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射手の統領140 シエンの婚約者
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射手の統領
Zu-Y
№140 シエンの婚約者
披露目の翌日、次ノ宮殿下は護衛を務める東の武家勢とともに御座船で東都へご帰還される。
俺は午前中に、シエン、トウラク、シルドに極秘情報である次ノ宮殿下の来訪の真の目的、すなわちご譲位と遷都の下準備についてのことを内々に告げた。
3人は大層驚きつつも、なるほどそう言うことかと、次ノ宮殿下がわざわざ披露目に参加されたことに、合点が行った様子だ。
「なるほどなぁ。よう考えたもんや。」シエンが感心している。
「まったくだな。そう言う裏があったとは…。それにしても世間は、まさか遷都の下準備とは、露程も思うまいな。」とトウラク。
「確かにな。披露目がなければ、勘ぐる者も出たかもしれんがな。」とシルド。
その後、商都西本店で、商都産の簪や櫛などの装飾品、紅や白粉の化粧品、西都産の西都織、千枚漬、古都産の筆と墨を購入し、北斗号に積み込んだ。
北斗号を廻船で先にヌーマへ送り、そのあと俺たちが流邏石でヌーマに飛んで受け取る。
俺は船酔いをしないし船旅は大好きなのだが、揺れが苦手で船酔いする嫁たちにはこの方がいいだろう。
なお、この廻船の利用の仕方は、俺が以前、カッツラ寄港で下船したときに、乗り遅れをやらかしたのをヒントにアキナが思いついた方法だ。
商都港の桟橋には、次ノ宮殿下の御座船となる最新鋭の大型廻船が準備されていたので、この廻船に北斗号を乗せた。
俺たちセプトとオミョシ分家勢、山髙屋専務、西の武家勢は見送りだ。俺とシエンは、御座船に乗船する殿下に声を掛けた。
「殿下、この度はご足労頂きましてありがとうございました。」
「殿下、ホンマにおおきにでございました。」
「アタル、シエン。いい披露目であったな。余も久しぶりに西都や商都に来られて楽しかったぞ。
ところでな、アタルよ。そなたらセプトはかなり働き詰めだな。」
おい!こき使ってる張本人の殿下がそれを言うか?と思ったが…、
「まあ、こき使ってる張本人の余が言うのもおかしなものか?」
え?心を読まれた?
「読んでおらぬぞ。」
「!」
「ふふふ。図星か?そなたはすぐ顔に出るゆえな、分かり易いのだ。
まあそれは置いといて、少々休養を取ってもよいのではないか?そなたの奥方たちも、たまにはゆっくり休ませてやれ。」
殿下は軽く片手を上げて、廻船の乗船して行った。なんか、カッケー。
昼過ぎ、次ノ宮殿下は東の護衛勢とともに、御座船で東都に向かって出航して行った。
護衛で随行するのは、サエモン以下、帝居の衛士たちと侍従たち、二の叔父貴率いるテンバのユノベ勢、サヤ姉の後見を受けたカナタ率いるトコザのトノベ勢、サジ姉の後見を受けたクリス率いるトマツのヤクシ勢、シルド率いるコスカのタテベ勢、トウラク率いるミーブのキノベ勢、副将率いるツークのオミョシ本家勢である。
サヤ姉とサジ姉は、ここで一旦俺たちと別れ、後見の任を全うしに、カナタとクリスとともに東都への廻船に乗って行った。ふたりがこれからの船酔いに対してげんなりしてたのは秘密だ。笑
東都に着いたら、それぞれの実家まで随行し、極秘事項の御代替わりと遷都の下準備について、トノベどのとヤクシどのに告げる。それと伯母御ふたりの強制送還についても、一部始終を伝えるのだ。
