128 / 183
射手の統領125 オールプラチナ
しおりを挟む
射手の統領
Zu-Y
№125 オールプラチナ
キョウちゃんズがケロッとしていたことで、股間まさぐり事件も有耶無耶となって、そのまま嫁たちと混浴に突入できた。
混浴中は当然、頂と蜜壺を丹念にケアする濃厚なスキンシップを嫁全員に行った。これにより、嫁たちとの関係は改善し、無事、四面楚歌の状態から脱出した。
すっかり上機嫌になった俺は、大部屋に戻ってノワ攻略の祝勝会を始めた。
今日は、海が静まって久しぶりに漁に出られたとかで、メインはカツオの船盛りだった。四の島南部は、外海とも大海原とも言う外洋に直接面しており、カツオ漁が盛んだ。
四の島では驚いたことに、カツオは生姜醤油よりも、塩とニンニクを入れたごま油で頂くのだそうだ。しかしこれが何とも旨い。ザミャキで食ったカツオ飯にこのアレンジを加えてもきっと合うに違いない。
女将に勧められた地酒の和酒とカツオの刺身との相性は抜群だった。
嫁たちも、カツオの刺身と地酒を堪能している。以前はお猪口3杯の和酒で轟沈したキョウちゃんズも、いつのまにか、地酒で杯を重ねているのに平気になっている。やはりここへ来てぐんと成長したよなー。
夕餉に舌鼓を打ちながら、明日のことを確認した。
「そう言えば明日のことだけどさ、当初の予定通り、西の島航路の東回り2泊で、ブッペ温泉まで行くんでいいよな?」
「アタル、そのことなんだけどね、四の島では金剛鏑を探しにイーヤ峡谷に行くんでしょう?」
「ああ、そのつもりだ。」
「なら…、ガヒューから…、和南西…航路で…チーコ…。」
「え?でもブッペ温泉は?」
「ブッペはまた今度でいいのではないか?ブッペに寄ると随分遠回りになってしまうぞ。どうしても今回行かなくてはならない訳ではないだろう?」
「え、でも大海原は揺れるしさ。」和南西航路は大海原を行くので揺れる。東行は潮帆で黒海流を利用するのでさらに揺れる。
「でも、ひと晩だけですからね。」
「まあ、そうだけど…。」
「イーヤはぁ、チーコから屋府へのぉ、山越えのほぼ真ん中だからぁ、チーコからだとぉ、意外と近いわよぉ。」
四の島は東西に長く南北に短いので、南岸のチーコから北岸の屋府へは、山越えはあるものの直線距離だと意外と近い。
「でもなぁ、うちもブッペ温泉行きたいしなぁ。」「せやね、うちも行きたいわぁ。」やった、心強い味方が現れた!流石、温泉好きのキョウちゃんズ。
「だよなぁ。」よし、一気に畳み掛けてやる。
「私も行きたいですよ。でもですね、金剛鏑の確保の方が先じゃないですか?もう空の金剛鏑はひとつしかないんでしょう?」
「せやね。アキ姉の言う通りや。」「アタル兄、ブッペ温泉はまた今度にしよや。」
サキョウとウキョウはコロッと転びやがった。1対7か。万事休す。
「それにぃ、イーヤもぉ、秘境温泉ですよぉ。」
「分かったよ。そうしよう。」がっくしトホホ、である。…が、
まぁ、ガヒューへの流邏石があるからな、確かにブッペへは、いつでも行けるっちゃぁ行けるわな。
部屋呑みが終わり、アキナと一緒にふたり部屋へ。
眼鏡でプレイスタイルを変えるアキナの今宵の眼鏡は、優等生委員長眼鏡だ。サヤ姉、サジ姉、ホサキからここのところの俺のマイブームを聞いての委員長眼鏡、今日のアキナは受け身を選択すると見た。ではご希望通り、思う存分マイブームを味わわせてやろうではないか。
マイブームの指と舌で丁寧に攻める戦法で、アキナの全身のコリをほぐしてやった。サヤ姉、サジ姉、ホサキに続き、アキナも何度も昇天していた。笑
