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精霊の加護061 三の姫殿下
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精霊の加護
Zu-Y
№61 三の姫殿下
翌日、部屋でのんびり待機していると、昼前になってようやくお召しが掛かった。
そのまま連絡に来た侍従に連れられて、宮廷魔術師の訓練場へと皆で行く。移動中、精霊たちは俺にまとわり付いており、順序良く定期的に入れ替わりながら俺と手を繋いでいる。
訓練場には、国王陛下、王太子殿下、東部公爵様をはじめ4人の公爵様方、宰相様、多くの侍従たちと宮廷魔術師たちに囲まれて、小さな女の子がいた。三の姫殿下だろうな。
俺とお姉様方は、陛下に片膝をついたが、精霊たちは相変わらずどこ吹く風である。
「王家付精霊魔術師ゲオルク・スピリタス、お召しにより参上仕りました。」
「大儀。面を上げよ。」
「ははっ。」
「ゲオルク、婚約したそうだな。」陛下の横の小さな女の子がプイッと横を向いた。
「はい。パーティメンバーと婚約しました。陛下、紹介させて頂いてもよろしいですか?」
「うむ。」
「順に、タンクの重騎士エリザベス、ヒーラーの神官ジュヌヴィエーブ、ロングレンジアタッカーの魔術師リーゼロッテ、バッファーの支援術士カルメンシータ、ショートレンジアタッカーの刀剣士ベアトリーチェです。」
「面を上げよ。」
「「「「「ははっ。」」」」」お姉様方が顔を上げた。
「ほう、これはこれは。東部公から聞いてはいたが、聞きしに勝る美形揃い。ゲオルクよ、そなた、隅に置けぬな。」
「これはきついお戯れを。」陛下の横の小さな女の子がキッとした眼差しで睨んで来る。何か気に障ることでもあったか?
「ゲオルク、朕も末の姫を紹介しよう。三の姫のマリーだ。」
「三の姫殿下、ゲオルク・スピリタスです。お見知りおきを。」
「そなたなど、嫌いです。」え?なんでいきなり嫌われてるの?
「これマリー、きちんと挨拶をせぬか。」
「でも父上。ゲオルクは、私と言う者がありながら、5人も美女を侍らせていますのよ。」
横で王太子殿下が、額に手を当てている。あちゃーと言う声が聞こえて来そうだ。
「マリー、ゲオルクとのことはまだ白紙。ゲオルクには何も話しておらぬのだ。」
「え?」
「そなたには、意向を聞いたがな。内々のことと申したはずだが?」
「…申し訳ありませぬ。」真っ赤になってか細い声をようやく絞り出す三の姫殿下。かわいいなぁ。笑
よし、助け舟を出してやるか。
「三の姫殿下は精霊がお見えになるとか。ですから俺の契約精霊たちを、三の姫殿下に会わせるために連れて来ました。後ろに控えますこの者たち5人は、俺のパーティ仲間ですが、精霊を見る力はありません。
精霊たちと私がお相手をするのは、三の姫殿下だけです。ですから三の姫殿下がこの5人をお気になさる必要はありませんよ。」
無理やり強引な気もするが、自分と言う正室候補がいるのに、側室を5人も連れて来た。と言う三の姫殿下の怒りの理由を、精霊魔法を自分に教えに来たはずなのに、他にも弟子がいるじゃないか。と言う理由にすり替えてやった。
「え?そう言う意味ではありま…。」と言おうとする三の姫殿下を遮って、
「そう言う意味ですよね?」と笑って畳み掛けると、精霊たちが三の姫殿下のまわりを浮かびながらくるくると回って、
『ゲオルクを、嫌っちゃ、ダメ。』『ゲオルク、いい子。』『ゲオルク、魔力、たくさん、くれる。』『ゲオルク、優しい。』『ゲオルク、助けて、くれた。』『ゲオルク、強い。』『ゲオルク、エッチ。』
「おい!最後のを言ったのは誰だ?」
くすっと三の姫殿下が笑い、『『『『『『『うふふふ。』』』』』』』と精霊たちも笑った。
7色の美しい精霊たちが輝きながら、やはり美少女である三の姫殿下のまわりをくるくると回っている。第二形態である7人の精霊と、三の姫殿下を合わせて、8人の美少女の競演、なんとも幻想的な光景だ。
