17 / 183
精霊の加護014 ジュヌさんのスピリタス加入
しおりを挟む
精霊の加護
Zu-Y
№14 ジュヌさんのスピリタス加入
~~現在・ゲオルク19歳~~
王都の冒険者ギルドに入った。2年ぶりか。ジュヌさんはいるかな。受付に向かうと目的のその女性はそこにいた。相変わらず美人だ。
「ジュヌさん、お久しぶり。」
「まぁ、ゲオルクさん。お久しぶりですわね。」
「相変わらずきれいだね。」
「もう、いきなりなんですの。」
「ほんのご挨拶かな。」
「で、そのお子たちは?」ジュヌさんは、俺の両肩に乗っているツリとクレを見て問いかけて来た。
俺は声を潜めて、
「ここではちょっと。あとで時間貰える?」
「よろしいですわよ。勤務終了後でよろしければ。それに、他にもゲオルクさんには聞きたいことがございますし。」
「では後程。」
俺はギルドを出て近くの宿屋を取って部屋に落ち着いた。
勤務を終えたジュヌさんと合流して、個室のある店に行く。飲み物と料理を注文すると、飲み物はすぐに出て来た。乾杯。
「ゲオルクさん、ゲオルギウスを探しに行くって言ってませんでしたっけ?」
「うん、そのつもりだったんだけどね、最初に行った西府の居心地がよくて、2ヶ月前まで居着いてたんだ。」
「素敵な出会いでもございましたかしら?」知ってるくせに。笑
「うん。カルメンさんと言う受付嬢のお姉さんによくしてもらったよ。」
「あら。正直に白状なさいましたわね。」
「うん。何も隠すことはないからね。」
「まぁ、どの口が仰るのかしら。カルメンのことも私と同様、お騙しになりましたのに。」
「はて、騙す?心当たりがないな。ジュヌさんにもカルメンさんにも、俺は童貞じゃないと言ったよね。信じてもらえなかったようだけど。」
「まぁ。あれは演技でしたのね。」
「そのように期待されたみたいなんで、そのように振舞っただけだよ。」
「まったく。」ジュヌさんが溜息をつく。
注文した料理がすべて出て来たので本題に入ることにした。
「これから話すことは、しばらくの間は他言無用でお願い。実はこの子たちなんだけど、俺と契約した精霊なんだ。質問されると思うから予め言っておくけど、契約した精霊は誰でも見られるようになるんだよね。」
「…嘘?」眼を見開いて驚くジュヌさん。
俺はその後、西部でクレと出会って契約し、東部の郷里へツリを迎えに行って契約し、東府魔法学院で精霊魔法の研究に携わっていたことを告げた。
もちろんその過程で分かった、潜在能力や魔力量の上限値の上げ方もだ。それと魔力の補給方法と潜在能力を引き出す方法も。
「もしそれが本当なら私の魔力量も上がってますの?」
「恐らくは。
ツリ、クレ、ジュヌさんの魔力量と潜在能力を教えてくれ。」
ふたりがふわふわと浮いてジュヌさんのまわりを飛びながら回った。しばらくして、
『魔力量は、1900~。』
「えっ、えー!私の魔力、800だったんですのよ。1100も上がってるだなんて知りませんでしたわ。」驚くジュヌさん。
『ゲオルクの、魔力が、補給、されてるー。』やっぱりか。笑
『潜在、能力は、8000~。』リーゼさんよりは少し少ないけど、神官としては十分だな。
「ジュヌさん、冒険者が夢だったよね?俺のパーティに入らない?」
「え?でも、そんなことが…。」
「これから冒険者登録すればいいんだよ。スタートは遅いけど、受付としての知識もあるし、成長はそこらの新米冒険者よりずっと早いはずだよ。今から夢を叶えない?俺にそのサポートをさせてよ。」
しばらく無言で考え込むジュヌさん。
「すごく魅力的なお誘いですわ。でも、試してみないと。」
