精霊の加護

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精霊の加護093 先代辺境伯夫妻暗殺の黒幕

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精霊の加護
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№93 先代辺境伯夫妻暗殺の黒幕

 1か月半を越える教国領内1周の旅を終え、教都に帰還すると、教都の民の出迎えの熱狂ぶりは、それはもう凄まじいものだった。
 各地での俺たちの活躍や、喜捨をそのまんま教国に分配したのが、「使徒様の奇跡」として、かなり大袈裟に誇張され、伝わっていたのだった。

 振り返ると、
 教国1周の旅に出る直前にソルと契約した。
 教国北部では、主に栄養失調で入院していた施薬院の患者たちを、回復魔法で癒し、ポテトイモの栽培を奨励して、その正しい栽培法を伝授しただけだ。
 これらは、教国北部の民の教国政府絵の不満を一気に解消し、反政府組織の温床だったのを改善した。

 教国東部では、町を襲うエンシェントドラゴンとの抗争を仲裁し、エンシェントドラゴンを龍人にして仲間に加えた。
 なお、抗争の原因は、ドラゴン装備を得るために、無害なドラゴン狩りをしたことだったので、ドラゴン狩りクエストを禁止し、それまでにドラゴン狩りを冒険者へ仲介して来たギルドには、ギルマスの更迭と追放と言う厳しい処分を下した。

 教国南部では、衛兵隊と協力し、子供たちを奴隷にするために誘拐した奴隷商人一味を一網打尽にして、子供たち全員を無傷で救出した。

 教国南部と教国中部の民からの莫大な喜捨を、すべて教国各地に分配して寄付した。特に農耕地の荒廃と栄養失調で活気を失っていた教国北部と、エンシェントドラゴンから甚大な被害を受けていた教国東部には手厚く分配した。

 たったこれだけである…、って、あれ?よくよく確認すると、俺たちのやって来たことって、結構凄くね?

 他の町の教会とは、まったく規模の違う大聖堂の広大な敷地は、教都の北側一帯を占めている。
 俺たちは、旅の疲れを落とすために宿坊に入った。あてがわれた宿坊は、前回と同じ所だった。VIP用の最高級部屋である。

「主様、教都とはほんに凄い大きさじゃのぅ。ヴァーの何倍になるのじゃろ?」
「あ、そうか。ドーラは教都が初めてだったな。」
「うむ。わらわは龍山の奥で暮らしておったゆえなぁ。もう何百年も前に1度近くを飛んだことはあるが、このような大きな町ではなかったのじゃ。」
「何百年も前って…凄い長寿なのな。いくつぐらいなの?」
「主様、女性に年齢を聞くものではないぞえ。しかし他ならぬ主様じゃからな、特別に教えて進ぜようぞ。」
「おう。」
「数十年は誤差の範囲ゆえ、細かいことは覚えておらぬが、ざっと1000歳ちょっとくらいじゃろか。」
「まじか!」エンシェントドラゴン、別名古代龍と言うだけのことはある。

『ゲオルクー、お風呂ー。』
 精霊たちが風呂をねだって来て、ドーラとの話が中断した。
 VIP用宿坊には備え付けの浴室があり、そこそこ広い。とは言え、8人全員の精霊たちと一緒に入ると手狭である。
 キャッキャとはしゃぐ精霊たちを順に洗ってやり、ひと仕事終えてゆったりと湯に浸かっていると、思わず寝落ちしそうになった。笑

 俺と精霊が風呂から出ると、わが嫁たちも順番に風呂に入った。
 皆が入浴を終えてひと息ついた頃、部屋付きのメイドたちがやって来て、夕餉の準備を手際よく行った。
 わが妻たちとともに、夕餉を摂りつつ、酒を呑んでいると、あっという間に楽しいときは過ぎて行く。

 第二形態のソルを除き、残りの精霊たちは第三形態であるため、少量ながらも酒を呑む。酒は魔力補給の効率を高める効果がある。形態進化が進むと、必要な魔力量が段階的に跳ね上がるので、第三形態以降は酒を呑むようになるのではなかろうか。

 精霊たちが酒を呑むのはいいのだが、ちょっと面倒なのは、俺から口移しでないと呑まないのだ。
 第三形態の見てくれは、少女+α。ほんのり胸が膨らみつつあり、ウエストも多少はくびれつつある、まだ幼さの残る精霊たちに、口移しで酒を呑ませ、酔わせるのは、どう見ても絵的にアウトであろう。
 とは言え、欲しがるのにやらない言うのもな。苦笑