「精霊さんたち、分かったわ。ありがとう。」三の姫殿下の表情が明るく輝いた。
「三の姫殿下、その笑顔、凄くかわいいですよ。」
三の姫殿下が真っ赤になって俯いた。これを見ていた陛下と王太子殿下が、顔を見合わせて、やれやれ。と言う感じのアイコンタクトをしていた。苦笑
それから本格的に精霊魔法を披露したのだが、精霊魔法を使った後の、精霊たちへの魔力の補給では、またもや三の姫殿下が真っ赤になって俯いた。笑
その後、三の姫殿下が覚えた魔法を披露してくれた。連発で放てるので、魔力量はかなり多いようだ。
「三の姫殿下の魔力量はどう?精霊と契約できそうか?」
『魔力は、そこそこ。』『ひとりくらい、契約できる量。』
「お、それじゃぁ、精霊魔術師になれるな。」
『ちょっと、無理。』『魔力の、回復量が、少ない。』『続けて、魔力を、供給できない。』
「魔力の回復量って?」
『減った魔力を、元の量に、戻すこと。』
「そうなのか。それは知らなかったな。」これはルードビッヒ教授に報告しないとな。
『ゲオルクは、回復量が凄い。』『使っても、すぐ回復する。』
「なんか、ゲオルク君だけずるいわ。」
「ほんとですわね。」
「えー、でもその分、皆にも還元してるじゃないさ。」
「その還元は、ゲオルクにとっても美味しいだろう?」
「まぁ、そうだけどさ。」
「まぁ私たちも堪能してるがな。」
「わー、ベスったら大胆ー。僕、付いて行けなーい。」
「?」
三の姫殿下が話に付いて来れずにキョトンとしている。まぁ8歳の女の子にこの話に付いて来られても困るが…。
横にいる王太子殿下が「こほん。」と咳払いをした。王太子殿下は、魔力の上限を上げる方法はご存知ないはずだが、話の展開から薄々下ネタなのを感じ取ったっぽい。確かに三の姫殿下の前でする話題じゃないな。
「王太子殿下、三の姫殿下は、精霊と会話もでき、魔力量も高いのですが、魔力を使用した後の回復量が少ないため、精霊魔術師にはなれないようです。」
「そうか。残念だな。」
精霊たちは、陛下のもとに飛んで行って、何か話している。陛下が首を横に振った。落胆しておられる。三の姫殿下のことを伝えたんだろうな。
陛下に呼ばれておそばへ行くと、案の定、
「精霊たちから聞いた。マリーは魔力の回復力が弱いそうだな。」
「はい。そうらしいです。」
「朕は魔力量が足りなかった。なかなか上手く行かぬものよ。ゲオルクは余程幸運なのだな。」
「その様ですね。」
「さてゲオルク。そなたは王家に忠誠を誓ったな。朕はそなたの精霊魔法を見て思ったのだ。精霊魔術師を王家から出せるようにしたいと。この意味分かるな。」
「はぁ。まぁなんとなく。」
「ふふ、それでよい。まだ先のことよ。今日は、マリーがそなたの精霊たちに受け入れられただけでも収穫であった。」
それからちょうど昼餉時だと言うことで、王太子殿下、三の姫殿下、公爵様方、俺とスピリタスメンバーで、昼餉の会食となった。国王陛下と宰相様は、これから執務だとかで、参加されなかった。
昼餉の席では、俺が改めてパーティメンバーを参加者一同に紹介した。紹介が終わるとベスさんが北部公爵様のもとへ行き、挨拶をした。
「北部公爵様、エリザベス・バースにございます。」
「ふむ。そなたはやはりあのエリザベスであったか。」
「はい。」
東部公爵様は、すでにベスさんの出自を承知しているのですましておられたが、南部公爵様と西部公爵様はご存知ではないので不思議そうだ。それを見た北部公爵様が、ベスさんを公爵様方に紹介した。
「諸公、紹介しよう。余の懐刀、バース伯爵の二の姫でな、以前、北府騎士団の副長を務めていたエリザベス・バースだ。」
「「ほう。」」と、南部公爵様と西部公爵様が反応した。
「だがな、その古巣の北府騎士団を、そこのゲオルクとともに壊滅させたじゃじゃ馬娘だ。」北部公爵様が悪戯っぽく付け加えた。
「お言葉ですが公爵様、あれはゲオルクどのひとりの仕業です。」おい!
