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精霊の加護082 結婚披露前夜
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精霊の加護
Zu-Y
№82 結婚披露前夜
王都魔法学院で博士号の学位を授与された翌日、俺は王太子殿下の執務室に呼び出されていた。もちろん精霊たちは、俺と一緒だ。
一方、お姉様方は来ていない。5人でクエストに行ってしまった。
殿下が苦虫を噛み潰したような顔で目の前に座っている。
「ゲオルク、そなた、余を売ったな?」
「とんでもございません。何のことを仰られているので?」
「この痴れ者が!マリーが凄い剣幕で怒鳴り込んで来たわ。全部ばらしおって。しかも余にすべてをおっ被せるとはいい度胸ではないか。」
「殿下、怖れながらマリー様は俺にとっては主筋ですから、頭が上がる方ではございません。一方、殿下はマリー様の兄上様ですから、殿下の方がお立場は上。殿下にお預けするのが上策と思いますが。」
「たわけ!そなたにとっては上策でも、余にとっては下策だわ。散々泣かれる羽目になったではないか。」
「しかし、殿下は将来王国を背負って立つ訳ですから、妹御おひとりくらいどうとでも捌けましょうに。」
「言うではないか。もちろん捌いたぞ。最後は納得して喜んで帰りおったわ。」
「へー、あの剣幕のマリー様を納得させたんですか?」
「なんだと?やはり面白がっておったのだな。」
「違いますよ。で、何と言って納得させたんですか?」
「側室との結婚披露宴に、マリーとそなたの婚約の儀を加えることにした。」
「はい?」
「マリーとそなたの婚約の儀に、5人の側室の結婚披露もまとめて付き従わせることにしたのだ。」
「殿下、それはあまりに…。」
「余に丸投げしたのだ。それはつまり、余の裁量に任せると言うことであろう?ならばこれが一番、しっくりと落ち着くのでな。」しまった、早まったか?
「落ち着きませんよ!何てことしてくれたんですか?」
「わはははは。小賢しく余におっ被せるからだ。ゲオルク、いいか?他の者に丸投げすると言うことは、こういう危険を孕んでいると言うことなのだ。しかも余に丸投げするなど、片腹痛いわ。己の小賢しさを反省して、さっさとマリーを娶るがよい。」
俺、お口パクパク酸欠金魚。そこへ殿下の高らかな勝利の哄笑が追い打ちを掛けたのだった。
「殿下、その辺で。」宰相様が横から殿下に声を掛けた。
「ふむ、左様か。もう少しいたぶってやりたいところだが…、仕方ない、種明かしをするか。
ゲオルク、戯れだ。」
「は?」
「マリーとの婚約の儀は、戯れだと言っておる。マリーはちゃんと納得させた。」
「えー、殿下、そりゃないですよー。」
「なんだ、婚約の儀の方が良かったのか?それなら改めて…。」
「違いますって!」
「ゲオルク、これは貸しだからな。」
「はい。分かりました。それにしても、どうやって納得させたんですか?」
「婚姻に伴う夫婦の営みを事細かに教えてやったのよ。子供のそなたがそんなことをされれば、股が裂け、その激痛でのたうち回ろうとな。流石に振るえておったわ。」
「しませんよ!」
「まぁそなたは巨乳好きゆえ、今のマリーには目もくれまいがな。
で、育った体には、その営み自体が快感になるゆえ、十分に体が成長するまで待つがよいと教えてやったのだ。さらに取り巻きの侍女たちにそうであろう?と念を押したら、皆が『諾。』と答えたので、マリーはそれで納得したのだ。」
「8歳の子供にそこまで言います?」
「ふん、8歳の子供なら子供らしく、婚約の儀などと騒がなければよいのだ。10年早いわ。」
俺は悟った。この人、絶対に敵に回しちゃいけない人だ。
殿下の執務室を出て、マリー様の御機嫌伺に行くと、マリー様は精霊たちとキャッキャと戯れだした。よかったいつも通りだ。いつ見ても和むー…、と思っていたのだが…、
侍女たちが、すすすーっと、さり気なく姿を消していくと、マリー様は身を固めて緊張し出した。あれ?どうしたのかなー?
