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射手の統領146 チンピラの正体とどぶろく
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射手の統領
Zu-Y
№146 チンピラの正体とどぶろく
コップを出て、今日は山峡の川沿いを北西に進み、馬手側の山に沿って徐々に進路を北に変えて行く。北から東寄りに転じるとそこが今日の目的地であるベノサンの農村だ。
道中はいつものように、キョウちゃんズが左右前方に,アキナが後方に,それぞれ警戒の式神を飛ばしている。
「アタル、昨日の6人が間隔を開けて、ついて来ています。」
昨日、ちょっかいを出して来た騎乗の6人組が、偶然なのか、あるいは意趣返しを狙ってのことか、一定の距離を取って俺たちの後について来ている。
しかし奴らの動きは、式神による警戒で手に取るように分かっている。仕掛けて来ても返討ちにするだけだ。
「アキナ、そのまま後方の警戒を続けてくれ。」
「はい。」
「アキ姉、無理したらあかんよ。疲れたらうちらが代わるさかい、遠慮せんと休んでな。」
「せやで。アキ姉が休んどる間は、うちらが交代で1体を後ろに回すしな。」
「ふたりとも、ありがとう。疲れたら遠慮なく代わってもらいますね。」
キョウちゃんズは、その膨大な気力量で式神を3体同時に休みなく飛ばすことができる。しかし、キョウちゃんズを基準に考えてはいけない。苦笑
アキナの様に、休憩を取りつつ1体だけを飛ばすのが普通なのだ。
式神を扱えるのは、陰陽士、陽士、陰士のオミョシ一党と、巫女などの神職、そして僧侶である。
オミョシ分家の姫であったキョウちゃんズは、幼くして陰の術を会得し、気力量が桁外れに膨大であったため、幼い頃は神童としてもてはやされた。当然、オミョシの修行の初歩である式紙飛ばしなどは超余裕どころか、式神を3体も同時に飛ばすと言う離れ業をやってのける。
和の国有数の商家、山髙屋のひとり娘であるアキナは、商人として英才教育を受けて来た。
ではなぜ、商家のひとり娘であるアキナが式神を飛ばせるかと言うと、アキナの母親が巫女だったからである。アキナはこの母親から、巫女の術をいくつか伝授されており、式神飛ばしよりも上級の除霊ですら、神職や僧侶並みに行うことができる。
実のところアキナは、式神飛ばしについては、巫女だった母親から教わっていなかった。しかし、母親によって巫女の資質を磨かれていたアキナは、キョウちゃんズの手ほどきで、あっさりと式神飛ばしを会得したのだ。
そのときは、俺たちセプトのメンバー全員も一緒に、キョウちゃんズから式神飛ばしを教わったが、アキナ以外は、誰も会得できなかった。
ちなみにアキナは、ユノベで弓の技も学んでおり、非常に筋がいい。戦闘の際は、射手としても戦える。アキナは、商いの才、巫女の術、弓の技を使いこなす万能タイプなのだ。
昼休憩は、トクホの町の外れで取ることにした。
北斗号を街道脇の開けた場所に停めると、距離をおいて後ろからつけて来ていた6人組が追い付いて、そのまま素通りして行った。ふむ、意趣返しではなく、偶然、方向が一緒だったのかな?
と思ったのだが、俺たちを抜かして行ってしばらくすると、6人は馬を止めUターンして引き返して来た。
皆が身構え、俺は接近に警告を与える矢を射放った。矢は、6人組と俺たちの中間に突き刺さって、騎乗の6人組が止まった。
「てめぇ、いきなり何しやがる!」
「昨日も警告したよな、それ以上近付くと敵対行動と見做して反撃するぞ。今のは警告だ。」
一気に殺気を放って来たが、小者どもの殺気など屁でもない。殺気をあっさりスルーした俺たちに警戒したのか、6人組はいきなり仕掛けては来なかった。
「昨日な、あんたらと行き会った後のことだ。馬たちの尻によ、ちょいと火傷やら傷やらがあったんだが、あんたらの仕業かい?」
「さあな?」俺は惚けてみた。
「悪戯にしちゃぁ、ちょっと悪質じゃねぇか?」
「悪戯だと?ふざけるなよ。ちょっかいを出して来たのはお前らだ。幅寄せして来たお前らに俺は警告したが、お前らは離れなかった。だから馬を追い払った。それだけだ。
まさかあの程度で3人も落馬するとは思わなかったがな。落馬はお前らの騎乗の腕が未熟なせいだ。それでもこっちは、仲間の医薬士が十分な治療をしてやっただろ?」
落馬した3人の顔が真っ赤になった。怒ったのかな?恥ずかしいのかな?
