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精霊の加護098 マルディノン侯爵家の次男坊
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精霊の加護
№98 マルディノン侯爵家の次男坊
ドーラに王都を案内して、夕刻に王宮へ戻った。
王宮であてがわれている部屋に入ると、精霊たちが例によって衣類を脱ぎ捨て、『『『『『『『『お風呂ー。』』』』』』』』と言って催促して来る。いつもの光景だ。笑
風呂で精霊たちをせっせと洗ってやり、ひと息ついたところで、わが妻たちも入って来た。おおお、メロンボール12個。壮観である!笑
風呂から上がって寛いでいると、いつもの侍女ふたりが入って来た。
「ゲオルク卿、伯爵への陞爵の儀は5日後とのことです。」
「承知した。」
その後ふたりの侍女は、夕餉の準備を始めた。浮遊している裸の精霊たちにはすでに慣れたもので、気にも留めずせっせと夕餉の準備を続けている。
部屋で寛いているときの精霊たちは、大抵は裸で浮遊しているのだが、最初の頃、このふたりの侍女は、俺が精霊たちを裸で侍らせていると、とんでもない勘違いをしやがった。そして、勝手に俺をロリコン認定した挙句、それを王太子殿下に報告しやがったのだ!
幸いにも、俺の巨乳好きを知っていた殿下は、侍女ふたりからの報告を本気にはしなかったものの、それでも俺のことを揶揄う絶好の口実を得た訳だ。当然、殿下は俺のことをロリコンと弄って来た。まったく…!
悪戯好きの精霊たちは、ふたりの侍女たちに仕掛ける。
『ゲオルクー、お腹すいたー。』「はいはい。」ちゅーちゅー。魔力補給ね。侍女たちはスルー。
『ゲオルクー、もみもみしてー。』「はいはい。」もみもみ。第五形態では大きくなりますように。侍女たちはチラ見して来た。
『ゲオルクー、ぺろぺろしてー。』「はいはい。」そーっと開いてぺろぺろ。ゾウさんに変身させるなよな。侍女たちは呆気に取られている。おい、手が止まってるぞ。
侍女たちから蔑みの白い視線が飛んで来たが、もう慣れたし。ってか、ぶっちゃけこいつらにどう思われようが、知ったこっちゃないし。笑
髪をアップにしたわが妻たちが、風呂から上がって来て、皆で夕餉だ。いつものことだが、王宮の食事は旨い。堪能した。
翌日、午前中はフリー。ドーラのドレスの仮縫いの仕上がりが午後だからだ。
わが妻たちに午前中はどう過ごすか聞いたら、クエストに行くと言う。まったくわが妻たちは勤勉だ。
王都ギルドに行くと、ジュヌが後輩の受付嬢たちに囲まれた。いや、クエストに行きたいのだが。苦笑
そのうちギルマスまで出て来てしまった。だからとっととクエストに行きたいのだが。苦笑
結局、いろいろ時間を取られて、クエストに行けないまま昼になってしまった。
クエストを受けるのは諦めて、広場でシャンパワイナリーの納品馬車を探した。納品の担当は、ジュヌの姉のシュザンヌと婚約したレノーである。
「レノー!」
「おお、ゲオルク。あ、ジュヌも、皆さんも一緒か。あれ?こちらは初めてだよな。」
「教国で仲間になったドーラだ。」
レノーは俺たちの披露宴に招待してるから、ドーラ以外のわが妻たちとはすでに顔見知りだ。
レノーと出会ったのは、ジュヌとの結婚を認めてもらうために、ジュヌの実家を訪れる際、王都からジュヌの故郷のシャンパ村まで、ワイン納品後の帰りの納品馬車に乗せて行ってもらったときだった。
レノーは、ジュヌがシャンパワイナリーの次女で、想い人であるシュザンヌさんの妹とは知らぬまま、シャンパ村まで送ってもらうことに対する礼金を受け取らず、それでシャンパワインを買ってくれと言ったのだ。
シャンパ村までの道中、話し好きのレノーは、ジュヌの御父上であるオーギュストさんの杜氏の腕を絶賛し、御母上であるセシールさんのブドウ栽培の熱意を熱く語り、社長で経営者のシュザンヌさんの非凡な営業の才を褒めそやした。
レノーの人柄が気に入ったジュヌは、シュザンヌさんへの想いを語ったレノーへ、才女であるシュザンヌさんの乙女な一面を教えて、口説くのなら恥ずかしい言葉を並べ立てて、情熱的に口説けとアドバイスしたのだ。
レノーは早速、そのアドバイスを実行し、実家で久々にジュヌと再会したときには、シュザンヌさんはレノーに熱くプロポーズされたと、満更でもない様子だった。一足飛びにプロポーズってのが、いかにもレノーっぽかった。笑