マリー様の俺に対する態度は、かなりよそよそしいと言うか、完全に俺を警戒していた。まるで怯えているようだ。これはこれで辛いものがある。泣
「あの、マリー様?」
「ひっ!…あ、はい。何でございますか、ゲオルク様。」
やはり。殿下の薬が効き過ぎている。
「あのー、俺は、殿下が仰ったようなことは致しませんから、ご安心下さい。」
「…はい。」うわー、消え入りそうな声。
なんか可哀想になって来たので、
「本当に大丈夫ですよ。」
と言って、頭をポンポンと撫でてやった。
「はぅぅ。」あ、涙目になっている。
その後しばらく会話をして、俺は早々にマリー様のもとから退出した。俺が退出するとき、マリー様が明らかにホッとしたのが無性に切ない。泣
この翌日から、お姉様方と合流して、一緒にクエストを行った。難易度が高い割に、報酬が低くて引き受け手がいない、いわゆる塩漬けクエストを中心にこなして行ったため、王都ギルドからはかなり感謝された。
このおかげで、ジュヌさんを引き抜くときにひと悶着あった王都ギルドのギルマスとも、関係が改善し、最近では俺に揉み手をして来る勢いだ。苦笑
結婚披露宴までのおよそ3週間、俺たちは冒険者として、魔獣退治を中心に、王都近郊を駆けずり回った。この活動もあって、この短期間の活躍で、王都ではスピリタスを知らない者がいない程、有名になって行った。
超美形揃いでボンキュッボンな、お姉様方の容姿も、スピリタスの人気をさらに高める。世の男どもは特にメロメロである。
超美少女揃いの精霊たちも、スピリタス人気に拍車を掛ける。特に、声を掛けると俺の影に隠れる仕草がかわいくて仕方ないのだとか。まぁ、分かる。父親としては、そこんとこの評価が妙にうれしい♪
なお、東府にいたような、萌えーとか言って来る奴は、王都にはいない。
それから、スノウとナイトもスピリタスの宣伝にひと役買っている。もともと純白のスノウも漆黒のナイトも、珍しい毛色だから目立つのに加え、出会ってからすくすくと順調に育って来ていたので、最近は馬体ががっしりして来た。
スノウはすでに重装備のベスさんを乗せられるようになっているし、ナイトも、男の俺を乗せて疾駆することができるようになっている。要するに、スノウもナイトもやたらと存在感があると言うか、そこにいるだけで映えるのだ。
ちなみにスノウは、原則としてベスさんしか乗せない。スノウ曰く、乗り手が変わると、体重移動やらなんやらが違うので、本来の主人であるベスさんとの連携の細かいところに影響が出るのだそうだ。
ただし、俺だけは、ベスさんの番いで、群れ=スピリタスの長だから乗せてもいいと言うことだった。番いと表現されるのは微妙だが、まぁしかし、そう言うことなので、俺もスノウには何度か乗ったことはあるものの、余程のことがない限りは乗らないようにしている。
一方で、ナイトは誰でも乗せてくれる。ナイトはその辺の拘りはない。ただ、なるべくなら、男の俺よりも、女性を乗せたいと言っていた。ナイトは牡馬だからな。正直な奴だ。苦笑
ところで、俺の精霊魔法はと言うと、実はそんなに話題になってはない。と言うのも、精霊魔法を全力でぶっ放す機会がないからなのだ。つまり、普通の魔法と大差ないから、特に目立つという訳ではないのだ。
「何百年ぶりかに出た、伝説の精霊魔術師らしいよー。」「へー。でもよう、なんかパッとしねぇよなぁ。」的な?ちくしょうめ。泣
いよいよ王宮での結婚披露宴が数日後に迫って来て、続々と招待者たちが王都に集まって来た。
俺の関係者では、両親のカールハインツとヒルデガルトに、弟のアルベルトと神父さん。両親とアルは俺と同じ宿屋に泊まるそうだが、神父さんは、請われて王都教会に泊まることになった。何でも、東府教会の大司教様だけではなく、王都教会の大司教様も神父さんの御弟子さんなのだそうだ。