「素直に侘びて誠意を見せりゃあ、命まで取るつもりはなかったけどな、お前は殺す。女どもは味見してから売り飛ばす。
おい、やっちまえ。」
「ノワ、行くぞ。通常出力で十分だ。」
『応。』
ノワの風撃矢を放つと、着弾と同時に竜巻が起きて、6人全員が竜巻に巻き上げられて落下した。乗り手を失った馬6頭は一目散に逃げて行く。
竜巻で巻き上げられた後、地面に叩き付けられた6人はそのまま動かなくなったので、サジ姉が回復の術を掛けた。
「おっちゃんたち、風撃矢1本で、アタル兄に瞬殺されてるやないの。いくらなんでも弱過ぎや。それやのに、なんであんなにイキってたん?もうちょっと、身の程を弁えんと、長生きできひんよ。」
「ほんまやで。弱いんやから、チンピラみたいなことやめとき。身の丈に合った生活をするんが一番や。一攫千金とかな、夢みたいなこと考えんと、地道に生きて行くんやで。モブにはそれが一番や。ええな?」
キョウちゃんズの容赦ない言葉に項垂れる6人組。このふたりなりに労わってるのだと思うが、言葉は辛辣だな。苦笑
例によって武装解除で、6人の武器と防具をすべて取り上げ、下帯1枚にひん剥いて、数珠繋ぎにして道端の木に繋いでおいた。
嫁たちが昼餉の準備をしている間、俺は6人の尋問を行った。
「で、お前らどこの者だ?」
「トクホの者だ。」
「なんだ、この町じゃないか。じゃぁ何か?俺たちをつけて来たんじゃなくて帰るとこだったのか?」
「そうだ。」
「帰るつもりなら、なんでここで仕掛けて来た?」
「…。」
「だんまりかよ。まぁいい。お前らはトクホの町を根城にしている野盗の類か?」
「違う。衛兵だ。」
「そうだ。町の衛兵にこんなことをしてタダで済むとは思うなよ。」
こりゃハッタリだな。
「衛兵が聞いて呆れるぜ。俺を殺して俺の嫁たちを味見してから売り飛ばす。とかほざいてたよな?随分ご立派な衛兵じゃないか。
まぁお前らの言ってることが本当かは、この後、衛兵詰所に連行して行けば分かるけどな。」
「アタルー、昼餉ができたわよー。」
「今、行くー。」
そして俺たちは6人組に見せ付けつつ、ゆっくりと昼餉を摂ったのだった。
昼餉を終えて、トクホの町の衛兵詰所に6人を連行して引き渡したのだが…。
てっきりハッタリだと思ったのに、なんとこの6人組は本当に町の衛兵だった。衛兵と言っても、勤務態度が悪く札付きだったそうだ。上司からの叱責と厳しい訓練に耐えかねて、出奔したんだとか。いやはや、キョウちゃんズの説教が的を射てたのな。苦笑
こいつらが衛兵と言うことなら、分捕った武器と防具を衛兵詰所に返還しようとしたのだが、戦利品だからと言うことで、適正価格で買い取ってくれた。
なおこの代金と、逃がした6頭の馬の代金は、6名が負担することになるそうだ。数年間の強制労働と訓練で、返済させると言う。
衛兵隊の隊長曰く、「この馬鹿どもを野放しにしても、せいぜい賊になるのがオチだ。それならここで、性根を入れ替えるまで徹底的に働かせる。」とのことだ。
実に懐の広い、隊長だな。笑
