精霊の加護

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精霊の加護067 国境の町バレンシー

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精霊の加護
Zu-Y

№67 国境の町バレンシー

 翌日は立て続けにキングシンバに出会った。こいつらも討伐対象だ。

 最初の遭遇は1頭。
「師匠、ここは俺たちだけにやらせてください。」
 ゲオルク学校の5人が前に出て行き、戦闘態勢を敷いた。
 タンクの軽歩兵ホルヘが、中央で盾を構えてキングシンバの襲来に備え、ホルヘの両サイドに、Sアタッカーの狂戦士アルフォンソと剣士のマチルダ、そしてホルヘの後ろにヒーラーの神官ルイーザとLアタッカーの魔術師レベッカと言う布陣だ。
 まぁ1頭だしな。

 ゲオルク学校の5人は、じりじりとキングシンバとの距離を詰めて近付いて行った。キングシンバが警戒し出す。威嚇の唸り声を発している。
 レベッカがファイアボールを放ったがキングシンバにひょいと躱された。キングシンバが低い体勢で身構え、今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。ホルヘが盾を構え、ルイーザが魔法障壁を張った。アルフォンソとマチルダが左右に展開してキングシンバを囲い込む体制を作った。

『ゲオルク。』ツリが話し掛けて来た。
「ああ、いるな。」

 実はもう1頭のキングシンバが潜んでいて、今、迂回しながらゲオルク学校の3時の方向まで来ている。
 対峙しているキングシンバは、もう少し時間を稼いで、迂回しているキングシンバが4時の方向に回り込んだのを見計らって、ゲオルク学校から見て10~11時の方向に逃走を図るだろう。それをゲオルク学校が追撃したら、迂回しているキングシンバに背を向けることになる。実に狡猾だ。

 俺はその情報をお姉様方に伝え、ゲオルク学校の助っ人に入ってもらうことにした。

 お姉様たちがゲオルク学校の8時の方向から近付いて行く。
 ちょうどゲオルク学校を中心に、12時の方向の間合いを取った近距離に対峙している1頭目のキングシンバ。4~5時の方向の遠距離から、隙を伺う2頭目の隠密キングシンバ。8時の方向の遠距離から秘かにゲオルク学校に近付く、お姉様方=俺を除くスピリタスメンバー。

 案の定、12時のキングシンバが11時の方向へいきなり全速力で逃走した。ゲオルク学校は追撃に移った。しかしルイーザが叫んでホルヘが、4時の方向から猛スピードで近付くキングシンバに備えた。
 追撃するアルフォンソとマチルダ、それに続いてパーティが離れないように、アルフォンソとマチルダのあとを追うレベッカとルイーザ、そして殿のホルヘ。隠密のキングシンバは追撃に移り、ホルヘへの距離を詰めて来た。

 しかしそこにお姉様方が突撃する。
 カルメンさんが各種バフの術を皆に掛け、突撃スピードが一気に上がる。リーゼさんがウインドカッター連射すると、隠密キングシンバの右側面を襲った。すんでのところで回避したキングシンバだが、リーゼさんに回避行動を読まれ、二撃目をまともに脇腹に食らって転倒した。
 そこへビーチェさんが斬撃を加える。真一文字に薙ぎ払った刀は、飛び掛かろうとして来たキングシンバの両前脚の肘から先を飛ばした。
 仁王立ちしたまま動きが止まったキングシンバの左脇腹に、ベスさん長槍が深々と突き刺さる。もはや反撃も適うまい。ジュヌさんのヒールが皆を包み、擦り傷をすべて治した。

 一方、囮逃走から反転して再び襲い掛かって来たキングシンバと、追撃していたアルフォンソ、マチルダが真正面からぶつかる。そこへ、殿をしていたホルヘが加わり乱闘となった。
 ルイーザは、仲間がダメージを受けるとすぐにヒールで回復するので、3人の猛攻は止まらない。
 とうとう本気で逃走を図ったキングシンバであるが、レベッカがウインドカッターを連射して傷を負わせると、Sアタッカーの3人が追い付いて、キングシンバは3人の餌食となったのだった。

「三期生の皆さん、援護、ありがとうございました。」おい、三期生ってのが定着したのか?
「あんたら、やるようになったねぇ。前とは見違えるようだよ。合併してほんとに正解だったじゃないか。」
 アルマチとホレルの駆け出しの頃を知っているカルメンさんは感無量だ。
「いや、それほどでも。師匠の教えのお陰です。」
「いい連携だったな。特に背後に迂回して来た奴を見落とさなかったのが良かったぞ。」
「不自然にあっさり引きましたからね。囮かもってすぐ分かりましたよ。」
「それに援護がありましたしね。」
「そうだな。皆も本当にいい連携だったよ。南府での特訓が効いてるね。」
「でしょー、えへへ。」