これは、サヤ姉とサジ姉にとっては辛い役目になるかもしれないが、伯母御ふたりが心底反省していたら、自分たちからこうなった経緯を義伯父上たちに伝えているはずだから、サヤ姉とサジ姉は辛い思いはしなくていい。伯母御たち次第だ。
もし、ふたりが辛い役目をこなさなければならなかったら、そのときは、俺は本当に伯母御たちに対する、ユノベからの勘当を決断するだろう。そうならないことを祈るばかりだ。
この後、俺はキョウちゃんズを連れて、シエンとともにオミョシ分家へ飛ぶことになった。何でも、シエンが、相談があると言うのだ。
おそらくはオミョシ本家に対する制裁の謀議だろう。もちろん俺は全面的にシエンに協力するつもりだ。
ホサキはナワテのタテベ副拠に飛んで、姉上のシヅキと面会に行く。
アキナは商都西本店で、相談役として専務の手伝いだ。外国船が入らないことによるゴムの品薄対策の相談に乗るのだろう。また、アキナから専務へ、シエンが仕掛けた分家隠居の失踪の真相についても伝えてもらうことにした。
タヅナは、キノベ副拠からの護衛の、アベヤへの帰還へ随行するそうだ。アベヤ副拠勢を率いて来た、爺との積もる話もあるだろうしな。
で、俺たちはオミョシ分家に飛んだ。
通されたのは表座敷ではなく、密談用の隠し部屋だった。キョウちゃんズも、この部屋には入ったことがないと言う。腹心の爺と謀議をするときや、エノベの高位の者との面会に使うらしい。
これ、いいな。
叔父貴たちやガハマの代官たちと、内々の話をするときに持って来いだ。俺もテンバとガハマでこう言う部屋を用意しようっと。
ってか、思わず聞き流すとこだったが、シエンはエノベの高位の者と謀議を交わす程になっていたのか?あの鮮やかな手際だったオミョシ本家勢大将=分家隠居の拉致は、ここで段取ったに違いない。
「アタル、サキョウ、ウキョウ。紹介したいお人がおんのや。ええか?」
「おう。」「「ええよ。」」
シエンはパンパンと手を叩いた。
すすーっと影の者がひとり、隙のない身のこなしで入って来た。黒装束だからエノベの影の者のようだが、頭巾を被っておらず、顔を晒している。影の者が、懇意ではない俺たちに素顔を晒すなど、珍しいこともあるものだ。涼やかな眼が印象的なくノ一だった。
そしてなんとシエンの隣に座った。え?
「こちらはエイどのや。分家付きのエノベ衆をまとめておられるんやで。」
ほう、名前も承知しているのか?ユノベと契約しているシノベの忍の者は、自ら名乗らぬゆえ、敢えて聞いてはいない。
「エイでござります。よろしゅうお見知りおきを。」
はて?この声音。…あ!
「そなた、いつぞや、アーカからガハマに、わざわざ礼を言いに参った者ではないか?」
エイが眼を見開いた。
「左様でおます。ようお分かりで。」
「アタル兄は美少女に眼がないのや。」「一度見た美少女は忘れんのや。」キョウちゃんズが軽口を叩く。
「おい!お前ら、何ちゅーことをっ!」エイどのは確かに美少女だがな。
「あっはっは。せやったらアタル、もう手遅れやで。俺が手を付けてしもたがな。」シレっと爆弾を投下するシエン。
「「なんやて!」」「マジか?」
って俺より早くキョウちゃんズが反応した。笑
「シエン様ったら、もう。」エイの手がシエンの膝に添えられる。シエンはその手を握った。
「エイどのを俺の正室に迎えることにしたんや。ホグにはすでに挨拶を済ませて来とる。」
ホグはエノベ本拠がある。大きな神社の門前町だ。
「母上は知ってはるの?」
「これから報告すんのや。」報告?