「じゃぁ、今ここで俺に何か回復魔法を掛けてみて。」
ジュヌさんは続け様に様々な初級回復魔法を発動した。ステータス異常の回復魔法では、俺のほろ酔いが取れてしまった。こら!笑
「魔力切れになりませんわ。まだまだ平気ですわ。何てことですの?信じられませんわ。」ジュヌさんは感動している。テンションマックスだ。笑
さらにしばらく発動し続けて、魔力切れの兆候が見えて来た。よし、魔力を補給しよう。
俺はジュヌさんの横に行き、抱きすくめてそのままキスをした。もちろん濃厚なやつを。
「どう?魔力は回復したよね?」
「ええ、ゲオルクさんと一緒なら魔力切れはないですわね。」ジュヌの眼が輝く。
『ゲオルクー、ツリもー。』ぶっちゅーと来て、すぐに舌が入って来た。笑
ツリが輝き出して離れた。満タンである。
『次は、クレの番ー。』キスと同時にちゅーちゅー吸い出した。
クレもすぐに輝き出した。こちらも満タンである。
「ジュヌさん、これは魔力補給なんだ。ロリコン認定は勘弁してよね。」
「…。」え、ジュヌさん、なぜ黙るの?ここは突っ込むところでしょ?汗
それから楽しい夕餉が続いた。回復魔法で酔いを醒まされた俺は呑み直さねばならなかったが…。苦笑
夕餉を堪能し、ジュヌさんの家まで送る。
「ゲオルクさん、今日はありがとうございました。遅れ馳せながら、夢が叶いそうですわ。」
「俺は明日、王都を発つ予定なんだ。だから、スピリタスへ加入するかの決断は明日までにお願い。」
「あ、それでしたらもう。不束者ですがよろしくお願いします。」
「では明日、冒険者登録とパーティ加入申請をしてしまおうよ。」
「はい。」
それから俺たちは唇を求め合った。
「俺、今はDランクだけど、Aランクに駆け上がったら本気で口説くからね。返事を考えといてよ。」
「まぁ。」両手で口元を隠すしぐさが何とも言えねぇ。
「では明日。」今夜は我慢して帰る。ここでがっついたらだめなのだ。
俺は宿屋でリーゼさん宛の手紙を書いた。『王都でジュヌさんをスピリタスに誘い、加わってもらったので、王都でジュヌさんと合流して北府に来て欲しい。』と言う内容だ。これを明日、王都ギルドから東府ギルドへと送る。
翌日、ギルドの内輪ではひと悶着あった。冒険者からの絶大な人気を誇る受付嬢のジュヌさんが冒険者登録して、受付を辞めると言い出したからだ。ジュヌさんが加わるパーティのリーダーとして、俺はギルマスから呼び出しを受けた。
「おい、どういうことだ?」ギルマスはハナから喧嘩腰だ。
「ジュヌさんから冒険者になりたかったという話は以前から聞いていた。今回そのメドが立ったから夢を叶えないかと誘った。それだけだ。ギルドの規定には抵触していないはずだぞ。」俺は一歩も引く気はない。
「ジュヌは冒険者たちから絶大な人気なのだ。抜けるなどありえん。ジュヌの代わりはいないのだ。」
「おい、それは後継となる受付嬢を育ててなかったお前の責任だよな。何でジュヌさんが自分の夢を諦めてまで、お前の尻拭いをせにゃならんのだ?」
「しかしだな。」
「しかしも減ったくれもねぇよ。ジュヌさんが抜けたら、ジュヌさんに依存していた他の受付嬢も奮起するだろうよ。そうなるように導くのがお前の仕事だろ?」
「ジュヌほど有能な者は他におらんのだ。」
「だからそれを育てるのがギルマスであるお前の役割だろーが?できねぇなら辞表を書いてとっとと失せろ。」
「ジュヌが辞めるのに俺まで辞める訳にはいかんだろ。」
「じゃぁ、泣き言を言わずにとっととやれよ。引継ぎに3週間だけ待ってやる。その間に何とかしろ。いいな?」俺は席を立った。