ついでに言うと、西府教会の大司教様も、南府教会の大司教様も、北府教会の大司教様も、すべて神父さんの御弟子さんなのだそうだ。いったいうちの神父さんは、どんだけ大物なんだよ!って話だ。苦笑
ところで弟のアルなんだが、精霊たちがいるってんで、結局毎晩、両親の部屋には泊まらず、俺の部屋に泊まっていた。弟のアルは、俺が冒険者になってから産まれたので、兄弟と言っても年は離れているし、親密になる機会はなかった。この期間に俺とアルとの関係は、一気に縮まったのだ。
余談だが、アルが毎晩、俺の部屋に入り浸ったせいで、1年後に妹が生まれることになったのだった。父さん、母さん、お盛んだなぁ。苦笑
リーゼさんの関係者は、ご両親のハインリッヒさんとエデルガルトさんに、妹のクラウディアさん。俺たち冒険者相手の安宿ではなく、それなりのいい宿屋に泊まっている。
ジュヌさんの関係者は、ご両親のオーギュストさんとセシールさんに、姉のシュザンヌさんと、シュザンヌさんの婚約者のレノー。レノーはしっかりシュザンヌさんを口説き落としたようだ。笑
ジュヌさんの御一行は、王都から近いこともあり、前日に王都入りするとかで、まだ来ていない。
カルメンさんの関係者は、ご両親のバルタザールさんとエスメラルダさんに、メイドでカルメンさんの姉のような存在のアリシアさん。王都随一の王都ホテルに泊まっている。流石、西部きってのエスパーニャ協会の創設者で筆頭株主。
ベスさんの関係者は、マクシミリアン・バース伯爵様、御正室のクラリス様と御側室のリンダ様、兄上のアンドリュー様と御正室のジェニファー様、家令のセバスチャンさんと奥さんで元メイド長のアンナさん、姉上のキャサリン様と御主人のハミルトン・ラスゴー伯爵様。皆さん、北部公爵様の北部公邸にお泊りだ。
ビーチェさんの関係者は、ご両親のピエトロさんとエンマさんに、弟のロレンツォ、リシッチャ亭の叔父ご夫妻のマルコさんとジューリアさん。リーゼさんとこと同じ、ちょっといい宿屋にお泊りだ。
いよいよ前日になって、ジュヌさんとこも王都に到着し、リーゼさんとこや、ビーチェさんとこと同じ宿屋に入った。
嫁たちの関係者がすべて来たので、嫁たちをそれぞれの関係者が泊まる所に派遣した。まぁ、独身最後の夜は、親族と水入らずってことで。ついでに俺も両親とアルと水入らずである。もっともアルは、俺よりも精霊たちと戯れているが。
「ゲオルクのおかげで、初めて王都にも来ることができたし、本当に楽しかったわ。」
「母さん、何言ってんの?本番は明日だからね。」
「あらあら、そうだったわね。」まったくもう。苦笑
「俺は王都には1回だけ来たことあったけどな、前回も今回も、森がないから落ち着かないな。」
「父さん、悪いね。森から引き離しちゃって。」
「まあ、いいってことよ。たまにはこういうのもな。」
そこへアルがやって来た。ややむくれているようだ。
「ゲオ兄、アルがちゅーしてもツリたちは光んなぁい。」なるほど、そう言うことか。
「契約してるのは俺だからなぁ。」俺は精霊たちに向かって舌を出してレロレロと上下に動かした。魔力補給に来ないか?と言う合図である。
精霊たちは皆やって来て、順にべろちゅーをして輝き、そのままふわふわと漂った。7色の輝きが部屋を舞う。
「しゅげー!」アルの機嫌は一発で直った。笑
アルは俺を真似して、精霊たちに向かって舌を出し、レロレロとやっている。精霊たちは微笑みながらアルの所に行って、ついばむような軽いキスを交互に繰り返している。が、当然アルが期待するように光る訳ではない。
「変だなー?」とアルは首を傾げていた。
アルよ。人生そうそう思い通りになるものではないのだぞ。
その後も俺と家族の団欒は続いたのだった。和むー。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/6/26