「爺にも内緒なんか?」
「爺には話してあるで。ってか最初から相談しとる。オミョシ分家とエノベの婚姻同盟やさかいな。」こっちは相談か。
「てことは、もしやエイどのは?」俺はある確信をもって尋ねた。
「エノベのお頭の一の姫や。」シエンが答え、エイが頷いた。
「「なんやて?」」
「やはりそうか。」
「兄上、なんで母上に話してへんの?」
「どうせええ顔せんからや。母上は本家から嫁取りをしようとしとるやろ?あの糞伯父上の風下になんぞ立てるかいな。」
「せやけど。」
「母上のとこには、全部決めてから持ってくつもりやったんや。で、たった今、準備が整ったさかい、これから話を持ってくで。
エイとはとっくに深い仲や。爺も知っとる。先方にも話は通して認めてもろた。アタルとサキョウとウキョウには、今、伝えたしな。これで母上はもう反対できへんやろ。ま、反対なんぞ、させへんけどな。」
「爺はまだ商都から帰還中やないの。」
「せや。爺のいないうちに母上に報告すんのや。」やっぱり報告か。
「せやけど、本家とはホンマにええんか?」
「構へん。今回の父上を寄越した件で、伯父上には愛想が尽きたで。伯父上もとことん追い込んだるわ。アーカまで来させて、頭下げさせたる。今後のためにも、あの小心者に、どっちの器量が上か、きっちり思い知らせたるんや。」
「ところでさ、エイどのとの婚約を今までおくびにも出さなかったのはなんでだよ。」
「エノベのお頭がうんと言わなんだからや。」
「反対だったのか?」
「いや、俺はまだ未成年やし、エイどのも成人したばかりやから、ふたりとも若いってんで躊躇しとったんやな。それと俺が早々にエイどのに手を出したのを、舅どのであるお頭が不快に思われてなぁ。」
シエンが頭を掻いて、エイどのが赤くなって俯いた。
シエン、やんちゃ過ぎるぞ。ま、エノベどのには同情するな。エイどのはまだ若いし、年頃の娘を持つ父親はそんなもんだろうよ。
「それならなんで許可が出たんだ?」
「アタルが次ノ宮殿下を引っ張り出してくれたお陰やな。」
「え?」
「一昨日の西都から商都への道中で、殿下が俺のことも『腹心と思う。』て言うてくれはったやん。それと『陽の術を披露せい。』と言わはったやんか。
エノベからは影の護衛が何人も付いとったさかい、当然その日のうちに舅どのの耳に入るやん。せやから、一昨日の晩の食事会の後に、エイどのと一緒にホグに飛んだんや。」
「え?それであの食事会では呑んでなかったのか?」
「せや。しかしアタルはよう見てるなぁ。ホンマに目端が聞きよる。油断ならんで。」
「いやいや、酒豪のシエンが呑まなきゃ、普通は気付くって。」
「で、案の定、舅どのの耳には、殿下のお言葉と俺の陽の術の威力が入っとった訳や。それに加えてサキョウとウキョウの陽の術、特に竜巻な。そんでアタルの多彩な属性矢やろ。
あれのお陰で扱いが全然違たな。娘を傷物にしよった憎い男から、殿下の腹心で、しかもそれなりの武力と強力な同盟相手を持っとる、敵に回したない男に変わったんや。」
「シエンって、ほんと絶妙なタイミングでまわりを上手く使うよな。」
「まあな。あと、それだけやないで。エイどのが姑どのを味方に付けとったんが大きかったわ。姑どのの『お頭様、そろそろよろしいんやない?』のひと言で決まったようなもんや。」
「なるほど、エノベどのもアンダー・ザ・ヒップか。」
「ふっ。アタル、上手いこと言うやないか。その通りや。」シエンがニヤリとした。
「シエン様。シエン様が分家の先代と違うて、エノベの衆によくしてくれてはったんが一番効いてますのえ。母上はそれでシエン様を大層気に入っておますのや。」
「さよか。エイどの、実はな、あれはアタルのアドバイスなんやで。」
「確かにアドバイスはしたが、実際にそのアドバイスに得心して、きっちり行動に移したのはシエンではないか。」
「まあな。で、ホグに出向いたんは一昨日で3回目やったし、ちょうど『三顧の礼』の故事に擬えてな、舅どのもようやく認めてくれたわ。」