最後に、隊長から名前を聞かれたので、
「俺はアタル、パーティはセプト。」と応えると、
「濃紺の規格外か。」と、ひと言。
どうやら名前と通り名が売れて来ているようだ。苦笑
素通りするはずのトクホの町で時間を取られたが、その後の行程は順調で、夕方にはベノサンの農村に着いた。残念ながら店を開くには遅いな。
移動店舗の開店は諦めて、村の外れで泊まらせてもらうことにした。
夕餉を摂ってひと息つく。村外れでの野営なので、風呂に入れないのが残念だが、夜空を見上げると、月が出ていないので辺りは暗く、星が非常にきれいだった。
翌日は、ベノサンからマチクの河に沿って山峡を、北に向かって緩やかな傾斜で下って行った。
山峡の道だけあって、道中、何度か獣と遭遇した。
最初に遭遇したのは巨大化した猪だった。いきなりの妖獣、キラーボアである。妖獣は、巨大化するとともに、固有の必殺技を使う。キラーボアの必殺技は、肉弾突進である。北斗号に突っ込まれたら、堪ったものではない。
「アタル、近距離隊でやるわ。」いきなりサヤ姉から、手を出すな命令が来た。苦笑
近距離隊とは、剣士のサヤ姉、盾槍士のホサキ、騎士のタヅナである。3人は北斗号の前面に陣取り、ウキョウが各種バフの術を3人に掛けた。キラーボアが肉弾突進に移る気配を見せると、サキョウがキラーボアに各種デバフの術を掛けた。
キラーボアは肉弾突進を始め、ぐんぐんこちらに向かって来たが、ホサキが自在の盾を展開して鉄壁の防御を展開し、キラーボアの肉弾突進をがっちり受け止めた。すると、左右から、サヤ姉の雷神の太刀と風神の脇差による二刀流剣舞、タヅナの偃月の薙刀による旋回切りが、キラーボアの前脚を襲い、あっさりと両前脚を斬り飛ばした。
つんのめるキラーボアの眉間に、ホサキの如意の槍による正鵠突きを入れると同時に、「むんっ!」とサヤ姉が大上段から雷神の太刀で一閃し、キラーボアの首を落とした。
見事に瞬殺。ちなみに解体は俺がしたけどね。
次に遭遇したのはキラーイーグル。鷲の妖鳥である。イカヅチと言う雷属性攻撃をして来るので厄介だ。
キョウちゃんズが、すかざずバフの術とデバフの術を放った。
「キラーイーグルだ。イカヅチが来るぞ。ホサキ、属性防御を頼む。」
「うむ。」ホサキが自在の盾を広げて属性防御を展開した。
サキョウのデバフの術がヒットして、キラーイーグルが上空でふらついたが、体勢を立て直して再び飛行が安定した。すると、キラーイーグルはイカヅチを落として来た。
しかしこちらはホサキの属性防御で、まったく被害が出なかった。
「今度は…、遠距離隊が…、やる…。」サジ姉の掛け声に、
「「おう!」」「はい。」キョウちゃんズが勇ましく返事し、アキナは普通に返事した。
「まずはうちらがあいつの飛行を乱したるねん。」
「サジ姉とアキ姉はその隙を狙ってんか?」
「りょ。」「はい。」
キョウちゃんズはふたり揃って、それぞれ両手の陽の杖を高く掲げて、陽の杖の先端から気力を出し、それぞれの頭上で風弾を大きく育てている。いったい何する気?
「ウキョウ、準備はええ?」
「ええよ。ほな、行くで。」
「「3、2、1、撃てっ!」」
ふたりが両手の陽の杖を振り下ろすと、ふたりの頭上で育った風弾は、ゆっくりスタートして、互いに絡みつくように合わさりながら、キラーイーグルへ向けてどんどん加速しつつ飛んで行くではないか。
キラーイーグルは回避行動を取ったが、キョウちゃんズがシンクロするように陽の杖を、回避したキラーイーグルの方に向けると、風弾は誘導されているようにキラーイーグルへと進路を変えた。
風弾がキラーイーグルを捉えると、キラーイーグルはその場でクルクル回転して巻き上げられ、そして失速して落下を始めた。
落下しながら体勢を立て直そうとしているが、錐もみ状態で思うように体勢を立て直せない。
そこへ、サジ姉が黒の薬杖から睡眠の術を放ち、アキナは遠矢を射放った。回避行動を取れないキラーイーグルに睡眠の術と遠矢が当たり、錐揉みのまま墜落した。
墜落した場所に行ってみると、キラーイーグルはこと切れていた。墜落死である。あの高さから落ちたから、助かる訳ないな。
俺はキラーイーグルを解体するとともに、石打を始め、貴重な羽根をゲットした。鷲など、猛禽類の羽根は、矢羽根としては極上品である。うほうほなのだ。
後で嫁たちから聞いた話だが、俺が満面の笑みで物凄く嬉しそうにキラーイーグルの羽根をむしり取っていた様子には、正直ドン引きしたそうだ。
その後も、獲物と遭遇する度に、近距離隊と遠距離隊に分かれて狩って行った。結局、俺の属性矢が活躍する機会は訪れなかったのである。
夕方、モロッコの町に着いた。
ギルドで許可をもらって移動店舗を開き、そこそこに売り上げた。閉店後、山髙屋のモロッコ支店に北斗号を預け、宿屋に向かった。
今宵の宿は温泉である。まぁ普通の単純泉だったけどね。それでも広い大浴場をひとり悠々と独泉できるのは何とも贅沢じゃないか。
隣の女湯からは嫁たちのはしゃぐ声が聞こえる。あー混ざりてぇ。泣
しかも今夜は嫁会議だし。風呂もボッチ、夜もボッチじゃん。大泣
唯一ボッチじゃないのは夕餉だ。と、いう訳で皆と楽しい夕餉になった。俺は夕餉になるとすぐ、迷わず濁り酒を注文した。濁り酒、いわゆるどぶろくである。
なんで濁り酒を頼んだかと言うと、モロッコの町には古い城があるのだが、吟遊詩人が『モロッコなる古城のほとり、雲白く遊子悲しむ。…。』と、旅情を詠んだ有名な詩がある。その旅情詩の締め括りの一節が『濁り酒、濁れる呑みて、草枕、しばし慰む。』となっている。
この詩に擬えて、ここモロッコで濁り酒を呑まいでか!という訳なのである。旅情を詠んだ詩に思いを馳せ、その一節を擬えるなど、風雅の極みではないか。
いきなりどぶろくを注文した俺に、嫁たちの白い眼が集まるが、
「吟遊詩人の詩にもあるよな?モロッコに来たら、濁り酒を呑まない訳には行かないだろ?」と、言い訳がましいことを言う俺。嫁たちは、仕方ないわね、と言った感じの諦めモードだ。ふふふ。
程なくして、片口に入ったどぶろくとぐい呑みが出て来た。片口からぐい呑みに濁り酒を注ぐと、酵母のいい香りが漂うではないか。
ぐい呑みに注いだ濁り酒に、かすかにプチプチと音がする。仕込んだ大甕から柄杓ですくって提供されるので、微発泡なのだ。
真っ白な濁り酒をひと口含むと、原料の白米のつぶつぶが残っていて、全体的にドロドロである。やや甘いが、思った程ではない。ほんのり米の味も感じる。実に旨い。
しかも漬物のノシャワ菜との相性が抜群にいい。ノシャワ菜はここより随分北だが、ここと同じナノシ地方のノシャワ村原産の菜である。ナノシ地方全域に広がっており、ナノシ地方の名産品と言ってもいい。
「マジで旨いけど、味見してみない?」と、嫁たちを誘ってみた。
「ほならひと口、頂こかな。」「うちも頂くわぁ。」こう言うときの切り込み隊長は、必ずキョウちゃんズだ。
「あ、美味しいやん。」「ほんまや。姉さんたちもどう?」キョウちゃんズの勧めに応じて、嫁たち全員も味見した。
「あら、いけるわね。ね、サジ?」
こくり。「美味…。」
それでもこの後に嫁会議があるからと、味見のひと口以上は呑まなかった。結局、しこたま呑んだのは俺だけ。で、いい塩梅にどぶろくが回り、すぐに部屋で爆睡したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№146 チンピラの正体とどぶろく
コップを出て、今日は山峡の川沿いを北西に進み、馬手側の山に沿って徐々に進路を北に変えて行く。北から東寄りに転じるとそこが今日の目的地であるベノサンの農村だ。
道中はいつものように、キョウちゃんズが左右前方に,アキナが後方に,それぞれ警戒の式神を飛ばしている。
「アタル、昨日の6人が間隔を開けて、ついて来ています。」
昨日、ちょっかいを出して来た騎乗の6人組が、偶然なのか、あるいは意趣返しを狙ってのことか、一定の距離を取って俺たちの後について来ている。
しかし奴らの動きは、式神による警戒で手に取るように分かっている。仕掛けて来ても返討ちにするだけだ。
「アキナ、そのまま後方の警戒を続けてくれ。」
「はい。」
「アキ姉、無理したらあかんよ。疲れたらうちらが代わるさかい、遠慮せんと休んでな。」
「せやで。アキ姉が休んどる間は、うちらが交代で1体を後ろに回すしな。」
「ふたりとも、ありがとう。疲れたら遠慮なく代わってもらいますね。」
キョウちゃんズは、その膨大な気力量で式神を3体同時に休みなく飛ばすことができる。しかし、キョウちゃんズを基準に考えてはいけない。苦笑
アキナの様に、休憩を取りつつ1体だけを飛ばすのが普通なのだ。
式神を扱えるのは、陰陽士、陽士、陰士のオミョシ一党と、巫女などの神職、そして僧侶である。
オミョシ分家の姫であったキョウちゃんズは、幼くして陰の術を会得し、気力量が桁外れに膨大であったため、幼い頃は神童としてもてはやされた。当然、オミョシの修行の初歩である式紙飛ばしなどは超余裕どころか、式神を3体も同時に飛ばすと言う離れ業をやってのける。
和の国有数の商家、山髙屋のひとり娘であるアキナは、商人として英才教育を受けて来た。
ではなぜ、商家のひとり娘であるアキナが式神を飛ばせるかと言うと、アキナの母親が巫女だったからである。アキナはこの母親から、巫女の術をいくつか伝授されており、式神飛ばしよりも上級の除霊ですら、神職や僧侶並みに行うことができる。
実のところアキナは、式神飛ばしについては、巫女だった母親から教わっていなかった。しかし、母親によって巫女の資質を磨かれていたアキナは、キョウちゃんズの手ほどきで、あっさりと式神飛ばしを会得したのだ。
そのときは、俺たちセプトのメンバー全員も一緒に、キョウちゃんズから式神飛ばしを教わったが、アキナ以外は、誰も会得できなかった。
ちなみにアキナは、ユノベで弓の技も学んでおり、非常に筋がいい。戦闘の際は、射手としても戦える。アキナは、商いの才、巫女の術、弓の技を使いこなす万能タイプなのだ。
昼休憩は、トクホの町の外れで取ることにした。
北斗号を街道脇の開けた場所に停めると、距離をおいて後ろからつけて来ていた6人組が追い付いて、そのまま素通りして行った。ふむ、意趣返しではなく、偶然、方向が一緒だったのかな?
と思ったのだが、俺たちを抜かして行ってしばらくすると、6人は馬を止めUターンして引き返して来た。
皆が身構え、俺は接近に警告を与える矢を射放った。矢は、6人組と俺たちの中間に突き刺さって、騎乗の6人組が止まった。
「てめぇ、いきなり何しやがる!」
「昨日も警告したよな、それ以上近付くと敵対行動と見做して反撃するぞ。今のは警告だ。」
一気に殺気を放って来たが、小者どもの殺気など屁でもない。殺気をあっさりスルーした俺たちに警戒したのか、6人組はいきなり仕掛けては来なかった。
「昨日な、あんたらと行き会った後のことだ。馬たちの尻によ、ちょいと火傷やら傷やらがあったんだが、あんたらの仕業かい?」
「さあな?」俺は惚けてみた。
「悪戯にしちゃぁ、ちょっと悪質じゃねぇか?」
「悪戯だと?ふざけるなよ。ちょっかいを出して来たのはお前らだ。幅寄せして来たお前らに俺は警告したが、お前らは離れなかった。だから馬を追い払った。それだけだ。
まさかあの程度で3人も落馬するとは思わなかったがな。落馬はお前らの騎乗の腕が未熟なせいだ。それでもこっちは、仲間の医薬士が十分な治療をしてやっただろ?」
落馬した3人の顔が真っ赤になった。怒ったのかな?恥ずかしいのかな?
