
「ここで、変身、する?」
「いや、よい。そなたの得物は何か?」
「素手。トーラ、敵を、ぶん殴って、倒す。」
「それは何とまた豪快な…。」殿下が若干引いている。笑
「豪快!ふふふ。殿下、話が、分かる。」豪快と言う言葉に、トーラが機嫌をよくした。笑

「さて、ゲオルク、用件は他でもない。今宵の晩餐会のことよ。」
「はあ。」
「なんだ、気のない返事だな。ゲオルク、そなたには今宵の晩餐会でも大いに活躍してもらわねばならんのだぞ。もそっと、シャキッとせんか。」
「あ、すみません。で、何をすればいいので?」
「うむ。その前に状況説明だ。
 宰相、頼む。」

「はい。殿下。
 では、ゲオルク。状況を説明する。ゲオルクが、王帝同盟をまとめてから、およそふた月半だ。この間、同盟締結の祝賀晩餐会を開かなかったのは功労者であるそなたの帰還を待っていたからだ。」
「ありがとうございます。」
「そなたが帰還したゆえ、今宵、帝国大使と留学生のエカチェリーナ姫を迎えて晩餐会を催す。
 トーラどのは、エカチェリーナ姫の元従者よな。姫への橋渡しとして、姫の話し相手を頼みたい。」
「分かった。トーラ、引き受ける。」トーラ、相手は宰相様だからさ、敬語使おうよ、敬語。苦笑

「そしてここからが肝なのだが、教国大使と留学生のアイチャも招待する。」
「なるほど、三国同盟への布石ですね。」俺が合いの手を入れた。
「ゲオルク、その通りだ。
 ドーラどのは教国出身で、その他の側室どのたちは、教国では女神の称号を得ておるな。トーラどの以外の側室どのたちには、教国との橋渡しをお願いする。」
「うむ、引き受けてもよいのじゃ。」「「「「「承知しました。」」」」」ドーラの返事だけ、なんか偉そう。ま、龍族の王だしな。苦笑

「そしてゲオルク、例の新皇帝様からの依頼を教国大使に伝え、新教皇様からの承諾を取って欲しいと頼むのだ。なお、正式な仲介は王太子殿下が表立って行うこともな。」
「分かりました。」お膳立てして、殿下に花を持たせれば、将来、殿下が国王陛下になられたときに、殿下は、帝国にも教国にも発言権が確保できるな。

「ゲオルク、すまんな。」
「殿下、何を仰います。らしくないですよ。」
「ん?らしくないとな?どう言うことだ?」
「そんな殊勝な物言いじゃなくて、いつもみたいに踏ん反り返ってて下さいよ。」
「なんだと?ゲオルク、余を何だと思っているのだ?下手したてに出れば付け上がりおって。」
「そうそう、それですよ。その方がいかにも傍若無人な殿下っぽいです。」
「貴様!」
「だっていつも無理難題を吹っ掛けて、丸投げするじゃないですか?」
「お前だってマリーのことを丸投げしただろうが。」
 俺の結婚式のことだ。マリー様には内緒で進めていたのがバレて、窮地に追い込まれたとき、俺はすべてを殿下に丸投げしたのだ。
 もっとも、そのせいでひどい目に遭ったがな。苦笑

「殿下。どっちもどっちってことで痛み分けですな。」東部公爵様のお言葉に、殿下が、むぅ。と唸って押し黙ったが、
「えー、東部公爵様。俺の被害の方が、圧倒的に多いですよ。」
「だからどうしたと言うのだ?」とバッサリ。ですよねー。
「いえ、なんでもありません。」俺は矛を収めた。

 俺たちは殿下の執務室を後にした。
「お前さん、あたしゃ寿命が縮まったよ。」
「なんで?」
「なんでじゃないですわ。殿下にあんなことを仰るなんて。わたくしも生きた心地がしませんでしたわ。」
「だってあれくらい言っとかないと、また殿下に、何言われるか分かんないよ。明日呼ばれて、いきなり教国に行け。とか普通に言って来るもん。殿下は。」
「わが君、何を言うのだ。貴族たる者、殿下のご下命ならば、喜んでお引き受けするものぞ。」
「えー、流石に勘弁だな。少し休みをもらおうよ。」
「あなた、休んだら体が鈍るわ。」なんですと?
「そうじゃな。ドラゴンブレイドで獲物ども・・を、一気に薙ぎ払ってくれるのじゃ。」複数形かよ。まとめて殺る気かよ。苦笑
「トーラは、タイガーガントレットで、豪快・・に、ぶん殴る。」豪快に、が強調されている。殿下のひと言が、完全にお気に召したな。苦笑
「僕は、ちょっとはのんびりしたーい。それでダーリンと1日中イチャイチャするの。皆、いてらー。」
「あっ、ビーチェ、それはずるいのじゃ。」
「トーラも、お頭様と、イチャイチャ、する。」