翌朝、宿の女将に見送られて、ズシミの温泉宿から流邏石でガヒューギルドに飛んだ。
ガヒューギルドで、紫嵐龍攻略成功の報告をすると、早速、ギルマスルームに通された。ギルマスのニチコウが上機嫌だ。
「随分早かったとやね。」
「クマさんの操船が凄かったよ。あの嵐の海を丸1日で渡ったからなぁ。」
「褒美が褒美じゃからね、気合がえろう入ったっちゃろね。」
「ああ。丸1日寝ずに操船してたのにな、ズシミに着いたらすぐに、シゲさんとふたりでチーコ行の馬車に乗り込んでったよ。」
「あんふたりはいい師弟コンビよ。わっはっは。」
「で、証拠がこれな。」俺はノワ鏑をニチコウに見せた。紫色に輝くノワ鏑の中で、気を効かせたノワが神龍形態を取った。息を飲むニチコウ。
「ええもん見せてもろたっちゃが。」
『これ男。余を物のように言うでない。』
「!」ぶっ魂消るニチコウ。
「ノワ…、いや、紫嵐龍からの念話だ。」
「す、す、す、すんまっしぇーん。」フライング土下座を敢行するニチコウ。カゴンマギルドのスケサスと言い、三の島のギルマスはフライング土下座が必殺技のようだ。笑
それから俺は、ニチコウに紫嵐龍攻略のあらましを語った。もちろん一度は、攻略に失敗して撤退したこともだ。
ひと通り報告した後、ギルマスルームを出た。例によって、最終的なチェックがあるので、報酬の受け取りは明日。俺たちは受付で、ギルド前での出張店舗開店の許可を取った。
俺たちがギルマスルームで、紫嵐龍攻略の顛末をニチコウに報告している間に、俺たちが紫嵐龍を攻略したと言う事実は、ギルド内に知れ渡っていた。このせいで、他の冒険者たちから尊敬の眼差しが飛んで来るのだが、少々面映ゆい。
「あん人たちがセプトじゃげな。」
「まこつ、濃紺のマントば羽織っとっとじゃねぇ。」
「紫嵐龍ば鎮めたとよ。」
「あん嵐で、どぎゃんして四の島に渡ったっちゃろねぇ。」
「泳いで渡ったっちゅう話じゃ。」そんなことある訳ねーだろーがよっ!
「凄かねぇ。」いやいや、信じんじゃねぇよ。
いちいち訂正するのも面倒臭いので、放っておくことにした。
キノベ陸運ガヒュー営業所に預けていた北斗号を受け取り、ギルド前で出張店舗を開くと、やはり、商都で仕入れた簪や櫛などの装飾品や、紅や白粉の化粧品が飛ぶように売れ、ガヒューに来るまでの売れ行きで、仕入れの3割程度になっていた在庫はすべて売れた。
さらに、宰府、クマモン、クラキザ、カゴンマで仕入れた品々もそれなりに売れた。やはり、三の島の男衆は酒好きの様で、クマモン仕入の牛乳焼酎や、カゴンマ仕入の芋焼酎が売れていた。
いつものことだが、商売になると俺の影は薄くなる。商人アキナが抜群の売り上げを誇り、キョウちゃんズの掛合売りがそれに続く。姐御系のサヤ姉は女の子たち、口数少ないサジ姉はヲタクたち、女上司系口調のホサキはM男たち、癒し系タヅナはオジサマたちの支持を集める。
俺は品出しに徹する。下手に売り子をするより、その方が効率がいいのだ。
日が落ちて店終いをし、キノベ陸運北斗号をガヒュー営業所に預け、宿屋を取ってからガヒューの港町に夕餉を摂りに繰り出した。
嫁たちは焼肉がいいと言うので、焼肉専門店に行った。ザミャキからガヒューまでは肉牛の生産も盛んで、そこそこなブランド和牛なのである。A5ランクの肉は焼くのですらもったいない。さっと炙っただけで肉汁が出て来る。それで十分なのだ。焼肉のたれなどいらない。塩と胡椒で十分だ。それだけ肉自体が美味なのだ。