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№82 結婚披露前夜
王都魔法学院で博士号の学位を授与された翌日、俺は王太子殿下の執務室に呼び出されていた。もちろん精霊たちは、俺と一緒だ。
一方、お姉様方は来ていない。5人でクエストに行ってしまった。
殿下が苦虫を噛み潰したような顔で目の前に座っている。
「ゲオルク、そなた、余を売ったな?」
「とんでもございません。何のことを仰られているので?」
「この痴れ者が!マリーが凄い剣幕で怒鳴り込んで来たわ。全部ばらしおって。しかも余にすべてをおっ被せるとはいい度胸ではないか。」
「殿下、怖れながらマリー様は俺にとっては主筋ですから、頭が上がる方ではございません。一方、殿下はマリー様の兄上様ですから、殿下の方がお立場は上。殿下にお預けするのが上策と思いますが。」
「たわけ!そなたにとっては上策でも、余にとっては下策だわ。散々泣かれる羽目になったではないか。」
「しかし、殿下は将来王国を背負って立つ訳ですから、妹御おひとりくらいどうとでも捌けましょうに。」
「言うではないか。もちろん捌いたぞ。最後は納得して喜んで帰りおったわ。」
「へー、あの剣幕のマリー様を納得させたんですか?」
「なんだと?やはり面白がっておったのだな。」
「違いますよ。で、何と言って納得させたんですか?」
「側室との結婚披露宴に、マリーとそなたの婚約の儀を加えることにした。」
「はい?」
「マリーとそなたの婚約の儀に、5人の側室の結婚披露もまとめて付き従わせることにしたのだ。」
「殿下、それはあまりに…。」
「余に丸投げしたのだ。それはつまり、余の裁量に任せると言うことであろう?ならばこれが一番、しっくりと落ち着くのでな。」しまった、早まったか?
「落ち着きませんよ!何てことしてくれたんですか?」
「わはははは。小賢しく余におっ被せるからだ。ゲオルク、いいか?他の者に丸投げすると言うことは、こういう危険を孕んでいると言うことなのだ。しかも余に丸投げするなど、片腹痛いわ。己の小賢しさを反省して、さっさとマリーを娶るがよい。」
俺、お口パクパク酸欠金魚。そこへ殿下の高らかな勝利の哄笑が追い打ちを掛けたのだった。
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ゲオルク、戯れだ。」
「は?」
「マリーとの婚約の儀は、戯れだと言っておる。マリーはちゃんと納得させた。」
「えー、殿下、そりゃないですよー。」
「なんだ、婚約の儀の方が良かったのか?それなら改めて…。」
「違いますって!」
「ゲオルク、これは貸しだからな。」
「はい。分かりました。それにしても、どうやって納得させたんですか?」
「婚姻に伴う夫婦の営みを事細かに教えてやったのよ。子供のそなたがそんなことをされれば、股が裂け、その激痛でのたうち回ろうとな。流石に振るえておったわ。」
「しませんよ!」
「まぁそなたは巨乳好きゆえ、今のマリーには目もくれまいがな。
で、育った体には、その営み自体が快感になるゆえ、十分に体が成長するまで待つがよいと教えてやったのだ。さらに取り巻きの侍女たちにそうであろう?と念を押したら、皆が『諾。』と答えたので、マリーはそれで納得したのだ。」
「8歳の子供にそこまで言います?」
「ふん、8歳の子供なら子供らしく、婚約の儀などと騒がなければよいのだ。10年早いわ。」
俺は悟った。この人、絶対に敵に回しちゃいけない人だ。
殿下の執務室を出て、マリー様の御機嫌伺に行くと、マリー様は精霊たちとキャッキャと戯れだした。よかったいつも通りだ。いつ見ても和むー…、と思っていたのだが…、
侍女たちが、すすすーっと、さり気なく姿を消していくと、マリー様は身を固めて緊張し出した。あれ?どうしたのかなー?