 この後、キングシンバ3頭の群れも、俺抜きで倒してしまった。キングシンバ3頭の討伐クエスト、余分に2頭倒して達成。5頭分の魔石と毛皮などの素材もゲット。

 うん。ゲオルク学校の連中もうちのお姉様方も、ほんとにいい連携じゃないの。

 その日は宿場町に泊まることになった。やった、生ぱふだー!と思っていたら、男部屋、女部屋×2で大部屋3つになりそうな展開だった。
 しかし俺は精霊たちがいるからと言う建前で男部屋を拒む。本音は、男部屋になったら生ぱふができないではないかー!なのである。
 結局、アルフォンソとホルヘはツインになって、俺は精霊たちとデラックスダブル。

「師匠、つかぬことを伺いますが、デラックスダブルとは言え、精霊7人と一緒にベッドに入れるんですか?」
「ぎゅうぎゅう詰めだが収まる。それにこの子たち軽いし、浮くし、一切問題ない。」
「えー、でも女の子じゃないですかぁ。」
「世のパパは娘たちと添い寝する。まったく問題ない。」
「パパ…なんですか?」
「その通り。見ろ、こんなにべったり懐いてるじゃないか。」精霊たちは俺のまわりに纏わり付いている。
「そのうち反抗期になって、『パパ嫌いー。』とか言われるんじゃないっすかぁ。」
「そんなことはない。魔力の補給方法を思い出せ。俺たちはいつまでもずっとラブラブ父娘だ。」

 しかし、結局、この晩の生ぱふはお預けだった。バレンシーに着いてからと言うことだ。

 翌日、宿場町を発って、バレンシーを目指す。今日が最終行程で、夕方にはバレンシーに到着するだろう。

 途中、ビッグボア2頭を狩って、ビッグボア3頭討伐クエストも完了。1頭余分だったけど。
 ちなみにこの討伐は俺がやった。流石に昨日は何もしなかったからな。
 1頭目はクレに穴を作らせて落とし、フィアで焼いた。もちろん焼き過ぎに注意した。
 2頭目はワラで地面をぬかるませ、脚を取られてもがいているところを弓矢で仕留めた。たまには弓矢を使わないと、射手の腕が鈍るからな。
 どちらも解体して魔石を取り出た後に、チルが凍らせた。いい食料になるから腐らせてはもったいないのだ。

 そして夕方になる前に、バレンシーに入った。
 まず最初にギルドに行って、魔石を取り出して、西府のギルドで受けたキングシンバ3頭討伐とビッグボア3頭討伐のクエスト報告をした。実際には、キングシンバは5頭、ビッグボアは4頭狩っていたので、報酬は割増になっており、素材買取でも、冷凍して鮮度が落ちていない肉は、いい値が付いた。

 報酬は、スピリタス6人とゲオルク学校5人の計11人で頭割りした。
 その後、宿屋にチェックイン。厩のしっかりした宿屋で、レンタル馬車の馬の世話もしてくれる。スノウとナイトもいるので、厩の充実した宿屋はありがたい。部屋割りは昨日と一緒。ただしデラックスダブルはなくて、俺と精霊たちは大部屋になった。

 夕餉はゲオルク学校の連中も交えて11人で街に繰り出した。評判の店で、西部料理の定番、パエリア、トルティージャ、チョリソー、生ハムなどを頼む。酒はシードル。
 パエリアは言わずと知れた西部を代表する米料理。生米を具材と一緒にオリーブオイルで炒めて、サフランを入れたスープで炊き上げる。具材は大きめのを米の上に乗せるので、具材のインパクトも大きい。具材は魚介、肉、野菜など、さまざまである。
 トルティージャは簡単に言えばオムレツ。様々な具を入れるのが特徴だ。
 チョリソーは、パプリカと香辛料を入れたソーセージで、パプリカで赤いんだけど、トウガラシで赤いと思ってる人が結構多い。チョリソー=辛いと言うのは実は誤解。辛くないチョリソーもある。
 シードルはリンゴのお酒で、シードラとも言う。炭酸で口当たりがすっきりしている。

 皆で夕餉を楽しんだ後、俺たちは宿屋に戻って各自の部屋に散ったのだが、スピリタス女子部屋に呼ばれた。そこでスピリタス呑みになった。
「ゲオルク学校の奴らも呼ぼうよ。」と言ったら、
「向こうは向こうでやってるわよ。」とリーゼさんに言われた。
「ほれ、ゲオルク。約束のご褒美だ。」カルメンさんが上を脱ぎ、メロンボールが顕わになった。思わず鷲掴みにしてむしゃぶりつく俺。
「こらこら。ぱふぱふって約束だろうに。」と言われた途端、チョップが脳天に落ちて来た。他のお姉様方によって、カルメンさんから引き剥がされる。

「やっぱり、こちらに呼んでよかったですわね。」
「だねー、ゲオっちの部屋に行ってたらカルメンは今頃、ゲオっちの餌食だったねー。」
「ゲオルクどの、自制の効かぬ男はいかんぞ。そもそも素直に生ぱふだけにしておれば、今頃は私も含め残り4人の生ぱふも堪能できていたのだ。」
「え?」マジか?
「ゲオルク君、期待しても、今日はもう駄目よ。」

 それからせめてスピリタス呑みだけは楽しんだのだった。泣

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設定を更新しました。R4/5/22

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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