嫁たちには大好評だった。
今宵は、タヅナと同室。
ここのところの俺のマイブームである指と舌で丁寧に攻める戦法で、タヅナの全身のコリをほぐしてやった。タヅナはじっくりねっとり行くと大いに乱れ、乱れが嵩じると暴走する。一度俺は、暴走したタヅナに馬乗りになられ、危うく犯されそうになったことがある。笑
ましてや夕餉の焼肉でスタミナをたっぷり付けちまったからな。どうなることかと心配していたが、焦らし続けるのは控えて、ひたすらコリをほぐし続けていたら、それなりに乱れはしたが、暴走することはなく、タヅナも、サジ姉、サヤ姉、ホサキ、アキナと同様に、何度も昇天していた。笑
翌朝、ギルドの受付で報酬の大金貨3枚を受け取り、サキョウ、ウキョウ、アキナ、タヅナがSランクに上がった。これで全員プラチナカードだ。オールプラチナパーティだ。
俺はもうすぐでSSランクだそうだ。サヤ姉、サジ姉、ホサキは、クマモンでSランクになったばかりだから、SSランクにはまだ届かない。
俺たちはギルドを出て、ガヒュー営業所で北斗号を受け取り、ガヒュー港で和南西航路の廻船のチケットを取った。チーコまで、6人和室の追加布団2組。ちょっときついが皆で雑魚寝と言うのがいい。
昼過ぎには、廻船はガヒューを出航して、三の島に別れを告げた。目指すは四の島のチーコ。四の島は南の島とも言い、四の島の北東は、商都の対岸である。また、四の島の北岸と和の島の西和の南岸に挟まれた海域がセトの内海だ。
四の島の南岸の海岸線は、南西端のズリの断崖岬と南東端のトロムを両端として、大きく滑らかな弧を描いている。目指すチーコは、その南岸の中央で、弧の最奥である。
四の島南岸に面する海は大海原とも外つ海とも言う外洋だ。四の島のすぐ南の大海原には、西から東に黒海流が流れており、廻船はその黒海流に潮帆を入れて、グンと加速する。その分揺れも大きくなるがな。嫁たちはこの揺れが苦手だ。
揺れに備えてサジ姉が皆に酔止の術を掛け、俺以外はすぐに布団を敷いてゴロンと横になっている。船酔い対策だ。まあでもひと晩寝れば、明日の昼にはチーコだ。
嫁たちは出航後まもなく潮帆を張って揺れがひどくなってから船酔いで動けなくなった。これを見越して夕餉用と翌日の朝餉用の弁当は、俺ひとり分しか買っていない。カドガーで馳走になった魚寿司を、港の売店で見付けたので、迷わずそれを買い込んでいた。
夕餉は、揺れる船室の端っこで、ひとりチビチビと焼酎を片手に、魚寿司をつまんだ。実に旨い。
とは言え、ひとりで呑んでても微妙なので、俺も早めに床に就いた。
翌朝は、前の晩に早く床に就いたせいで、夜明け前から目が覚めた。嫁たちは相変わらず、うんうんと唸っている。船酔いがきついのだろう。
俺はひとりで甲板に上がることにした。夜明け前の甲板は暗いが、東の空は白くなって来ている。白い東の空から中天見掛けて、白、薄紫、紫、濃紺、黒と、空の色がグラデーションで変化している。実に神秘的できれいだ。
やがて、1時半の方向の東の水平線からお天道様が顔を出した。濃紺の海面に、お天道様からの一筋の光が、揺れる波間を廻船に向かって来ている。御来光だ。俺はお天道様に手を合わせた。
ん?お天道様の方向で、海面から何かがせり上がったと思うと、その何かからから大きな噴水がひとつ、空高く吹き上がった。そしてその何かは、すぐまた海へと消えて行った。何だ、あれ?
しばらく見ていると、さっきより近い海面で再び何かがせり上がり、また大きな噴水を噴き上げて沈んで行った。随分でかいんじゃないか?