マリー様の俺に対する態度は、かなりよそよそしいと言うか、完全に俺を警戒していた。まるで怯えているようだ。これはこれで辛いものがある。泣
「あの、マリー様?」
「ひっ!…あ、はい。何でございますか、ゲオルク様。」
やはり。殿下の薬が効き過ぎている。
「あのー、俺は、殿下が仰ったようなことは致しませんから、ご安心下さい。」
「…はい。」うわー、消え入りそうな声。
なんか可哀想になって来たので、
「本当に大丈夫ですよ。」
と言って、頭をポンポンと撫でてやった。
「はぅぅ。」あ、涙目になっている。
その後しばらく会話をして、俺は早々にマリー様のもとから退出した。俺が退出するとき、マリー様が明らかにホッとしたのが無性に切ない。泣
この翌日から、お姉様方と合流して、一緒にクエストを行った。難易度が高い割に、報酬が低くて引き受け手がいない、いわゆる塩漬けクエストを中心にこなして行ったため、王都ギルドからはかなり感謝された。
このおかげで、ジュヌさんを引き抜くときにひと悶着あった王都ギルドのギルマスとも、関係が改善し、最近では俺に揉み手をして来る勢いだ。苦笑
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超美形揃いでボンキュッボンな、お姉様方の容姿も、スピリタスの人気をさらに高める。世の男どもは特にメロメロである。
超美少女揃いの精霊たちも、スピリタス人気に拍車を掛ける。特に、声を掛けると俺の影に隠れる仕草がかわいくて仕方ないのだとか。まぁ、分かる。父親としては、そこんとこの評価が妙にうれしい♪
なお、東府にいたような、萌えーとか言って来る奴は、王都にはいない。
それから、スノウとナイトもスピリタスの宣伝にひと役買っている。もともと純白のスノウも漆黒のナイトも、珍しい毛色だから目立つのに加え、出会ってからすくすくと順調に育って来ていたので、最近は馬体ががっしりして来た。
スノウはすでに重装備のベスさんを乗せられるようになっているし、ナイトも、男の俺を乗せて疾駆することができるようになっている。要するに、スノウもナイトもやたらと存在感があると言うか、そこにいるだけで映えるのだ。
ちなみにスノウは、原則としてベスさんしか乗せない。スノウ曰く、乗り手が変わると、体重移動やらなんやらが違うので、本来の主人であるベスさんとの連携の細かいところに影響が出るのだそうだ。
ただし、俺だけは、ベスさんの番いで、群れ=スピリタスの長だから乗せてもいいと言うことだった。番いと表現されるのは微妙だが、まぁしかし、そう言うことなので、俺もスノウには何度か乗ったことはあるものの、余程のことがない限りは乗らないようにしている。
一方で、ナイトは誰でも乗せてくれる。ナイトはその辺の拘りはない。ただ、なるべくなら、男の俺よりも、女性を乗せたいと言っていた。ナイトは牡馬だからな。正直な奴だ。苦笑
ところで、俺の精霊魔法はと言うと、実はそんなに話題になってはない。と言うのも、精霊魔法を全力でぶっ放す機会がないからなのだ。つまり、普通の魔法と大差ないから、特に目立つという訳ではないのだ。
「何百年ぶりかに出た、伝説の精霊魔術師らしいよー。」「へー。でもよう、なんかパッとしねぇよなぁ。」的な?ちくしょうめ。泣
いよいよ王宮での結婚披露宴が数日後に迫って来て、続々と招待者たちが王都に集まって来た。
俺の関係者では、両親のカールハインツとヒルデガルトに、弟のアルベルトと神父さん。両親とアルは俺と同じ宿屋に泊まるそうだが、神父さんは、請われて王都教会に泊まることになった。何でも、東府教会の大司教様だけではなく、王都教会の大司教様も神父さんの御弟子さんなのだそうだ。
ついでに言うと、西府教会の大司教様も、南府教会の大司教様も、北府教会の大司教様も、すべて神父さんの御弟子さんなのだそうだ。いったいうちの神父さんは、どんだけ大物なんだよ!って話だ。苦笑
ところで弟のアルなんだが、精霊たちがいるってんで、結局毎晩、両親の部屋には泊まらず、俺の部屋に泊まっていた。弟のアルは、俺が冒険者になってから産まれたので、兄弟と言っても年は離れているし、親密になる機会はなかった。この期間に俺とアルとの関係は、一気に縮まったのだ。
余談だが、アルが毎晩、俺の部屋に入り浸ったせいで、1年後に妹が生まれることになったのだった。父さん、母さん、お盛んだなぁ。苦笑
リーゼさんの関係者は、ご両親のハインリッヒさんとエデルガルトさんに、妹のクラウディアさん。俺たち冒険者相手の安宿ではなく、それなりのいい宿屋に泊まっている。
ジュヌさんの関係者は、ご両親のオーギュストさんとセシールさんに、姉のシュザンヌさんと、シュザンヌさんの婚約者のレノー。レノーはしっかりシュザンヌさんを口説き落としたようだ。笑
ジュヌさんの御一行は、王都から近いこともあり、前日に王都入りするとかで、まだ来ていない。
カルメンさんの関係者は、ご両親のバルタザールさんとエスメラルダさんに、メイドでカルメンさんの姉のような存在のアリシアさん。王都随一の王都ホテルに泊まっている。流石、西部きってのエスパーニャ協会の創設者で筆頭株主。
ベスさんの関係者は、マクシミリアン・バース伯爵様、御正室のクラリス様と御側室のリンダ様、兄上のアンドリュー様と御正室のジェニファー様、家令のセバスチャンさんと奥さんで元メイド長のアンナさん、姉上のキャサリン様と御主人のハミルトン・ラスゴー伯爵様。皆さん、北部公爵様の北部公邸にお泊りだ。
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いよいよ前日になって、ジュヌさんとこも王都に到着し、リーゼさんとこや、ビーチェさんとこと同じ宿屋に入った。
嫁たちの関係者がすべて来たので、嫁たちをそれぞれの関係者が泊まる所に派遣した。まぁ、独身最後の夜は、親族と水入らずってことで。ついでに俺も両親とアルと水入らずである。もっともアルは、俺よりも精霊たちと戯れているが。
「ゲオルクのおかげで、初めて王都にも来ることができたし、本当に楽しかったわ。」
「母さん、何言ってんの?本番は明日だからね。」
「あらあら、そうだったわね。」まったくもう。苦笑
「俺は王都には1回だけ来たことあったけどな、前回も今回も、森がないから落ち着かないな。」
「父さん、悪いね。森から引き離しちゃって。」
「まあ、いいってことよ。たまにはこういうのもな。」
そこへアルがやって来た。ややむくれているようだ。
「ゲオ兄、アルがちゅーしてもツリたちは光んなぁい。」なるほど、そう言うことか。
「契約してるのは俺だからなぁ。」俺は精霊たちに向かって舌を出してレロレロと上下に動かした。魔力補給に来ないか?と言う合図である。
精霊たちは皆やって来て、順にべろちゅーをして輝き、そのままふわふわと漂った。7色の輝きが部屋を舞う。
「しゅげー!」アルの機嫌は一発で直った。笑
アルは俺を真似して、精霊たちに向かって舌を出し、レロレロとやっている。精霊たちは微笑みながらアルの所に行って、ついばむような軽いキスを交互に繰り返している。が、当然アルが期待するように光る訳ではない。
「変だなー?」とアルは首を傾げていた。
アルよ。人生そうそう思い通りになるものではないのだぞ。
その後も俺と家族の団欒は続いたのだった。和むー。
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設定を更新しました。R4/6/26
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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