「ジュヌさん、ギルマスと話を付けて来たよ。ギルマスの言うこと聞く必要はないからね。引継ぎに3週間だけやるって言って来たんで、3週間経っても引継ぎが終わってなかったら、それは単にギルドの引き伸ばしだから、もうほっといて北府に来てね。」
「はい。いろいろとありがとうございました。」
ジュヌさんはギルド職員としての知識と実績が買われてEランクスタート。
「それとそのうちリーゼさんが来るから、王都で合流して来てね。」
「え?リーゼも来ますの?」
「スピリタスはリーゼさんと結成したんだよ。そこにジュヌさんに加わってもらったんだ。そしてあともうひとり、加えたいメンバーがいるんだよね。」
「カルメンですわね。」
「うん。これから西府に行って誘って来るよ。」
横からいきなり声を掛けられた。
「ゲオルクじゃねぇか?」
「あ、アンドレ。」
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
「ああ。久しぶり。」正直、気まずい。
「ゲオルギウスとは合流できたのか?」
「いや、まだだ。」
「そうか、あのな、マイクらしいのを北府で見かけたと言う奴がいるぜ。」
「え?本当か?」
「ああ。ただよ、実際に話した訳じゃねぇんだ。かなりあやふやな情報だな。まったく手掛かりがないよりはましという程度だけどよ。」
「すまん。それでも助かる。」
「おい、アンドレ。何やってんだ…っておい、ゲオルクじゃねぇか!久しぶりだな。元気でやってるか?」シモンだ。
「え?ゲオルクだって?おお、ほんとだ。おい、元気か?」セドリックだ。
「ああ、シモン、セドリック、久しぶり。」
「紹介するよ。こいつがお前の代わりに入ったロランだ。」
「やあ、始めまして。皆から噂は聞いてるよ。随分優秀な射手なんだってな。」
「え?どうも。ゲオルクだ。よろしく。」俺が優秀?お払い箱にしたくせにか?
「しばらく王都にいるのか?」アンドレが聞いて来た。
「いや、ちょっと寄っただけなんだ。すぐに発つ。」
「そうか、俺たちゃもう出掛けるけどよ、まぁ、頑張れよ。ゲオルギウスが早く見付かるといいな。じゃぁな。今度ゆっくり呑もうぜ。」
アンドレがそう言って、エトワールはギルドを出て行った。
「なんだったんだろ?」と呟く俺。
「昔の仲間に会えて懐かしかったのだと思いますわ。」
「え?仲間?でも俺、除名されたんだよ。」
「彼らはそう思ってませんわよ。繋ぎでの臨時加入契約が終わっただけだと言ってましたわね。それとゲオルクさんは優秀な射手だとも言ってましたわ。」
「え?なんで?」
「その通りだからですわ。ゲオルクさんがお辞めになる1ヶ月くらい前でしょうか。アンドレさんが言ってましたもの。『ゲオルクはエトワールに正式加入する気はないみたいだ。余程ゲオルギウスがよかったんだな。』ってね。
それからアンドレさんは、魔術師を探すのを再開したんですのよ。」
「そうだったんだ。」
「ゲオルクさんが王都を出た後も、ゲオルクさんが優秀な射手だとあちこちで吹聴してたんですのよ。ロランさんの加入でゲオルクさんには抜けてもらったけど、ゲオルクさんが次のパーティに入りやすいように気遣ってたんだと思いますわ。」
「それは知らなかったな。教えてくれてありがとう。」俺、あいつらのことを誤解してたかもしれんな。カルメンさんの言う通りだったか…。
俺は、王都ギルドから東府のリーゼさん宛の手紙を出し、ジュヌさんと別れて西府に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/1/23
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№14 ジュヌさんのスピリタス加入
~~現在・ゲオルク19歳~~
王都の冒険者ギルドに入った。2年ぶりか。ジュヌさんはいるかな。受付に向かうと目的のその女性はそこにいた。相変わらず美人だ。
「ジュヌさん、お久しぶり。」
「まぁ、ゲオルクさん。お久しぶりですわね。」
「相変わらずきれいだね。」
「もう、いきなりなんですの。」
「ほんのご挨拶かな。」
「で、そのお子たちは?」ジュヌさんは、俺の両肩に乗っているツリとクレを見て問いかけて来た。
俺は声を潜めて、
「ここではちょっと。あとで時間貰える?」
「よろしいですわよ。勤務終了後でよろしければ。それに、他にもゲオルクさんには聞きたいことがございますし。」
「では後程。」
俺はギルドを出て近くの宿屋を取って部屋に落ち着いた。
勤務を終えたジュヌさんと合流して、個室のある店に行く。飲み物と料理を注文すると、飲み物はすぐに出て来た。乾杯。
「ゲオルクさん、ゲオルギウスを探しに行くって言ってませんでしたっけ?」
「うん、そのつもりだったんだけどね、最初に行った西府の居心地がよくて、2ヶ月前まで居着いてたんだ。」
「素敵な出会いでもございましたかしら?」知ってるくせに。笑
「うん。カルメンさんと言う受付嬢のお姉さんによくしてもらったよ。」
「あら。正直に白状なさいましたわね。」
「うん。何も隠すことはないからね。」
「まぁ、どの口が仰るのかしら。カルメンのことも私と同様、お騙しになりましたのに。」
「はて、騙す?心当たりがないな。ジュヌさんにもカルメンさんにも、俺は童貞じゃないと言ったよね。信じてもらえなかったようだけど。」
「まぁ。あれは演技でしたのね。」
「そのように期待されたみたいなんで、そのように振舞っただけだよ。」
「まったく。」ジュヌさんが溜息をつく。
注文した料理がすべて出て来たので本題に入ることにした。
「これから話すことは、しばらくの間は他言無用でお願い。実はこの子たちなんだけど、俺と契約した精霊なんだ。質問されると思うから予め言っておくけど、契約した精霊は誰でも見られるようになるんだよね。」
「…嘘?」眼を見開いて驚くジュヌさん。
俺はその後、西部でクレと出会って契約し、東部の郷里へツリを迎えに行って契約し、東府魔法学院で精霊魔法の研究に携わっていたことを告げた。
もちろんその過程で分かった、潜在能力や魔力量の上限値の上げ方もだ。それと魔力の補給方法と潜在能力を引き出す方法も。
「もしそれが本当なら私の魔力量も上がってますの?」
「恐らくは。
ツリ、クレ、ジュヌさんの魔力量と潜在能力を教えてくれ。」
ふたりがふわふわと浮いてジュヌさんのまわりを飛びながら回った。しばらくして、
『魔力量は、1900~。』
「えっ、えー!私の魔力、800だったんですのよ。1100も上がってるだなんて知りませんでしたわ。」驚くジュヌさん。
『ゲオルクの、魔力が、補給、されてるー。』やっぱりか。笑
『潜在、能力は、8000~。』リーゼさんよりは少し少ないけど、神官としては十分だな。
「ジュヌさん、冒険者が夢だったよね?俺のパーティに入らない?」
「え?でも、そんなことが…。」
「これから冒険者登録すればいいんだよ。スタートは遅いけど、受付としての知識もあるし、成長はそこらの新米冒険者よりずっと早いはずだよ。今から夢を叶えない?俺にそのサポートをさせてよ。」
しばらく無言で考え込むジュヌさん。
「すごく魅力的なお誘いですわ。でも、試してみないと。」
「じゃぁ、今ここで俺に何か回復魔法を掛けてみて。」
ジュヌさんは続け様に様々な初級回復魔法を発動した。ステータス異常の回復魔法では、俺のほろ酔いが取れてしまった。こら!笑
「魔力切れになりませんわ。まだまだ平気ですわ。何てことですの?信じられませんわ。」ジュヌさんは感動している。テンションマックスだ。笑
さらにしばらく発動し続けて、魔力切れの兆候が見えて来た。よし、魔力を補給しよう。
俺はジュヌさんの横に行き、抱きすくめてそのままキスをした。もちろん濃厚なやつを。
「どう?魔力は回復したよね?」
「ええ、ゲオルクさんと一緒なら魔力切れはないですわね。」ジュヌの眼が輝く。
『ゲオルクー、ツリもー。』ぶっちゅーと来て、すぐに舌が入って来た。笑
ツリが輝き出して離れた。満タンである。
『次は、クレの番ー。』キスと同時にちゅーちゅー吸い出した。
クレもすぐに輝き出した。こちらも満タンである。
「ジュヌさん、これは魔力補給なんだ。ロリコン認定は勘弁してよね。」
「…。」え、ジュヌさん、なぜ黙るの?ここは突っ込むところでしょ?汗
それから楽しい夕餉が続いた。回復魔法で酔いを醒まされた俺は呑み直さねばならなかったが…。苦笑
夕餉を堪能し、ジュヌさんの家まで送る。
「ゲオルクさん、今日はありがとうございました。遅れ馳せながら、夢が叶いそうですわ。」
「俺は明日、王都を発つ予定なんだ。だから、スピリタスへ加入するかの決断は明日までにお願い。」
「あ、それでしたらもう。不束者ですがよろしくお願いします。」
「では明日、冒険者登録とパーティ加入申請をしてしまおうよ。」
「はい。」
それから俺たちは唇を求め合った。
「俺、今はDランクだけど、Aランクに駆け上がったら本気で口説くからね。返事を考えといてよ。」
「まぁ。」両手で口元を隠すしぐさが何とも言えねぇ。
「では明日。」今夜は我慢して帰る。ここでがっついたらだめなのだ。
俺は宿屋でリーゼさん宛の手紙を書いた。『王都でジュヌさんをスピリタスに誘い、加わってもらったので、王都でジュヌさんと合流して北府に来て欲しい。』と言う内容だ。これを明日、王都ギルドから東府ギルドへと送る。
翌日、ギルドの内輪ではひと悶着あった。冒険者からの絶大な人気を誇る受付嬢のジュヌさんが冒険者登録して、受付を辞めると言い出したからだ。ジュヌさんが加わるパーティのリーダーとして、俺はギルマスから呼び出しを受けた。
「おい、どういうことだ?」ギルマスはハナから喧嘩腰だ。
「ジュヌさんから冒険者になりたかったという話は以前から聞いていた。今回そのメドが立ったから夢を叶えないかと誘った。それだけだ。ギルドの規定には抵触していないはずだぞ。」俺は一歩も引く気はない。
「ジュヌは冒険者たちから絶大な人気なのだ。抜けるなどありえん。ジュヌの代わりはいないのだ。」
「おい、それは後継となる受付嬢を育ててなかったお前の責任だよな。何でジュヌさんが自分の夢を諦めてまで、お前の尻拭いをせにゃならんのだ?」
「しかしだな。」
「しかしも減ったくれもねぇよ。ジュヌさんが抜けたら、ジュヌさんに依存していた他の受付嬢も奮起するだろうよ。そうなるように導くのがお前の仕事だろ?」
「ジュヌほど有能な者は他におらんのだ。」
「だからそれを育てるのがギルマスであるお前の役割だろーが?できねぇなら辞表を書いてとっとと失せろ。」
「ジュヌが辞めるのに俺まで辞める訳にはいかんだろ。」
「じゃぁ、泣き言を言わずにとっととやれよ。引継ぎに3週間だけ待ってやる。その間に何とかしろ。いいな?」俺は席を立った。
「ジュヌさん、ギルマスと話を付けて来たよ。ギルマスの言うこと聞く必要はないからね。引継ぎに3週間だけやるって言って来たんで、3週間経っても引継ぎが終わってなかったら、それは単にギルドの引き伸ばしだから、もうほっといて北府に来てね。」