「しかしその動きを披露目の前夜にやるんだから、シエンもエイどのも大したものだな。」
「なんの。惚れた女を嫁にするためやで。苦にもならんがな。」
「あら、嬉しわぁ。」エイどのがシエンに抱き付いた。
「「「ごっそさん!」」」俺とキョウちゃんズが3人でハモった。笑
表座敷に移動し、シエンが御母上=俺の姑どのを呼び出して、エノベとの婚姻同盟のことを報告した。
姑どのの反応は予想通り。シエンは姑どのの反対に一切取り合わず、
「もう決めたことや。それにな、母上に意見を聞いとる訳やない。報告しとるだけやがな。」
姑どのは、流石にこのひと言にはカチンと来たようで、すぐに切り返した。
「権座主、本家からの嫁取りはどうするのです?反故にするおつもりですか?」
「その通りや、わややで。そもそも俺は、本家との婚姻などハナから気に入らんかってん。その上、今回の伯父上の嫌がらせで、伯父上には愛想が尽きたで。伯父上にはとことん圧力を掛けたるがな。
母上。勘弁して欲しかったらアーカまで詫びに来い言う手紙を、母上から伯父上に出してもらう手筈やん。その手紙にな、今回の伯父上の敵対行動のせいで、本家からの嫁取りの話は、わややて書いといてんか。」
ふう、と姑どのは溜息をついた。シエンが本家との敵対までをも視野に入れていることを敏感に感じたのだろう。
「エノベとの婚姻同盟の件も知らせますか?」
「それは伯父上がここに来たときに、俺から直接伝えるで。てか、そのときにはもう婚姻が済んどるやろな。」
「え?どう言うことです?」
「俺、もうすぐ成人やん。成人したらすぐエノベと婚姻同盟やねん。
伯父上は、アーカに詫びに来たら、それで手打ちになると思とるやろ?そこで本家からの嫁取りの話を蒸し返してくるはずや。『手打ちになったさかい嫁取りも復活や。』なんて、都合よう考えてな。そこで『エノベと婚姻したで。』と告げて、その甘ちゃんな考えを根底から覆したるねん。」
「承知するかしら?」
「分家の権座主は俺やで。そもそも敵対したんは伯父上や。四の五の言うたら、6武家同盟が黙ってへん。
な、アタル。」
「もちろんだ。俺は全面的にシエンを支持する。成り行きによっては、同盟の軍勢がツークを取り囲むことになろうな。」
「そうなったら、伯父上に責任を取ってもらわなな。まあ、座主から隠居してもらうわ。んで、父上と一緒に遠流や。大海原の果てのパパ島かママ島あたりに流そかの。
アタル。パパ島、ママ島へは、東都から航路があったやろ?」
「ああ、外海航路のオガサ航路だな。廻船で数日掛かるぞ。」
ちなみに東都から出ている外海航路=離島航路には、遥か遠島のパパ島、ママ島と直通のオガサ航路の他に、比較的近場の島を巡るシチトウ航路がある。シチトウ航路は、ズイダイ島、リー島、アラ島、ツジン島、サンタク島、オゾウ島、ヤッタケ島を繋いでいる。
俺とシエンの会話を聞いて、姑どのが引きつっている。話を真に受けたな。
シエンはどうせ芝居だ。イマイチ煮え切らない姑どのを煽って、本家の座主に詫びに来いと真剣に伝えさせる気なのだ。詫びに来なければ、本家が潰されようとな。
「シエンも情に厚いな。」
「せやろか?」
「禍根は絶てばよかろうに。」
「いやいや、親殺しに伯父殺しの汚名は着とうはないで。ま、着ないで済むならバッサリ行ってもええけどな。」
「シエン様。ご命令とあらば、エノベの精鋭を差し向けますよってな。」
「ほう、間違いなくふたりを秘密裏に葬れ…。」
「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさい。」姑どのがピシャリと言い放った。堪え切れなくなったようだ。苦笑
「母上、何言うてんの?伯父上が売って来た喧嘩やん。こっちは、伯父上のお望み通り、売られた喧嘩を買うたるだけやがな。
もちろん、伯父上が俺に臣従したらそこまではせえへんけどな。」
「私がツークに行って、兄上を説得して来ます。」姑どのがシエンの煽りにまんまと乗った。
「母上、実家に帰る程度に思とったらあかんよ。どうしても行くんやったら敵地に乗り込む覚悟でな。」サキョウは心配そうに言った。
「せやで。小心者の伯父上のことや、逆上してまうかも知れへん。そしたら何されるか分からんよってな。」ウキョウは不安そうに言った。
くくく。サキョウとウキョウも、姑どのを脅しに掛かりやがった。流石、うちの軍師。攻めどきを心得てる。笑
「母上、悪いことは言わん。アーカから手紙出すだけにしとき。」シエンが駄目を押した。
「いいえ、ツークで直接話を付けて来ます。」まあこの話の流れなら、姑どのは引っ込みが付かんわな。
「さよか、ほな頼んまっさ。」
シエンはあっさり意見を翻して、取り澄ましている。どこ吹く風のポーカーフェイスだ。
姑どのは、見事、シエンの術中にハマったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/13
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№140 シエンの婚約者
披露目の翌日、次ノ宮殿下は護衛を務める東の武家勢とともに御座船で東都へご帰還される。
俺は午前中に、シエン、トウラク、シルドに極秘情報である次ノ宮殿下の来訪の真の目的、すなわちご譲位と遷都の下準備についてのことを内々に告げた。
3人は大層驚きつつも、なるほどそう言うことかと、次ノ宮殿下がわざわざ披露目に参加されたことに、合点が行った様子だ。
「なるほどなぁ。よう考えたもんや。」シエンが感心している。
「まったくだな。そう言う裏があったとは…。それにしても世間は、まさか遷都の下準備とは、露程も思うまいな。」とトウラク。
「確かにな。披露目がなければ、勘ぐる者も出たかもしれんがな。」とシルド。
その後、商都西本店で、商都産の簪や櫛などの装飾品、紅や白粉の化粧品、西都産の西都織、千枚漬、古都産の筆と墨を購入し、北斗号に積み込んだ。
北斗号を廻船で先にヌーマへ送り、そのあと俺たちが流邏石でヌーマに飛んで受け取る。
俺は船酔いをしないし船旅は大好きなのだが、揺れが苦手で船酔いする嫁たちにはこの方がいいだろう。
なお、この廻船の利用の仕方は、俺が以前、カッツラ寄港で下船したときに、乗り遅れをやらかしたのをヒントにアキナが思いついた方法だ。
商都港の桟橋には、次ノ宮殿下の御座船となる最新鋭の大型廻船が準備されていたので、この廻船に北斗号を乗せた。
俺たちセプトとオミョシ分家勢、山髙屋専務、西の武家勢は見送りだ。俺とシエンは、御座船に乗船する殿下に声を掛けた。
「殿下、この度はご足労頂きましてありがとうございました。」
「殿下、ホンマにおおきにでございました。」
「アタル、シエン。いい披露目であったな。余も久しぶりに西都や商都に来られて楽しかったぞ。
ところでな、アタルよ。そなたらセプトはかなり働き詰めだな。」
おい!こき使ってる張本人の殿下がそれを言うか?と思ったが…、
「まあ、こき使ってる張本人の余が言うのもおかしなものか?」
え?心を読まれた?
「読んでおらぬぞ。」
「!」
「ふふふ。図星か?そなたはすぐ顔に出るゆえな、分かり易いのだ。
まあそれは置いといて、少々休養を取ってもよいのではないか?そなたの奥方たちも、たまにはゆっくり休ませてやれ。」
殿下は軽く片手を上げて、廻船の乗船して行った。なんか、カッケー。
昼過ぎ、次ノ宮殿下は東の護衛勢とともに、御座船で東都に向かって出航して行った。
護衛で随行するのは、サエモン以下、帝居の衛士たちと侍従たち、二の叔父貴率いるテンバのユノベ勢、サヤ姉の後見を受けたカナタ率いるトコザのトノベ勢、サジ姉の後見を受けたクリス率いるトマツのヤクシ勢、シルド率いるコスカのタテベ勢、トウラク率いるミーブのキノベ勢、副将率いるツークのオミョシ本家勢である。
サヤ姉とサジ姉は、ここで一旦俺たちと別れ、後見の任を全うしに、カナタとクリスとともに東都への廻船に乗って行った。ふたりがこれからの船酔いに対してげんなりしてたのは秘密だ。笑
東都に着いたら、それぞれの実家まで随行し、極秘事項の御代替わりと遷都の下準備について、トノベどのとヤクシどのに告げる。それと伯母御ふたりの強制送還についても、一部始終を伝えるのだ。
これは、サヤ姉とサジ姉にとっては辛い役目になるかもしれないが、伯母御ふたりが心底反省していたら、自分たちからこうなった経緯を義伯父上たちに伝えているはずだから、サヤ姉とサジ姉は辛い思いはしなくていい。伯母御たち次第だ。
もし、ふたりが辛い役目をこなさなければならなかったら、そのときは、俺は本当に伯母御たちに対する、ユノベからの勘当を決断するだろう。そうならないことを祈るばかりだ。
この後、俺はキョウちゃんズを連れて、シエンとともにオミョシ分家へ飛ぶことになった。何でも、シエンが、相談があると言うのだ。
おそらくはオミョシ本家に対する制裁の謀議だろう。もちろん俺は全面的にシエンに協力するつもりだ。
ホサキはナワテのタテベ副拠に飛んで、姉上のシヅキと面会に行く。
アキナは商都西本店で、相談役として専務の手伝いだ。外国船が入らないことによるゴムの品薄対策の相談に乗るのだろう。また、アキナから専務へ、シエンが仕掛けた分家隠居の失踪の真相についても伝えてもらうことにした。
タヅナは、キノベ副拠からの護衛の、アベヤへの帰還へ随行するそうだ。アベヤ副拠勢を率いて来た、爺との積もる話もあるだろうしな。
で、俺たちはオミョシ分家に飛んだ。
通されたのは表座敷ではなく、密談用の隠し部屋だった。キョウちゃんズも、この部屋には入ったことがないと言う。腹心の爺と謀議をするときや、エノベの高位の者との面会に使うらしい。
これ、いいな。
叔父貴たちやガハマの代官たちと、内々の話をするときに持って来いだ。俺もテンバとガハマでこう言う部屋を用意しようっと。
ってか、思わず聞き流すとこだったが、シエンはエノベの高位の者と謀議を交わす程になっていたのか?あの鮮やかな手際だったオミョシ本家勢大将=分家隠居の拉致は、ここで段取ったに違いない。
「アタル、サキョウ、ウキョウ。紹介したいお人がおんのや。ええか?」
「おう。」「「ええよ。」」
シエンはパンパンと手を叩いた。
すすーっと影の者がひとり、隙のない身のこなしで入って来た。黒装束だからエノベの影の者のようだが、頭巾を被っておらず、顔を晒している。影の者が、懇意ではない俺たちに素顔を晒すなど、珍しいこともあるものだ。涼やかな眼が印象的なくノ一だった。
そしてなんとシエンの隣に座った。え?
「こちらはエイどのや。分家付きのエノベ衆をまとめておられるんやで。」
ほう、名前も承知しているのか?ユノベと契約しているシノベの忍の者は、自ら名乗らぬゆえ、敢えて聞いてはいない。
「エイでござります。よろしゅうお見知りおきを。」
はて?この声音。…あ!
「そなた、いつぞや、アーカからガハマに、わざわざ礼を言いに参った者ではないか?」
エイが眼を見開いた。
「左様でおます。ようお分かりで。」
「アタル兄は美少女に眼がないのや。」「一度見た美少女は忘れんのや。」キョウちゃんズが軽口を叩く。
「おい!お前ら、何ちゅーことをっ!」エイどのは確かに美少女だがな。
「あっはっは。せやったらアタル、もう手遅れやで。俺が手を付けてしもたがな。」シレっと爆弾を投下するシエン。
「「なんやて!」」「マジか?」
って俺より早くキョウちゃんズが反応した。笑
「シエン様ったら、もう。」エイの手がシエンの膝に添えられる。シエンはその手を握った。
「エイどのを俺の正室に迎えることにしたんや。ホグにはすでに挨拶を済ませて来とる。」
ホグはエノベ本拠がある。大きな神社の門前町だ。
「母上は知ってはるの?」
「これから報告すんのや。」報告?
「爺にも内緒なんか?」
「爺には話してあるで。ってか最初から相談しとる。オミョシ分家とエノベの婚姻同盟やさかいな。」こっちは相談か。
「てことは、もしやエイどのは?」俺はある確信をもって尋ねた。
「エノベのお頭の一の姫や。」シエンが答え、エイが頷いた。
「「なんやて?」」
「やはりそうか。」
「兄上、なんで母上に話してへんの?」
「どうせええ顔せんからや。母上は本家から嫁取りをしようとしとるやろ?あの糞伯父上の風下になんぞ立てるかいな。」
「せやけど。」
「母上のとこには、全部決めてから持ってくつもりやったんや。で、たった今、準備が整ったさかい、これから話を持ってくで。
エイとはとっくに深い仲や。爺も知っとる。先方にも話は通して認めてもろた。アタルとサキョウとウキョウには、今、伝えたしな。これで母上はもう反対できへんやろ。ま、反対なんぞ、させへんけどな。」
「爺はまだ商都から帰還中やないの。」
「せや。爺のいないうちに母上に報告すんのや。」やっぱり報告か。
「せやけど、本家とはホンマにええんか?」
「構へん。今回の父上を寄越した件で、伯父上には愛想が尽きたで。伯父上もとことん追い込んだるわ。アーカまで来させて、頭下げさせたる。今後のためにも、あの小心者に、どっちの器量が上か、きっちり思い知らせたるんや。」
「ところでさ、エイどのとの婚約を今までおくびにも出さなかったのはなんでだよ。」
「エノベのお頭がうんと言わなんだからや。」
「反対だったのか?」
「いや、俺はまだ未成年やし、エイどのも成人したばかりやから、ふたりとも若いってんで躊躇しとったんやな。それと俺が早々にエイどのに手を出したのを、舅どのであるお頭が不快に思われてなぁ。」
シエンが頭を掻いて、エイどのが赤くなって俯いた。
シエン、やんちゃ過ぎるぞ。ま、エノベどのには同情するな。エイどのはまだ若いし、年頃の娘を持つ父親はそんなもんだろうよ。
「それならなんで許可が出たんだ?」
「アタルが次ノ宮殿下を引っ張り出してくれたお陰やな。」
「え?」
「一昨日の西都から商都への道中で、殿下が俺のことも『腹心と思う。』て言うてくれはったやん。それと『陽の術を披露せい。』と言わはったやんか。
エノベからは影の護衛が何人も付いとったさかい、当然その日のうちに舅どのの耳に入るやん。せやから、一昨日の晩の食事会の後に、エイどのと一緒にホグに飛んだんや。」
「え?それであの食事会では呑んでなかったのか?」
「せや。しかしアタルはよう見てるなぁ。ホンマに目端が聞きよる。油断ならんで。」
「いやいや、酒豪のシエンが呑まなきゃ、普通は気付くって。」
「で、案の定、舅どのの耳には、殿下のお言葉と俺の陽の術の威力が入っとった訳や。それに加えてサキョウとウキョウの陽の術、特に竜巻な。そんでアタルの多彩な属性矢やろ。
あれのお陰で扱いが全然違たな。娘を傷物にしよった憎い男から、殿下の腹心で、しかもそれなりの武力と強力な同盟相手を持っとる、敵に回したない男に変わったんや。」
「シエンって、ほんと絶妙なタイミングでまわりを上手く使うよな。」
「まあな。あと、それだけやないで。エイどのが姑どのを味方に付けとったんが大きかったわ。姑どのの『お頭様、そろそろよろしいんやない?』のひと言で決まったようなもんや。」
「なるほど、エノベどのもアンダー・ザ・ヒップか。」
「ふっ。アタル、上手いこと言うやないか。その通りや。」シエンがニヤリとした。
「シエン様。シエン様が分家の先代と違うて、エノベの衆によくしてくれてはったんが一番効いてますのえ。母上はそれでシエン様を大層気に入っておますのや。」
「さよか。エイどの、実はな、あれはアタルのアドバイスなんやで。」
「確かにアドバイスはしたが、実際にそのアドバイスに得心して、きっちり行動に移したのはシエンではないか。」
「まあな。で、ホグに出向いたんは一昨日で3回目やったし、ちょうど『三顧の礼』の故事に擬えてな、舅どのもようやく認めてくれたわ。」
「しかしその動きを披露目の前夜にやるんだから、シエンもエイどのも大したものだな。」
「なんの。惚れた女を嫁にするためやで。苦にもならんがな。」
「あら、嬉しわぁ。」エイどのがシエンに抱き付いた。
「「「ごっそさん!」」」俺とキョウちゃんズが3人でハモった。笑
表座敷に移動し、シエンが御母上=俺の姑どのを呼び出して、エノベとの婚姻同盟のことを報告した。
姑どのの反応は予想通り。シエンは姑どのの反対に一切取り合わず、
「もう決めたことや。それにな、母上に意見を聞いとる訳やない。報告しとるだけやがな。」
姑どのは、流石にこのひと言にはカチンと来たようで、すぐに切り返した。
「権座主、本家からの嫁取りはどうするのです?反故にするおつもりですか?」
「その通りや、わややで。そもそも俺は、本家との婚姻などハナから気に入らんかってん。その上、今回の伯父上の嫌がらせで、伯父上には愛想が尽きたで。伯父上にはとことん圧力を掛けたるがな。
母上。勘弁して欲しかったらアーカまで詫びに来い言う手紙を、母上から伯父上に出してもらう手筈やん。その手紙にな、今回の伯父上の敵対行動のせいで、本家からの嫁取りの話は、わややて書いといてんか。」
ふう、と姑どのは溜息をついた。シエンが本家との敵対までをも視野に入れていることを敏感に感じたのだろう。
「エノベとの婚姻同盟の件も知らせますか?」
「それは伯父上がここに来たときに、俺から直接伝えるで。てか、そのときにはもう婚姻が済んどるやろな。」
「え?どう言うことです?」
「俺、もうすぐ成人やん。成人したらすぐエノベと婚姻同盟やねん。
伯父上は、アーカに詫びに来たら、それで手打ちになると思とるやろ?そこで本家からの嫁取りの話を蒸し返してくるはずや。『手打ちになったさかい嫁取りも復活や。』なんて、都合よう考えてな。そこで『エノベと婚姻したで。』と告げて、その甘ちゃんな考えを根底から覆したるねん。」
「承知するかしら?」
「分家の権座主は俺やで。そもそも敵対したんは伯父上や。四の五の言うたら、6武家同盟が黙ってへん。
な、アタル。」
「もちろんだ。俺は全面的にシエンを支持する。成り行きによっては、同盟の軍勢がツークを取り囲むことになろうな。」
「そうなったら、伯父上に責任を取ってもらわなな。まあ、座主から隠居してもらうわ。んで、父上と一緒に遠流や。大海原の果てのパパ島かママ島あたりに流そかの。
アタル。パパ島、ママ島へは、東都から航路があったやろ?」
「ああ、外海航路のオガサ航路だな。廻船で数日掛かるぞ。」
ちなみに東都から出ている外海航路=離島航路には、遥か遠島のパパ島、ママ島と直通のオガサ航路の他に、比較的近場の島を巡るシチトウ航路がある。シチトウ航路は、ズイダイ島、リー島、アラ島、ツジン島、サンタク島、オゾウ島、ヤッタケ島を繋いでいる。
俺とシエンの会話を聞いて、姑どのが引きつっている。話を真に受けたな。
シエンはどうせ芝居だ。イマイチ煮え切らない姑どのを煽って、本家の座主に詫びに来いと真剣に伝えさせる気なのだ。詫びに来なければ、本家が潰されようとな。
「シエンも情に厚いな。」
「せやろか?」
「禍根は絶てばよかろうに。」
「いやいや、親殺しに伯父殺しの汚名は着とうはないで。ま、着ないで済むならバッサリ行ってもええけどな。」
「シエン様。ご命令とあらば、エノベの精鋭を差し向けますよってな。」
「ほう、間違いなくふたりを秘密裏に葬れ…。」
「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさい。」姑どのがピシャリと言い放った。堪え切れなくなったようだ。苦笑
「母上、何言うてんの?伯父上が売って来た喧嘩やん。こっちは、伯父上のお望み通り、売られた喧嘩を買うたるだけやがな。
もちろん、伯父上が俺に臣従したらそこまではせえへんけどな。」
「私がツークに行って、兄上を説得して来ます。」姑どのがシエンの煽りにまんまと乗った。
「母上、実家に帰る程度に思とったらあかんよ。どうしても行くんやったら敵地に乗り込む覚悟でな。」サキョウは心配そうに言った。
「せやで。小心者の伯父上のことや、逆上してまうかも知れへん。そしたら何されるか分からんよってな。」ウキョウは不安そうに言った。
くくく。サキョウとウキョウも、姑どのを脅しに掛かりやがった。流石、うちの軍師。攻めどきを心得てる。笑
「母上、悪いことは言わん。アーカから手紙出すだけにしとき。」シエンが駄目を押した。
「いいえ、ツークで直接話を付けて来ます。」まあこの話の流れなら、姑どのは引っ込みが付かんわな。
「さよか、ほな頼んまっさ。」
シエンはあっさり意見を翻して、取り澄ましている。どこ吹く風のポーカーフェイスだ。
姑どのは、見事、シエンの術中にハマったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/11/13
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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