公爵様たちの視線が俺に集まる。
「ベスさぁん、そりゃないでしょうに。」
「あっはっは。増長して我が物顔だった奴らにはいい薬となったわ。今は、不良分子をすべて排除して、心ある騎士たちで騎士団の再生に励んでおる。
ゲオルクよ、その節は世話になった。」
「あ、はい。」
「それとな、雪崩に遭った街道の速やかな復旧と、盗賊団の壊滅も大いに助かったと、リチャードが…、近衛隊副長が申しておったぞ。この件も合わせて礼を申す。」
「いえ、勿体ないお言葉で。」北部公爵様から直々にお礼を言われるなんて思わなかったな。結構嬉しいかも♪
「それにしても、エリザベスとゲオルクは、これからあのバース伯爵を説得せねばならぬのか。まぁ頑張ることだ。」
「ほう、それはどう言うことですかな?」西部公爵様が北部公爵様に尋ねた。
「バース伯爵はな、末の娘かわいさに、方々からの縁談をことごとく撥ねつけておるのだ。」
「あのー、北部公爵様。実はバース伯爵様にはすでに内諾を得ております。」
「なに?」
「そうなのです。実は御父上様も大層乗り気でして。ゲオルクどののこともいたく気に入っています。なにせあの秘蔵の30年物を下された程なのです。」
「秘蔵の30年物と言うと、あのアードベクの30年物か?」
「はい。」
「それはまたえらく気に入られたものだな。あれは嫡子のアンドリューが所望しても断ったはずだったが。」
「はい。そうなのです。私も御父上様がゲオルクどのに30年物を下さったと聞いたときは驚きました。」
「まぁ。伯爵様とは馬が合うと言いますか、相性がいいのです。」
「そうか。まぁゆっくり味わって頂くのだな。」
「それがもうとっくに空けてしまいまして…。」
俺は30年物を空けた経緯を語った。
メタを仲間にするときに仲介してくれた鉱夫のベンさんが、精霊爺さんと呼ばれていたトニーさんの孫だったこと。
30年前にトニーさんは、ベンさんをメタに紹介しようとしていたが、次に会ったら紹介すると言うタイミングで、病で亡くなったこと。
メタは30年間、トニーさんがベンさんを連れて来るのを待っていたこと。
メタがトニーさんとの再会を待ってた30年間と、バース伯爵様から頂いたアードベクの30年物に縁を感じたので、トニーさんの追悼のために、俺とベンさんと、ベンさんの幼馴染で北府からブレナまで行商馬車に乗せてくれた行商人のジャックさんの3人で30年物を空けてしまったこと。
「わはははは。そうかそうか、あの貴重な30年物をひと晩で呑み干したかよ。ゲオルクよ、その意気やよし。トニーとやらもさぞ浮かばれたことであろう。」
「北部公爵様、ありがとうございます。」
「ところで、その話だが、雪崩からの街道復旧と盗賊退治はその際の往復のことよな。」
「そうです。」
「北部公、先程も申しておられたが、街道復旧とは?」西部公爵様が北部公爵様に尋ねられた。
「それがな、北府と鉱山エリアの中心の町のカデフィを結ぶ主要街道が雪崩に飲まれてしまったのだが、たまたま金属の精霊を探しに行く途中のゲオルクがそこを通り掛かってな、瞬時に復旧してくれたのだ。」
「雪崩の規模は?」
「そこに村があったら丸々飲み込んでしまう程の、大規模な雪崩と聞いておる。」
「「「なんと!」」」それまで澄ましていた東部公爵様も加わって、南部公爵様と西部公爵様と3人でハモっていた。
なお、王太子殿下には報告が行っているので特に驚いてはいないし、三の姫殿下はまだよく分かっていないようで、精霊たちと戯れている。
「ゲオルク、そなたの口から諸公に直接、ご説明せよ。」北部公爵様から命じられた。
「はぁ。カデフィに行く行商馬車の護衛の任を受けていたんですが、北府からカデフィに行く街道が雪崩に飲まれてたので、精霊たちに頼んで復旧してもらいました。」
「しかし村を飲み込むほどの規模だったのだろう?それをどうやって復旧したのだ?」
「まずは、雪崩で押し流されて来た大岩をすべてクレに粉砕してもらいました。大岩を粉砕してできた無数の礫をウィンに吹き飛ばしてもらって、その後はフィアに倒木をすべて焼き尽くしてもらいました。このときの業火でまわりの雪はことごとく融けましたので、辺りが水浸しになり、この水をワラに流してもらいました。この水の流れが辺りの土砂をすべて流しましたんで、土砂の撤去が完了し、埋もれてた街道が姿を現したのです。
街道がぬかるんでましたので、チルにカチンコチンに凍らせてもらい、クレにいったんどかした礫や土砂を路面に戻して押し固めてもらいました。これで街道の復旧は完了ですが、雪崩を起こした斜面は、土砂がむき出しですぐ崩れそうだったので、ツリに森を再生してもらい、緩んでた地盤を根でがっちり固めてもらったんです。
まぁこんなとこですかね。」
「「「…。」」」3人の公爵様方は絶句している。が、これらは、俺の手柄ではなく、すべて精霊たちがやってくれたことなのだがな。
「そして帰路は盗賊団35名をひとりで捕縛したのだったな。ゲオルク、その状況も諸公へご報告せよ。」
「はい。俺が護衛の任を引き受けていた行商馬車隊に、カデフィ観光を装った盗賊の別動隊が紛れ込んでました。俺は、カデフィに観光なんて、なんか怪しいと思ったんでそいつらを警戒していたんです。
奴らが企んでたのは、帰路の峠で本隊が待ち伏せしてて、そっちに気を取られてる隙に行商馬車隊に紛れ込んだ別動隊が撹乱すると言う戦法でした。
峠に差し掛かる上り坂で、本体の斥候が接近して来たので、メタの雷撃で感電させて、動けないところをツリの蔦で雁字搦めにして拘束しました。
行商馬車隊に紛れ込んでいた別動隊の馬車は、俺たちを挟み撃ちにするために最後尾についていたので、クレに道を荒らさせて、馬車を足止めすると、馬車を降りて追撃して来ました。そこでワラに道一面に水を撒いてもらって、それをチルに凍らせてもらいました。すると追撃して来た別動隊は足滑らせて転んだので、メタで電撃、ツリで拘束しました。」
「うん、うん。それで、どうなったの?」
ふと気付くと、公爵様たち以上に、三の姫殿下が、俺の話に食い付いて来ている。笑
「別動隊の奇襲と撹乱が失敗したことを悟った盗賊の本隊は、峠の上から地の利を生かして突撃して来ました。盗賊の射手が放った飛来する矢はウィンが竜巻で吹き飛ばし、その竜巻で突撃部隊が怯んだところに、フィアが上空に花火を10連発以上打ち上げました。上空の10連続爆発で盗賊たちはパニックになり、腰を抜かして動けなくなったので、そこをツリが拘束しました。
最終的に、拘束した盗賊は全部で35名に上りました。」
「凄い!凄いわ、ゲオルク!」三の姫殿下が、胸元で両手を組むお祈りポーズで眼をキラキラさせている。
それから諸公をそっちのけで、三の姫殿下があれやこれやと、細かいところまで尋ねて来たので、まぁ俺はその都度答えたのだが、三の姫殿下はうんうんと、しきりに感心して頷いておられた。
「兄上様、私も冒険者になりたいですわ。」
「そのためには魔法の修行に励まないとね。」
「もちろんです。」
こうして三の姫殿下マリー様との初顔合わせは、無事?に終わったのだった。
昼餉の後に解散となり、三の姫殿下は魔法の修行があると言って、丁重な宮廷スタイルの礼をしてその場を去って行った。
4人の公爵様たちは、執務へと戻って行った。
俺たちも解放されると思ったのだが、俺だけ王太子殿下から話があるから残れと言われ、お姉様方は部屋へと帰って行った。もっとも、殿下からの話が終われば、俺たちは王宮を辞すことになるだろう。
もちろん、精霊たちは俺と一緒だ。
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設定を更新しました。R4/5/8
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№61 三の姫殿下
翌日、部屋でのんびり待機していると、昼前になってようやくお召しが掛かった。
そのまま連絡に来た侍従に連れられて、宮廷魔術師の訓練場へと皆で行く。移動中、精霊たちは俺にまとわり付いており、順序良く定期的に入れ替わりながら俺と手を繋いでいる。
訓練場には、国王陛下、王太子殿下、東部公爵様をはじめ4人の公爵様方、宰相様、多くの侍従たちと宮廷魔術師たちに囲まれて、小さな女の子がいた。三の姫殿下だろうな。
俺とお姉様方は、陛下に片膝をついたが、精霊たちは相変わらずどこ吹く風である。
「王家付精霊魔術師ゲオルク・スピリタス、お召しにより参上仕りました。」
「大儀。面を上げよ。」
「ははっ。」
「ゲオルク、婚約したそうだな。」陛下の横の小さな女の子がプイッと横を向いた。
「はい。パーティメンバーと婚約しました。陛下、紹介させて頂いてもよろしいですか?」
「うむ。」
「順に、タンクの重騎士エリザベス、ヒーラーの神官ジュヌヴィエーブ、ロングレンジアタッカーの魔術師リーゼロッテ、バッファーの支援術士カルメンシータ、ショートレンジアタッカーの刀剣士ベアトリーチェです。」
「面を上げよ。」
「「「「「ははっ。」」」」」お姉様方が顔を上げた。
「ほう、これはこれは。東部公から聞いてはいたが、聞きしに勝る美形揃い。ゲオルクよ、そなた、隅に置けぬな。」
「これはきついお戯れを。」陛下の横の小さな女の子がキッとした眼差しで睨んで来る。何か気に障ることでもあったか?
「ゲオルク、朕も末の姫を紹介しよう。三の姫のマリーだ。」
「三の姫殿下、ゲオルク・スピリタスです。お見知りおきを。」
「そなたなど、嫌いです。」え?なんでいきなり嫌われてるの?
「これマリー、きちんと挨拶をせぬか。」
「でも父上。ゲオルクは、私と言う者がありながら、5人も美女を侍らせていますのよ。」
横で王太子殿下が、額に手を当てている。あちゃーと言う声が聞こえて来そうだ。
「マリー、ゲオルクとのことはまだ白紙。ゲオルクには何も話しておらぬのだ。」
「え?」
「そなたには、意向を聞いたがな。内々のことと申したはずだが?」
「…申し訳ありませぬ。」真っ赤になってか細い声をようやく絞り出す三の姫殿下。かわいいなぁ。笑
よし、助け舟を出してやるか。
「三の姫殿下は精霊がお見えになるとか。ですから俺の契約精霊たちを、三の姫殿下に会わせるために連れて来ました。後ろに控えますこの者たち5人は、俺のパーティ仲間ですが、精霊を見る力はありません。
精霊たちと私がお相手をするのは、三の姫殿下だけです。ですから三の姫殿下がこの5人をお気になさる必要はありませんよ。」
無理やり強引な気もするが、自分と言う正室候補がいるのに、側室を5人も連れて来た。と言う三の姫殿下の怒りの理由を、精霊魔法を自分に教えに来たはずなのに、他にも弟子がいるじゃないか。と言う理由にすり替えてやった。
「え?そう言う意味ではありま…。」と言おうとする三の姫殿下を遮って、
「そう言う意味ですよね?」と笑って畳み掛けると、精霊たちが三の姫殿下のまわりを浮かびながらくるくると回って、
『ゲオルクを、嫌っちゃ、ダメ。』『ゲオルク、いい子。』『ゲオルク、魔力、たくさん、くれる。』『ゲオルク、優しい。』『ゲオルク、助けて、くれた。』『ゲオルク、強い。』『ゲオルク、エッチ。』
「おい!最後のを言ったのは誰だ?」
くすっと三の姫殿下が笑い、『『『『『『『うふふふ。』』』』』』』と精霊たちも笑った。
7色の美しい精霊たちが輝きながら、やはり美少女である三の姫殿下のまわりをくるくると回っている。第二形態である7人の精霊と、三の姫殿下を合わせて、8人の美少女の競演、なんとも幻想的な光景だ。
「精霊さんたち、分かったわ。ありがとう。」三の姫殿下の表情が明るく輝いた。
