精霊の加護

Zu-Y

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精霊の加護020 ツリとクレの第二形態

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精霊の加護
Zu-Y

№20 ツリとクレの第二形態

 ギルドへ戻って今後の行動計画を考える。

 リーゼさんたちが北府に来るまであと半月くらいだ。北府は北部の中心だ。北府を中心に、東に鉱山エリア、西に火山エリア、北に雪山エリアだ。特大精霊を探してすべてを回るのだが、さてまずどこに行こう。

 ゲオルギウスのマイクは北部の村の出身で、その村には精霊婆と皆から呼ばれている、精霊を見える人がいると言っていた。おぼろげだが、マイクの村は温泉で湯治客が来ると言ってたように記憶している。
 もしマイクの村に行くことができれば、精霊婆から特大精霊の情報が聞けるかもしれないし、ゲオルギウスの消息が分かるかもしれない。

 北部の西の火山エリアの中心の町はどこだろう?ベスさんに聞けば一発なんだろうが、騎士団の残りの団員にてきぱきと指示をしていたし、ベスさんを厄介払いした団長が失脚した訳だから、ベスさんが団長で復帰なんてことも十分あり得る。実際、残った団員はベスさんに頼りっ切りだったからな。
 それに魔力量が1700まで一気にアップしたから、騎士スキルだって魔力切れを起こさずに連続発動できるだろうしな。

『ゲオルクー、お腹すいたー。』『すいたー、ごはんー。』え?また?
 最近、補給の頻度が明らかに増してるよなー。まわりの眼が気になるが、今更取り繕ったってしょうがないしな。
 ツリが吸い付いて来た。幼女にあるまじき貪り方だ。続いてクレも同様に吸い付いて来て、やはり貪られてしまった。

「おい、見たか、あれ。かわいそうに、あの子たち、完全に調教されてんなー。」してねーよ。つーかする訳ゃねーだろっ!
「きっと、夜とかはキスだけじゃすまないんだぜ。おー、まじキモっ。」おい、ざけんな。いったい幼女に何をしろと?
「俺、ぺったんこ無理だし。つーか立たねぇよな。」俺だって立たねーよ。立つ訳ゃねーだろっ!
 つーか、こいつらコソコソと何陰口叩いてんだ?丸聞こえじゃんかよ。睨むとふふんと笑って来やがった。あ、こいつらわざと聞こえるように言ってやがるな。いっぺん締めたろか?
『『了解~。』』え?

 床からいきなり蔓が伸びて挑発して来た3人を縛り上げた。は?なんで?
 ガツン!天井からこぶし大の石が落ちて来て3人の頭を直撃した。え?どう言うこと?
 3人ともその場に倒れ込んで起きて来ない。伸びたっぽい。
『こいつら、ゲオルクの、悪口言った。』
『ゲオルクの、悪口言う奴、許さない。』
 シーンとなるギルド内。

『『ゲオルクー、ご褒美ー!』』
 ちゅーちゅーぷはー×2連発。当然冒険者たちが白い眼で見て来たので事情をはっきり説明することにした。
「ベスさんが言った通り、この子たちは精霊だ。この子たちが俺の意思通りに精霊魔法を放つ代わりに、俺はこの子たちに魔力を補給する。魔力を補給する方法がキスだ。それについて文句がある奴はいるか?」
 俺が一同を睨みつけると全員が眼を逸らして下を向いた。
「眼を合わす度胸もない半端者には陰口が似合いってか?文句があったら正々堂々と正面から言って来い。これから陰口を叩く奴は徹底的に潰す。誰が騎士団詰所を半壊させたか思い出させてやるよ。」
 シーン。
「分かったら返事をせんか!」
「はい…。」×多。

 パチパチパチ。え?ベスさん。いつの間に?
「ゲオルクどの。いい啖呵だ。さすがに私が認めた男だけのことはある。」
「ベスさん、今日はもう、騎士団の指揮を執らなくていいの?」
「そうそう、そのことよ。置いてきぼりとはひどいではないか。」
「え?でも騎士団の指揮を執ってたよね?あのまま団長になって騎士団に復帰するのかと…。」
「私は今朝、スピリタスに加入したのだぞ。今更、騎士団になど戻るものか。」
「本当?」やった!
「本当だとも。これからよろしくな。」ベスさんの笑顔が眩しい。てか、本当に超美人だ。

「それなら早速、相談があるんだけど。」
 俺は、次に火山エリアを訪ねるつもりであることを告げ、拠点にする町としてお勧めの所を聞いた。
「ふむ、それならば湯の町バースだな。」
「湯の町バース?温泉の町?」
「左様。バースの近辺では至る所に湯が沸いておってな、バースの町には民向けの温泉大浴場があるのだ。さらには近郊の村々にもそれぞれ温泉施設があり、温泉観光や湯治で栄えておる。」

「温泉かー。ぜひそこへ行こう!」
「ゲオルクどのは、温泉は好きか?」
「好き…、と言うより大好きだね。俺の出身地のラスプ村の森には温泉が湧いてる所がいくつかあってね。狩りの後でよく入ってたんだ。」
「そうか、それならバースが気に入るであろうな。」

「どうやって行くの?」
「バース行の定期馬車がある。バースと北府を結んでおるのだ。この時間だと今日の便はもう出ておるな。早速明日の便で参るか?」
「いや、後発の仲間3人とここ北府で合流する段取りなので、数日はここでクエストをこなすつもりだよ。それで構わないよね?」
「構うも何もリーダーは、ゲオルクどのだからな。私に異存などはないぞ。」

 明日からクエストをこなすことにして、ベスさんと夕餉を共にした。夕餉の後は家まで送って行ったが、今日は上がって行けとは言われなかった。パーティを組む以上、だらだらと体の関係を続けるのはやめようと、今朝約束したからな。

 宿に戻ると、宿の親父さんが「今夜は帰って来ましたか。」と言ってニタニタと意味深に笑っていた。

 この宿の部屋はシャワー付きなので、シャワーを浴びるときはツリもクレも一緒だ。精霊は水浴びが好きなので、当然シャワーも大好きである。体を洗ってやるとくすぐったがってキャッキャと大喜びする。
 そしてベッドに入ると、ふたりは潜り込んで来る。左にツリ、右にクレだ。3人で川の字になって眠った。

 翌日、冒険者ギルドでベスさんと合流し、適当な討伐クエストと採集クエストを受けた。報酬の分配は、薬草などはパーティとして購入するので、パーティの取り分も1人前として計算することにした。
 討伐クエストは、前衛のベスさんが守りを固め、後衛の俺がツリとクレの精霊魔法と弓矢で殲滅する作戦を取った。
 採集クエストは、薬草など植物限定で受け、群生地に行って、ツリが目的の植物をどんどん成長させ、皆で収穫するので、いくらでも採れる。当然依頼の何倍も多く採集し、依頼分以外はギルドで買い取ってもらうので、稼ぎはよかった。
 さらに、薬草から回復薬などを調合できるとなお効率よく稼げるのだが。

 毎日、クエストを終えると、ベスさんと夕餉に行って軽く呑んでいる。俺とベスさんは互いのことをさらにいろいろ話した。
 それで知ったのだが、これから行こうとしている湯の町バースと、その周辺の湯治村の領主様は、何とベスさんの御父上、バース伯爵様だった。
 そう言えば、ベスさんは伯爵家の庶子だと言っていた。庶子とはいえ貴族なのだから、普通は平民の俺がお近付きになれる人ではないのだな。

 ベスさんを送って宿に戻り、部屋に入るとツリとクレが魔力補給を要求して来た。なんか最近、本当に補給の頻度が増して来ている。ひょっとすると第二形態に行くのだろうか?
 そのまま3人でシャワーを浴びに行って、いつも通りふたりを洗ってやると、なぜか今夜に限って、はぁはぁと息遣いが荒く、まるで感じまくってるようだ。幼女なのに。まぁ、見た目だけだがな。それにしてもいつもと違う。やっぱり第二形態に移行する前兆なのかもしれない。

 そのままベッドで大の字になると、いつもの定位置で、左横にツリ、右横にクレが潜り込んで来た。いつもはこのまますやすやと眠りに就くのだが…。
 ベッドに潜り込んで来たツリはまた濃厚なキスをして来て、すぐに光り出した。今夜は何度も補給してるから満タンなのだろう。いつもは光り出すと離れて行くのに、今夜のツリはなんと寝ている俺の顔の上に跨って来た。
 衣服の嫌いな精霊たちは、外に出るとき以外は何も着ない。普段の貫頭衣も、シャワーを浴びるときに脱いでそのまんまだ。その状態で顔の上に跨って来たのだから、秘所が俺の口元に当たる訳だが、何と濡れているではないか。
『ゲオルク、舐めて。』
 言われるままぐしょぐしょを丹念に舐めまわすと、体の輝きが一層増して、人型から球形に戻ってしまった。一瞬退行かと焦ったが、ひと抱えの大きさだった光の球体が、抱えられない大きさにまで膨れ上がり、輝き方が尋常じゃなくなった。
 その後、球体となったツリは人型を取ったのだが、なんかいつもと感じが違う。そうだ、背が伸びてるのだ。輝きが収まったツリはもはや幼女ではなく少女だった。第二形態に進化したのだ。

 第二形態になって安定すると光は収まり、すぐに魔力の補給をねだられたのでキスをした。いつも以上に長々とキスしたにも拘らず、体が光り出さない。変化の直前は満タンだったはずなのに。第二形態への進化で魔力を使い果たしたか、あるいは第二形態になって容量が増えたか?

 もし魔力の容量が増加したとすると、唾液では薄いのかもしれない。そう考えた俺は、いったんベッドから出て、箙から矢を1本取り出し、尖った矢尻で左手の人差指の先端をグリグリやって少しだけ傷付け、血を滲ませた。それをツリに差し出すと、しゃぶりついて来たではないか。しかしほとんどひと舐めふた舐めで、ツリの体が輝き出した。
 血液は唾液よりも濃い。ゆえに含む魔力が高濃度なのは明白だ。

 第二形態へ進化する兆候と様子、そして進化後の血液による魔力補給を、ルードビッヒ教授に伝えれば、喜々として新たな論文を書き出すに違いない。教授の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

 再びベッドに入り込むと、今度はクレが待っていた。後は同じパターンである。
 口に吸い付かれて濃厚なキスの後、クレが光り出したと思ったら顔に跨られ、やはりぐちょぐちょで、要求されるまま丹念に舐めまわす。
 発光が強くなって球体になり、そのまま球体がどんどん肥大し、人型を取りだす。その人型は少女の第二形態だった。
 ツリのときで分かってたので、クレには最初から血の滲んだ人差し指を差し出すと、ひと吸いふた吸いして輝き出した。
『満腹、満腹ー。』

 そのまま3人で川の字になって眠りに着いた。いつも通りじゃないのは、両横が幼女から少女に変わったことである。

 うん、成長させるのが楽しみだ。今はまだ少女だから守備範囲の外だが、第五形態ともなれば…。むふふ。

 翌朝、起きると新たな問題に直面した。第一形態で膝まであった貫頭衣の丈が、背が伸びた第二形態では股すれすれになるのだ。これでは、まかり間違うと見えてしまうではないか!
 衣類を着る習慣のない精霊は、衣類を嫌がる。契約してから何とか宥めすかして貫頭衣を着させて来たが、チラ見えするこの格好で連れ回したら、俺はよくて変態認定、下手すりゃお縄もんである。

 薄絹の反物を取り出し、長方形に切ってその布を跨がせ、布の四隅をふたつずつ両腰で結んだ。簡易パンツである。
『やー、これ、きついー。』『やー、やー。』
 ふたりともブーイングである。
「ダメだよ。裸で外を歩けないだろ?」
『『平気ー。』』
「ふたりが平気でも、俺が捕まるんだよ。はい、次はこれ。」
 俺は長い布を腰に巻かせた。簡易スカートだ。これにより貫頭衣は簡易シャツとなった。
『もー、やー!』『やー、じゃまー。』
「大丈夫、すぐ慣れるって。それにかわいいぞ。」
『『ぶー。』』ふたりは不満タラタラだ。

 元貫頭衣=現簡易シャツ、簡易スカート、簡易パンツ。しかし、薄絹だから透ける。まぁ、この見た目ならギリセーフだろうが、第三形態になったら、胸も少し膨らみ出すらしいから、そうなると完全にアウトだな。今のうちに衣類に慣れさせておいた方がいいかもしれん。

 朝餉を食いに行くと、宿の親父さんが食いついて来た。
「お客さん、その子たちは?それに昨日までの子たちは?」
「一晩で少し背が伸びたんだよ。」
「お客さん、ご冗談を。そんな訳ないでしょうが。」
 事情を話したが納得してもらえず、実際にツリが植木の植物を伸ばし、クレが軽く宿の建物を揺らしてようやく納得してもらった。
 しかし、宿代については、今夜から子供料金=半額をふたり分で、大人ひとり分を追加された。幼女はおまけでいいが少女は子供料金だそうだ。まぁ仕方あるまい。

『今ので、お腹すいたー。』『クレも、お腹すいたー。』
 大して魔力を消費してないからキスで間に合ったが、宿の親父さんが白い目で見て来たので、魔力を補給する方法だと説明しておいた。でも信じていないっぽい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/2/6

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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