 ところで俺の予想通り、精霊たちの飲酒が、形態進化によって段階的に跳ね上がった魔力量を補うために、魔力増幅効果のある酒を呑むようになるのだとすると、さらに、第四形態、第五形態と進化して行けば、精霊たちの呑む量はその都度増えて行くことになる。

 バインバインになった第五形態の精霊たちが、結構な量の酒を呑んで酔いが回るとなると、それはもう非常に楽しい展開になるに違いない!
 しかも、精霊たちは、第一形態の頃から結構かわいいとは思っていたのだが、第二形態、第三形態と進むにつれて、美少女度がマシマシになって来ている。第五形態ともなれば、わが妻たちに匹敵する絶世級の美女となるのは必定。
 絶世の美女たちが、ほろ酔いでしな垂れて来る展開…。うん、今から非常に楽しみである。笑

「あなた、何、考えてるのよ?」
「ダーリン、そのふにゃけた顔、なんかさー、えっちぃことでも妄想してたでしょ?」う、ビーチェ、鋭い。
「別に…。」しまった、眼を逸らしてしまった。
「主様、これであろう?」ボヨンボヨンとメロンボールを揺さぶって挑発して来るドーラ。く、悔しいが眼が釘付けとなってしまった。

 精霊たちだけでなく、わが妻たちも、酒のおかげですっかり陽気になっている。ご機嫌で6連ぱふぱふをしてくれたのだった。
 今宵は馬車旅明けだからな。ぱふぱふ以上もありなのだ。魔力量の上限を100ずつ上げるお口だ。今宵、ビーチェの魔力量が上限の4000に達したのだった。

 翌日は、新教皇との謁見になった。
 わが妻たちと精霊たちを連れ、指定された時刻に謁見の間に行くと、ファンファーレが鳴って仰々しく出迎えられた。何だこれ?
 謁見の間に入ると、教皇以下、明らかに教会のお偉いさんたちがズラリと並んでいた。今日は随分と取り巻きが多いな。
「使徒様、教国中を巡っての、各地での奇跡の数々、教国の民を代表して、御礼申し上げます。」
「まあ、成り行きですな。教国の民のためになれたのなら巡った甲斐があったと言うものです。」
「もちろん民たちは、大いに感謝しておりますよ。」
「それは重畳。」

「ところで使徒様、この間のことについて、我々教会からも、使徒様へのご報告があるのです。」
「ほう、なんですかな。」
「教国と王国の同盟締結が末永く続きますようにとの思いを込めて、必死の捜査を続けた結果、両国間がギクシャクする切っ掛けとなった、20年以上前の先代ミュンヒェー辺境伯御夫妻暗殺の黒幕と連座する者どもをついに発見し、捕らえております。」
「おお、随分お手際のよいことで。して黒幕は?」
「おおよそ、ご察しのこととは思いますが、黒幕は前教皇でした。」
「やはり。」
「それに反王国派の連中は、全員、なにかしらの形で関わっておりました。」
「そうですか。それで実行犯は?」
「暗殺の発覚を警戒した前教皇からの指示で、すでに亡き者にされておりました。」
「なんと、前教皇は自分の手足となって働いた者を殺させたのですか?」
「はい。前教皇も認めております。」さてはこっぴどく拷問したな。
「なんと愚かな。
 して黒幕以下、連座した者は総勢何名ですかな?」
「真にお恥ずかしい話ですが、67名にも上ります。」
 新教皇め、やりやがったな。犯人探しにかこつけて前教皇派を一切合切お縄にしたに違いない。

「その者たちは、王国にお引き渡し頂けるのですか?」
「もちろんでございます。ただ数が数ですゆえ、首謀者はお渡しするとしても、末端の者どもまでは、使徒様の足手纏いかと存じます。もしよろしければ、末端の者どもは、こちらで処断致しますが、いかが致しましょうや。」
「ほう、どのように処断されるおつもりですか?」
「使徒様のお心のままに。もし、お任せ頂けるのであれば、全員終身刑の犯罪奴隷、または死罪と致します。」
「では黒幕の前教皇と、企ての中心人物のみお引き渡し頂いて、残りの者については、当面の間は終身刑の犯罪奴隷でお願いします。ただし、追って王国政府から別の沙汰が降りるかもしれません。」
「承知しました。そのときはこちらで王国のご希望通りに処断致します。」