あ、クジラか!
甲板を船員がわらわらと動き出す。クジラがこっちに向かって来ているせいだろうか?
船首では潮帆の回収が始まった。右舷のロープを外し、左舷からロープを巻き上げて潮帆を回収するのだ。
潮帆を張ったまま、あの大きなクジラに引っ掛けられたら、廻船は損傷しかねないものな。
しかしクジラは悠々と近付いて来る。
緊急を伝える警笛が鳴り出し、左舷前方のクジラへ、陽士が火の術を1発放つ。キョウちゃんズみたいに連射はできないのな。
取り敢えず俺も船首に向かった。
「お客はん、危険やさかい、出て来んといて。」お、西の言葉か。和南西航路は、商都とガヒューを結んでいるから、西の人も船員にいる訳だ。
「追い払うんなら手を貸すぞ。」
「お客はん、あんた、陽士なんか?」
「いや、射手だが。」
「射手の矢じゃぁ、何の足しにもならんよって、引っ込んどいてぇな。」
「まあ見てろよ。
ライ、5倍!連射するぞ。」
『おう。』
クジラはさらに近くなったところに出て来て、盛大に潮を噴き上げた。よし今だ!
5倍雷撃矢を3連射した。遠矢と動き的の要領だ。黄色く輝く3本の矢が次々とクジラに吸い込まれるように着弾した。5倍雷撃矢を受けたクジラは、黄色く発光し、ビクンと震えて硬直すると、そのまま海面へ潜って行った。
しばらく経っても浮いて来ないから仕留めてはいないようだ。5倍雷撃矢を3本も受けたんだから、感電死してもおかしくないと言うのに、図体がでかいだけあってしぶといな。しかし、こちらが危険な相手だとは認識しただろう。これでちょっかいを掛けて来なくなればそれでいい。
「お客はん、今の、何や?」
「あんたが『何の足しにもならん。』と言った弓矢攻撃だが?」
「えろうすんまへん。わいの考え違いでおました。」
てっきり船員だと思ったこの男は、この廻船の船長だった。危機に際して、最前線で指揮を執るとは、見上げたものだ。
その後、船長室に案内され、丁重に礼を述べられた。
さらに、乗船名簿からアキナの旦那であることがバレると、ひたすら恐縮された。
「お嬢の旦はんで?」
「お嬢と言うのがアキナのことなら、そうだが。」
「重ね重ねすんまへんでした。」
「まぁそんなことはもういい。それよりあんた、船長自ら陣頭指揮とは見上げたものじゃないか。」
「そりゃそうでっせ。クジラに一発かまされたら、廻船はただじゃ済まんよってな。船長たる者、廻船の一大事にのほほんとしてられまっかいな。」
クジラとの遭遇で畳んだ潮帆は、もう展開しなかった。チーコに向かっていい風が吹いていたし、チーコがそう遠くないからだ。そのせいで廻船の揺れはだいぶ落ち着いた。
そこへ嫁たちがぞろぞろとやって来た。
「あ、お嬢。船酔いはもうよろしいんで?」船長がアキナに聞いた。
「ええ。大丈夫です。それより何があったんです?船員から聞いた話では要領を得ないんです。取り敢えず、アタルが随分活躍したことだけは分かりましたが。」
船長が事情を説明すると、嫁たちは俺に感心しつつも、すっかり凹んでしまった。曰く、そんな大事なときに、使い物にならないばかりでなく、一大事であることすら知らなかったなんて、大変申し訳ない。と言うことだ。
そうは言っても、嫁たちのあの状態では戦闘などできるはずもない。仕方ないだろう。
船長によると、クジラの撃退は、緊急クエストとしてギルドに追加申請するそうで、俺単独でのクエスト達成と言うことで落ち着いた。俺としてはパーティでのクエスト達成でもいいのだが、嫁たちが頑として譲らなかった。船酔いで動けなかったんだから、そんなに気にすることないのにな。まぁ、俺の嫁たちは皆、律義者なのだ。