「三の姫殿下、その笑顔、凄くかわいいですよ。」
三の姫殿下が真っ赤になって俯いた。これを見ていた陛下と王太子殿下が、顔を見合わせて、やれやれ。と言う感じのアイコンタクトをしていた。苦笑
それから本格的に精霊魔法を披露したのだが、精霊魔法を使った後の、精霊たちへの魔力の補給では、またもや三の姫殿下が真っ赤になって俯いた。笑
その後、三の姫殿下が覚えた魔法を披露してくれた。連発で放てるので、魔力量はかなり多いようだ。
「三の姫殿下の魔力量はどう?精霊と契約できそうか?」
『魔力は、そこそこ。』『ひとりくらい、契約できる量。』
「お、それじゃぁ、精霊魔術師になれるな。」
『ちょっと、無理。』『魔力の、回復量が、少ない。』『続けて、魔力を、供給できない。』
「魔力の回復量って?」
『減った魔力を、元の量に、戻すこと。』
「そうなのか。それは知らなかったな。」これはルードビッヒ教授に報告しないとな。
『ゲオルクは、回復量が凄い。』『使っても、すぐ回復する。』
「なんか、ゲオルク君だけずるいわ。」
「ほんとですわね。」
「えー、でもその分、皆にも還元してるじゃないさ。」
「その還元は、ゲオルクにとっても美味しいだろう?」
「まぁ、そうだけどさ。」
「まぁ私たちも堪能してるがな。」
「わー、ベスったら大胆ー。僕、付いて行けなーい。」
「?」
三の姫殿下が話に付いて来れずにキョトンとしている。まぁ8歳の女の子にこの話に付いて来られても困るが…。
横にいる王太子殿下が「こほん。」と咳払いをした。王太子殿下は、魔力の上限を上げる方法はご存知ないはずだが、話の展開から薄々下ネタなのを感じ取ったっぽい。確かに三の姫殿下の前でする話題じゃないな。
「王太子殿下、三の姫殿下は、精霊と会話もでき、魔力量も高いのですが、魔力を使用した後の回復量が少ないため、精霊魔術師にはなれないようです。」
「そうか。残念だな。」
精霊たちは、陛下のもとに飛んで行って、何か話している。陛下が首を横に振った。落胆しておられる。三の姫殿下のことを伝えたんだろうな。
陛下に呼ばれておそばへ行くと、案の定、
「精霊たちから聞いた。マリーは魔力の回復力が弱いそうだな。」
「はい。そうらしいです。」
「朕は魔力量が足りなかった。なかなか上手く行かぬものよ。ゲオルクは余程幸運なのだな。」
「その様ですね。」
「さてゲオルク。そなたは王家に忠誠を誓ったな。朕はそなたの精霊魔法を見て思ったのだ。精霊魔術師を王家から出せるようにしたいと。この意味分かるな。」
「はぁ。まぁなんとなく。」
「ふふ、それでよい。まだ先のことよ。今日は、マリーがそなたの精霊たちに受け入れられただけでも収穫であった。」
それからちょうど昼餉時だと言うことで、王太子殿下、三の姫殿下、公爵様方、俺とスピリタスメンバーで、昼餉の会食となった。国王陛下と宰相様は、これから執務だとかで、参加されなかった。
昼餉の席では、俺が改めてパーティメンバーを参加者一同に紹介した。紹介が終わるとベスさんが北部公爵様のもとへ行き、挨拶をした。
「北部公爵様、エリザベス・バースにございます。」
「ふむ。そなたはやはりあのエリザベスであったか。」
「はい。」
東部公爵様は、すでにベスさんの出自を承知しているのですましておられたが、南部公爵様と西部公爵様はご存知ではないので不思議そうだ。それを見た北部公爵様が、ベスさんを公爵様方に紹介した。
「諸公、紹介しよう。余の懐刀、バース伯爵の二の姫でな、以前、北府騎士団の副長を務めていたエリザベス・バースだ。」
「「ほう。」」と、南部公爵様と西部公爵様が反応した。
「だがな、その古巣の北府騎士団を、そこのゲオルクとともに壊滅させたじゃじゃ馬娘だ。」北部公爵様が悪戯っぽく付け加えた。
「お言葉ですが公爵様、あれはゲオルクどのひとりの仕業です。」おい!
公爵様たちの視線が俺に集まる。
「ベスさぁん、そりゃないでしょうに。」
「あっはっは。増長して我が物顔だった奴らにはいい薬となったわ。今は、不良分子をすべて排除して、心ある騎士たちで騎士団の再生に励んでおる。
ゲオルクよ、その節は世話になった。」
「あ、はい。」
「それとな、雪崩に遭った街道の速やかな復旧と、盗賊団の壊滅も大いに助かったと、リチャードが…、近衛隊副長が申しておったぞ。この件も合わせて礼を申す。」
「いえ、勿体ないお言葉で。」北部公爵様から直々にお礼を言われるなんて思わなかったな。結構嬉しいかも♪
「それにしても、エリザベスとゲオルクは、これからあのバース伯爵を説得せねばならぬのか。まぁ頑張ることだ。」
「ほう、それはどう言うことですかな?」西部公爵様が北部公爵様に尋ねた。
「バース伯爵はな、末の娘かわいさに、方々からの縁談をことごとく撥ねつけておるのだ。」
「あのー、北部公爵様。実はバース伯爵様にはすでに内諾を得ております。」
「なに?」
「そうなのです。実は御父上様も大層乗り気でして。ゲオルクどののこともいたく気に入っています。なにせあの秘蔵の30年物を下された程なのです。」
「秘蔵の30年物と言うと、あのアードベクの30年物か?」
「はい。」
「それはまたえらく気に入られたものだな。あれは嫡子のアンドリューが所望しても断ったはずだったが。」
「はい。そうなのです。私も御父上様がゲオルクどのに30年物を下さったと聞いたときは驚きました。」
「まぁ。伯爵様とは馬が合うと言いますか、相性がいいのです。」
「そうか。まぁゆっくり味わって頂くのだな。」
「それがもうとっくに空けてしまいまして…。」
俺は30年物を空けた経緯を語った。
メタを仲間にするときに仲介してくれた鉱夫のベンさんが、精霊爺さんと呼ばれていたトニーさんの孫だったこと。
30年前にトニーさんは、ベンさんをメタに紹介しようとしていたが、次に会ったら紹介すると言うタイミングで、病で亡くなったこと。
メタは30年間、トニーさんがベンさんを連れて来るのを待っていたこと。
メタがトニーさんとの再会を待ってた30年間と、バース伯爵様から頂いたアードベクの30年物に縁を感じたので、トニーさんの追悼のために、俺とベンさんと、ベンさんの幼馴染で北府からブレナまで行商馬車に乗せてくれた行商人のジャックさんの3人で30年物を空けてしまったこと。
「わはははは。そうかそうか、あの貴重な30年物をひと晩で呑み干したかよ。ゲオルクよ、その意気やよし。トニーとやらもさぞ浮かばれたことであろう。」
「北部公爵様、ありがとうございます。」
「ところで、その話だが、雪崩からの街道復旧と盗賊退治はその際の往復のことよな。」
「そうです。」
「北部公、先程も申しておられたが、街道復旧とは?」西部公爵様が北部公爵様に尋ねられた。
「それがな、北府と鉱山エリアの中心の町のカデフィを結ぶ主要街道が雪崩に飲まれてしまったのだが、たまたま金属の精霊を探しに行く途中のゲオルクがそこを通り掛かってな、瞬時に復旧してくれたのだ。」
「雪崩の規模は?」
「そこに村があったら丸々飲み込んでしまう程の、大規模な雪崩と聞いておる。」
「「「なんと!」」」それまで澄ましていた東部公爵様も加わって、南部公爵様と西部公爵様と3人でハモっていた。
なお、王太子殿下には報告が行っているので特に驚いてはいないし、三の姫殿下はまだよく分かっていないようで、精霊たちと戯れている。
「ゲオルク、そなたの口から諸公に直接、ご説明せよ。」北部公爵様から命じられた。
「はぁ。カデフィに行く行商馬車の護衛の任を受けていたんですが、北府からカデフィに行く街道が雪崩に飲まれてたので、精霊たちに頼んで復旧してもらいました。」
「しかし村を飲み込むほどの規模だったのだろう?それをどうやって復旧したのだ?」
「まずは、雪崩で押し流されて来た大岩をすべてクレに粉砕してもらいました。大岩を粉砕してできた無数の礫をウィンに吹き飛ばしてもらって、その後はフィアに倒木をすべて焼き尽くしてもらいました。このときの業火でまわりの雪はことごとく融けましたので、辺りが水浸しになり、この水をワラに流してもらいました。この水の流れが辺りの土砂をすべて流しましたんで、土砂の撤去が完了し、埋もれてた街道が姿を現したのです。
街道がぬかるんでましたので、チルにカチンコチンに凍らせてもらい、クレにいったんどかした礫や土砂を路面に戻して押し固めてもらいました。これで街道の復旧は完了ですが、雪崩を起こした斜面は、土砂がむき出しですぐ崩れそうだったので、ツリに森を再生してもらい、緩んでた地盤を根でがっちり固めてもらったんです。
まぁこんなとこですかね。」
「「「…。」」」3人の公爵様方は絶句している。が、これらは、俺の手柄ではなく、すべて精霊たちがやってくれたことなのだがな。
「そして帰路は盗賊団35名をひとりで捕縛したのだったな。ゲオルク、その状況も諸公へご報告せよ。」
「はい。俺が護衛の任を引き受けていた行商馬車隊に、カデフィ観光を装った盗賊の別動隊が紛れ込んでました。俺は、カデフィに観光なんて、なんか怪しいと思ったんでそいつらを警戒していたんです。
奴らが企んでたのは、帰路の峠で本隊が待ち伏せしてて、そっちに気を取られてる隙に行商馬車隊に紛れ込んだ別動隊が撹乱すると言う戦法でした。
峠に差し掛かる上り坂で、本体の斥候が接近して来たので、メタの雷撃で感電させて、動けないところをツリの蔦で雁字搦めにして拘束しました。
行商馬車隊に紛れ込んでいた別動隊の馬車は、俺たちを挟み撃ちにするために最後尾についていたので、クレに道を荒らさせて、馬車を足止めすると、馬車を降りて追撃して来ました。そこでワラに道一面に水を撒いてもらって、それをチルに凍らせてもらいました。すると追撃して来た別動隊は足滑らせて転んだので、メタで電撃、ツリで拘束しました。」
「うん、うん。それで、どうなったの?」
ふと気付くと、公爵様たち以上に、三の姫殿下が、俺の話に食い付いて来ている。笑
「別動隊の奇襲と撹乱が失敗したことを悟った盗賊の本隊は、峠の上から地の利を生かして突撃して来ました。盗賊の射手が放った飛来する矢はウィンが竜巻で吹き飛ばし、その竜巻で突撃部隊が怯んだところに、フィアが上空に花火を10連発以上打ち上げました。上空の10連続爆発で盗賊たちはパニックになり、腰を抜かして動けなくなったので、そこをツリが拘束しました。
最終的に、拘束した盗賊は全部で35名に上りました。」
「凄い!凄いわ、ゲオルク!」三の姫殿下が、胸元で両手を組むお祈りポーズで眼をキラキラさせている。
それから諸公をそっちのけで、三の姫殿下があれやこれやと、細かいところまで尋ねて来たので、まぁ俺はその都度答えたのだが、三の姫殿下はうんうんと、しきりに感心して頷いておられた。
「兄上様、私も冒険者になりたいですわ。」
「そのためには魔法の修行に励まないとね。」
「もちろんです。」
こうして三の姫殿下マリー様との初顔合わせは、無事?に終わったのだった。
昼餉の後に解散となり、三の姫殿下は魔法の修行があると言って、丁重な宮廷スタイルの礼をしてその場を去って行った。
4人の公爵様たちは、執務へと戻って行った。
俺たちも解放されると思ったのだが、俺だけ王太子殿下から話があるから残れと言われ、お姉様方は部屋へと帰って行った。もっとも、殿下からの話が終われば、俺たちは王宮を辞すことになるだろう。
もちろん、精霊たちは俺と一緒だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/5/8
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
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