「明日、囚人を連れて王国へ発ちます。ついては、ミュンヒェーまでの護衛をお願いしたいのですがよろしいですか。」
「護衛の件はお任せ下さい。喜んでお引き受け致します。
 ところで、明日とはあまりにもお早いお発ちで。もう数日滞在して頂けませんか?」
「一刻も早く黒幕を、先代ミュンヒェー辺境伯御夫妻の御遺児で、現ミュンヒェー辺境伯に引き渡したいと思います。教国にはまた是非お伺いさせて頂きますので、よろしくご承引下さい。」
「分かりました。では今宵は、お見送りの晩餐会を催します。ご参加頂けましょうや?」
「もちろんです。」
 新教皇との謁見はこれで終わった。

 宿坊に戻ってひと息つくと、今日の首尾について、王太子殿下と、現ミュンヒェー辺境伯のハイジに鳩便を送った。
 それが終わると、今日の首尾についてベスに聞いた。ベスは貴族出身なので、外交などの相談によく乗ってもらう。
「ベス、今日の外交はどうだったかな。」
「わが君、あれで申し分ない。特に、前教皇の護送について、教国に助力を頼んだことや、雑魚どもの処遇について、王国より追って沙汰があるかもしれぬと念を押し、王国の希望通りにすると言う言質を取ったのが良かった。」
「王国に護送する首謀者は皆、ハイジに託そうと思う。ハイジにはご両親の仇を討たせてやりたいからな。」
「それはどうであろう。王都まで護送した方がいいのではないか?」
「それも考えたんだけどさ、俺はハイジに任せたいんだよ。殿下にも鳩便でそう申し送ったから、もしだめなら殿下からハイジに鳩便が行くだろう。」
「なるほど、わが君は抜け目ないな。殿下が黙認して下さるなら、その方が良かろう。」

 その夜の晩餐会は、盛大なものになった。
 そして俺は、新教皇との強い絆を結び、教国の新教皇一派との太いパイプを構築したのだった。

 翌日、大聖堂前に多くの群衆が集まった。昨日のうちに、俺が王国に帰還すると言う情報が、新教皇から発せられていたのだ。
 教都の群衆を前に、俺は、
 俺は王国と教国との強い同盟関係が永く続くことを望むこと。
 教国を巡って、教国の民の力になれて嬉しかったこと。
 前代ミュンヒェー辺境伯夫妻暗殺の黒幕が前教皇であったこと。
 新教皇が、その事実を突き止めてくれたこと。
 王国と教国の関係改善のためにも、前教皇およびその一派を厳しく処断すること。
 俺と新教皇が、強い信頼関係を結んだこと。
 再び教国を訪れると誓うこと。
を語った。
 俺の演説に聞き入っていた群衆は、演説が終わると使徒様コールを起こし、使徒様コールは延々と続いた。

 教国の新教皇と教都の群衆に見送られ、俺たち一行は教都を後にした。引き連れるのは、囚人の前教皇以下数名の反王国派の中心人物たち。そして囚人の護送用に教国の軍勢。

 国境までの町々でも、盛大な歓待を受け、1週間掛けて、王国と教国の国境に到着した。
 そしてここは、教国の元国境砦跡地。2つあった国境砦の一方である。と言っても森の中だが。
 王太子殿下の命を受けた俺が、教国への威嚇作戦を行って、精霊魔法で教国の2つの国境砦を殲滅したのだ。両方とも完全に破壊しつくして、その後に樹々を生やしてまわりの森に同化させた。

 この元国境砦の殲滅作戦は、単に威嚇に過ぎなかったのだが、余りの威力に、壊滅した国境警備隊が這う這うの体で教都に逃げ帰り、あれこそ神の御業と吹聴した。
 これによって、前教皇は、教都の民から、神の真意を解せずに怒りを買った偽物と言うレッテルを貼られて失脚。新教皇が台頭する政変へと繋がったのだ。

 王国側の国境砦であるミュンヒェー砦には、ハイジ、クララ、ジークが出迎えに出て来ている。ヴォルはいない。まぁ当然か。あいつは一兵卒からやり直しだからな。
 ハイジたちが砦から見守る中、国境では、教国の軍勢からハイジ指揮下の国境警備軍へと、囚人の身柄の引き渡しが行われた。

 そして俺たちは、教国から王国へ帰還したのだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/7/24

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。

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