 その後、部屋で、晩餐会までイチャイチャしましたとさ。

 王国との同盟を祝う晩餐会では、教国のときと同様に、国王陛下、皇太子殿下、王后陛下、王妃殿下、一の姫殿下、二の姫殿下、三尾姫殿下のマリー様と、王族全員が列席している。
 さらには、4人の公爵様方と宰相様の、王国政府の中枢の皆様。そして政府の要人の方々。そして侯爵、伯爵、またはその名代。
 帝国からは、帝国大使と留学生エカチェリーナ姫。姫の隣にはトーラ。ふたりは仲良く話している。
 王家の方々と、帝国からの主賓が主座に座っていた。

 教国大使と留学生アイチャも、賓客として客座の最上位にいた。ちなみに俺たちと同席だ。
 要するに、この席で、帝国の新皇帝からの依頼を内々に告げろ。と言うことやね。ちなみに、教国大使は、俺を取り巻く精霊たちと、わが妻たち~大使からすると女神様方~に囲まれてカチンコチンだ。笑
 一方でアイチャは、ソルと楽しげに言葉を交わしている。もう吹っ切れたのだな。もともとソルはアイチャとの契約を望んでいたが、アイチャのツンデレ対応に嫌気がさしたソルが、俺に乗り換えたのだ。
 精霊は、契約者から体液を介して魔力を供給される。ゆえに契約者が好む性別を取る。普通は異性だな。
 アイチャを契約のターゲットにしていたソルは、もともとは第一形態の男の子だったが、俺にターゲットを変えた途端に、女の子に性転換したのだ。流石の俺も、あれには焦った。苦笑

 さて、晩餐会が始まり、最初に国王陛下が挨拶をされた。
「王太子の尽力により、帝国との王帝同盟締結も成った。非常に目出度い。王太子を支えてくれた四公どのたちに、改めて礼を申す。
 同盟締結から間もなくふた月半になるが、この間、晩餐会を開かなかった理由は、王太子の意を受けて、全権大使として交渉に赴いていたゲオルク・スピリタス侯爵が、帝国で大活躍をしていたからだ。
 皆も承知している通り、この同盟に異を唱える輩が、畏れ多くも帝国の先帝に反旗を翻し、退位に追い込んだ。すかさず、帝太子であった新帝が反乱分子どもを駆逐したのだが、その新帝の迅速な反撃に尽力し、大いに貢献したのがスピリタス侯だ。
 スピリタス侯は、その功績により、本日、伯爵から侯爵に昇進した。」

 ここで陛下が話を区切って俺に合図を送って来たので、立ち上がってあちこちに向かって、何度も礼をした。会場から盛大な拍手が起った。
 精霊たちがまとわりついて来て、さらに拍手が大きくなった。この拍手は、俺が精霊たちからも祝福されていると解釈されたのだ。

 拍手が収まり、陛下の合図で俺が座ると、陛下は話を続けた。
「今宵、帝国からは、大使と留学生を招待しておる。留学生は、帝国の第一王女で、非常に優秀な剣士見習でもある。王都近衛隊の養成所では、非常に優秀な成績を上げておる。
 教国からの留学生の巫女見習、わが末娘の魔術師見習とともに、この3人が国を越え、分野を越えて、友誼を結んでおることを朕は嬉しく思う。」
 わーっと、また会場が湧いて盛大な拍手が起きた。

「なお、この3人の邂逅も、スピリタス候の進言によるものだ。もっともその進言を素直に聞き入れ、王国に来るなり友誼を結びにふたりを訪ねた、第一王女の行動力の賜物でもある。
 このように、王帝同盟は早速成果を上げておる。朕はこの同盟が、王教同盟とともに末永く続き、将来的には三国同盟に発展して行くことを望む。」
 国王陛下の話が終わると、今日、最も盛大な拍手が起きた。

 その後、帝国大使の挨拶、王太子殿下の乾杯の音頭で晩餐会は始まった。

 晩餐会の料理も酒も大いに旨かった。
 精霊たちは全員、第四形態ないし第三形態なので、俺からの口移しで酒を呑む。
 酒には魔力増幅効果があり、唾液中の魔力が増幅されるので、精霊たちの魔力はすでに満タンで、それぞれの色に光っている。それでも呑みに来るから、そのたびに精霊たちは光り輝いて、それで会場がいちいち湧くのだ。

 さて、そろそろ切り出すか?
「大使どの、実は教皇どのに取り次いで欲しいことがあるのだが。」
「承知しました。使徒様の御意のままに。」
「いや、まだ何も言ってないんだけど?」
「使徒様のお言葉は絶対です。新教皇と言えども、背くことは叶いませぬ。」
「いやいやいやいや。何でそうなるの?」
「使徒様は、実は精霊神様の化身におわしますよね?」
「おういっ!なんでそう言うことになってるんだよ。」思わず突っ込む俺。

「北部からの報告では、不毛の地を瞬時に開拓し、食糧難をあっさり解決された。並の使徒様にはあらず。もしや精霊神様の化身では?と。
 東部からの報告では、わが意に沿わねばヴァーを滅ぼす仰せになり、群衆すべてを瞬時にひれ伏させたとか。その後、すぐに精霊様方の祝福を受けた由。精霊神様かもしれぬ。と。
 南部と中部からは、民からの莫大な喜捨をすべて教国に分配され、ご自身ではまったくお受け取りにならなかった。この物欲のなさ、もはや人には非ず。精霊神様の化身に違いなし。と。
 すべて、精霊神様の化身ではないかとの報告で一致しております。使徒様は、精霊神様の化身でおわすのですよね?」
「違うって。」
「なるほど、表沙汰にはできぬと?承知いたしました。御意のままに。」違うって言ってるのにー!

 精霊たちが、アイチャに訴え出した。
『ゲオルクは、ツリたちがわがまま言うと、お仕置きする。』いきなり何を言い出すのだ?
『クレたち、この前もゲオルクに怒られた。』はあ?
『そしたら、リーゼたちに、フィアたちを襲わせるって。』あ…。あれか?
『チルたち、ゲオルクの言いなり。』いや、あれはお前たちがわがままで…。
『ワラたち、ゲオルクに逆らえない。』えー?わがまま言ってるだろ。
『ウィンたち、ゲオルクに、はいかイエスしか、言わない。』こらこらこらこら、どこぞの運動部だっちゅーの!
『ゲオルクは、メタたちの王様。』は?
 アイチャから痛い視線が飛んで来たが、横で聞いていた大使は、「やはり。」と、頷いている。
 こらこらこらこら。その言い方は誤解を招く…。あ!
 精霊たちがニマニマしている。ちくしょう、こいつら、やりやがったな。

『でもソルは、ゲオルクが好き。いっぱい魔力をくれるし、いっぱい可愛がってくれる。もみもみとか、ぺろぺろとか。』そ、そ、そ、それは、アイチャもいるここで言わなくてもいいんじゃないかな?
 アイチャからの視線が、白く平坦なものになった気がする。
『ダクもゲオルクが好き。ゲオルクは面白い。特にテンパったときとか。今みたいに…うふふ。』あ、こいつら心の中も読めるんだった。
 ニマニマ×9。やられた。

 あたふたする俺を見て、アイチャが言った。
「使徒様はイジられ王ですのね。」トドメであった。もういいっ!泣

「大使、話を戻すが、帝国で反乱を起こした貴族たちの子供たちは、現在幽閉されており、処刑を待つ身なのだ。」
「そうでしょうな。」
「しかし新皇帝どのは、即位の儀の際に特赦を行い、子供たちを助命なさるお考えだ。」
「なんと!それは慈悲深い。先帝では考えられませんな。」
「で、助命する子供たちだが、帝国には置けぬ。改易された旧臣の中から、旧主の遺児を御家再興の旗頭にしようと企む者が出るのは世の常だ。」ちなみに旧主どもは、王国で終身の犯罪奴隷に落とすから、正確には遺児ではないがな。
「確かにそのような輩が出ましょうな。」
「新皇帝どのは、火種となり得る遺児たちを、帝国からは王国を挟んだ教国で、出家させて新たな人生を歩ませたいと考えている。このことを、教皇どのにご承引願いたい。もし教国が引き受けてくれるなら、帝国から教国へは、相応の謝礼が出る。」
「もちろん、使徒様のご希望ですから御意のままに。しかし、使徒様の扱いでなくとも、子供たちの助命ですから神の御心に叶う行いです。」
「ああ、そのことなんだが、表立っては俺ではなく、王太子殿下の扱いにしたいのだ。そして、ゆくゆくは教国と帝国も同盟を結び、三国同盟へと発展させたい。」
「なるほど。先程のご挨拶で、国王様がそのように仰せでしたな。」
「ではよしなに頼む。」

 こうして話はすんなりまとまった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/10/9

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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