「素直に侘びて誠意を見せりゃあ、命まで取るつもりはなかったけどな、お前は殺す。女どもは味見してから売り飛ばす。
おい、やっちまえ。」
「ノワ、行くぞ。通常出力で十分だ。」
『応。』
ノワの風撃矢を放つと、着弾と同時に竜巻が起きて、6人全員が竜巻に巻き上げられて落下した。乗り手を失った馬6頭は一目散に逃げて行く。
竜巻で巻き上げられた後、地面に叩き付けられた6人はそのまま動かなくなったので、サジ姉が回復の術を掛けた。
「おっちゃんたち、風撃矢1本で、アタル兄に瞬殺されてるやないの。いくらなんでも弱過ぎや。それやのに、なんであんなにイキってたん?もうちょっと、身の程を弁えんと、長生きできひんよ。」
「ほんまやで。弱いんやから、チンピラみたいなことやめとき。身の丈に合った生活をするんが一番や。一攫千金とかな、夢みたいなこと考えんと、地道に生きて行くんやで。モブにはそれが一番や。ええな?」
キョウちゃんズの容赦ない言葉に項垂れる6人組。このふたりなりに労わってるのだと思うが、言葉は辛辣だな。苦笑
例によって武装解除で、6人の武器と防具をすべて取り上げ、下帯1枚にひん剥いて、数珠繋ぎにして道端の木に繋いでおいた。
嫁たちが昼餉の準備をしている間、俺は6人の尋問を行った。
「で、お前らどこの者だ?」
「トクホの者だ。」
「なんだ、この町じゃないか。じゃぁ何か?俺たちをつけて来たんじゃなくて帰るとこだったのか?」
「そうだ。」
「帰るつもりなら、なんでここで仕掛けて来た?」
「…。」
「だんまりかよ。まぁいい。お前らはトクホの町を根城にしている野盗の類か?」
「違う。衛兵だ。」
「そうだ。町の衛兵にこんなことをしてタダで済むとは思うなよ。」
こりゃハッタリだな。
「衛兵が聞いて呆れるぜ。俺を殺して俺の嫁たちを味見してから売り飛ばす。とかほざいてたよな?随分ご立派な衛兵じゃないか。
まぁお前らの言ってることが本当かは、この後、衛兵詰所に連行して行けば分かるけどな。」
「アタルー、昼餉ができたわよー。」
「今、行くー。」
そして俺たちは6人組に見せ付けつつ、ゆっくりと昼餉を摂ったのだった。
昼餉を終えて、トクホの町の衛兵詰所に6人を連行して引き渡したのだが…。
てっきりハッタリだと思ったのに、なんとこの6人組は本当に町の衛兵だった。衛兵と言っても、勤務態度が悪く札付きだったそうだ。上司からの叱責と厳しい訓練に耐えかねて、出奔したんだとか。いやはや、キョウちゃんズの説教が的を射てたのな。苦笑
こいつらが衛兵と言うことなら、分捕った武器と防具を衛兵詰所に返還しようとしたのだが、戦利品だからと言うことで、適正価格で買い取ってくれた。
なおこの代金と、逃がした6頭の馬の代金は、6名が負担することになるそうだ。数年間の強制労働と訓練で、返済させると言う。
衛兵隊の隊長曰く、「この馬鹿どもを野放しにしても、せいぜい賊になるのがオチだ。それならここで、性根を入れ替えるまで徹底的に働かせる。」とのことだ。
実に懐の広い、隊長だな。笑
最後に、隊長から名前を聞かれたので、
「俺はアタル、パーティはセプト。」と応えると、
「濃紺の規格外か。」と、ひと言。
どうやら名前と通り名が売れて来ているようだ。苦笑
素通りするはずのトクホの町で時間を取られたが、その後の行程は順調で、夕方にはベノサンの農村に着いた。残念ながら店を開くには遅いな。
移動店舗の開店は諦めて、村の外れで泊まらせてもらうことにした。
夕餉を摂ってひと息つく。村外れでの野営なので、風呂に入れないのが残念だが、夜空を見上げると、月が出ていないので辺りは暗く、星が非常にきれいだった。
翌日は、ベノサンからマチクの河に沿って山峡を、北に向かって緩やかな傾斜で下って行った。
山峡の道だけあって、道中、何度か獣と遭遇した。
最初に遭遇したのは巨大化した猪だった。いきなりの妖獣、キラーボアである。妖獣は、巨大化するとともに、固有の必殺技を使う。キラーボアの必殺技は、肉弾突進である。北斗号に突っ込まれたら、堪ったものではない。
「アタル、近距離隊でやるわ。」いきなりサヤ姉から、手を出すな命令が来た。苦笑
近距離隊とは、剣士のサヤ姉、盾槍士のホサキ、騎士のタヅナである。3人は北斗号の前面に陣取り、ウキョウが各種バフの術を3人に掛けた。キラーボアが肉弾突進に移る気配を見せると、サキョウがキラーボアに各種デバフの術を掛けた。
キラーボアは肉弾突進を始め、ぐんぐんこちらに向かって来たが、ホサキが自在の盾を展開して鉄壁の防御を展開し、キラーボアの肉弾突進をがっちり受け止めた。すると、左右から、サヤ姉の雷神の太刀と風神の脇差による二刀流剣舞、タヅナの偃月の薙刀による旋回切りが、キラーボアの前脚を襲い、あっさりと両前脚を斬り飛ばした。
つんのめるキラーボアの眉間に、ホサキの如意の槍による正鵠突きを入れると同時に、「むんっ!」とサヤ姉が大上段から雷神の太刀で一閃し、キラーボアの首を落とした。
見事に瞬殺。ちなみに解体は俺がしたけどね。
次に遭遇したのはキラーイーグル。鷲の妖鳥である。イカヅチと言う雷属性攻撃をして来るので厄介だ。
キョウちゃんズが、すかざずバフの術とデバフの術を放った。
「キラーイーグルだ。イカヅチが来るぞ。ホサキ、属性防御を頼む。」
「うむ。」ホサキが自在の盾を広げて属性防御を展開した。
サキョウのデバフの術がヒットして、キラーイーグルが上空でふらついたが、体勢を立て直して再び飛行が安定した。すると、キラーイーグルはイカヅチを落として来た。
しかしこちらはホサキの属性防御で、まったく被害が出なかった。
「今度は…、遠距離隊が…、やる…。」サジ姉の掛け声に、
「「おう!」」「はい。」キョウちゃんズが勇ましく返事し、アキナは普通に返事した。
「まずはうちらがあいつの飛行を乱したるねん。」
「サジ姉とアキ姉はその隙を狙ってんか?」
「りょ。」「はい。」
キョウちゃんズはふたり揃って、それぞれ両手の陽の杖を高く掲げて、陽の杖の先端から気力を出し、それぞれの頭上で風弾を大きく育てている。いったい何する気?
「ウキョウ、準備はええ?」
「ええよ。ほな、行くで。」
「「3、2、1、撃てっ!」」
ふたりが両手の陽の杖を振り下ろすと、ふたりの頭上で育った風弾は、ゆっくりスタートして、互いに絡みつくように合わさりながら、キラーイーグルへ向けてどんどん加速しつつ飛んで行くではないか。
キラーイーグルは回避行動を取ったが、キョウちゃんズがシンクロするように陽の杖を、回避したキラーイーグルの方に向けると、風弾は誘導されているようにキラーイーグルへと進路を変えた。
風弾がキラーイーグルを捉えると、キラーイーグルはその場でクルクル回転して巻き上げられ、そして失速して落下を始めた。
落下しながら体勢を立て直そうとしているが、錐もみ状態で思うように体勢を立て直せない。
そこへ、サジ姉が黒の薬杖から睡眠の術を放ち、アキナは遠矢を射放った。回避行動を取れないキラーイーグルに睡眠の術と遠矢が当たり、錐揉みのまま墜落した。
墜落した場所に行ってみると、キラーイーグルはこと切れていた。墜落死である。あの高さから落ちたから、助かる訳ないな。
俺はキラーイーグルを解体するとともに、石打を始め、貴重な羽根をゲットした。鷲など、猛禽類の羽根は、矢羽根としては極上品である。うほうほなのだ。
後で嫁たちから聞いた話だが、俺が満面の笑みで物凄く嬉しそうにキラーイーグルの羽根をむしり取っていた様子には、正直ドン引きしたそうだ。
その後も、獲物と遭遇する度に、近距離隊と遠距離隊に分かれて狩って行った。結局、俺の属性矢が活躍する機会は訪れなかったのである。
夕方、モロッコの町に着いた。
ギルドで許可をもらって移動店舗を開き、そこそこに売り上げた。閉店後、山髙屋のモロッコ支店に北斗号を預け、宿屋に向かった。
今宵の宿は温泉である。まぁ普通の単純泉だったけどね。それでも広い大浴場をひとり悠々と独泉できるのは何とも贅沢じゃないか。
隣の女湯からは嫁たちのはしゃぐ声が聞こえる。あー混ざりてぇ。泣
しかも今夜は嫁会議だし。風呂もボッチ、夜もボッチじゃん。大泣
唯一ボッチじゃないのは夕餉だ。と、いう訳で皆と楽しい夕餉になった。俺は夕餉になるとすぐ、迷わず濁り酒を注文した。濁り酒、いわゆるどぶろくである。
なんで濁り酒を頼んだかと言うと、モロッコの町には古い城があるのだが、吟遊詩人が『モロッコなる古城のほとり、雲白く遊子悲しむ。…。』と、旅情を詠んだ有名な詩がある。その旅情詩の締め括りの一節が『濁り酒、濁れる呑みて、草枕、しばし慰む。』となっている。
この詩に擬えて、ここモロッコで濁り酒を呑まいでか!という訳なのである。旅情を詠んだ詩に思いを馳せ、その一節を擬えるなど、風雅の極みではないか。
いきなりどぶろくを注文した俺に、嫁たちの白い眼が集まるが、
「吟遊詩人の詩にもあるよな?モロッコに来たら、濁り酒を呑まない訳には行かないだろ?」と、言い訳がましいことを言う俺。嫁たちは、仕方ないわね、と言った感じの諦めモードだ。ふふふ。
程なくして、片口に入ったどぶろくとぐい呑みが出て来た。片口からぐい呑みに濁り酒を注ぐと、酵母のいい香りが漂うではないか。
ぐい呑みに注いだ濁り酒に、かすかにプチプチと音がする。仕込んだ大甕から柄杓ですくって提供されるので、微発泡なのだ。
真っ白な濁り酒をひと口含むと、原料の白米のつぶつぶが残っていて、全体的にドロドロである。やや甘いが、思った程ではない。ほんのり米の味も感じる。実に旨い。
しかも漬物のノシャワ菜との相性が抜群にいい。ノシャワ菜はここより随分北だが、ここと同じナノシ地方のノシャワ村原産の菜である。ナノシ地方全域に広がっており、ナノシ地方の名産品と言ってもいい。
「マジで旨いけど、味見してみない?」と、嫁たちを誘ってみた。
「ほならひと口、頂こかな。」「うちも頂くわぁ。」こう言うときの切り込み隊長は、必ずキョウちゃんズだ。
「あ、美味しいやん。」「ほんまや。姉さんたちもどう?」キョウちゃんズの勧めに応じて、嫁たち全員も味見した。
「あら、いけるわね。ね、サジ?」
こくり。「美味…。」
それでもこの後に嫁会議があるからと、味見のひと口以上は呑まなかった。結局、しこたま呑んだのは俺だけ。で、いい塩梅にどぶろくが回り、すぐに部屋で爆睡したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/27
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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