そうこうしているうちに、定刻より1時間遅れで、廻船は四の島のチーコ港に入港した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/10/9
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№125 オールプラチナ
キョウちゃんズがケロッとしていたことで、股間まさぐり事件も有耶無耶となって、そのまま嫁たちと混浴に突入できた。
混浴中は当然、頂と蜜壺を丹念にケアする濃厚なスキンシップを嫁全員に行った。これにより、嫁たちとの関係は改善し、無事、四面楚歌の状態から脱出した。
すっかり上機嫌になった俺は、大部屋に戻ってノワ攻略の祝勝会を始めた。
今日は、海が静まって久しぶりに漁に出られたとかで、メインはカツオの船盛りだった。四の島南部は、外海とも大海原とも言う外洋に直接面しており、カツオ漁が盛んだ。
四の島では驚いたことに、カツオは生姜醤油よりも、塩とニンニクを入れたごま油で頂くのだそうだ。しかしこれが何とも旨い。ザミャキで食ったカツオ飯にこのアレンジを加えてもきっと合うに違いない。
女将に勧められた地酒の和酒とカツオの刺身との相性は抜群だった。
嫁たちも、カツオの刺身と地酒を堪能している。以前はお猪口3杯の和酒で轟沈したキョウちゃんズも、いつのまにか、地酒で杯を重ねているのに平気になっている。やはりここへ来てぐんと成長したよなー。
夕餉に舌鼓を打ちながら、明日のことを確認した。
「そう言えば明日のことだけどさ、当初の予定通り、西の島航路の東回り2泊で、ブッペ温泉まで行くんでいいよな?」
「アタル、そのことなんだけどね、四の島では金剛鏑を探しにイーヤ峡谷に行くんでしょう?」
「ああ、そのつもりだ。」
「なら…、ガヒューから…、和南西…航路で…チーコ…。」
「え?でもブッペ温泉は?」
「ブッペはまた今度でいいのではないか?ブッペに寄ると随分遠回りになってしまうぞ。どうしても今回行かなくてはならない訳ではないだろう?」
「え、でも大海原は揺れるしさ。」和南西航路は大海原を行くので揺れる。東行は潮帆で黒海流を利用するのでさらに揺れる。
「でも、ひと晩だけですからね。」
「まあ、そうだけど…。」
「イーヤはぁ、チーコから屋府へのぉ、山越えのほぼ真ん中だからぁ、チーコからだとぉ、意外と近いわよぉ。」
四の島は東西に長く南北に短いので、南岸のチーコから北岸の屋府へは、山越えはあるものの直線距離だと意外と近い。
「でもなぁ、うちもブッペ温泉行きたいしなぁ。」「せやね、うちも行きたいわぁ。」やった、心強い味方が現れた!流石、温泉好きのキョウちゃんズ。
「だよなぁ。」よし、一気に畳み掛けてやる。
「私も行きたいですよ。でもですね、金剛鏑の確保の方が先じゃないですか?もう空の金剛鏑はひとつしかないんでしょう?」
「せやね。アキ姉の言う通りや。」「アタル兄、ブッペ温泉はまた今度にしよや。」
サキョウとウキョウはコロッと転びやがった。1対7か。万事休す。
「それにぃ、イーヤもぉ、秘境温泉ですよぉ。」
「分かったよ。そうしよう。」がっくしトホホ、である。…が、
まぁ、ガヒューへの流邏石があるからな、確かにブッペへは、いつでも行けるっちゃぁ行けるわな。
部屋呑みが終わり、アキナと一緒にふたり部屋へ。
眼鏡でプレイスタイルを変えるアキナの今宵の眼鏡は、優等生委員長眼鏡だ。サヤ姉、サジ姉、ホサキからここのところの俺のマイブームを聞いての委員長眼鏡、今日のアキナは受け身を選択すると見た。ではご希望通り、思う存分マイブームを味わわせてやろうではないか。
マイブームの指と舌で丁寧に攻める戦法で、アキナの全身のコリをほぐしてやった。サヤ姉、サジ姉、ホサキに続き、アキナも何度も昇天していた。笑
翌朝、宿の女将に見送られて、ズシミの温泉宿から流邏石でガヒューギルドに飛んだ。
ガヒューギルドで、紫嵐龍攻略成功の報告をすると、早速、ギルマスルームに通された。ギルマスのニチコウが上機嫌だ。
「随分早かったとやね。」
「クマさんの操船が凄かったよ。あの嵐の海を丸1日で渡ったからなぁ。」
「褒美が褒美じゃからね、気合がえろう入ったっちゃろね。」
「ああ。丸1日寝ずに操船してたのにな、ズシミに着いたらすぐに、シゲさんとふたりでチーコ行の馬車に乗り込んでったよ。」
「あんふたりはいい師弟コンビよ。わっはっは。」
「で、証拠がこれな。」俺はノワ鏑をニチコウに見せた。紫色に輝くノワ鏑の中で、気を効かせたノワが神龍形態を取った。息を飲むニチコウ。
「ええもん見せてもろたっちゃが。」
『これ男。余を物のように言うでない。』
「!」ぶっ魂消るニチコウ。
「ノワ…、いや、紫嵐龍からの念話だ。」
「す、す、す、すんまっしぇーん。」フライング土下座を敢行するニチコウ。カゴンマギルドのスケサスと言い、三の島のギルマスはフライング土下座が必殺技のようだ。笑
それから俺は、ニチコウに紫嵐龍攻略のあらましを語った。もちろん一度は、攻略に失敗して撤退したこともだ。
ひと通り報告した後、ギルマスルームを出た。例によって、最終的なチェックがあるので、報酬の受け取りは明日。俺たちは受付で、ギルド前での出張店舗開店の許可を取った。
俺たちがギルマスルームで、紫嵐龍攻略の顛末をニチコウに報告している間に、俺たちが紫嵐龍を攻略したと言う事実は、ギルド内に知れ渡っていた。このせいで、他の冒険者たちから尊敬の眼差しが飛んで来るのだが、少々面映ゆい。
「あん人たちがセプトじゃげな。」
「まこつ、濃紺のマントば羽織っとっとじゃねぇ。」
「紫嵐龍ば鎮めたとよ。」
「あん嵐で、どぎゃんして四の島に渡ったっちゃろねぇ。」
「泳いで渡ったっちゅう話じゃ。」そんなことある訳ねーだろーがよっ!
「凄かねぇ。」いやいや、信じんじゃねぇよ。
いちいち訂正するのも面倒臭いので、放っておくことにした。
キノベ陸運ガヒュー営業所に預けていた北斗号を受け取り、ギルド前で出張店舗を開くと、やはり、商都で仕入れた簪や櫛などの装飾品や、紅や白粉の化粧品が飛ぶように売れ、ガヒューに来るまでの売れ行きで、仕入れの3割程度になっていた在庫はすべて売れた。
さらに、宰府、クマモン、クラキザ、カゴンマで仕入れた品々もそれなりに売れた。やはり、三の島の男衆は酒好きの様で、クマモン仕入の牛乳焼酎や、カゴンマ仕入の芋焼酎が売れていた。
いつものことだが、商売になると俺の影は薄くなる。商人アキナが抜群の売り上げを誇り、キョウちゃんズの掛合売りがそれに続く。姐御系のサヤ姉は女の子たち、口数少ないサジ姉はヲタクたち、女上司系口調のホサキはM男たち、癒し系タヅナはオジサマたちの支持を集める。
俺は品出しに徹する。下手に売り子をするより、その方が効率がいいのだ。
日が落ちて店終いをし、キノベ陸運北斗号をガヒュー営業所に預け、宿屋を取ってからガヒューの港町に夕餉を摂りに繰り出した。
嫁たちは焼肉がいいと言うので、焼肉専門店に行った。ザミャキからガヒューまでは肉牛の生産も盛んで、そこそこなブランド和牛なのである。A5ランクの肉は焼くのですらもったいない。さっと炙っただけで肉汁が出て来る。それで十分なのだ。焼肉のたれなどいらない。塩と胡椒で十分だ。それだけ肉自体が美味なのだ。