「はい。いろいろとありがとうございました。」
ジュヌさんはギルド職員としての知識と実績が買われてEランクスタート。
「それとそのうちリーゼさんが来るから、王都で合流して来てね。」
「え?リーゼも来ますの?」
「スピリタスはリーゼさんと結成したんだよ。そこにジュヌさんに加わってもらったんだ。そしてあともうひとり、加えたいメンバーがいるんだよね。」
「カルメンですわね。」
「うん。これから西府に行って誘って来るよ。」
横からいきなり声を掛けられた。
「ゲオルクじゃねぇか?」
「あ、アンドレ。」
「久しぶりだな。元気でやってるか?」
「ああ。久しぶり。」正直、気まずい。
「ゲオルギウスとは合流できたのか?」
「いや、まだだ。」
「そうか、あのな、マイクらしいのを北府で見かけたと言う奴がいるぜ。」
「え?本当か?」
「ああ。ただよ、実際に話した訳じゃねぇんだ。かなりあやふやな情報だな。まったく手掛かりがないよりはましという程度だけどよ。」
「すまん。それでも助かる。」
「おい、アンドレ。何やってんだ…っておい、ゲオルクじゃねぇか!久しぶりだな。元気でやってるか?」シモンだ。
「え?ゲオルクだって?おお、ほんとだ。おい、元気か?」セドリックだ。
「ああ、シモン、セドリック、久しぶり。」
「紹介するよ。こいつがお前の代わりに入ったロランだ。」
「やあ、始めまして。皆から噂は聞いてるよ。随分優秀な射手なんだってな。」
「え?どうも。ゲオルクだ。よろしく。」俺が優秀?お払い箱にしたくせにか?
「しばらく王都にいるのか?」アンドレが聞いて来た。
「いや、ちょっと寄っただけなんだ。すぐに発つ。」
「そうか、俺たちゃもう出掛けるけどよ、まぁ、頑張れよ。ゲオルギウスが早く見付かるといいな。じゃぁな。今度ゆっくり呑もうぜ。」
アンドレがそう言って、エトワールはギルドを出て行った。
「なんだったんだろ?」と呟く俺。
「昔の仲間に会えて懐かしかったのだと思いますわ。」
「え?仲間?でも俺、除名されたんだよ。」
「彼らはそう思ってませんわよ。繋ぎでの臨時加入契約が終わっただけだと言ってましたわね。それとゲオルクさんは優秀な射手だとも言ってましたわ。」
「え?なんで?」
「その通りだからですわ。ゲオルクさんがお辞めになる1ヶ月くらい前でしょうか。アンドレさんが言ってましたもの。『ゲオルクはエトワールに正式加入する気はないみたいだ。余程ゲオルギウスがよかったんだな。』ってね。
それからアンドレさんは、魔術師を探すのを再開したんですのよ。」
「そうだったんだ。」
「ゲオルクさんが王都を出た後も、ゲオルクさんが優秀な射手だとあちこちで吹聴してたんですのよ。ロランさんの加入でゲオルクさんには抜けてもらったけど、ゲオルクさんが次のパーティに入りやすいように気遣ってたんだと思いますわ。」
「それは知らなかったな。教えてくれてありがとう。」俺、あいつらのことを誤解してたかもしれんな。カルメンさんの言う通りだったか…。
俺は、王都ギルドから東府のリーゼさん宛の手紙を出し、ジュヌさんと別れて西府に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/1/23
更新は火木土の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859461365664
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる