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射手の統領145 総大将後見の取り付け
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射手の統領
Zu-Y
№145 総大将後見の取り付け
翌朝早々に朝餉を摂って、まずは流邏石でトコザのトノベ本拠に飛んだ。トノベどのに後見を頼むためである。サヤ姉は伴っていない。
表座敷で面会となった。統領のトノベどのの隣には頭を丸めたカナタが座っている。そして左右に重臣たち。
カナタは伯母御たちに倣って頭を丸めたのか。苦笑
「トノベどの、申し訳ありませんがお人払いをお願いします。」重臣たちはギョッとしたが、トノベどのが目配せして、カナタと重臣たちが席を立った。
「お世継どのはご同席頂きたい。」カナタが嬉しそうに座に戻った。
表座敷が俺とトノベどのとカナタの3人になった。
「アタルどの、人払いとは珍しいの。」
「されば、サヤ姉より申し上げた御代渡りの儀についてでございます。」
「人払いせよと言うことは、殿下から四役人事について内示が出ておるのだな。」
「流石ですね。実は、俺が総大将を申し付かりました。」
「なんと、アタルどのはまだ統領ではないではないか。」
「それまでに統領に就けとの仰せです。」
「左様か。」
「副将はキノベの世継トウラク、参謀長はタテベの世継シルド、先陣はママツまでがシノベどの、ママツからがオミョシ分家の新権座主シエン。」
「なんと、キノベとタテベにも代替わりせよとの仰せか!」
「はい。トノベどのには、ヤクシどのとともにわが後見をお願いしたく。」
「それは構わんが…、ユノベ、タテベ、キノベが代替わりするとあらば、公家衆は横槍を入れられんな。帝太子殿下…ではないな。次ノ宮殿下か?」
「はい。」
「わしとヤクシどのはアタルどのの後見と言うことで面目は絶つが、オミョシ本家とエノベは面白くなかろうの。」
「エノベはオミョシ分家と婚姻同盟を結びますゆえ、シエンがエノベどのへ先陣の後見を頼むと思います。」
「なんと!いつの間に婚姻同盟の話が進んでいたのだ?」
「つい最近ですね。」
「ではオミョシ本家は?」
「シエンと拗れてますので干します。俺たちはシエンを支持しますし、次ノ宮殿下は俺たちを後見して下さいます。シエンはすでに本家に圧力を掛けていまして、オミョシ本家の座主にアーカまで出向かせ、臣従を迫っています。」
「オミョシ本家は応じるだろうか?」
「応じるでしょうね。今回の御代渡りの儀の人事がトドメですよ。」
「それにしても次ノ宮殿下は思い切った人事をしたものだな。」
「俺、トウラク、シルド、シエンは次ノ宮殿下の腹心ですからね。」
「アタルどのは、七神龍の攻略で殿下の覚え目出度いから分かるが残り3人はどう言うつながりがあるのだ?」
「3人は俺の義兄弟ですからね。俺が仲介しました。」
「左様か。アタルどの経由か。」
「成人した暁にはカナタとクリスにも、殿下の腹心に加わってもらいますよ。」
「はいっ!」カナタが元気に返事した。
「アタルどの、その際はカナタの仲介をよしなに。」
トコザのトノベ本拠を辞して、次に流邏石でトマツのヤクシ本拠に飛んだ。俺だけで、サジ姉はいない。
表座敷では座主のヤクシどの、重臣たちが居並んでいる。
「ヤクシどの、すみませんがお人払いを。それと、お世継どのにもご同席願いたいのですが。」
「そなたらは外せ。それとクリスを呼んで参れ。」ヤクシどのの指示でクリスがやって来た。やはりクリスも頭を丸めていた。伯母御たちの尼寺へ出向いての謹慎は、クリスとカナタにも影響を及ぼした訳だ。苦笑
「ユノベどの、西では大層お世話になりました。」ほう、まともに挨拶できるようになったじゃん。笑
俺はクリスに会釈を返して、話を始めた。
「人払いをお願いしたのは、サジ姉より申し上げた御代替わりについて、内々にお伝えしたきことがあるからです。実は御代替わりの四役人事について、内示が出ております。」
「やはりそうか。」
「総大将は俺、副将はキノベの世継トウラク、参謀長はタテベの世継シルド、ママツまでの先陣はシノベどの、ママツからの先陣はオミョシ分家の新権座主シエンです。」
「なんと!」ヤクシどのは驚いている。
「シノベどの以外は若手ゆえ、ヤクシどのにはトノベどのとともにわが後見をお願いいたしたく。」
「アタルどのの後見は構わぬが…、ユノベ、タテベ、キノベには代替わりすることになるな。」
「そうですね。」
「なるほど、公家の横槍封じか。」
「ご賢察です。」
「発案は次ノ宮殿下だな?」
「その通りです。」
「まったくあのお方は食えぬお方だ。
で、エノベとオミョシ本家はいかように遇するのだ?」
「エノベはオミョシ本家と婚姻同盟を結びますゆえ、シエンがエノベどのへ先陣の後見を頼むと思います。」
「なんと。エノベとオミョシ分家の婚姻同盟はいつの間に?と言うか、分家は本家との婚姻で結束を固めるのではないのか?」
「この話がまとまったのはつい最近です。本家の座主はシエンに要らぬ嫌がらせをして拗れましたので、シエンが本家との婚姻を反故にしました。シエンは本家に対し、臣従か敵対かを迫ります。」
「それは真か?」
「もし本家が敵対する姿勢を示したら、ユノベ、タテベ、キノベ、エノベはシエンに付きます。その際には、ヤクシどのとトノベどのにもシエンへの支持をお願いします。
しかしオミョシ本家は、シエンに臣従するでしょうね。今回の帝居渡りの儀の人事で、オミョシ本家は干されてますから、帝家が俺たちの後見に付いたと分かるでしょう?」
「如何様にして、帝家の後見を取り付けたのだ?」
「俺、トウラク、シルド、シエンは、次ノ宮殿下の腹心ですからね。」
「いつの間に。」
「もともと俺が殿下によくしてもらってましたが、こちらでの披露目でトウラクとシルドを殿下に紹介し、今回の西の披露目でシエンを紹介しました。」
「アタルどのの仲介か。」
「はい。それとクリスとカナタにも、成人したら殿下の腹心に加わってもらいますよ。」
「それは願ってもないこと。
クリス、よいな。」
「はいっ。」クリスが元気よく返事をした。
トノベどのとヤクシどのの後見を取り付け、俺は流邏石でテンバに戻った。そしてマザに向け出発だ。
皆で北斗号に乗り込み、テンバを出発した。最初のうちは、久しぶりに俺が御者をやった。
テンバを出て、しばらくは北西に進んだ。フジの霊峰を弓手側前方に見つつ、霊峰の北東側の裾野を少しずつ斜めに登って行く訳だが、フジの霊峰がデーンと視界の左半分を埋め尽くしている。圧倒される雄大さである。
しばらく行って、進行方向を北北東に転じ、弓手側にフジの霊峰、馬手側に小高い山の間の峠道を越えると、マナカ湖が眼下に見える。峠を下りてマナカ湖畔に着いたところで、昼餉の休憩だ。
昼餉の休憩では、マナカ湖を渡る初夏の心地よい風を受けつつ、弁当を使った。コネハでしばらく湯治をしていたから、久々の旅飯である。やはり野外で食う飯は旨い。しかし、これが続くと飽きるのだがな。笑
昼餉を終え、マナカ湖を馬手側に見つつ、湖畔を時計回りに北西へと進んだ。
マナカの湖を後にしてしばらく北西に進んでから、北、そして北東へと進路を変える。北東への道は山峡の川に沿って伸びている。そのまま北東に進むと、今日の宿泊地のオッキーの農村だ。
途中、大猪が1頭出たので、俺の遠矢で仕留めた。すかさず解体し、ウキョウの陽の術で氷漬けにして、食糧庫にしまった。
オッキーの農村では、村長宅で許可を取って、北斗号の積荷を捌いた。
商人装備になったアキナ、掛合上手のキョウちゃんズは様々な客に売り捌く。癒し系タヅナは小父さん層、姐御系サヤ姉は少女層、女上司系タヅナはM係草食男子層、口数少な系サジ姉はオタク層に受けている。
俺は売り口上が不得意なので、品出し専門である。
小さな村と言うことで、売り上げは在庫の1割程度。まあそれなりの売れ行きだった。
オッキーは小さな村で宿屋はないので、村の広場の出店した場所で、そのまま夕餉を摂った。
野営食なので、いつものパターンで鍋に肉や野菜をぶち込んで、ごった煮にする。オッキーが農村なので、新鮮な野菜は確保できるし、昼間の行軍中に俺の遠矢で仕留めた大猪の肉をぶつ切りにしてぶち込んだ。野営食初日の鍋だから、野菜と肉をぶち込めば、味付けは辛口のカレーになる。
野営食とは思えない豪華さで、カレーを堪能した。
その後、北斗号で寝た。
北斗号のメイン車両のベッドは、セミダブルの二段ベッドが左右にある。俺たちは8人で、交代の見張りはふたりずつだから、6人で寝ることになる。多少狭いが、まあこんなものだ。
村の中とは言え、半分野営のようなものなので、装備は付けたままの仮眠だ。後は北斗号のまわりに、鈴を張り巡らせて、警戒はしている。それに不審な者が来れば、曳馬たちも反応するだろう。
その晩は何ごともなく、無事に過ごすことができた。
翌日、朝餉の後、早々にオッキーを発って、山峡の川沿いを進んだ。進路は、瞬く西に行ってから、回り込むように、北西、北とまわり、少し北東に向いた後、すぐに西南西へ向かって峠を越えた。いわゆる逆S字である。
その後、山峡の道を抜けると目の前にコップ盆地が開ける。
この道は、東都から西のコップへ向かう主要街道である。俺たちはテンバから北上して、オッキーでこの街道に合流した訳だ。このため、オッキーを出てからは、コップから東都に向かう馬車とすれ違ったし、急いでいる騎馬の一行に抜かれもした。もちろん徒歩の旅人もいる。
この日の俺は、メイン車両の屋上の見張台にいたのだが、後ろから一旦速歩で抜いて行った6頭の騎馬の一行が、御者台とその後ろの座席にいるのが、嫁たちだけと見て、ちょっかいを掛けて来た。
右からスーッと抜いて行った後、ペースを落として、曳馬たちを挟むように左右に並走を始めたのだ。
御者台とその後ろの座席にいるのは、サヤ姉、サジ姉、ホサキ、タヅナの4人で、今はホサキが御者をしている。
「あんたら、女4人かい?」
「護衛は馬車の中にいるのか?いねぇんなら俺たちが護衛してやろうか?」
「おい、それ以上、馬を寄せないでくれ。危ないではないか。」ホサキが苦情を言うと、6人組はゲラゲラと笑い出した。
「姉ちゃんよう、御者は初心者かい?」
「この程度で危ないもないだろうに。」
「サキョウは火弾、ウキョウは石弾の準備。小さいのな。俺が合図をしたら、馬の尻へ一発ずつでいい。馬を暴走させてやれ。」
「「はーい。」」ふたりがえげつない笑みを浮かべた。苦笑
俺は、絡んで来た6人組に上から声を掛けた。
「おい、正体も明かさずに、近寄るのはマナー違反だろう。盗賊だと疑われて反撃されても文句は言えないぞ。」
「ちっ、上に男がいやがるぜ。」
「でも横にいるのは女だな。3人か。」
「男ひとりで、女7人連れかよ。ムカつくな。」
などと言っている。
「ホサキ速度を落として。」
俺は伝声管でホサキに指示を伝え、左右のキョウちゃんズに合図した。
ホサキが北斗号の速度を落としたせいで、6頭の馬が北斗号より先行したところで、サキョウは北斗号の左を並走する3頭の尻に火弾を、ウキョウは右を並走する3頭の尻に石弾を、それぞれ撃ち込んだ。
驚いて棹立ちになる6頭。そこで振り落とされたのが3名で、残りの3名は疾駆し出した馬の背にしがみ付いている。
サキョウとウキョウは腹を抱えて大爆笑だ。この小悪魔どもめ。苦笑
サジ姉が鎮静の術を放って、暴走する6頭の馬を宥め、落馬して呻いている3名に回復の術を掛けた。
「ホサキ、速度を戻していいぞ。」
「承知した。」
再び伝声管でやり取りし、北斗号を出すと、暴走が収まった馬を連れて、落馬した仲間を回収に行く3名とすれ違った。
「そなたら、騎馬の術は初心者のようだな?」ホサキがすれ違い様に、先ほど言われた台詞を返して、
「おっちゃんら、大丈夫ー?ちびってんとちゃうー?」
「落馬したお仲間さんは、うちの医薬士が治療しといたでー。」
と、うちの小悪魔ふたりがげらげら笑いながら煽る、煽る。
しばらくしてから、式神で後方を監視しているアキナが、
「さっきの連中ですが、常歩でとぼとぼとついて来てますね。」と報告して来た。
「行く方向が一緒なんだろうな。流石に俺たちを追い抜けないだろ。」
俺たちは、そのまま盆地を西に進み、イシャワーの温泉に寄った。
イシャワー温泉は、ブドウ畑から噴き出した高温の湯が、川に流れ込んで川自体が大野天温泉になったと言う、面白い起源を持つ。実は結構新しい温泉地なのだ。
湯屋に入って、ゆっくりと浸かる。当たり前だが嫁たちは皆で女湯、俺だけ男湯なのが何とも寂しい。
泉質は無色透明の単純アルカリ泉である。濁り湯で匂いがぷんぷんする温泉が好きな俺としては、少々物足りない気もするが、名湯には違いない。
もともとこの辺り一帯は、コップに本拠地を置いていた有名な戦国大名の領地なのだが、その戦国大名が、戦で傷ついた兵たちのために、湯治場とした温泉地が、あちこちに点在していると言う。
この戦国大名は、コップからほぼ真北の、和の国海に面するジョエツーに本拠地を置いていた戦国大名といいライバル関係で、一進一退の攻防を、その半生に亘って繰り広げた。龍虎相食む。とは、このふたりの戦国大名のための言葉と言っても過言ではない。互いに、そのライバルがいなければ、天下を取っていた器量であったと言われている。
特に有名なのは、コップからは遠く北北西、ジョエツーからはひと山脈越えた南、距離的にはコップとジョエツーから3:1程度の位置にあるカナカの原野での大決戦だろう。カナカの原野での両雄の対決は5回に及ぶが、その4回目に大決戦は起きた。
膠着していた戦況を打破するため、コップの戦国大名が、軍を本隊と別動隊に二分し、夜のうちに別動隊を大きく迂回させ、ジョエツー軍の陣の背後を付き、ジョエツー軍が陣を払って移動したところを、待ち受けた本隊と挟み撃ちにする作戦を立てた。後の世に言うキツツキ戦法だ。
ジョエツーの戦国大名は、夕刻の炊飯の煙の多さで、その夜に動きがあることを看破し、背後を付かれる前に陣を払って、コップ軍本隊が待ち受ける決戦場に移動した。
早朝、朝靄が晴れるとコップ軍本隊とジョエツー軍が激突。コップ軍が隊を二分していたため、数に勝ったジョエツー軍が、代わる代わる攻撃を仕掛ける超攻撃的な車掛りと言う陣形で、コップ軍本隊を壊滅寸前まで追い込んだところに、迂回していたコップ軍別動隊が駆け付け、形勢は逆転。結局は痛み分けとなった、戦国時代最大の野戦である。
この合戦までの様子は、後の世で、「鞭声粛々、夜河を渡る。…」と言う有名な吟遊詩に歌われている程だ。
また、最後の乱戦では、ジョエツーの戦国大名が、コップの戦国大名の本陣に切り込み、両雄で一騎打ちを演じたとの逸話もあるが、これは後の世の創作とも言われている。
このカナカの原野での大決戦は、兵の動員数では、その数十年後の天下分け目の大合戦にははるかに及ばないものの、従軍兵に対する、戦死者、負傷者の割合の高さでは、戦国時代随一の大決戦であった。
さて、話は逸れたが、イシャワーの温泉を出てすぐ、コップの町に着いた。
コップギルドで許可を得て、ギルド前の町の中央広場で移動店舗を開いたところ、短時間であったが、仕入れの積荷の2割が捌けた。売り上げは昨日の約2倍だ。そして残る積荷は7割である。
その後、キノベ陸運コップ営業所に北斗号を預けて、すぐ近くに宿を取り、コップ名物のほうとうを食いに行った。
ほうとうは、太めの平うどんで、具材として野菜をふんだんに使い、味噌仕立てのスープで煮込んだ、いわゆる煮込みうどんである。野菜の主役はカボチャなので、味噌のスープに溶けだしたカボチャで、スープは甘くなっている。
具はお好みだが、カボチャの他、白菜、ニンジン、大根、シイタケ、長ネギ、油揚げが外せないところだろう。後はいくらでもアレンジすればいい。
宿に紹介されて行ったほうとうの専門店でも、○○ほうとう、と言うように、いろいろなアレンジほうとうがあった。
メニューに載っていた12種類のすべてのほうとうを2つずつ頼み、皆でシェアして食った。店の人が、そんなに食えるのかと心配していたが、まったく問題ない。うちにはキョウちゃんズがいるのだから。
宿に戻って、その晩はタヅナと同室。本番ができない分、じっくりねっとり攻めてタヅナを大いに乱れさせた。しかし、あまり乱れさせると、タヅナは我を忘れて暴走し、俺を犯すかもしれないから、ほどほどにしておいた。笑
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/20
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№145 総大将後見の取り付け
翌朝早々に朝餉を摂って、まずは流邏石でトコザのトノベ本拠に飛んだ。トノベどのに後見を頼むためである。サヤ姉は伴っていない。
表座敷で面会となった。統領のトノベどのの隣には頭を丸めたカナタが座っている。そして左右に重臣たち。
カナタは伯母御たちに倣って頭を丸めたのか。苦笑
「トノベどの、申し訳ありませんがお人払いをお願いします。」重臣たちはギョッとしたが、トノベどのが目配せして、カナタと重臣たちが席を立った。
「お世継どのはご同席頂きたい。」カナタが嬉しそうに座に戻った。
表座敷が俺とトノベどのとカナタの3人になった。
「アタルどの、人払いとは珍しいの。」
「されば、サヤ姉より申し上げた御代渡りの儀についてでございます。」
「人払いせよと言うことは、殿下から四役人事について内示が出ておるのだな。」
「流石ですね。実は、俺が総大将を申し付かりました。」
「なんと、アタルどのはまだ統領ではないではないか。」
「それまでに統領に就けとの仰せです。」
「左様か。」
「副将はキノベの世継トウラク、参謀長はタテベの世継シルド、先陣はママツまでがシノベどの、ママツからがオミョシ分家の新権座主シエン。」
「なんと、キノベとタテベにも代替わりせよとの仰せか!」
「はい。トノベどのには、ヤクシどのとともにわが後見をお願いしたく。」
「それは構わんが…、ユノベ、タテベ、キノベが代替わりするとあらば、公家衆は横槍を入れられんな。帝太子殿下…ではないな。次ノ宮殿下か?」
「はい。」
「わしとヤクシどのはアタルどのの後見と言うことで面目は絶つが、オミョシ本家とエノベは面白くなかろうの。」
「エノベはオミョシ分家と婚姻同盟を結びますゆえ、シエンがエノベどのへ先陣の後見を頼むと思います。」
「なんと!いつの間に婚姻同盟の話が進んでいたのだ?」
「つい最近ですね。」
「ではオミョシ本家は?」
「シエンと拗れてますので干します。俺たちはシエンを支持しますし、次ノ宮殿下は俺たちを後見して下さいます。シエンはすでに本家に圧力を掛けていまして、オミョシ本家の座主にアーカまで出向かせ、臣従を迫っています。」
「オミョシ本家は応じるだろうか?」
「応じるでしょうね。今回の御代渡りの儀の人事がトドメですよ。」
「それにしても次ノ宮殿下は思い切った人事をしたものだな。」
「俺、トウラク、シルド、シエンは次ノ宮殿下の腹心ですからね。」
「アタルどのは、七神龍の攻略で殿下の覚え目出度いから分かるが残り3人はどう言うつながりがあるのだ?」
「3人は俺の義兄弟ですからね。俺が仲介しました。」
「左様か。アタルどの経由か。」
「成人した暁にはカナタとクリスにも、殿下の腹心に加わってもらいますよ。」
「はいっ!」カナタが元気に返事した。
「アタルどの、その際はカナタの仲介をよしなに。」
トコザのトノベ本拠を辞して、次に流邏石でトマツのヤクシ本拠に飛んだ。俺だけで、サジ姉はいない。
表座敷では座主のヤクシどの、重臣たちが居並んでいる。
「ヤクシどの、すみませんがお人払いを。それと、お世継どのにもご同席願いたいのですが。」
「そなたらは外せ。それとクリスを呼んで参れ。」ヤクシどのの指示でクリスがやって来た。やはりクリスも頭を丸めていた。伯母御たちの尼寺へ出向いての謹慎は、クリスとカナタにも影響を及ぼした訳だ。苦笑
「ユノベどの、西では大層お世話になりました。」ほう、まともに挨拶できるようになったじゃん。笑
俺はクリスに会釈を返して、話を始めた。
「人払いをお願いしたのは、サジ姉より申し上げた御代替わりについて、内々にお伝えしたきことがあるからです。実は御代替わりの四役人事について、内示が出ております。」
「やはりそうか。」
「総大将は俺、副将はキノベの世継トウラク、参謀長はタテベの世継シルド、ママツまでの先陣はシノベどの、ママツからの先陣はオミョシ分家の新権座主シエンです。」
「なんと!」ヤクシどのは驚いている。
「シノベどの以外は若手ゆえ、ヤクシどのにはトノベどのとともにわが後見をお願いいたしたく。」
「アタルどのの後見は構わぬが…、ユノベ、タテベ、キノベには代替わりすることになるな。」
「そうですね。」
「なるほど、公家の横槍封じか。」
「ご賢察です。」
「発案は次ノ宮殿下だな?」
「その通りです。」
「まったくあのお方は食えぬお方だ。
で、エノベとオミョシ本家はいかように遇するのだ?」
「エノベはオミョシ本家と婚姻同盟を結びますゆえ、シエンがエノベどのへ先陣の後見を頼むと思います。」
「なんと。エノベとオミョシ分家の婚姻同盟はいつの間に?と言うか、分家は本家との婚姻で結束を固めるのではないのか?」
「この話がまとまったのはつい最近です。本家の座主はシエンに要らぬ嫌がらせをして拗れましたので、シエンが本家との婚姻を反故にしました。シエンは本家に対し、臣従か敵対かを迫ります。」
「それは真か?」
「もし本家が敵対する姿勢を示したら、ユノベ、タテベ、キノベ、エノベはシエンに付きます。その際には、ヤクシどのとトノベどのにもシエンへの支持をお願いします。
しかしオミョシ本家は、シエンに臣従するでしょうね。今回の帝居渡りの儀の人事で、オミョシ本家は干されてますから、帝家が俺たちの後見に付いたと分かるでしょう?」
「如何様にして、帝家の後見を取り付けたのだ?」
「俺、トウラク、シルド、シエンは、次ノ宮殿下の腹心ですからね。」
「いつの間に。」
「もともと俺が殿下によくしてもらってましたが、こちらでの披露目でトウラクとシルドを殿下に紹介し、今回の西の披露目でシエンを紹介しました。」
「アタルどのの仲介か。」
「はい。それとクリスとカナタにも、成人したら殿下の腹心に加わってもらいますよ。」
「それは願ってもないこと。
クリス、よいな。」
「はいっ。」クリスが元気よく返事をした。
トノベどのとヤクシどのの後見を取り付け、俺は流邏石でテンバに戻った。そしてマザに向け出発だ。
皆で北斗号に乗り込み、テンバを出発した。最初のうちは、久しぶりに俺が御者をやった。
テンバを出て、しばらくは北西に進んだ。フジの霊峰を弓手側前方に見つつ、霊峰の北東側の裾野を少しずつ斜めに登って行く訳だが、フジの霊峰がデーンと視界の左半分を埋め尽くしている。圧倒される雄大さである。
しばらく行って、進行方向を北北東に転じ、弓手側にフジの霊峰、馬手側に小高い山の間の峠道を越えると、マナカ湖が眼下に見える。峠を下りてマナカ湖畔に着いたところで、昼餉の休憩だ。
昼餉の休憩では、マナカ湖を渡る初夏の心地よい風を受けつつ、弁当を使った。コネハでしばらく湯治をしていたから、久々の旅飯である。やはり野外で食う飯は旨い。しかし、これが続くと飽きるのだがな。笑
昼餉を終え、マナカ湖を馬手側に見つつ、湖畔を時計回りに北西へと進んだ。
マナカの湖を後にしてしばらく北西に進んでから、北、そして北東へと進路を変える。北東への道は山峡の川に沿って伸びている。そのまま北東に進むと、今日の宿泊地のオッキーの農村だ。
途中、大猪が1頭出たので、俺の遠矢で仕留めた。すかさず解体し、ウキョウの陽の術で氷漬けにして、食糧庫にしまった。
オッキーの農村では、村長宅で許可を取って、北斗号の積荷を捌いた。
商人装備になったアキナ、掛合上手のキョウちゃんズは様々な客に売り捌く。癒し系タヅナは小父さん層、姐御系サヤ姉は少女層、女上司系タヅナはM係草食男子層、口数少な系サジ姉はオタク層に受けている。
俺は売り口上が不得意なので、品出し専門である。
小さな村と言うことで、売り上げは在庫の1割程度。まあそれなりの売れ行きだった。
オッキーは小さな村で宿屋はないので、村の広場の出店した場所で、そのまま夕餉を摂った。
野営食なので、いつものパターンで鍋に肉や野菜をぶち込んで、ごった煮にする。オッキーが農村なので、新鮮な野菜は確保できるし、昼間の行軍中に俺の遠矢で仕留めた大猪の肉をぶつ切りにしてぶち込んだ。野営食初日の鍋だから、野菜と肉をぶち込めば、味付けは辛口のカレーになる。
野営食とは思えない豪華さで、カレーを堪能した。
その後、北斗号で寝た。
北斗号のメイン車両のベッドは、セミダブルの二段ベッドが左右にある。俺たちは8人で、交代の見張りはふたりずつだから、6人で寝ることになる。多少狭いが、まあこんなものだ。
村の中とは言え、半分野営のようなものなので、装備は付けたままの仮眠だ。後は北斗号のまわりに、鈴を張り巡らせて、警戒はしている。それに不審な者が来れば、曳馬たちも反応するだろう。
その晩は何ごともなく、無事に過ごすことができた。
翌日、朝餉の後、早々にオッキーを発って、山峡の川沿いを進んだ。進路は、瞬く西に行ってから、回り込むように、北西、北とまわり、少し北東に向いた後、すぐに西南西へ向かって峠を越えた。いわゆる逆S字である。
その後、山峡の道を抜けると目の前にコップ盆地が開ける。
この道は、東都から西のコップへ向かう主要街道である。俺たちはテンバから北上して、オッキーでこの街道に合流した訳だ。このため、オッキーを出てからは、コップから東都に向かう馬車とすれ違ったし、急いでいる騎馬の一行に抜かれもした。もちろん徒歩の旅人もいる。
この日の俺は、メイン車両の屋上の見張台にいたのだが、後ろから一旦速歩で抜いて行った6頭の騎馬の一行が、御者台とその後ろの座席にいるのが、嫁たちだけと見て、ちょっかいを掛けて来た。
右からスーッと抜いて行った後、ペースを落として、曳馬たちを挟むように左右に並走を始めたのだ。
御者台とその後ろの座席にいるのは、サヤ姉、サジ姉、ホサキ、タヅナの4人で、今はホサキが御者をしている。
「あんたら、女4人かい?」
「護衛は馬車の中にいるのか?いねぇんなら俺たちが護衛してやろうか?」
「おい、それ以上、馬を寄せないでくれ。危ないではないか。」ホサキが苦情を言うと、6人組はゲラゲラと笑い出した。
「姉ちゃんよう、御者は初心者かい?」
「この程度で危ないもないだろうに。」
「サキョウは火弾、ウキョウは石弾の準備。小さいのな。俺が合図をしたら、馬の尻へ一発ずつでいい。馬を暴走させてやれ。」
「「はーい。」」ふたりがえげつない笑みを浮かべた。苦笑
俺は、絡んで来た6人組に上から声を掛けた。
「おい、正体も明かさずに、近寄るのはマナー違反だろう。盗賊だと疑われて反撃されても文句は言えないぞ。」
「ちっ、上に男がいやがるぜ。」
「でも横にいるのは女だな。3人か。」
「男ひとりで、女7人連れかよ。ムカつくな。」
などと言っている。
「ホサキ速度を落として。」
俺は伝声管でホサキに指示を伝え、左右のキョウちゃんズに合図した。
ホサキが北斗号の速度を落としたせいで、6頭の馬が北斗号より先行したところで、サキョウは北斗号の左を並走する3頭の尻に火弾を、ウキョウは右を並走する3頭の尻に石弾を、それぞれ撃ち込んだ。
驚いて棹立ちになる6頭。そこで振り落とされたのが3名で、残りの3名は疾駆し出した馬の背にしがみ付いている。
サキョウとウキョウは腹を抱えて大爆笑だ。この小悪魔どもめ。苦笑
サジ姉が鎮静の術を放って、暴走する6頭の馬を宥め、落馬して呻いている3名に回復の術を掛けた。
「ホサキ、速度を戻していいぞ。」
「承知した。」
再び伝声管でやり取りし、北斗号を出すと、暴走が収まった馬を連れて、落馬した仲間を回収に行く3名とすれ違った。
「そなたら、騎馬の術は初心者のようだな?」ホサキがすれ違い様に、先ほど言われた台詞を返して、
「おっちゃんら、大丈夫ー?ちびってんとちゃうー?」
「落馬したお仲間さんは、うちの医薬士が治療しといたでー。」
と、うちの小悪魔ふたりがげらげら笑いながら煽る、煽る。
しばらくしてから、式神で後方を監視しているアキナが、
「さっきの連中ですが、常歩でとぼとぼとついて来てますね。」と報告して来た。
「行く方向が一緒なんだろうな。流石に俺たちを追い抜けないだろ。」
俺たちは、そのまま盆地を西に進み、イシャワーの温泉に寄った。
イシャワー温泉は、ブドウ畑から噴き出した高温の湯が、川に流れ込んで川自体が大野天温泉になったと言う、面白い起源を持つ。実は結構新しい温泉地なのだ。
湯屋に入って、ゆっくりと浸かる。当たり前だが嫁たちは皆で女湯、俺だけ男湯なのが何とも寂しい。
泉質は無色透明の単純アルカリ泉である。濁り湯で匂いがぷんぷんする温泉が好きな俺としては、少々物足りない気もするが、名湯には違いない。
もともとこの辺り一帯は、コップに本拠地を置いていた有名な戦国大名の領地なのだが、その戦国大名が、戦で傷ついた兵たちのために、湯治場とした温泉地が、あちこちに点在していると言う。
この戦国大名は、コップからほぼ真北の、和の国海に面するジョエツーに本拠地を置いていた戦国大名といいライバル関係で、一進一退の攻防を、その半生に亘って繰り広げた。龍虎相食む。とは、このふたりの戦国大名のための言葉と言っても過言ではない。互いに、そのライバルがいなければ、天下を取っていた器量であったと言われている。
特に有名なのは、コップからは遠く北北西、ジョエツーからはひと山脈越えた南、距離的にはコップとジョエツーから3:1程度の位置にあるカナカの原野での大決戦だろう。カナカの原野での両雄の対決は5回に及ぶが、その4回目に大決戦は起きた。
膠着していた戦況を打破するため、コップの戦国大名が、軍を本隊と別動隊に二分し、夜のうちに別動隊を大きく迂回させ、ジョエツー軍の陣の背後を付き、ジョエツー軍が陣を払って移動したところを、待ち受けた本隊と挟み撃ちにする作戦を立てた。後の世に言うキツツキ戦法だ。
ジョエツーの戦国大名は、夕刻の炊飯の煙の多さで、その夜に動きがあることを看破し、背後を付かれる前に陣を払って、コップ軍本隊が待ち受ける決戦場に移動した。
早朝、朝靄が晴れるとコップ軍本隊とジョエツー軍が激突。コップ軍が隊を二分していたため、数に勝ったジョエツー軍が、代わる代わる攻撃を仕掛ける超攻撃的な車掛りと言う陣形で、コップ軍本隊を壊滅寸前まで追い込んだところに、迂回していたコップ軍別動隊が駆け付け、形勢は逆転。結局は痛み分けとなった、戦国時代最大の野戦である。
この合戦までの様子は、後の世で、「鞭声粛々、夜河を渡る。…」と言う有名な吟遊詩に歌われている程だ。
また、最後の乱戦では、ジョエツーの戦国大名が、コップの戦国大名の本陣に切り込み、両雄で一騎打ちを演じたとの逸話もあるが、これは後の世の創作とも言われている。
このカナカの原野での大決戦は、兵の動員数では、その数十年後の天下分け目の大合戦にははるかに及ばないものの、従軍兵に対する、戦死者、負傷者の割合の高さでは、戦国時代随一の大決戦であった。
さて、話は逸れたが、イシャワーの温泉を出てすぐ、コップの町に着いた。
コップギルドで許可を得て、ギルド前の町の中央広場で移動店舗を開いたところ、短時間であったが、仕入れの積荷の2割が捌けた。売り上げは昨日の約2倍だ。そして残る積荷は7割である。
その後、キノベ陸運コップ営業所に北斗号を預けて、すぐ近くに宿を取り、コップ名物のほうとうを食いに行った。
ほうとうは、太めの平うどんで、具材として野菜をふんだんに使い、味噌仕立てのスープで煮込んだ、いわゆる煮込みうどんである。野菜の主役はカボチャなので、味噌のスープに溶けだしたカボチャで、スープは甘くなっている。
具はお好みだが、カボチャの他、白菜、ニンジン、大根、シイタケ、長ネギ、油揚げが外せないところだろう。後はいくらでもアレンジすればいい。
宿に紹介されて行ったほうとうの専門店でも、○○ほうとう、と言うように、いろいろなアレンジほうとうがあった。
メニューに載っていた12種類のすべてのほうとうを2つずつ頼み、皆でシェアして食った。店の人が、そんなに食えるのかと心配していたが、まったく問題ない。うちにはキョウちゃんズがいるのだから。
宿に戻って、その晩はタヅナと同室。本番ができない分、じっくりねっとり攻めてタヅナを大いに乱れさせた。しかし、あまり乱れさせると、タヅナは我を忘れて暴走し、俺を犯すかもしれないから、ほどほどにしておいた。笑
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/20
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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