嫁たちには大好評だった。
今宵は、タヅナと同室。
ここのところの俺のマイブームである指と舌で丁寧に攻める戦法で、タヅナの全身のコリをほぐしてやった。タヅナはじっくりねっとり行くと大いに乱れ、乱れが嵩じると暴走する。一度俺は、暴走したタヅナに馬乗りになられ、危うく犯されそうになったことがある。笑
ましてや夕餉の焼肉でスタミナをたっぷり付けちまったからな。どうなることかと心配していたが、焦らし続けるのは控えて、ひたすらコリをほぐし続けていたら、それなりに乱れはしたが、暴走することはなく、タヅナも、サジ姉、サヤ姉、ホサキ、アキナと同様に、何度も昇天していた。笑
翌朝、ギルドの受付で報酬の大金貨3枚を受け取り、サキョウ、ウキョウ、アキナ、タヅナがSランクに上がった。これで全員プラチナカードだ。オールプラチナパーティだ。
俺はもうすぐでSSランクだそうだ。サヤ姉、サジ姉、ホサキは、クマモンでSランクになったばかりだから、SSランクにはまだ届かない。
俺たちはギルドを出て、ガヒュー営業所で北斗号を受け取り、ガヒュー港で和南西航路の廻船のチケットを取った。チーコまで、6人和室の追加布団2組。ちょっときついが皆で雑魚寝と言うのがいい。
昼過ぎには、廻船はガヒューを出航して、三の島に別れを告げた。目指すは四の島のチーコ。四の島は南の島とも言い、四の島の北東は、商都の対岸である。また、四の島の北岸と和の島の西和の南岸に挟まれた海域がセトの内海だ。
四の島の南岸の海岸線は、南西端のズリの断崖岬と南東端のトロムを両端として、大きく滑らかな弧を描いている。目指すチーコは、その南岸の中央で、弧の最奥である。
四の島南岸に面する海は大海原とも外つ海とも言う外洋だ。四の島のすぐ南の大海原には、西から東に黒海流が流れており、廻船はその黒海流に潮帆を入れて、グンと加速する。その分揺れも大きくなるがな。嫁たちはこの揺れが苦手だ。
揺れに備えてサジ姉が皆に酔止の術を掛け、俺以外はすぐに布団を敷いてゴロンと横になっている。船酔い対策だ。まあでもひと晩寝れば、明日の昼にはチーコだ。
嫁たちは出航後まもなく潮帆を張って揺れがひどくなってから船酔いで動けなくなった。これを見越して夕餉用と翌日の朝餉用の弁当は、俺ひとり分しか買っていない。カドガーで馳走になった魚寿司を、港の売店で見付けたので、迷わずそれを買い込んでいた。
夕餉は、揺れる船室の端っこで、ひとりチビチビと焼酎を片手に、魚寿司をつまんだ。実に旨い。
とは言え、ひとりで呑んでても微妙なので、俺も早めに床に就いた。
翌朝は、前の晩に早く床に就いたせいで、夜明け前から目が覚めた。嫁たちは相変わらず、うんうんと唸っている。船酔いがきついのだろう。
俺はひとりで甲板に上がることにした。夜明け前の甲板は暗いが、東の空は白くなって来ている。白い東の空から中天見掛けて、白、薄紫、紫、濃紺、黒と、空の色がグラデーションで変化している。実に神秘的できれいだ。
やがて、1時半の方向の東の水平線からお天道様が顔を出した。濃紺の海面に、お天道様からの一筋の光が、揺れる波間を廻船に向かって来ている。御来光だ。俺はお天道様に手を合わせた。
ん?お天道様の方向で、海面から何かがせり上がったと思うと、その何かからから大きな噴水がひとつ、空高く吹き上がった。そしてその何かは、すぐまた海へと消えて行った。何だ、あれ?
しばらく見ていると、さっきより近い海面で再び何かがせり上がり、また大きな噴水を噴き上げて沈んで行った。随分でかいんじゃないか?
あ、クジラか!
甲板を船員がわらわらと動き出す。クジラがこっちに向かって来ているせいだろうか?
船首では潮帆の回収が始まった。右舷のロープを外し、左舷からロープを巻き上げて潮帆を回収するのだ。
潮帆を張ったまま、あの大きなクジラに引っ掛けられたら、廻船は損傷しかねないものな。
しかしクジラは悠々と近付いて来る。
緊急を伝える警笛が鳴り出し、左舷前方のクジラへ、陽士が火の術を1発放つ。キョウちゃんズみたいに連射はできないのな。
取り敢えず俺も船首に向かった。
「お客はん、危険やさかい、出て来んといて。」お、西の言葉か。和南西航路は、商都とガヒューを結んでいるから、西の人も船員にいる訳だ。
「追い払うんなら手を貸すぞ。」
「お客はん、あんた、陽士なんか?」
「いや、射手だが。」
「射手の矢じゃぁ、何の足しにもならんよって、引っ込んどいてぇな。」
「まあ見てろよ。
ライ、5倍!連射するぞ。」
『おう。』
クジラはさらに近くなったところに出て来て、盛大に潮を噴き上げた。よし今だ!
5倍雷撃矢を3連射した。遠矢と動き的の要領だ。黄色く輝く3本の矢が次々とクジラに吸い込まれるように着弾した。5倍雷撃矢を受けたクジラは、黄色く発光し、ビクンと震えて硬直すると、そのまま海面へ潜って行った。
しばらく経っても浮いて来ないから仕留めてはいないようだ。5倍雷撃矢を3本も受けたんだから、感電死してもおかしくないと言うのに、図体がでかいだけあってしぶといな。しかし、こちらが危険な相手だとは認識しただろう。これでちょっかいを掛けて来なくなればそれでいい。
「お客はん、今の、何や?」
「あんたが『何の足しにもならん。』と言った弓矢攻撃だが?」
「えろうすんまへん。わいの考え違いでおました。」
てっきり船員だと思ったこの男は、この廻船の船長だった。危機に際して、最前線で指揮を執るとは、見上げたものだ。
その後、船長室に案内され、丁重に礼を述べられた。
さらに、乗船名簿からアキナの旦那であることがバレると、ひたすら恐縮された。
「お嬢の旦はんで?」
「お嬢と言うのがアキナのことなら、そうだが。」
「重ね重ねすんまへんでした。」
「まぁそんなことはもういい。それよりあんた、船長自ら陣頭指揮とは見上げたものじゃないか。」
「そりゃそうでっせ。クジラに一発かまされたら、廻船はただじゃ済まんよってな。船長たる者、廻船の一大事にのほほんとしてられまっかいな。」
クジラとの遭遇で畳んだ潮帆は、もう展開しなかった。チーコに向かっていい風が吹いていたし、チーコがそう遠くないからだ。そのせいで廻船の揺れはだいぶ落ち着いた。
そこへ嫁たちがぞろぞろとやって来た。
「あ、お嬢。船酔いはもうよろしいんで?」船長がアキナに聞いた。
「ええ。大丈夫です。それより何があったんです?船員から聞いた話では要領を得ないんです。取り敢えず、アタルが随分活躍したことだけは分かりましたが。」
船長が事情を説明すると、嫁たちは俺に感心しつつも、すっかり凹んでしまった。曰く、そんな大事なときに、使い物にならないばかりでなく、一大事であることすら知らなかったなんて、大変申し訳ない。と言うことだ。
そうは言っても、嫁たちのあの状態では戦闘などできるはずもない。仕方ないだろう。
船長によると、クジラの撃退は、緊急クエストとしてギルドに追加申請するそうで、俺単独でのクエスト達成と言うことで落ち着いた。俺としてはパーティでのクエスト達成でもいいのだが、嫁たちが頑として譲らなかった。船酔いで動けなかったんだから、そんなに気にすることないのにな。まぁ、俺の嫁たちは皆、律義者なのだ。
そうこうしているうちに、定刻より1時間遅れで、廻船は四の島のチーコ港に入港した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/10/9
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる