精霊の加護

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精霊の加護015 回想:西府のカルメンさん

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精霊の加護
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№15 回想:西府のカルメンさん

 つい2~3か月前までの活動拠点、西府に着いた。
 王都で揉めるようにしてエトワールを辞めて、すぐに西府に流れて来てから2年弱、クレと出会うまで俺は、西府で原則はソロで活動した。
 原則と言うのは、たまにだが、初心者とパーティを組んだからだ。

 初心者の頃の俺は、ゲオルギウスから冒険者のイロハを教わった。ゲオルギウスから受けた恩を新米の冒険者に返したいと言う思いがあった。ゲオルギウスとの再会を願っての、願掛けの意味もあった。

 エトワールの仕打ちに対する反発から、初心者と組むときは、報酬を平等に山分けした。
 初心者が受けた簡単なクエストだから報酬は低い。それで助っ人の俺がランクを笠に着て取り分を多くしたら、初心者の実入りは減ってしまう。
 俺は原則ソロ活動だから、ソロのときは当たり前だが報酬を総取りできる。だから金には困らない。低報酬の初心者クエストで分け前を多く取る必要などないのだ。

 そんな訳でちょっと背伸びした冒険者が、格上クエストを受けて難儀したときなどは、頼って来るようになった。
 正直面映ゆいのだが、じきに新人冒険者から師匠と呼ばれるようになってしまい、俺が初心者と臨時パーティを組むと、ゲオルク学校などと言われていた。まぁ、悪い気はしなかったが。

 そんな俺の姿勢を気に入って、初心者と臨時で組むときに割のいいクエストを融通してくれたのが、受付嬢のカルメンさんだ。カルメンさんはぶっきら棒な話し方だが、気風のいい姐御ってイメージで、年上好みの俺としては、思いっ切り惹かれている。笑

~~回想・ゲオルク17歳~~

 当てもなく西府に流れ着いて、取り敢えず冒険者ギルドに寄ってみた。
 昼過ぎだから、今日はクエストを受けずに、下見のつもりで来た。ソロクエストの割合などを確認したら、多くはないがそこそこある。

「ちょっとあんた、新顔だね。」受付嬢が声を掛けて来た。
「…。あ、どうもこんにちは。さっき西府に着いたばかりです。」
 美人だ。胸もでけぇ。一瞬固まってしまったが何とか答えた。笑

「ふうん、しばらく西府にいるのかい?」
「そのつもりです。」
「あたしゃ、受付のカルメンシータだ。カルメンと呼んどくれ。」
「ゲオルクです。射手やってます。よろしくお願いします。」
「射手のゲオルクか、それにしてもなんか元気ないね。嫌なことでもあったのかい?」
 エトワールから除名されたことを引きずってるのがいきなりバレたっぽい。

「え?そうですか?まぁそうですね。」
「今、暇だし、グチくらいなら聞いてやるよ。話せばスッキリすることもあるからね。」
「そうですね。聞いてもらおうかな。」美人で巨乳の受付嬢とお近付きになれるチャンス到来!笑

「カルメンさーん。」他の受付嬢から声が掛かった。
「ちっ、また何かやらかしたな。まったくドジなんだから。
 ゲオルク、ごめん。聞いての通り、お呼びが掛かっちまったよ。」
「あ、いいですよ。いつかゆっくり聞いて下さい。」
「じゃぁ、今夜でどう?いい店、紹介するよ。」
「おお、それはぜひ。」ラッキー♪まさかカルメンさんの方から誘ってくれるとは。
「おや、その笑顔の方がいいね。シケた面してるより断然男前だよ。」カルメンさんは笑って後輩のフォローに行った。

 カルメンさんのお仕事が終わり、ふたりで居酒屋に来ている。飾り気のない、小ざっぱりとした店だ。取り敢えずビールを注文した。
「「カンパーイ」」ぐびっぐびっぐびっ…。
「ぷはー、たまんないね。仕事の後のこの一杯。おい、マスター、お代わり持って来とくれ。」
 うーん、カルメンさん、男前じゃん。笑
「ゲオルク、あんたも呑みな。西府に来た祝いに今夜は奢ってやるよ。」
「あ、すみません。ご馳走になります。」

「で、何があったんだい?」

 俺はカルメンさんに、王都でのエトワールとの確執を語った。
 東府で世話になったゲオルギウスとはぐれて合流できなかったこと。
 繋ぎで入ったエトワールでは、もとからのメンバーの3人がグルになって俺の分け前を削って来たこと。
 俺のランクが上がって分け前が増えた途端、除名されたこと。
 何もかも嫌になって王都を離れるつもりで定期馬車に乗ったらそれがたまたま西府行で、西府に流れ着いたこと。
 パーティに懲りたので、しばらくはソロでやるつもりなこと。

「なるほどねぇ。ゲオルクの話を聞く限りでは、そいつら、とんでもない外道だねぇ。」
「ですよね。」ふっとカルメンさんの胸元に眼が行く。でけぇな。って何考えてんだ俺!

「ただね、あたしもこんなだからさ、思ったことズバズバ言うってんで、それなりに相談を受けるんだよ。その結果として、揉めてる奴らを仲裁することも多くなるんだけどね。」
「なるほど。」
「仲裁で一番大事なことって分かるかい?」
「中立…かな?」
「まぁそうだね。中立と言えば当たらずとも遠からずかな。正解はね、双方の言い分をしっかり聞くことだよ。」
「…。」
「まぁ不満かもしれないがね、エトワールの言い分を聞いてみないと何とも言えないね。」
「そうでしょうか?」
「あんたから見たら、あいつらの言い分を聞くなんて、ふざけるなって思うかもしれないけど、仲裁するときには必須だね。なんでか分かるかい?」
「さぁ。」ふっとカルメンさんの胸元に眼が行く。でけぇな。って何考えてんだ俺!

「そもそも揉めてる原因の大半は誤解だからさ。
 例えばだよ、Aが良かれと思ってしたことを、Bはちょっとした誤解から邪魔されたと感じてしまった。これで十分揉める原因になるのさ。」
「確かにそうですね。でも俺はエトワールのどこを誤解したんですか?」
「さぁ。それはエトワールの連中に話を聞いてみないと分かんないね。」
「そうですか。」

「まぁひとつ言えることは、分け前については、ギルドに調停を持ち込まれても、残念だがゲオルクの言い分は通らないってことだね。」
「え?」
「まず加入の際に、1ランクで2倍と言うルールを提示され、あんたはそれで納得している。自分のランクが上がったら五分だと言われてそれならいいと思った。だったら相手のランクが上がったときはその逆になるのに文句は言えない。残念だけど、そこに思い至らなかった当時のゲオルクが未熟だったんだよ。」
「…。」確かにな。だからこそ渋々諦めて、その配分でエトワールに居続けた訳だし…。ふっとカルメンさんの胸元に眼が行く。でけぇな。って何考えてんだ俺!

「それから除名の件だけどさ。ゲオルク、あんたエトワールから正式メンバーに誘われたことはなかったかい?」
「何回かありました。」
「で?」
「そりゃあ、断りましたよ。ゲオルギウスと合流したら抜けていいって約束でしたからね。」
「なるほどねぇ。」
「それが何か?」

「例えばだよ。ゲオルクが相棒にヒーラーが欲しかったとする。そこへヒーラーAが来て組んだ。そいつは仲間を待ってる間の繋ぎだと言う。何度かクエストをこなして、そいつとの連携がいい塩梅になって来た。そいつの仲間はなかなか来ない。
 で、ゲオルクは、いつ来るか分かんない仲間より、俺と正式に組まないかと持ち掛けたら断られた。そこへ正式に組む仲間を探してるヒーラーBが来た。あんた、どうする?」
「…。」迷うな。ふっとカルメンさんの胸元に眼が行く。でけぇな。って何考えてんだ俺!

「Aを選べば、Bは他の奴と組み、そのうちAの本来の仲間が来たらAも抜ける。ゲオルクはヒーラーを失うことになるね。
 Aと組んだままBと組めば、分け前は減るし、そもそも3人のうちふたりがヒーラーってパーティもな。アンバランス過ぎるだろう?
 後は、Bを選んでそのうち抜けるAとは分かれるかだね。」
「…。」
「迷うだろ?それは3つとも答えとしてありだからさ。」
「確かに。」ふっとカルメンさんの胸元に眼が行きそうになったので。もう胸を見ないように、顔を見る。超美人だ。って何考えてんだ俺!

「ところでさ、落ち込んでるゲオルクをどうやって慰めようかねぇ。さっきからあたしの胸が気になるみたいだから、ぱふぱふでもしてやろうか?」
「え?す、すみません。」真っ赤になる俺。酒のせい!ではない。
「あははは。謝ったら認めてるようなもんだろ。」
「あ、そうですね。でも、気付くと眼が行っちゃってまして。俺の相談に乗ってもらってたのに本当にすみません。」
「正直だねぇ。ますます気に入ったよ。」

 カルメンさんは席を立ち、俺の横に来て座ると、俺の頭を掴んで巨乳の谷間に埋めた。
「ほれ、ぱふぱふだ。わはははは。」柔らかくて弾力がある。とてもいい匂いだ。嬉しいが息ができん!苦しい。
 解放されたときの俺は息も絶え絶えだ。まったく敵わねぇな。笑

 それから俺たちは、互いのことを話した。

 俺は、子供の頃から精霊が見えること。
 そのことで気味悪がられたこと。
 10歳の魔力測定で桁違いの魔力があることが分かったこと。
 魔術師を目指して東府魔法学院に通ったが、魔力を放出できないことが分かって早々に除籍になったこと。
 失意のまま帰った村では詐欺師扱いされたこと。
 それを神父さんが庇ってくれたこと。

 いじけてる俺を狩人の父さんが見かねて弓矢の技を教えてくれたこと。
 それがハマって射手になったこと。
 狩りの最中に森で木の精霊に会って親友になったこと。
 一緒に冒険をする約束をしてるが、相方の精霊がまだ俺と契約できないので、その森を離れられないこと。
 ゲオルギウスを一旦離脱したのは、精霊が契約できるようになったか確認に行ったためで、契約にはもう少し掛かること。
を語った。

 カルメンさんは、ここ西府の出身で、攻撃魔法、回復魔法、バフとデバフの両方の支援魔法と、あらゆる魔法が使えること。
 子供の頃は、将来は賢者かと神童扱いされたが、魔力量が少なくてすぐ魔力切れを起こしてしまったこと。
 このため、賢者候補の神童から器用貧乏に周囲の扱いが代わったこと。

 縁の下の力持ちと言うのに憧れているので、仲間を陰で支える支援術士として冒険者になりたかったこと。
 魔力不足で冒険者の道は諦めたこと。
 今は、ギルドの受付として、冒険者をサポートに徹していること。
を話してくれた。

 ぱふぱふの後、ずっと横にいるカルメンさんは、だいぶ酔いが回ってしな垂れて来た。
「ゲオルクは彼女はいるかい?」
「いませんよ。」
「ひょっとして、彼女いない歴=年齢だな。」
「まぁそうですけど。」
「てことは女を知らないな?」
「知ってますよ。」
「わははは。無理するな。
 よし、このまま私をお姫様抱っこで家まで連れて帰れたら、あたしが女を教えてやろう。ただし、途中でへばったらなしだ。やるか?」
 この人も初物食いか。では初めてのふりして食われてやろう。笑
「やりますとも!」

 カルメンさんの家は居酒屋から近かったのだが、俺だって酔っぱらってるのだから、お姫様抱っこのまま行けるはずがない。

「カルメンさん、やばいです。バフお願いします。」
「しょうがないねぇ。ほれ。」カルメンさんの支援魔法で体力が強化されたお陰でお姫様抱っこのまま、何とかカルメンさんの家にたどり着いた。

「よく頑張ったな。ご褒美だ。」と言って濃厚なキスをされ、シャワーも浴びずに、そのままカルメンさんのなすがままで結ばれた。童貞を装ってるので1回目は受け身だ。
 それから一緒に風呂に入ってあんなことやこんなことをしてもらって、再びベッドに行く。もう、本気モードになってもいいだろう。その夜は全部で5回戦までこなした。笑

 マイドラゴンがカルメンさんに完全に懐いてしまったのは言うまでもなかろう。

 目覚めると横でカルメンさんが寝ている。朝だから当然マイサンはマイドラゴン化して臨戦態勢だ。寝ているカルメンさんにもう1戦挑む。
「ううん、朝からしょうがないねぇ。まったく。」
「カルメンさんのせいですよ。教えた責任を取って下さい。」

 しかしこの後はこれっ切りなしだった。ずっと躱され続けている。次は俺がもう少し大人になってからだそうだ。なんか、リーゼさんやジュヌさんと似たことを言う。笑

 それからおよそ1年、俺はソロで活動し、誰とも組まなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/1/23

更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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