ジュヌとの結婚の許可をもらった翌日、シュザンヌさんのアイディアでオーギュストさんが開発した、発泡辛口白ワインを、俺たちと一緒にテイスティングしたレノーが、キンキンに冷やせばもっと旨くなると言い切った。
チルに冷やさせたところ、のど越しからしてまったく別物で、格段に旨かったのだ。これにはオーギュストさんもシュザンヌさんも大層驚いていたが、レノーだけは「予想通りだな。」とご満悦だった。レノーが一目置かれた瞬間であった。
そう、この発泡白ワインこそ、大ブレイク中のシャンパンだ。シャンパン誕生秘話とも言うべきエピソードだ。
さて、俺とジュヌは、昨日の薄められたシャンパワインのことをレノーに話すと、レノーの表情がみるみる変わった。
「親方のワインを何だと思ってやがる。その店には二度と卸さないようにすべての問屋に言っとくぜ。」
「それとさ、そのワインを薄めた店員だけどさ、店に辞表を出してシャンパワイナリーまで謝りに行くそうだ。」
「どの面を下げて来やがるんだ?」
「レノー、半殺しとかにするんじゃないぞ。」
「それは親方が決めることだ。」確かにそうだな。
「ところでレノー、シュザンヌさんとは順調か?」
「おうよ。もうかわいくって、かわいくってよぉ。堪んねぇよ。」さっきまでの怒りの表情から一転、デレデレになりやがった。笑
「おいおい、惚気過ぎだろ。」
「親方も女将さんも公認だからな、ついつい張り切り過ぎちまってな、そのう、なんだ、出来ちまった。」
「「え?」」俺とジュヌがハモった。
「まあ、籍はもう入れてっから、デキ婚じゃねぇぜ。」
「籍入れたって…、いつ入れたんだよ。」
「ん?お前らの結婚式の翌日。」
「「えー!」」また俺とジュヌがハモった。
「いやいや、まあお前らの結婚披露宴に当てられてよ。その晩に、ジュヌから教わってた通り、お嬢に恥ずい台詞を連呼してたらよ、なんだか妙に盛り上がっちまってな。まあそれでなるようになっちまった訳さ。だから翌日、籍を入れたのよ。」嘘だろ?
「それならそうと言って下さいな!」
「悪ぃ悪ぃ、でも翌日からお前ら、殿下に呼ばれて忙しそうだったじゃん。それに午前中に籍入れて、午後にはもうシャンパ村に向かってたからな。」
「パパとママにはいつ報告したんですの?」
「帰りの馬車で。」
「パパとママは何て?」
「ん?親方は『そうか。』ってひと言だけ。女将さんは『おめでとう。』って言ってくれた後、『今朝からやけにべたべたしてると思ってたのよ。』って言うからよ、『昨晩、おいしく頂きました。』って言ったら、お嬢に引っ叩かれちまったぜ。」
ジュヌ以外のわが妻たちはプッと吹き出し、ジュヌは頭を抱えている。笑
「じゃあ、レノーとシュザンヌさんも新婚なんだな。」
「ああ。でもな、できたのが分かってからはお預けよ。それまでは毎晩欠かさなかったのになー。」おいおい、夫婦生活をカミングアウトするなよ。苦笑
でもまあ毎晩欠かさなきゃできる訳だわな。笑
結局、レノーに散々惚気話を聞かされた後、レノーと別れて昼餉を食い、仕立屋に向かった。
仕立屋に入ると、何やら揉めている。
「だから作れないとはどういうことだ?」
「ですからご本人様がいらっしゃらないと採寸ができないのですよ。」
「ざっくりでいいと言っているだろう?」
「スピリタス調ドレスは完全オーダーメイドです。既製品とは違うんですよ。」
「そなた、私がマルディノン侯爵家の次男シルヴェストルと知ってのことか?」
「それは先程伺いましてございます。」
「おのれ、私を愚弄するか?」
全然会話になってねぇ。笑
あれ、ベスが苦虫を噛み潰したような顔をしているぞ。
「シルヴェストルどの、見苦しいぞ。」
「なんだと?あ、エリザベスどのではないか!まさかここでお会いできるとは…。われらにはやはり運命的なものを感じずにはいられぬ。」
「何をバカなことを言っておるのだ!」ベスが吐き捨てるように言った。
「店主、ちょうど本人が来てくれた。採寸してくれ。」
「は?どういうことです。」店長が訝しげに尋ねた。
「だからドレスを贈りたい相手が来たのだ。」
「エリザベス様がですか?なぜ人妻にドレスを贈るのです?」店主が聞いた。あ、これは確信犯で煽ったな。笑
「人妻だと?無礼なことを申すと不敬罪で手討にいたすぞ。」
「いやいや、ベスは俺の妻だが、あんたは誰だ?」
「なんだと?」
「おや?シルヴェストルどのは知らなかったのか?私はつい3ケ月前に、わが君ゲオルクどのの妻となったのだ。」
「私は認めんぞ。」
「いやいや、別にお前に認めてもらわなくてもいいけどな。」
俺はそう言いながら、ベスの肩を抱いて引き寄せた。ついで腕を少しばかりスライドさせてメロンボールに触れる。
「あ、わが君。どさくさに紛れてどこを触っておるのだ。」
「あ、ごめん。つい。」
シルヴェストルの顔は見る見る真っ赤になって、血管が浮き上がって来た。相当怒ってやがるな。
「おのれ、決闘だ。」シルヴェストルは手袋を投げつけて来た。まじかよ?
「おいおい、何を血迷っている?」
「よくも私のエリザベスどのに気安く触れおったな。思い知らせてやる。」
「いやいや、ベスはお前のじゃなくて、俺のだし。
なぁ、ベス。」
「いかにも。シルヴェストルどの、私は身も心もわが君ゲオルクどのに捧げておる。私のことは諦めてくれ。」
「ぐぬぬ。もう許せん。表に出よ。私はシルヴェストル・マルディノン。マルディノン侯爵家の次男だ。そなたはゲオルクと言ったか?」
「ああ、ゲオルク・スピリタス子爵だ。一応、数日後に伯爵に上がるがな。」
「何?スピリタス…だと?」シルヴェストルの顔が、一気に引きつってみるみる蒼褪めた。
「わが妻のベスにドレスを贈って下さるとのことだが、愛しの妻に、他の男から贈られたドレスなど着させる訳には参らぬ。御遠慮頂こう。」
あれ?シルヴェストルはぶるぶる震えている。怒り心頭?それともビビってるのかな?
「覚えていろよ!」
そう言い残すと、シルヴェストルは仕立屋から出て行った。取り巻きっぽいのが、慌てて追い掛けて行く。あ、取り巻き、いたのな。影が薄い。
そう言えば決闘は?まあ元々、相手をする気はないけどな。
「いったいなんなんだ?」俺はベスに聞いてみた。
「わが君が精霊魔術師のゲオルク・スピリタス卿と知って恐れをなしたのだろう。逃げ足の速さは昔から変わらぬ。父上がシルヴェストルどのを腰抜けと評するのはこういうところなんだがな。」
「ゲオルク様、ありがとうございました。」店主が礼を言って来たが、俺、別に何もしてねぇし。
さて、変なのがいなくなったとこで、ドーラのドレスの仮縫い後の微調整に入った。
わが妻の中で最も大柄なドーラには翡翠のドレスがよく似合う。シックな色合いが何とも言えない。
微調整をしっかり行っていよいよ本縫いだ。
「実は4日後に伯爵を拝命するのだが、それに間に合うかな?」
「つまり3日で仕上げろと?」今度は仕立屋の店長が引きつっている。
「何とかなるかな?」
「ゲオルク様のたってのお望みとあらば、何とか致さねばなりませんな。3日ですか。うーん、やはりお約束は出来かねますが、それでもよろしゅうございますか?」
「間に合わなければ致し方ないが、何とか頼むよ。」
「最善を尽くします。」
さて、この日はそのまま王宮に帰り、翌日から3日間、王都ギルドでクエストを受けた。
3日目の午後には、仕立屋でドーラの翡翠のスピリタス調ドレスを受け取った。いい出来だ。仕立屋め、いい仕事をしやがる。頑張ってくれたスタッフに祝儀を弾んでおいた。
クエスト中は、疲れを残さないようにぱふぱふ止まりである。もちろん生ぱふぱふである。条件反射でむしゃぶりつくと、ていっ。とチョップが頭上に落ちて来る。地味に痛い。泣
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/7
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
№98 マルディノン侯爵家の次男坊
ドーラに王都を案内して、夕刻に王宮へ戻った。
王宮であてがわれている部屋に入ると、精霊たちが例によって衣類を脱ぎ捨て、『『『『『『『『お風呂ー。』』』』』』』』と言って催促して来る。いつもの光景だ。笑
風呂で精霊たちをせっせと洗ってやり、ひと息ついたところで、わが妻たちも入って来た。おおお、メロンボール12個。壮観である!笑
風呂から上がって寛いでいると、いつもの侍女ふたりが入って来た。
「ゲオルク卿、伯爵への陞爵の儀は5日後とのことです。」
「承知した。」
その後ふたりの侍女は、夕餉の準備を始めた。浮遊している裸の精霊たちにはすでに慣れたもので、気にも留めずせっせと夕餉の準備を続けている。
部屋で寛いているときの精霊たちは、大抵は裸で浮遊しているのだが、最初の頃、このふたりの侍女は、俺が精霊たちを裸で侍らせていると、とんでもない勘違いをしやがった。そして、勝手に俺をロリコン認定した挙句、それを王太子殿下に報告しやがったのだ!
幸いにも、俺の巨乳好きを知っていた殿下は、侍女ふたりからの報告を本気にはしなかったものの、それでも俺のことを揶揄う絶好の口実を得た訳だ。当然、殿下は俺のことをロリコンと弄って来た。まったく…!
悪戯好きの精霊たちは、ふたりの侍女たちに仕掛ける。
『ゲオルクー、お腹すいたー。』「はいはい。」ちゅーちゅー。魔力補給ね。侍女たちはスルー。
『ゲオルクー、もみもみしてー。』「はいはい。」もみもみ。第五形態では大きくなりますように。侍女たちはチラ見して来た。
『ゲオルクー、ぺろぺろしてー。』「はいはい。」そーっと開いてぺろぺろ。ゾウさんに変身させるなよな。侍女たちは呆気に取られている。おい、手が止まってるぞ。
侍女たちから蔑みの白い視線が飛んで来たが、もう慣れたし。ってか、ぶっちゃけこいつらにどう思われようが、知ったこっちゃないし。笑
髪をアップにしたわが妻たちが、風呂から上がって来て、皆で夕餉だ。いつものことだが、王宮の食事は旨い。堪能した。
翌日、午前中はフリー。ドーラのドレスの仮縫いの仕上がりが午後だからだ。
わが妻たちに午前中はどう過ごすか聞いたら、クエストに行くと言う。まったくわが妻たちは勤勉だ。
王都ギルドに行くと、ジュヌが後輩の受付嬢たちに囲まれた。いや、クエストに行きたいのだが。苦笑
そのうちギルマスまで出て来てしまった。だからとっととクエストに行きたいのだが。苦笑
結局、いろいろ時間を取られて、クエストに行けないまま昼になってしまった。
クエストを受けるのは諦めて、広場でシャンパワイナリーの納品馬車を探した。納品の担当は、ジュヌの姉のシュザンヌと婚約したレノーである。
「レノー!」
「おお、ゲオルク。あ、ジュヌも、皆さんも一緒か。あれ?こちらは初めてだよな。」
「教国で仲間になったドーラだ。」
レノーは俺たちの披露宴に招待してるから、ドーラ以外のわが妻たちとはすでに顔見知りだ。
レノーと出会ったのは、ジュヌとの結婚を認めてもらうために、ジュヌの実家を訪れる際、王都からジュヌの故郷のシャンパ村まで、ワイン納品後の帰りの納品馬車に乗せて行ってもらったときだった。
レノーは、ジュヌがシャンパワイナリーの次女で、想い人であるシュザンヌさんの妹とは知らぬまま、シャンパ村まで送ってもらうことに対する礼金を受け取らず、それでシャンパワインを買ってくれと言ったのだ。
シャンパ村までの道中、話し好きのレノーは、ジュヌの御父上であるオーギュストさんの杜氏の腕を絶賛し、御母上であるセシールさんのブドウ栽培の熱意を熱く語り、社長で経営者のシュザンヌさんの非凡な営業の才を褒めそやした。
レノーの人柄が気に入ったジュヌは、シュザンヌさんへの想いを語ったレノーへ、才女であるシュザンヌさんの乙女な一面を教えて、口説くのなら恥ずかしい言葉を並べ立てて、情熱的に口説けとアドバイスしたのだ。
レノーは早速、そのアドバイスを実行し、実家で久々にジュヌと再会したときには、シュザンヌさんはレノーに熱くプロポーズされたと、満更でもない様子だった。一足飛びにプロポーズってのが、いかにもレノーっぽかった。笑
ジュヌとの結婚の許可をもらった翌日、シュザンヌさんのアイディアでオーギュストさんが開発した、発泡辛口白ワインを、俺たちと一緒にテイスティングしたレノーが、キンキンに冷やせばもっと旨くなると言い切った。
チルに冷やさせたところ、のど越しからしてまったく別物で、格段に旨かったのだ。これにはオーギュストさんもシュザンヌさんも大層驚いていたが、レノーだけは「予想通りだな。」とご満悦だった。レノーが一目置かれた瞬間であった。
そう、この発泡白ワインこそ、大ブレイク中のシャンパンだ。シャンパン誕生秘話とも言うべきエピソードだ。
さて、俺とジュヌは、昨日の薄められたシャンパワインのことをレノーに話すと、レノーの表情がみるみる変わった。
「親方のワインを何だと思ってやがる。その店には二度と卸さないようにすべての問屋に言っとくぜ。」
「それとさ、そのワインを薄めた店員だけどさ、店に辞表を出してシャンパワイナリーまで謝りに行くそうだ。」
「どの面を下げて来やがるんだ?」
「レノー、半殺しとかにするんじゃないぞ。」
「それは親方が決めることだ。」確かにそうだな。
「ところでレノー、シュザンヌさんとは順調か?」
「おうよ。もうかわいくって、かわいくってよぉ。堪んねぇよ。」さっきまでの怒りの表情から一転、デレデレになりやがった。笑
「おいおい、惚気過ぎだろ。」
「親方も女将さんも公認だからな、ついつい張り切り過ぎちまってな、そのう、なんだ、出来ちまった。」
「「え?」」俺とジュヌがハモった。
「まあ、籍はもう入れてっから、デキ婚じゃねぇぜ。」
「籍入れたって…、いつ入れたんだよ。」
「ん?お前らの結婚式の翌日。」
「「えー!」」また俺とジュヌがハモった。
「いやいや、まあお前らの結婚披露宴に当てられてよ。その晩に、ジュヌから教わってた通り、お嬢に恥ずい台詞を連呼してたらよ、なんだか妙に盛り上がっちまってな。まあそれでなるようになっちまった訳さ。だから翌日、籍を入れたのよ。」嘘だろ?
「それならそうと言って下さいな!」
「悪ぃ悪ぃ、でも翌日からお前ら、殿下に呼ばれて忙しそうだったじゃん。それに午前中に籍入れて、午後にはもうシャンパ村に向かってたからな。」
「パパとママにはいつ報告したんですの?」
「帰りの馬車で。」
「パパとママは何て?」
「ん?親方は『そうか。』ってひと言だけ。女将さんは『おめでとう。』って言ってくれた後、『今朝からやけにべたべたしてると思ってたのよ。』って言うからよ、『昨晩、おいしく頂きました。』って言ったら、お嬢に引っ叩かれちまったぜ。」
ジュヌ以外のわが妻たちはプッと吹き出し、ジュヌは頭を抱えている。笑
「じゃあ、レノーとシュザンヌさんも新婚なんだな。」
「ああ。でもな、できたのが分かってからはお預けよ。それまでは毎晩欠かさなかったのになー。」おいおい、夫婦生活をカミングアウトするなよ。苦笑
でもまあ毎晩欠かさなきゃできる訳だわな。笑
結局、レノーに散々惚気話を聞かされた後、レノーと別れて昼餉を食い、仕立屋に向かった。
仕立屋に入ると、何やら揉めている。
「だから作れないとはどういうことだ?」
「ですからご本人様がいらっしゃらないと採寸ができないのですよ。」
「ざっくりでいいと言っているだろう?」
「スピリタス調ドレスは完全オーダーメイドです。既製品とは違うんですよ。」
「そなた、私がマルディノン侯爵家の次男シルヴェストルと知ってのことか?」
「それは先程伺いましてございます。」
「おのれ、私を愚弄するか?」
全然会話になってねぇ。笑
あれ、ベスが苦虫を噛み潰したような顔をしているぞ。
「シルヴェストルどの、見苦しいぞ。」
「なんだと?あ、エリザベスどのではないか!まさかここでお会いできるとは…。われらにはやはり運命的なものを感じずにはいられぬ。」
「何をバカなことを言っておるのだ!」ベスが吐き捨てるように言った。
「店主、ちょうど本人が来てくれた。採寸してくれ。」
「は?どういうことです。」店長が訝しげに尋ねた。
「だからドレスを贈りたい相手が来たのだ。」
「エリザベス様がですか?なぜ人妻にドレスを贈るのです?」店主が聞いた。あ、これは確信犯で煽ったな。笑
「人妻だと?無礼なことを申すと不敬罪で手討にいたすぞ。」
「いやいや、ベスは俺の妻だが、あんたは誰だ?」
「なんだと?」
「おや?シルヴェストルどのは知らなかったのか?私はつい3ケ月前に、わが君ゲオルクどのの妻となったのだ。」
「私は認めんぞ。」
「いやいや、別にお前に認めてもらわなくてもいいけどな。」
俺はそう言いながら、ベスの肩を抱いて引き寄せた。ついで腕を少しばかりスライドさせてメロンボールに触れる。
「あ、わが君。どさくさに紛れてどこを触っておるのだ。」
「あ、ごめん。つい。」
シルヴェストルの顔は見る見る真っ赤になって、血管が浮き上がって来た。相当怒ってやがるな。
「おのれ、決闘だ。」シルヴェストルは手袋を投げつけて来た。まじかよ?
「おいおい、何を血迷っている?」
「よくも私のエリザベスどのに気安く触れおったな。思い知らせてやる。」
「いやいや、ベスはお前のじゃなくて、俺のだし。
なぁ、ベス。」
「いかにも。シルヴェストルどの、私は身も心もわが君ゲオルクどのに捧げておる。私のことは諦めてくれ。」
「ぐぬぬ。もう許せん。表に出よ。私はシルヴェストル・マルディノン。マルディノン侯爵家の次男だ。そなたはゲオルクと言ったか?」
「ああ、ゲオルク・スピリタス子爵だ。一応、数日後に伯爵に上がるがな。」
「何?スピリタス…だと?」シルヴェストルの顔が、一気に引きつってみるみる蒼褪めた。
「わが妻のベスにドレスを贈って下さるとのことだが、愛しの妻に、他の男から贈られたドレスなど着させる訳には参らぬ。御遠慮頂こう。」
あれ?シルヴェストルはぶるぶる震えている。怒り心頭?それともビビってるのかな?
「覚えていろよ!」
そう言い残すと、シルヴェストルは仕立屋から出て行った。取り巻きっぽいのが、慌てて追い掛けて行く。あ、取り巻き、いたのな。影が薄い。
そう言えば決闘は?まあ元々、相手をする気はないけどな。
「いったいなんなんだ?」俺はベスに聞いてみた。
「わが君が精霊魔術師のゲオルク・スピリタス卿と知って恐れをなしたのだろう。逃げ足の速さは昔から変わらぬ。父上がシルヴェストルどのを腰抜けと評するのはこういうところなんだがな。」
「ゲオルク様、ありがとうございました。」店主が礼を言って来たが、俺、別に何もしてねぇし。
さて、変なのがいなくなったとこで、ドーラのドレスの仮縫い後の微調整に入った。
わが妻の中で最も大柄なドーラには翡翠のドレスがよく似合う。シックな色合いが何とも言えない。
微調整をしっかり行っていよいよ本縫いだ。
「実は4日後に伯爵を拝命するのだが、それに間に合うかな?」
「つまり3日で仕上げろと?」今度は仕立屋の店長が引きつっている。
「何とかなるかな?」
「ゲオルク様のたってのお望みとあらば、何とか致さねばなりませんな。3日ですか。うーん、やはりお約束は出来かねますが、それでもよろしゅうございますか?」
「間に合わなければ致し方ないが、何とか頼むよ。」
「最善を尽くします。」
さて、この日はそのまま王宮に帰り、翌日から3日間、王都ギルドでクエストを受けた。
3日目の午後には、仕立屋でドーラの翡翠のスピリタス調ドレスを受け取った。いい出来だ。仕立屋め、いい仕事をしやがる。頑張ってくれたスタッフに祝儀を弾んでおいた。
クエスト中は、疲れを残さないようにぱふぱふ止まりである。もちろん生ぱふぱふである。条件反射でむしゃぶりつくと、ていっ。とチョップが頭上に落ちて来る。地味に痛い。泣
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設定を更新しました。R4/8/7
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
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そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
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剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
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